2010年10月13日 (水) 掲載

◎日魯創業者・堤、平塚さん親族来函

 東京在往で、日魯漁業創業者の堤清六氏の孫、澤田正子さん(80)や、同じく創業者の平塚常次郎氏の親族が12日、函館市を訪れ、市内上湯川町の高穂神社(澤口廣宮司)の社務所などを巡った。同社務所は、平塚氏の養女・千鶴子さん(96)=東京在往=が住んでいた旧家を解体した木材を利用し、昨年10月、ほぼ正確に移設復元したもので、澤田さんらは「子どものころの記憶がよみがえった。このように利用していただき、うれしい限り」と喜んでいた。

 平塚氏の妹の孫で、ニチロ会(日魯のOB会)の加藤清郎会長(76)=函館在往=が今年1月、東京で開かれた堤、平塚家親族の集まりで同社務所を紹介したところ、十数人から「ぜひ見てみたい」と反響があり、訪問が決定。高齢で移動が厳しいなどの事情で、澤田さんら6人が来函した。14日まで称名寺(船見町)にある堤氏の碑など、日魯漁業ゆかりの地に足を運ぶ。

 澤口宮司によると、千鶴子さんが住んでいた建物は、150年以上前に松前町で建てられた武家とみられ、後に同町内の漁師が使用、1919(大正8)年に堤氏が購入し、函館市湯川町に移築。千鶴子さんが東京へ行き、住人が居なくなり、2004年に取り壊されていた。社務所は昨年、同神社の創建30周年を記念して作られた。

 この日は、函館在往の親族も顔をそろえ、計10人が集まった。澤口宮司(59)は「神道の理念はよみがえることにあり、社務所建設時には旧家などの再現を望んでいた。宮大工から平塚さんの家を紹介され、本当にありがたかった」と話し、現在の建物を説明。澤田さんは戦後のころまで、夏休みを利用して訪れ、今回は約65年ぶりに懐かしい建物に再会したという。「さまざまな縁があり、神社の社務所に生まれ変わり良かった。大広間で絵や習字のけいこに励んでいたことや、2階から見ていた庭のツツジはとてもきれいだった」と笑顔を見せていた。

 澤口宮司は澤田さんに、「大切に保存、活用し、後世に伝えていきます」と話していた。(山崎純一)



◎函館市文化賞に、島崎さん、渋谷さん、野又さん

 本年度の函館市文化賞に、芸術(芸能)分野から函館ダンスアカデミー代表の島崎啓子さん(65)=七飯町上藤城、科学(人文科学)分野から函館高専名誉教授の渋谷道夫さん(73)=函館市榎本町、野又学園理事長の野又肇さん(70)=同市柏木町=が選ばれた。いずれも長年にわたる各分野での活躍や教育活動などが評価された。表彰式は11月3日午前11時から、市民会館小ホールで開かれる。

 同賞は市文化賞審議会(座長・西尾正範市長)が審議し、市の芸術や文化の発展に寄与した個人・団体に贈られる。本年度は団体の該当はなかった。

 島崎さんは東京や米国でジャズダンスやクラシックバレエを学んだ後、1982年に函館で初めてのジャズダンススタジオを開講。全国でも珍しい市民手づくりの「函館ミュージカル劇場」の設立を進めるなど活躍し、2003年からは市文化団体協議会の会長も務めた。

 渋谷さんは地域の民俗学に関する著書を4冊、共著を3冊出版したほか、1974年から現在に至るまで、市文化財保護審議会の委員を務め、文化財保護政策の推進に大きく貢献したことが評価された。台湾、韓国、中国の博物館との学術交流も積極的に進めている。

 野又さんは1976年に野又学園理事長に就任。高等教育機関から幼児教育までの総合学園の人材育成に尽力し、地域の私学振興に貢献した。また、函館方面本部公安委員会委員長や函館保護司選考委員など数々の公職も務め、安全・安心なまちづくりの推進に努めた。

