2009年9月1日(火)掲載

◎「国民の生活第一」 当選から一夜明け 逢坂さん決意新た

 衆院選の投開票から一夜明けた8月31日朝、比例からくら替えした道8区で初当選を果たした民主党の逢坂誠二さん(50)は函館市内で喜びの朝を迎えた。ふたを開ければ17万票以上を獲得する圧勝。あらためて重責に身を硬くしながら、国政への決意を新たにした。

 逢坂さんは函館市内の自宅で午前4時半に起床し、約2週間ぶりに自身のブログ(日記風サイト)を更新しながらパイナップルやトマト、ヨーグルトなどの朝食をとった。睡眠時間は3時間余りだったが、疲れの色も見せず「多くの方のご支援のおかげ。大きな期待と責任の重みを感じる」と口元を引き締めた。

 この日は午前7時半にJR函館駅前、同8時すぎに本町交差点で当選後初の街頭演説に臨んだ。「308議席という大きな力で国民の生活が第一の政策を進めたい」と決意を示し、「医療や福祉、社会保障を国際水準に引き上げ、疲弊した中小企業や地場の産業対策に力を注ぎたい」と力を込めた。

 その後、空路で札幌に向かい、午前中から夕方まで道内の民放テレビ4局の番組に出演。9月1日には函館に戻り、当選報告の記者会見を行う。国防強化、消費税や贈与税の全廃による経済活性化などを訴え、独自の戦いをした。(衆院選取材班)



◎支庁再編 産業振興部門の集約撤回

 【江差】支庁制度改革に伴う渡島など9総合振興局と、桧山など5振興局の組織再編をめぐり、道が産業振興部門の1課集約などの当初案を撤回し、現在の支庁の組織体制をほぼ踏襲する修正案を検討していることが8月31日までに分かった。1日にも道議会の関係委員会に報告する見通し。

 総合振興局は4部体制、振興局は3部体制とする基本的枠組みは、6月に公表した素案通りだが、現在の産業振興部に属する、農務、農村振興、水産、商工労働観光、建設指導の5課を「地域産業課(仮称)」に集約する方針は撤回し、現状の課体制を維持する。素案では、支庁課長の格付けを本庁課長級に引き上げる方針だったが、管理職ポストの増加は行革に逆行するとして反発する、道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)などの意見を踏まえて、修正案では現行通りの本庁主幹級に戻した。総合振興局長・振興局長は本庁部長級、次長は本庁次長級、各部長と新設する“室長”ポストは本庁課長級とする方針。

 土木現業所は総合振興局の内部組織に取り込み「社会資本部」に改称する方針だったが、市町村から「名称が分かりにくい」との意見が多く「建設部」に変更。素案は、土木現業所を取り込んだ総合振興局が、振興局地域の土木行政を所管するとしたが、振興局地域に総合振興局長の権限が及ぶことは、振興局の独立性を保持するとした改正支庁再編条例に矛盾するとして、市町村が異論を唱えており、建設部長が「振興局参与」の役職をを兼務する形を取り、制度上の整合性を持たせる。

 総合振興局・振興局の組織構成が、現行の14支庁を踏襲する形となったことで、道と江差町などの振興局地域や道町村会との協議は、一定の進展も期待されるが、振興局から総合振興局に移管する広域事務の内容をめぐる隔たりは大きく、支庁再編をめぐる議論は今後も難航が予想される。



◎政権交代 期待と不安…有権者の声

 民主党が圧倒的勝利を収めた衆院選から一夜明けた8月31日、道南の有権者の間にも「政権奪取」の波紋が大きく広がった。新政権に希望を託す一方、政権担当能力への懸念も。「道南の地域活性化を」など、当選した民主党の逢坂誠二さん(50)への期待の声も聞かれた。

 七飯町本町、パート職員 溝江秀次さん(58)は「霞ケ関のうみを出し切ってほしい」と新政権誕生を歓迎。松前町の団体職員川内隆靖さん(28)は「あそこまで民主党の票が伸びるとは」と驚き、「政権交代が国民の暮らしを支える、反映されることにつながれば」と語る。

 変化を求める有権者からはさまざまな願いが聞かれた。勤め先で派遣切りがあったという市内の会社員小干場修司さん(44)は「失業者があふれているので雇用安定、景気の立て直しを」、子育て中の市内の主婦(31)は「働きながら安心して子どもが生める環境整備」を要望。市内の主婦、宍戸良子さん(58)は「息子が仕事がなくて苦しんでいる。若者の就労には国の支援が絶対に必要で、そこから目を離さないでほしい」と訴える。

 自民党への批判が民主党への追い風になり、「選挙結果は自民党への国民の不満の表れ」との見方も多数。「どっちになっても一緒だと思っていたが自民党よりはまし」と市内在住の50代の男性会社員は冷ややかだ。市内の主婦、石井京子さん(65)も「民主党は自民党の失態から大躍進しただけ。新政権になっても何も変わらない」と手厳しい。

 政権担当能力、財源に対する不安、疑念も。市内の会社員菊地大和さん(24)は「本当に子育て対策が実現できるのか問いたい」と懐疑的。市内の戸井地区で漁業を営む女性(70)は「年寄りや子どもにとってはいい政策かもしれないが、増税などで若い人に負担をかけないで」と願う。

