2009年9月11日 (金) 掲載

◎函館「魅力」初のトップ…全国ランキング

 全国一の“魅力的な街”は函館市―。民間のコンサルタント会社「ブランド総合研究所」(東京)が10日発表した「地域ブランド調査」のランキングで、函館市が2006年の調査開始以来、初めて全国トップに躍り出た。観光客の入り込みが減少傾向にある中、多くの観光資源を有する地域のブランド力を裏付けた格好だ。

 調査は今年7月、全国の783市と東京23区、地域ブランドの取り組みに意欲的な194町村の計1000市区町村を対象に、20―60代の計3万2124人に対しインターネットでアンケートを実施。「魅力度」「認知度」「観光意欲」など63項目を評価してもらい、100点満点で点数化して順位を付けた。

 函館は07年の4位、昨年は2位で、3年連続トップだった札幌を抜いて初の1位に。函館の魅力度は58・8点で、「魅力的」と回答したのは全国トップの85・1%に上った。同研究所は「魅力度とイメージは相関関係にあり、開港150周年や観光PR動画などで函館のイメージが浸透しつつある」としている。

 街のイメージを一つ以上挙げてもらった割合を示す「イメージ想起率」でも、91・8%が函館に対して何らかのイメージを持ち、中でも「観光・レジャーのまち」が83・7%と高かった。

 観光意欲については、「ぜひ行ってみたい」「機会があれば行ってみたい」との回答が計92・3%に達し、潜在需要の高さもうかがえた。地域資源評価では「食事がおいしい」「買いたい土産や地域産品がある」との項目で1位となり、特に海産物、水産加工品が6割以上を占めた。

 査結果について、西尾正範函館市長は「函館は開港150周年を迎え、全国に魅力的な市町村が多くある中で、高い評価をいただけたのは大変喜ばしい」とコメント。同研究所は「消費者のイメージと観光客が漸減傾向にある実態とのギャップをどう埋めるかが課題。今後の観光戦略を練るために活用してほしい」と話している。

 道内では函館、札幌のほか、小樽市(6位)、富良野市(8位)もトップ10入り。今回から初めて調査を始めた都道府県別の魅力度調査でも、北海道は2位の京都府に14・3点差を付けて首位を獲得し、北海道のブランド力を示した。(森健太郎)



◎明治の建物 カフェに変身…国の重文「太刀川家住宅店舗」きょうオープン

 函館市弁天町15の国指定重要文化財(重文)「太刀川(たちかわ)家住宅店舗」がカフェに生まれ変わり、「TACHIKAWA CAFE(タチカワカフェ)」(太刀川善オーナー)として11日にオープンする。これまで非公開だった歴史的建物を市民と観光客の交わる空間にし、まちに新たなにぎわいと文化を創出していく。

 太刀川家住宅店舗は米穀店、漁業などを営み、一代で財を成した初代太刀川善吉が1901(明治34)年に建築。土蔵造り2階建て店舗は洋風の意匠を取り入れた和風建築で、明治末期の商家建築を伝える建造物として71年に重文指定を受けた。ただ個人の所有のため、内部は公開されていなかった。市文化財課の阿部司課長は「重文が店舗として利用されるケースは珍しい。往時の建築物が函館の歴史・文化を伝える新たな交流の場になれば」と話している。

 所有者の太刀川家が運営する会社の取締役で、カフェ運営に携わる太刀川雅子さんによると、10年ほど前から文化庁などに公開できないか打診を受けていたという。開港150周年を機に、「古い建物の活用方法が発信され、人が集い、函館のまちが元気になれば」と願い、カフェの運営に踏み切った。

 カフェは店舗1階部分で広さは約117平方メートル。内装はほとんど手を加えずトイレや厨房などを整備したのみで、夏はオープンカフェにもなる。諸外国の文化が入り混じる開港都市らしく、サンドイッチやピロシキなど多彩な軽食メニューを提供する。午前10時―午後6時。月曜定休。(宮木佳奈美)



◎区画整理で空洞化懸念…石川稜北に宅地600区画 市が1カ月の猶予

 第3回函館市議会定例会は10日、一般質問が始まり4氏が立った。市が新たに、石川稜北地区33ヘクタールを市街化区域に編入する手続きを道に対して始めたことについて、中心市街地の空洞化に拍車が掛かるとの批判があった。対象区域では20.6ヘクタールに600区画を造成する民間の区画整理事業があり、市は地権者の同意を得るために1カ月の猶予を与えたことも分かった。

 福島恭二氏(民主・市民ネット)、志賀谷隆氏(公明党)が取り上げた。

 コンパクトシティーを推進する市が、反対の道に進んでいるとの指摘について、山本真也都市建設部長は「郊外に良質・低廉な宅地を求める一定のニーズがあり、市外への人口流出を防ぐ観点からも市街化区域に隣接する調整区域での宅地開発を認めてきた」と述べた。

