2009年9月25日 (金) 掲載

◎函館視覚障害者図書館、来月3日に音・点訳養成講座

 視覚障害者向けの点字図書や録音図書をそろえた函館市総合福祉センター(若松町33)内の「函館視覚障害者図書館」は今年4月にNPO法人化した。朗読や点訳の資格を持つ奉仕者が無償で図書を製作し、運営を支えているが、視覚障害者の読書ニーズに対応していくには奉仕者が不足気味だ。同図書館は資格者を養成する講座を10月3日から同センターで開講する予定で、受講を呼び掛けている。(鈴木 潤)

 同図書館は1967年11月、函館視力障害者福祉協議会が開設。当時の理事長が私財を投入し、有志数人とともに点字や録音の図書製作に当たった。2年後には市から依頼を受け広報誌「市政はこだて」の音訳図書も手掛けた。堀川町内の施設移転を経て94年から現在の場所で運営している。

 同図書館は、同協議会のほかに「青い鳥朗読奉仕団」「きつつき点訳奉仕団」「パソコン点訳グループアイネット」の市内の奉仕団体3団体が運営に参画し、全国でも数少ない、ボランティアで組織・運営されている図書館。図書の貸し出し、製作のほか、視覚障害者へのパソコン指導や対面朗読、電化製品など取扱説明書の個別録音などのサービスも行っている。

 ボランティアの域を超え、社会的な使命を果たしていこうとNPO法人の認証を受け活動する。現在、録音図書1万5000冊、点字図書5000冊を保有する。全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)を通じて全国各地の視覚障害者図書館とネットワークを結んでいるので、図書館にない本の貸し出しも可能となっている。

 一方、図書の製作は時間や手間がかかる。例えば、録音図書は3カ月から半年必要といわれ、青い鳥朗読奉仕団の代表を務める同図書館の森田直子専務理事(58)は「読者のニーズは最新のベストセラーから学術書、観光のガイドブックなど多様化し、読了も早い。需給バランスをとっていくには多く人の協力が必要」と話す。

 同図書館の利用者は約270人。音訳、点訳の奉仕者は3団体で約150人だが、図書製作には一定の技術や経験が必要で、実働者は半数程度という。森田専務理事は「誰かの支えになっていることを実感できる活動。ぜひ、協力を」と呼び掛ける。

 講座は18歳以上の市民が対象。音訳や点訳、音声パソコンの技術などを学ぶ。計8回で受講料1000円。申し込み、問い合わせは同図書館TEL0138・23・2580(午前10時から午後3時まで)。



◎支庁再編広域事務修正案、見直し1項目に町村会反発

 【江差】支庁再編に伴い、振興局から総合振興局に集約する広域事務の対象をめぐり、桧山支庁管内町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)は、道の検討案で示された105事務について、地域に密着した事務が含まれるほか、移管の根拠が不明確なものも多いとして、大半の項目について再検討を求めたが、道が対象から除外する方針を示したのはわずか1項目にとどまった。事実上の“ゼロ回答”に対して檜山町村会は反発を強めている。

 道は6月に公表した「広域事務リスト(素案)」は、桧山など5振興局から渡島など9総合振興局に集約する事務について、26分野・105事務を挙げた。対象事務には、保安林指定や林地開発など地域に密着した事務のほか、移管の根拠が不明確なものが多いとして、檜山町村会はほぼ全項目について再検討や説明を求めた。

 しかし、道が今月公表した広域事務リストの修正案では、集約対象とした105事務から除外する方針を示したのは「沿岸漁場の整備開発に関する事務」だけ。これに対して寺島会長は「道南での広域観光や新幹線開業に伴う地域振興など“広域”で取り組むことが効果的な事務を対象とするはずだった。道が示したリストは振興局の体制縮小に向けたリストラ案にすぎない。広域事務の名目で事務を分散させることは、市町村や事業者の負担増につながるだけ」と、道の対応を疑問視する。

 道は6月に素案を公表後、市町村や町村会などに意見照会を実施。意見に対する回答を8月に公表した。今月に入り再意見にも回答したが、桧山町村会は、依然として疑問点が多いとして、3度目の意見提出に向けた管内7町の意見集約を進めている。しかし、これまでのところ道から新たな意見照会は無いという。ある町幹部は「市町村との意見交換をこれで打ち切るのか。広域事務は全く見直す考えが無いのか」として、道に対する姿勢を硬化している。

 広域事務の移管について道は、2010年度に地域振興部門など35事務、11年度は環境や保健・福祉・医療など33事務、最終年度の12年度は、産業振興部門を中心に36事務を移管する方針。だが、支庁再編をめぐって高橋はるみ知事は当初、条例施行期日を10月1日とする方針を示していたが、総合振興局・振興局の組織体制をはじめ広域事務の取り扱いをめぐる議論が難航。条例の施行期日は未定のままとなっている。(松浦 純)



◎シルバーウイーク、道南にぎわう

 今年初めてとなった秋の大型連休「シルバーウイーク」の期間(19―23日)中、道南は好天に恵まれ、高速料金の自動料金収受システム(ETC)の割引制度を利用し札幌や旭川、帯広など道内から自家用車で観光客が押し寄せ、観光名所やグルメを満喫した。これまでの秋の3連休にはなかった混雑ぶりに、関係者からは喜びと戸惑いの声が聞かれた。

