2009年9月19日 (土) 掲載

◎江差追分全国大会が開幕

 【江差】かもめの鳴く音にふと目を覚まし あれが蝦夷地の山かいな―。7節の哀愁を帯びた音調が心に響く、第47回江差追分全国大会(主催・江差追分会など)が18日、町文化会館(茂尻町71)で開幕した。20日までの3日間、総勢408人の出場者が“追分日本一”の栄冠に挑む。

 午前9時からの開会式では、大会長の濱谷一治江差町長、審査員長の青坂満・江差追分会上席師匠が出場者を激励した。続いて165人が出場する熟年大会、187人が出場する一般大会の予選会がスタート。出場者は念願だった全国大会のひのき舞台に立ち、万感の思いを込めた追分節を心おきなく披露。大勢の観客は「民謡の王様」と称される江差追分の世界に酔いしれた。また、会場には新型インフルエンザ感染に備えて、随所に消毒薬が設置され、出場者や観客に利用を呼び掛けている。

 19日は午後8時過ぎまで予選会が行われ、一般50人・熟年25人の決選会出場者が決まる。同8時半からは、昨年の優勝者や全国の追分会支部によるアトラクションを行う。最終日の20日は、午前9時の開会式に続き、56人が出場する少年全国大会、熟年・一般両大会の決選会を行う。結果発表は午後7時ごろ。優勝旗を手にした今年の優勝者が感動の歌声を披露する。同5時半からの特別アトラクション「歴世の奥義・江差うたの源流とその魅力」では、江差追分のルーツとされる各地の民謡を披露する。決選会の入場券付きプログラムは当日2300円。問い合わせは大会本部TEL0139・52・6105または江差追分会事務局TEL同・52・5555。大会の模様はインターネット(http://www.hakodate.or.jp/oiwake/)でも中継している。



◎ナッチャン 夏の利用好調…ETC効果追い風 前年比6割増

 道南自動車フェリー(函館市港町3)が7月中旬から期間限定で運航している函館―青森航路の高速船「ナッチャン」の利用が好調だ。ETC(自動料金収受システム)搭載車の高速割引効果で「当初予想の6割増し」(同社)と追い風に乗る。今月30日の終航日を控え、秋の大型連休後半には函館ターミナルでイベントも企画している。

 同社によると、8月は計106便運航し、ドライバーや幼児を除く旅客は2万8525人、乗用車の利用は1万181台。特に一日2往復4便運航したお盆期間中などは道外客の利用増で満席便もあり、「沖縄や九州ナンバーの車もあった」(同社)という。

 昨年夏は2隻体制の運航ダイヤだったため、単純比較はできないが、1便当たりの搭乗実績は前年同月が平均215人だったのに対し、今年は340人と1・5倍以上に。乗用車は前年同月が平均54台だったが、今年は96台と2倍近くに上った。

 同社は「ETC効果による需要は予想以上。団体客や物流トラックが低調だった半面、本州方面からの個人客が急増し、キャンピングカーなどの利用客も多かった」と話す。今月17日からの大型連休の予約も好調で、前半は青森発、後半は函館発にほぼ満席の便もあるという。

 秋の大型連休後半の22、23の両日は午後1時―同5時まで、函館ターミナル(同市港町3)で「津軽海峡秋祭り」を企画。抽選でペア乗船券などが当たる乗船者対象のスタンプラリーや、北大水産学部生の研究発表ブース、青森県大間町の観光物産展、屋台コーナーなどもある。

 同社は「ナッチャンの運航が終了する30日まで残りわずか。この連休を機にまだ利用したことがない方にも乗船してもらい、ターミナルで思い出をつくって」とPRする。同社には国内外から高速船の購入やリースの打診があり「現在はまだ交渉段階」としている。(森健太郎)



◎ナルミ破たん 配当不足額57億円…初の債権者集会開催

 【乙部、函館】自己破産手続きを開始した建設系資材商社・ナルミ(乙部町、古畑篤社長)の第1回債権者集会が18日、函館地裁で開かれた。破産管財人によると8月末現在の負債総額は61億8716万円に上った。これに対して不動産や現金などの資産額は4億3876万円にとどまることが明らかになった。負債額は今後も膨らむ可能性があるという。

 非公開の集会には約50人が出席。債権者によると冒頭で古畑氏が「申し訳ございません」と、土下座して謝罪したという。

 管財人の山崎英二弁護士が提出した資料によると、8月末までに届け出があった債権者は92件。債権者への配当可能な財産の不足額は57億4846万円に上る。負債額のうち北洋銀行、江差信金、みちのく銀行などの金融機関分はおよそ6割を占める。今後も債権の申し出を認める方針で、負債額はさらに増加する見込みという。負債総額のうち、認否を留保している債権は10億3489万円に上り、債権者からは負債額の早期確定と、迅速な自己破産手続きを求める声も上がったという。

