2009年9月10日 (木) 掲載

◎人力車のえびす屋 函館撤退検討、事業規模縮小も模索

 全国の観光地で人力車サービスを展開する業界大手の「えびす屋」(京都)が9月末で、函館からの撤退を検討していることが9日、分かった。利用客の低迷による営業不振が要因だが、地元の観光関係者から存続を望む声も多く、同社は現行より規模を縮小した形での営業継続も模索している。

 えびす屋は函館のほか、京都や鎌倉、浅草など全国9カ所に営業所を展開。函館店(函館市豊川町、鈴木一史店長)は2006年3月に、道内では02年の小樽に次いで進出を果たし、現在、西部地区のベイエリアを拠点に人力車9台、従業員8人で営業している。

 同社によると、撤退の検討入りについて、函館店は開業以来赤字が続き、現体制では業績回復の見通しが立たないと判断したため。長引く不況や観光客の減少に加え、函館特有の強い風や多雨などの天候不順、他都市に比べ観光地が市内に分散していることなども影響したとみられる。

 函館店は今月に入り、ベイエリア周辺の関係先に撤退の意向を伝えたが、地域から営業継続の強い要望があり、同社は「函館の名物になっているという温かい言葉もいただいた。今後は人員配置などを縮小した営業形態も思案中で、まだ結論は出ていない」と撤退と事業縮小の両にらみの構えだ。

 人力車も観光案内によく立ち寄るという市地域交流まちづくりセンターの丸藤競センター長(44)は「函館の街並みにすっかり溶け込み、人力車の走る風景がなくなるのはさみしい。従業員も礼儀正しく、勉強熱心だったので何とか存続してもらいたい」と話している。(森健太郎)



◎江差、早期健全化団体指定に転落 道南初 財政の改善目指す

 【江差】濱谷一治江差町長は9日開会の第3回定例町議会で、2008年度決算の実質公債費比率が28.6%に達することを報告。本年度施行された自治体財政健全化法に基づき、個別外部監査や財政健全化計画策定を義務付けられる「早期健全化団体」に指定されることが確定した。渡島・桧山両管内で同団体の指定を受けるのは初めて。町は12年度までに地方債残高を80億円以下に圧縮し、指定からの脱却と町財政の健全性確保を目指す方針だ。

 同比率は06年度に24.9%、07年度は27.6%、08年度には28.6%と上昇。3年間平均で27%となり基準を超過した。決算認定の有無にかかわらず、議会報告により指定が確定した。本会議は個別外部監査の実施を議決し休会。11日まで決算審査特別委員会で08年度決算を審議する。

 本会議で濱谷町長は「借金を重ねて施設の整備を進めることを町、町議会、町民が認めてきたことも背景にある。行政に頼り切りの姿勢ではなく、町民自身がまちづくりに取り組む意識を持つべきだ。町の将来展望が開けるよう財政健全化に協力してほしい」と訴えた。本会議では須藤公徳財務課長が新年度予算編成をめぐり「監査では厳しい指摘が予想される。町の裁量的経費は十分に考慮しなければならない」とし、抜本的な歳出見直しの必要性を強調した。

 指定に伴い同町には、年内に公認会計士や税理士による外部監査を行い、来年3月末までに財政健全化計画を策定することが義務付けられる。財政破たんにより国の管理下に置かれた夕張市が該当する「財政再生団体」とは違い、市町村の自主的な取り組みにより、財政状況の悪化を食い止めることが目的となる。

 同比率は市町村の財政規模に占める地方債(借金)償還の割合を示す財政指標の一つ。過去3年間の平均で25%を超えると早期健全化団体に指定される。同町では80年代後半から、町役場、文化会館、在宅型総合福祉施設、町運動公園などの大型施設整備が相次いだほか、港湾整備事業や上ノ国ダム建設に伴う水道事業会計への出資なども財政を圧迫する要因になっている。定例会の会期は14日まで。08年度決算認定のほか、総額1億5409万円の一般会計補正予算案など11議案を提案した。(松浦 純)



◎朗読録音「11年の活動」たたえ 井上さんに感謝状

 長年にわたり録音図書にかかわる奉仕活動に尽力したとして、函館市内の朗読ボランティアグループ「青い鳥朗読奉仕団」の井上祥子さん(59)がこのほど、財団法人「鉄道弘済会」(東京、小島紀久雄会長)から感謝状(道地区表彰)が贈られた。井上さんは「励みになる」と受賞を喜んでいる。

 同会は1971年から、社会福祉法人日本盲人福祉委員会と共催で朗読録音奉仕者を顕彰していて、本年度の道内からの感謝状受賞者は井上さんほか、札幌市内の3人が選ばれた。