 逢坂さんに対し、市内の自営業、佐藤由子さん(53)は「早く形に見える改善をしてほしい。道南の経済がかなり悪いことをご存知ならやってくれるはず」。市内の会社役員、乾宏一さん(44)は「自民から民主に移った鳩山代表には期待はしていないが、ニセコ町長としての実績のある逢坂さんには、魅力ある道南にして人が集まるように地域活性化を頑張って」とエールを送る。


◎逢坂氏の得票率62・6% 福島氏、組織固めきれず

 民主党前職の逢坂誠二氏が圧勝を収めた衆院選道8区。逢坂氏は得票率62・6%で、全市町で1位、積み上げた得票は8区過去最高となる17万1114票の圧勝だった。自民党新人の福島啓史郎氏は組織を固めきれず、得票は5万8046票。無所属新人の佐藤健治氏は自民党公認で出馬した前回から得票を4割以下に落とし、4万票に乗せるのがやっとだった。

 8区全体の投票率は69・34%で前回を2・67ポイント上回り、有効投票は前回より2330票多い27万3325票だった。

 逢坂氏の得票率は、前回勝利した民主党の金田誠一氏の49・8%を12・8ポイント上回り、6割の大台に乗せた。単純比較は難しいが、2007年の道議選函館市区で民主党3候補の得票率は全体の36%程度で、逢坂氏が民主支持者のほか、浮動票や保守票の一部も取り込んで17万票をたたき出した。

 福島氏は得票率が21・2%と低迷し、票は逢坂氏の3分の1に終わった。佐藤氏の票と合わせても9万8000票余りで、遠く逢坂氏に及ばない。保守分裂も敗因の一つだが、台風並みの逆風、自民党組織として戦いができなかったことなどが大きい。

 佐藤氏は、北朝鮮への拉致被害者救済を訴え、道南をくまなく歩いた雌伏4年間の集大成として選挙で「大爆発」を期したが、不発に終わった。父親の佐藤孝行氏の出身地せたな町(旧北桧山町)と鹿部町で福島氏を上回ったが、残る16市町では3位だった。

 道8区の比例票は、前回とほぼ同じ27万401票。民主11万8125票、自民6万6364票、公明3万509票、大地2万8481票、共産1万8563票、社民8359票など。民主が前回より約2万票、大地が約3000票増やしたが、それ以外は減少。自民が約1万5000票、公明が約1500票減らすなど政権与党への逆風のあおりを受けた。


◎【企画】激変8区「福島啓史郎、佐藤健治」 分裂で「自民党がない」

 「自民党公認候補は私で、保守分裂ではない。しかし、今までの(佐藤孝行派、阿部文男派の)政争が保守の方の心の中に残っている。過去のものは清算しなければならない」―。衆院選道8区で民主党前職、逢坂誠二に大敗した自民党新人、福島啓史郎は敗戦の弁の中で語った。

 自民党公認候補に保守票が集約されるべき、との考えだが、現実はそう甘くはない。福島5万8000票に対し、無所属新人の佐藤健治4万票。道内12選挙区で福島は自民党候補で最低の惜敗率だった。

 最低でも保守一本化という構図が求められたが、それができなかった8区自民党の力量を問う声は少なくない。ある経営者は「自民対民主の構図にならないから、最初から戦いにならない。公明党が道内12選挙区の自民党候補で福島だけ推薦しなかったのは、8区に自民党がないことを知っているからだろう」と厳しく指摘する。

 1996年の小選挙区導入から自民は民主に5連敗。この10年間で、当選11回を数えた佐藤孝行が引退し、阿部文男、田中正巳が死去。有力道議の逮捕や死去、引退も続いた。孝行の二男、健治は自民公認で2回敗れ、内規に従って支部長を解任されたが、「後ろ足で泥をかけて出馬した」(福島)。

 8区に自民党はあるのか。分裂選挙の失態以外にも、業界団体からさまざまな疑問の声が上がっている。ある中堅建設会社には選挙期間や前後を含め、福島氏が1回も顔を出さず、集会案内や動員要請はなく、名簿の提出も求められなかったという。「こんな自民党の選挙は初めて」と経営者は驚く。

 8区公明党幹部も、自民党の運動の遅れを嘆いた。「公示前のある日、そう小さくはない建設業者5社ほどを回ったが、福島があいさつに来ないので『おれたちの票はいらないのか』と言っていた」

 福島陣営の選対本部長、川尻秀之は「自民党へのおしかりを受け、陣営としては心を合わせてやってきたつもり。建設業界なども回れる限り、候補は歩いた」と説明する。

 一方の佐藤はどうか。敗戦の弁で「3度にわたって挑み、今回は申し述べるほどもない。限界を感じる。今は頭が真っ白な状況で、今後については少し時間をいただきたい」と述べた。

 佐藤の本心は不明だが、福島は「今後も8区支部長でいることに変わりはないと思う」と語った。次の選挙はどうなるか。ある建設業者はこう言う。「いつものことだが、そろばんをご破算にするように、8区の土壌を白紙に戻さなければならない」―。

 8区自民党の再起はなるか。