 函館市若松町の函館朝市周辺の道路は連日、駐車場待ちの車で混雑した。函館朝市協同組合連合会は臨時駐車場を設けて対応し、駐車場の一日の利用台数は平日の倍近い1000台となった。同連合会は「春のゴールデンウイーク(GW)並みの人の流れがあり、びっくりした。この時期には珍しい多さ」と話す。

 函館市内を中心に14店舗を展開するハンバーガーショップ「ラッキーピエロ」五稜郭公園前店では開店直後から観光客で混雑した。同店は「飛び石連休でなかったことが大きく影響しているのでは」と分析。五稜郭タワーでは期間中、展望台搭乗者数が3万1734人に達し、昨年の同期間は1万7343人で約1・8倍となった。同タワーは「3連休と違い5連休ともなれば遠出できるということだろう。この時期にこれだけの来客があるとは」と喜ぶ。近くの市芸術ホールの駐車場は午前10時には満車状態となった。駐車場の利用台数は昨年の5日間に比べて2155台多い6519台を記録。「3連休の時よりも、連休スタート時の利用者がかなり多かった」と同ホール。

 秋のお彼岸の墓参りにも変化が見られた。市内の墓地や寺院では毎年、彼岸(23日)の日に墓参者が集中するが、今年は分散し、前半に多く訪れていた。市内船見町の称名寺の須藤隆仙住職は「遠方へ行楽に出掛けたいとする人が連休序盤に多く参られ、20、21日がピークとなった。こんなことは初めて」と驚いていた。

 道警函館方面本部交通課交通管制センターによると、期間中は、国道5号西大沼周辺で2―3キロ断続的な渋滞が発生したが、このほかは大きな交通障害はなかったという。(山崎純一、長内 健、小杉貴洋)


◎企業誘致活動推進員の企業訪問、単独はわずか2件

 函館市議会の決算特別委員会(金沢浩幸委員長)は24日、経済建設常任委員会所轄分を審議した。首都圏の企業誘致を専門業務に2008年度から配置した企業誘致推進員が同年度に企業訪問した通算日数は22日で、職員らが動向せず単独で訪問したのはわずか2件にとどまっていたことが明らかになった。公明党の茂木修氏、志賀谷隆氏の質問に経済部が答えた。

 同推進員は民間企業出身者で、函館に進出する可能性のある企業の調査や情報収集をしながら誘致に結びつけるのが主な業務。昨年9月から自宅を拠点に活動している。

 市は「職員が上京する活動と比べ、企業情報をいち早く入手でき、迅速な働きかけができる」(西尾正範市長)と費用対効果を期待し配置した。08年度も含めこれまで推進員による企業誘致の実績はゼロとなっている。

 経済部によると、08年度の実働日数は193日で、自宅勤務92日、外勤88日、出張13日。企業訪問日数22日のうち、20日が市職員や公立はこだて未来大の関係者に同行しながら訪問していた。訪問件数は約80件で、報酬や交際費など約455万の費用を充てた。

 志賀谷氏が「期待通りの活動ができたのか」と問い詰めたのに対し、備前悟部長は「初年度は調査や情報収集に費やした」と弁明。さらに同氏は「効果が期待できないのであれば廃止すべき」と追及し、谷沢広副市長は「早期改善指導をするとともに廃止を含めた検討もしていきたい」と述べた。

 このほか、中心市街地活性化と土地利用政策の考え方について、都市建設部の部長は「人口減少とともに世帯数も増加しており、良質で低廉な住宅を求めるニーズにも応えていく」と答弁。郊外への宅地化拡大で中心市街地の空洞化を懸念する経済界の反応については「懸念の声もある」とした。志賀谷氏への答弁。(鈴木 潤)


◎人力車「えびす屋」、今月末で営業終了

 全国の観光地で人力車を運行する「えびす屋」(京都)が函館からの撤退を検討していた問題で、同社は24日、函館店(函館市豊川町)の営業を9月30日でいったん終了することを決めた。今後は事業規模を縮小した形で来年春の営業再開を目指す考え。

 えびす屋は京都や鎌倉、浅草など全国9カ所に営業所を展開。函館店は2006年3月に、道内では02年の小樽に次いで進出したが、長引く不況や観光客の減少などで開業以来、赤字経営が続いていた。従業員8人は退社する人を除き、京都で勤務する。

 同社は9月上旬に撤退方針を固めた後、地元からの存続の要望を受けて営業継続も模索していた。同社の加藤誠一専務は「地域に根ざした経営理念に相反する苦渋の決断で、断腸の思い。これまでより人員や台数などを縮小し、来年4月をめどに運行再開を目指したい」と話している。

 同社によると、函館は夏場の天候不順や観光地が市内に分散しているため、営業拠点のある他都市に比べて採算面で苦戦を強いられていたという。地域からも存続を望む声があり、地元資本での事業継承や業務提携なども検討入りしたが、具体化しなかった。

 来春以降は、夏場の季節運行などを計画している。(森健太郎)