 同奉仕団は視覚障害者のための音訳図書を製作するボランティアグループで、井上さんは1998年に入会した。当時、高校生だった二女の前で本を朗読した時、「上手」と後押ししてくれたことが長く続ける励みとなった。活動日は毎週水曜日、市総合福祉センターの障害者用の図書館で、障害者からリクエストのあった本を朗読し、録音、編集を行なう。「本を朗読する時は正確に読み、聞いている人が耳障りにならないよう心掛けている」と話す。

 「好きな読書を通し、結果的に誰かの役に立つことができれば」。奉仕年月は11年で、約645時間に及び表彰を受けた。

 「1人で読むだけでは、録音図書はできない。録音をチェックしてくれる校正者や編集者、貸し出し業務に当たる図書館員など協力者に支えられ、利用者の要望があったから賞をいただくことができた」と感謝の気持ちを忘れない。

 井上さんは「地道に続けていきたい」と受賞を契機に意欲を新たにしていた。(鈴木 潤)


◎江差追分 異色のコラボ 13日の函館MB混声合唱団と共演

 【函館、江差】13日に函館市芸術ホール(五稜郭町378)で開かれる、函館MB混声合唱団(伊藤喜久雄理事長)の第39回定期演奏会で、江差追分の独唱を取り込んだユニークな混声合唱組曲「江差」(作詞・宮澤章二、作曲・佐々木茂)が披露される。追分の本場・江差で活躍する、江差混声合唱団・リンデンコール(古岡誠団長)が賛助出演するほか、2003年の第41回江差追分全国大会優勝者の寺島絵里佳さん(26)も加わり、ひと味違った江差追分の魅力をアピールする。

 「江差」は1990年、江差町文化会館の落成を記念して披露された。「ニシンの春」「江差のカモメ」「浜風 ハマナス」「追分節変容」の4部構成からなる。最終章の「追分節変容」はピアノの伴奏がなく、尺八の音色に合わせた江差追分の独唱を、男女の合唱が追いかけるような幻想的な曲風が魅力だ。

 当日は、函館MB混声合唱団を中心に、リンデンコールのメンバー15人を加えた約75人で合唱する。20歳の若さで“追分日本一”に輝いた実力を持つ寺島さんが、哀愁を帯びた江差追分を歌い上げる。06年の第44回江差追分全国大会で優勝した妹の絵美さん(24)が、江差追分独特の合いの手「ソイがけ」を務める。

 演奏会を目前に控えたリンデンコールのメンバーは、町文化会館で寺島さんを交えて特訓を重ねている。練習場では「あれが蝦夷地の山かいな―」と、寺島さんの澄み切った歌声を追いかけるように、男女の荘重なハーモニーが響き渡る。練習に参加した寺島さんは「合唱との掛け合いは今まで経験がありません。自分一人の江差追分とは違って、いろんな声が耳に入ってくるのでとても緊張します」と引き締まった表情。古岡団長(61)は「民謡そのものを曲中に取り入れた合唱曲は数少ない。いつもと違った江差追分の魅力を感じてもらうことができれば」と語る。当日の開場は午後1時半。同2時開演。入場料は1000円(中学生以下無料)。問い合わせは函館MB混声合唱団の菱谷さんTEL0138・52・7456へ。(松浦 純)


◎メンズメタボ健康塾、ことしもやります 市立函館保健所

 市立函館保健所はことしも、男性対象の健康講座「メンズ・メタボ健康塾」を実施する。保健師や管理栄養士らの個別指導で、初開催の昨年度は、参加した54人平均で4.5キロ体重が減少するなどの効果がみられた。保健所健康づくり推進室は「食事と運動の両面から、健康を意識してみませんか」と参加を呼び掛けている。

 40―74歳を対象にしたメタボリックシンドロームに着目した特定健康診査(メタボ健診)と特定保健指導がスタートしたことを受け、これ以前の年齢での予防が必要と考えて始めた事業。昨年度の参加者は、体重以外にも腹囲は平均3.2センチ減少、BMI(体格指数)は同0.9減少した。同室保健師の中村可奈子さんは「講座が終わってからも運動や食事を意識して生活し、良い状態を維持できる」という。

 本年度も2回開催する予定だったが、春は新型インフルエンザ流行の影響で中止に。秋の1回のみとなった。開講式は9月27日で、12月20日(閉校式)までの全5回。市総合保健センターで講話や個別指導があるほか、運動指導ではどのような運動をしたらよいかの指導がある。期間中は専用のノートで健康や食事、運動量を管理する。開催時間は、開・閉校式のみ午前10時から、このほかの10月3日、11月7日、12月5日は同10時半から。

 20―49歳の男性が対象。受講無料だが、食事の材料費500円と運動講座の利用料1回400円が必要。申し込みは定員25人に達し次第締め切る。申し込み、問い合わせは同室TEL0138・32・1515。(小泉まや)