 管財人の説明によると、古畑氏と密接な関係にある辻板金工業(江差町、大口隆一社長)が2005年ごろ、旧北海道拓殖銀行関連の投資をめぐり巨額の損失を抱えたことを発端に、債務肩代わりや運転資金の支援などを続けた結果、融資総額は26億円強に膨らんだ。景気低迷に伴う業績悪化と、巨額の融資が回収できないことが原因で、ナルミの資金繰りも悪化。グループ企業や傘下企業間では、商取引の実態がない融通手形を乱発するなど、不透明な資金操作を繰り返したが、今年3月には資金繰りに行き詰まり経営破たんしたという。民間の信用調査会社によると同社を含むグループ8社の負債総額は100億円を超える見込みだ。

 同日は古畑氏個人と、連鎖倒産した関連会社・本間建設工業(江差町、本間康明社長)の自己破産手続きに伴う債権者集会も開かれた。ナルミの第2回債権者集会は12月17日、同地裁で開かれる予定。(松浦 純)


◎創立150周年の歴史一冊に…函館カトリック元町教会 5年かけ「記念誌」完成

 今年、創立150周年を迎えた函館カトリック元町教会(元町15、ジェル・ロー神父)はこのほど、記念誌「栄光百五十年」を発行した。信者5人による記念誌編集委員会が約5年の歳月をかけて完成させた。同委員は「歴代の神父、信者たちが貴重な資料を残してくれたおかげ。この一冊から教会がさらに発展することを願う」と完成を喜んでいる。

 同教会は函館が開港した1859(安政6)年11月、パリ外国宣教教会のメルメ・カション神父が称名寺(旧函館弥生小校舎付近)境内の建物の提供を受け、小聖堂としてたのが始まり。現在、元町にあるゴシック式、鉄筋コンクリートの建物は1921(大正10)年の大火に見舞われた後、23(同12)年に補強修理し建てられた。

 節目を迎え、記念式典委員会などが立ち上がり、記念誌編集は2004年12月から始まった。長い歴史を象徴する重厚な表紙には、同教会信者から公募したタイトルが書かれている。「神に栄光」から付けられたという。始めに150周年記念慶祝歌を紹介。函館山のふもとにある荘厳な聖堂で響く祈りの声が150年続くことを感じさせている。

 内容はおおよそ5つに区分され、歴代司祭の紹介から聖堂内外の抄録、1946年から発行されている教会広報誌「鐘声」からみる教会の軌跡、46年に当時のフィリップ・グロード神父が創設した劇団活動や思い出話で振り返る教会の諸相、そして思い出の写真集と年表と続く。ほかの教会の100年記念誌などを参考にし、函館市史編さんにも尽力した故久保田恭平さんが残した大量の資料のほか、100を超える文書、書籍を参考にした。編集委員は「命がけで作って仕上げた感動はあるが、教会はさらに発展するので、これで良かったという締めくくりの言葉は使いたくない」と話す。

 A4判、203ページ。500部作成し、信者やカトリックの学校など関係者に配布。市立函館博物館、函館市中央図書館に寄贈を予定している。同教会では21日午前11から記念ミサ、午後1時から30分間、マリア会館の展示見学を行う。(山崎純一)


◎函館空襲で沈没 駆逐艦「橘」紹介…函水高「デジタル紙芝居」

 【北斗】函館水産高校の1年生2人が、函館空襲で沈没した駆逐艦「橘」について紹介するデジタル紙芝居「駆逐艦『橘』を救えッ」の発表会を17日夜、茂辺地住民センターで開いた。地域住民ら約30人が、若者2人の発表に目と耳を傾けた。

 「橘」は戦時中の1945年1月に横須賀で作られ、同年6月末から函館で津軽海峡の警備行動などを行っていたが、同年7月14日の空襲で沈没。死者は少なくとも135人に上るという。

 同校の我妻雅夫教諭が中心となって、橘の存在を知ってもらおうと7月に函館で報告会を実施。今回は、投げ出された乗組員の救助に茂辺地の漁師が当たったことから、地元住民にその事実を伝えようと発表会を企画した。

 同校水産食品科1年の若松豊君(16)米光凌君(15)の2人が、戦闘の様子や漁師たちの救出について触れた自作の動画や、「橘」関係者の取材結果、当時の新聞記事などを紹介した。集まった住民は食い入るように映像を見つめ、中には目頭を押さえる人もいた。

 市内茂辺地の村上ツヤさん(71)は「子どものころ、大きな船から火がぼうぼうと燃え上がるのを見た記憶を思い出した。茂辺地の人たちが協力していたことを知らせてくれてありがたい」と神妙な面持ち。

 福島町で攻撃を受けた仲間の駆逐艦「柳」に関する記念誌やビデオを制作した金谷奉宏さん(66)も「パソコンを駆使して、よく頑張った。自分も高校生と一緒に次の作品づくりに励みたい」と、2人の頑張りをたたえていた。(千葉卓陽)