2010年10月1日 (金) 掲載

◎函館地域産業振興財団など開発、通電加熱の性能公開

 独立行政法人水産大学校(山口県下関市)や函館地域産業振興財団などの共同研究グループが開発した通電加熱技術による水産加工品の加熱、殺菌装置の実演公開が30日、函館市桔梗町の道立工業技術センターで行われた。研究開発に携わった企業、研究機関の関係者約20人が出席し、性能を確かめた。

 通電加熱は、食品に電気を流すことで食品自体が発熱し、加熱する仕組み。農林水産省の委託を受けて実施した事業で、大学、企業、研究機関計8機関が参画し、昨年度から研究開発に取り組んできた。

 公開した装置は、乾燥イカの加熱(焼き)と圧延の2工程を同時にできる「イカ珍味加工用のローラー式通電圧延加熱装置」と、松前漬けなど水産食品の殺菌、減菌をする「通電パイプ式連続加熱殺菌装置」。

 イカ珍味加工は、イカの胴肉を乾燥させた「ダルマ」と呼ばれる中間原料を加工して裂きイカなどを製造する。一般的に加熱と圧延を別々の工程で行うが、開発した装置では圧延用のローラーが電極の機能を果たし、2工程同時にできるようにした。

 一方、パイプ式の殺菌処理装置は、連続的にパイプに松前漬けなどを送りこみ、1分以内で加熱殺菌する。各事業所とも水産加工品の殺菌処理に苦慮していて、殺菌には高温度で長時間の加熱が必要となるため、うま味など品質にも影響を及ぼす。装置では通電加熱技術でその悩みを解消した。

 公開では、同振興財団の吉岡武也主任研究員とフロンティアエンジニアリング(東京)の星野貴常務がそれぞれ装置の性能や通電加熱の利点などを説明。実際に実演用の装置を使い、ダルマの加熱や松前漬けの殺菌消毒を行った。

 星野常務と水産大学校の福田裕・特任教授は「通電加熱は熱効率も良く、栄養成分や品質を保ったまま加熱や殺菌処理ができる。コストや時間のロスを軽減させられる」とメリットを強調した。(鈴木 潤)



◎電子書籍「唄語りで綴(つづ)る、昭和の江差」発売

 江差町の録音制作会社「H・Kサービス」(松村隆代表)と、森町の企画デザイン会社「ケイアンドエヌ」(西山代四男社長)が、写真と唄(うた)、語りで昭和の江差を伝える電子書籍「唄語りで綴(つづ)る、昭和の江差」を発売した。人々の活気で息づく古き良き時代の漁師町を、哀愁ある江差追分などで紹介しており、関係者は「今では見ることができない江差の風俗や建物、生活を、一流の写真と唄で味わってもらえれば」と話している。

 戦後間もない1955年から、江差の街並みを撮り続けている松村さんが、後世にその素晴らしさを伝えようとケイアンドエヌに持ちかけ、企画が実現。電子書籍には松村さんの写真40点と解説文に加え、江差追分上席師匠の青坂満さんによる唄と語りが収録されている。

 電子書籍は92ページ。「イカ割きの浜」「津花の浜」「江戸文化のあかし」など7項目に大別され、江戸時代の名残を残す土蔵造りの家並みや、一家でスルメイカ作りに励む早朝の浜辺など、松村さんがとらえた風情あるモノクロ写真が並ぶ。各項目で「江差追分」「網越し切り声」「江差口説」など青坂さんによる唄があり、昭和の余情を満喫することができる。

 松村さんは「北前船がやって来た江差は道内で唯一独特の文化をはぐくんできたまち。江差追分の文化を維持、発展させる意味でも良い仕上がりになったのでは」。ケイアンドエヌの棟方正康営業部長(53)は「デジタル化することで地方の財産を後世に伝えることができた。珍しい音と写真のコラボレーションを、パソコンでぜひ楽しんでほしい」と呼び掛けている。

 函館市地域交流まちづくりセンター(末広町)で6日まで松村さんの写真展が開かれており、電子書籍は同センターや市内美原の加藤栄好堂で販売中。インターネットでも購入できる。1枚1890円。問い合わせは棟方さんTEL090-2694-2498。 (長内 健)