 人口減少を受け、道は来年度から、住宅系の用地の市街化区域編入を認めない方針を決めた。日程上、新たな宅地系の市街地編入は今年6月中の申請がリミットとなり、市は「最後の機会であること」(山本部長)から、6月に道に編入の意向を伝え、地権者の同意率を9割程度まで高めるよう区画整理事業準備組合に1カ月の猶予を与えた。

 6月末の同意率は78.95%だったが、7月末で85・09%まで上がった。しかし、7月30日に西尾正範市長をはじめ特別職や幹部で開いた会議では、「未同意者が17人残っており、実施が難しい。市として政策的に進める事業ではない」(西尾市長)との声があった。しかし、最終的に、事業を確実に実施できる業務代行者を8月末までにつける条件を準備組合に付して、これが実現し市街地編入手続きを開始した。

 この経緯に関する質問に対し、西尾市長は「駄目ではないかという議論はあったが、都市建設部が道と協議し、法律に基づいて結論を出した。何ら意図はない」と述べた。

 今年3月末には、石川稜北地区に隣接する石川中央地区で30ヘクタールの市街化区域編入がされ、区画整理で20.8ヘクタールに650区画を造成する事業も進められている。人口減少が続く中での相次ぐ宅地造成に、志賀谷、福島氏は強い懸念を示し、市の判断を疑問視している。

 市議会は10日、委員11人からなる決算特別委員会を設置し、委員長に金沢浩幸氏(新生クラブ)、副委員長に道畑克雄氏(民主・市民ネット)を選出した。2008年度一般会計決算など17議案を18、24、25日に審議する。(高柳 謙)


◎函館市のパソコン 違法ソフト241本を確認…消去し1000万円で購入へ

 函館市職員が業務で使用しているパソコン1463台の中に、違法コピーをしたソフトが241本あったことが市の調査で分かった。市はソフトウエア会社に謝罪し、9月末までに違法コピーを消去し、約1000万円をかけて正規のソフト使用権を購入し、適切な管理をしていく。

 10日の市議会一般質問で、福島恭二氏(民主・市民ネット)の質問に小柏忠久理事が答えた。

 違法コピーされていたのはプレゼンテーション(発表)とデータベースに関する機能が入ったCDロムで、昨年10月にソフト会社からの依頼を受けて市が調査したところ、今年6月までに違法コピー241本が確認された。市情報システム課によると、正規ソフトのCDロムがあれば暗唱番号を打ち込むことで複数のパソコンに組み入れることができる。

 該当するソフトの使用書は1本4万5000円で、各部局の予算であらためて購入する。損害賠償の責任について小柏理事は「非をおわびし、ソフトウエア会社から正規に使用権を購入することで理解を得ている」と述べた。

 違法コピーに対する認識について、西尾正範市長は「他の自治体でも同じような事例が報道されているが、著作権の個々の認識が薄かった。今後はこうしたことがないよう、適正な管理に努めたい」と答えた。(高柳 謙)


◎酒井充子監督「台湾人生」 アイリスであすから上映

 函館で新聞記者として働いた経験を持つ酒井充子さん(39)=東京在住=の初監督作品「台湾人生」が12日から、函館市本町22のシネマアイリスで上映される。日本統治下にあった台湾で、日本語教育を受けた世代の人生に迫るドキュメンタリー。14日には酒井監督が来函し、舞台あいさつを行う。

 酒井監督は1969年山口県出身。慶応義塾大卒業後、96年に北海道新聞社に転職し、函館報道部で取材経験を積んだ。台湾映画「愛情萬歳」(蔡明亮監督)を見て「舞台の台北を歩いてみたい」と98年夏、初めて台湾へ。2000年から映画制作に携わる一方、台湾取材を始め、7年掛かりで完成させた。

 作品は、1895―1945年までの日本統治時代台湾で生まれ、日本語教育を受けた「日本語世代」の5人にスポットを当てた。日々の暮らしぶりを交え、激動の歴史に翻弄(ほんろう)されながらも力強く歩んできた人生をインタビューで振り返る。

 上映は12―18日までの1週間限定で午前9時20分から。14日のみ午後7時から特別上映があり、上映後トークショーを行う。前売り券は1500円(当日1800円)。

 菅原和博代表は「函館に縁のある人の映画というだけで興味が引かれるはず。日本人にとって祖国とは何かを考えさせられる作品」と話す。

 酒井監督は「肩ひじを張らずまずは台湾のおじいちゃん、おばあちゃんの声を聞いてほしい。そして映画から何かを感じ、そこから台湾、日本について考えていただければうれしい」と話す。

 問い合わせはアイリスTEL0138・31・6761。(新目七恵)