2009年9月27日(日)掲載

◎悲劇繰り返さぬ…洞爺丸事故から55年 慰霊碑前で法要

 【北斗】青函連絡船「洞爺丸」など5隻が転覆し、乗客・乗員1400人以上が犠牲になった洞爺丸台風事故(1954年)から55年―。犠牲者をしのぶ慰霊法要が26日、北斗市七重浜7の海難者慰霊碑前で営まれた。参列した遺族らは半世紀前の大惨事を思い起こし、故人の冥福を祈った。

 同事故は青函連絡船洞爺丸、日高丸、十勝丸、北見丸、第十一青函丸の5隻が台風15号による突風や高波で沈没し、多くの遺体は七重浜の海岸に漂着した。死者・行方不明者は1430人に上り、「タイタニック号」に次ぐ海難事故とされる。

 法要は函館市仏教会(梨谷哲榮会長)と青函連絡船殉職者遺族会(渋谷武彦会長)の共催。僧侶の読経の中、参列者が一人ずつ焼香し、静かに手を合わせた。事故の翌年に建立された慰霊碑の前には花束などが供えられ、亡き家族を思い出して目頭を押さえる人の姿もあった。

 義父を亡くした函館市堀川町の吉田栄子さん(66)は「もう連絡船はないけれど、同じ悲劇が二度と繰り返されぬよう祈り続けたい」とし、同遺族会の渋谷会長(76)も「遺族も高齢化しているが、事故を風化させないため後世に語り継いでいきたい」と話していた。(森健太郎)



◎箱館奉行所来館者 年間19万6000人を予測…市教委生涯学習部

 函館市教委生涯学習部は、来年7月29日のオープンを予定している箱館奉行所(五稜郭町44)の来館者見込みをまとめた。平年ベースでは五稜郭タワー搭乗者の4分の1程度、年間19万6000人の来館を予測。オープン1年目の2010年度は話題性から1・25倍に設定し、8月からの8カ月間で14万7000人(年間換算で24万5000人)を見込んでいる。

 開館効果は3年間続き、2年目は21万7000人、3年目が20万8000人で、4年目以降は19万6000人を見込んでいる。

 第3回定例市議会に奉行所の設置条例案を提出。他都市の同様の施設を参考に、入館料は大人500円、学生・児童・生徒は250円とした。入館料収入は、初年度が8カ月で5600万円、2年目8200万円、3年目7900万円、4年目以降は7400万円とした。

 公の施設を民間に管理代行させる指定管理者制度を導入し、予算案は5年間で上限が2億9700万円、1年間で6000万円弱となる。入館料収入は市の歳入となり、見込みでは入館料収入で管理委託料を賄える。設置条例の可決後、指定管理者の公募、選定作業に入る。

 社会教育施設として市が特別史跡五稜郭跡の整備の一環で建設。基本設計、実施設計を経て06年度に着工し、11年度までの5カ年計画で建設している。建設費用のおおむね7割が交付税措置される合併特例債を活用。特例債が適用される実施設計と建設工事分の事業費は約18億2800万円で、借金の償還額は年間約1億円だが、実質的な負担は約3000万円で済むという。(高柳 謙)



◎解体ショーに視線くぎ付け…秋の味覚とマグロまつり

 【松前】「第6回松前藩屋敷秋の味覚とマグロまつり」(松前観光協会主催)が26日、松前町西舘68の松前藩屋敷で開かれた。マグロの解体ショーや丼早食い大会、郷土芸能などの催しで、大勢の来場者を楽しませた。

 毎年人気の解体ショーは、23日に松前近海で獲れた41.5キロの脂がたっぷり乗ったマグロを用意。鮮魚卸販売のマルコオーエム物産(函館市中島町)の阿部紀之さん(23)が、豪快な包丁さばきで観客を魅了した。

 会場には刺し身や丼、ホッケのすり身汁など、松前自慢の料理がずらりと並んだ。好天にも恵まれ、親子連れらの歓声が響いていた。

 激辛マグロ丼早食い大会に参加した室蘭市の介護福祉士佐藤雄紀さん(24)は「辛かったが、うまいマグロだった」。江差町の山下ゆかさん(8)は「口の中でとろけるマグロの味が好き」と満足の様子だった。

 まつり最終日の27日は午前11時開始。解体ショーは午後零時を予定している。問い合わせは同観光協会℡0139・42・2726。(松宮一郎)


◎先人の思い胸に決意新た…遺愛学院135周年記念式典

 学校法人遺愛学院(野田義成理事長)創基135周年記念式典が26日、函館市杉並町の同学院内の遺愛アリーナで行われた。来賓と全校生徒ら計約900人が地域に根差して女子教育を進めた先人の功績をたたえるとともに、今後の発展に向けて決意を新たにした。

 式典で野田理事長は「学院の歴史は国の激動の歩みと重なる。『信仰・犠牲・奉仕』の遺愛の三大精神は卒業生や在学生1人ひとりの心に受け継がれており、今後も有意な人材の育成に努めたい」と式辞を述べ、福島基輝学校長が感謝の辞を語った。西尾正範函館市長らの祝辞に続き、生徒代表の高校3年生浜津薫さん(17)が「遺愛生はハリス夫妻やキャロライン夫人の遺志と同窓生の深い思いを次世代に受け継がねばならない。優しく明るい校風で学べてうれしい」と喜びの言葉を語った。

 この後、記念コンサートとして生徒によるハンドベルや吹奏楽曲の演奏、卒業生によるソプラノ独唱が繰り広げられ、参加者は節目を祝った。

 同学院は1874(明治7)年、米メソジスト教会の宣教師として夫と来函したM・C・ハリス夫人が「日々学校」(デイスクール)を開設したのがきっかけ。キャロライン・ライト婦人らの献金で1882年、元町に校舎を建築。現在まで一貫してキリスト教主義の女子教育を実践している。 (新目七恵)


◎市内巡りイメージ…海炭市叙景 脚本家・宇治田さん来函

 函館出身の作家、故佐藤泰志の小説「海炭市叙景」の映画化に向けた取り組みで、東京在住の脚本家宇治田隆史さん(34)と熊切和嘉監督(35)が24日から函館入りし、市内でシナリオハンティングを行っている。26日は市交通局の駒場車庫構内や朝市などを見学。脚本の完成を目指し、作品のイメージをふくらませた。

 宇治田さんは和歌山県出身。大阪芸大同期生となる熊切監督とは、脚本を担当した「ノン子36歳(家事手伝い)」など長編5作品でタッグを組んでいる。脚本の第一稿は7月に完成させており、今回は内容を練り上げる目的で初めて函館を訪問した。

 この日2人は朝市など市内各所をめぐり、駒場車庫構内では職員に案内されながら作業場や市電内の様子を見て、写真に収めるなどしていた。

 宇治田さんは小説の感想を「函館をきれいな街と思っていたが印象が変わった。登場人物の生きる様子が生々しく描かれていた」とし、「原作に忠実に、佐藤泰志が何を考え、どこに向かおうとしていたのかを考えながら脚本化の作業を進めた。『街が生きている』と感じてもらえるようないい映画になれば」と話していた。

 函館滞在は27日まで。年内には準備稿を完成させ、来年2月にクランクインを目指す。(新目七恵)