◎函館市議会、議案10件可決し閉会

 函館市議会第3回定例会は30日、本会議を再開。本年度一般会計補正予算など議案10件を原案通り可決、昨年度の各会計決算のうち15件を認定した一方、市の事務処理ミスで多額の欠損金が生じた介護保険事業特別会計決算を不認定とし、閉会した。

 介護保険事業特別会計決算は、国からの交付金が約1億6000万円不足する事態となり、採決では共産党と竹花郁子氏(無所属)の計5人の賛成にとどまった。西尾正範市長は「この結果を真しに受け止め、今後の行政運営に努力したい」と述べた。

 一般会計は2億5596万円を増額補正し、総額を1289億671万円とする。新型と季節性を混合したインフルエンザワクチンの接種費を無料とし、1億9542万円を計上したほか、緊急雇用創出事業費として3154万円を付け、3カ月間で32人の雇用を生み出す。本会議では丸尾隆子氏(共産党)が、市立保育所条例の一部改正にかかわり、湯川、深堀保育園の民営化に反対する討論を行ったが、賛成多数で可決された。

 可決された議案はこのほか、磨光小学校と木直小学校を統合し、来年4月から磨光小に統合する市学校設置条例の一部改正など。

 陳情は「子宮頸(けい)がん予防のワクチン接種助成を求める」など7件を採択。人事案件では教育委員会委員に河村祥史氏(56)、固定資産評価委員会委員に上田昌昭氏(66)の選任に同意した。両氏はいずれも再任。(千葉卓陽)


◎江差高生が観光ガイドに、養成事業スタート

 【江差】江差観光コンベンション協会(打越東亜夫会長)は、町内の高校生を対象にした観光ボランティアガイドの養成事業をスタートさせた。本年度は江差高校(館山昭校長)の生徒4人が参加。29日には町内の姥神大神宮で、初めての実地研修会が開かれた。

 町内では、江差観光ボランティアガイド協会が、道内外から訪れる観光客の要望に応じてガイド活動を展開している。地元の高校生に町内の歴史や文化を広く知ってもらいながら、観光ガイドを務めることができる若手の人材を育成しようと、コンベンション協会が新たにガイド養成事業に乗り出した。

 ボランティア活動を通じた、地域への貢献活動を重視する江差高は、同協会の取り組みに賛同。本年度は3年生と2年生のそれぞれ2人が参加した。初めての実地研修となった29日は、町教委の宮原浩学芸員が講師を務め、370年近い歴史がある姥神大神宮渡御祭の歴史などを熱心に学んだ。

 打越会長は「高校生に江差の歴史や文化に関心を持ってもらうきっかけになれば。地元の若者がガイドを務めることで観光の魅力化にもつながる。養成事業を継続的に行うことで、若い人たちにも観光ボランティアガイドのすそ野を広げていきたい」としている。(松浦 純)


◎福島町長選、佐藤前町議が出馬へ

 【福島】前福島町議の佐藤卓也氏(48)が30日、任期満了に伴う町長選(来年1月11日告示、16日投開票)に出馬する意向を明らかにした。16日に開く後援会の発会式で支持者を前に正式表明する。町長選に出馬の意向を示したのは、現職の村田駿氏に続いて2人目。1991年以来20年ぶりに選挙戦となることが確実となった。

 佐藤氏は函館新聞の取材に対し、「議員を辞職してから町民と対話を重ねてきた。町民はまちの将来に危機感を持っているのに、行政は危機感を持っていない。行政の中に入り、変えていきたい」と出馬の動機を述べた。

 佐藤氏は「人口が減少する厳しい状況の中、少子化対策と雇用の場を創出することが最大のテーマ。また、地域主権の時代に向け、住民と行政、議会の新しい関係、仕組みづくりを行いたい」と決意を語った。政党からの推薦などは受けず草の根運動を展開し、支持を広げるとしている。

 佐藤氏は61年、同町生まれ。中央大学大学院修了後、会社員を経て町内で学習塾を開設。2007年の町議選で初当選。今年6月に辞職している。(松宮一郎)