 受賞の知らせを受け、島崎さんは「ジャズダンスが認められてうれしい。アカデミーのスタッフ、生徒や卒業生ら多くの人々に支援していただいたおかげ」、渋谷さんは「文化財の保護と啓蒙活動を長くやってきたことを評価いただいたと受け止めている。賞を汚さぬよう精進していきたい」。野又さんは「大変光栄に思う。今まで真面目に職務に専念してきたが、1人では何もできない。皆さんの協力があって仕事をすることができた」と話している。

 受賞者は本年度の3人を含め、個人138人、16団体に上る。(千葉卓陽)



◎畜産パッケージセンター稼働へ

 昨年11月に業務提携した食品スーパーの魚長(函館市西桔梗町589の54)と、道内スーパー大手のコープ札幌(札幌)は、13日から肉類などパック商品を生産する「畜産パッケージセンター」(同589の279)を稼働させる。これによって両社による商品仕入れや配送の統一化が進み、大きなコスト削減が期待される。

 同センターは、両社の協同出資会社であるドリームファクトリー(佐藤健二社長)が、コープの所有していた建物を約1億円かけて改装。約600平方メートルの広さで、食肉のパック詰めなどを行う。当初は魚長3店舗、コープ3店舗のみが実験店舗として出荷の対象としており、来年7月までに函館地区全31店舗へ対象を拡大する予定。全店舗対応時の生産規模は1日平均1万7500パックで年間出荷金額は17億8200万円を想定している。

 これまで各店舗内で行っていた作業を集中化することで生産規模の拡大や店舗作業の削減が図られると同時に、集中管理よる食品の安全性や品質向上にも期待がかかる。

 このほか、畜産・水産物、日配品、惣菜・米飯類に関しても13日から物流業務の統合を本格化させる。農産物に関しては両社が独自の集荷・振り分け体勢をとっているため準備が遅れているが、こちらも来年以降の統一化を目指しいきたいとしている。(小川俊之)


◎厚沢部地区町民プール待望のオープン

 【厚沢部】厚沢部地区町民プール(新町115)のオープンを祝う記念セレモニーが11日に行われた。新しいプールは、全国的にも珍しい、カラマツや道南スギなどの地場産材をふんだんに活用した木造建築。豊かな森林に恵まれ林業のマチとして栄えた厚沢部ならではの施設になった。

 式典では、渋田正己町長、細畑利治町議会議長、高橋則克桧山振興局長らがテープカットを行いオープンを祝った。渋田町長は「町民待望のプールがいよいよオープンした。町の中心部にあり町民誰もが利用できる」、細畑議長は「森林が8割を占める厚沢部町の施設として誇りに思う」と述べた。

 施設見学会で参加者は、赤みを帯びた独特の風合いがあるカラマツ材で作られた建物に目を見張った。プールは木造1階。床面積は約918平方メートル。カラマツをなどの地場産材を集成材に加工して柱や梁(はり)に活用した。25メートルコースを5レーンのほか歩行用や幼児用のプールも設置。総事業費は2億9505万円。このうち1億3085万円は、木材業界への支援を盛り込んだ、道の森林整備加速化・林業再生基金を活用した。

 この日は、1984年のロサンゼルス五輪と88年のソウル五輪の水泳代表選手で、スポーツコンサルタントの長崎宏子さんを講師に迎え、小中学生を対象とした水泳教室も開催。泳ぎ初めでは、長崎さんと子供たちが元気よくプールに飛び込み、待望のオープンを喜んだ。長崎さんは「私も小学校6年生からプールとともに生きてきた。このプールで皆さんが健康で生き生きとした生活を過ごして下さい」と話した。

 プールは5月から10月まで利用できる。小中学生の水泳競技をはじめ、町民の健康づくりにも活用する方針。町は新年度に向けて健康講座などの開設を検討している。(松浦 純)



◎道縦貫道落部—森間公開 鷲ノ木遺跡地下トンネルも

 【森、八雲】来秋に開通予定の道縦貫自動車道(道央自動車道)落部—森間(20・2キロ)の工事状況を伝える報道公開が12日、行われた。鷲ノ木遺跡の地下トンネル(今年3月完成)や本格化した舗装工事の様子についてで、関係者は「地域の協力が後押しになり、工事は順調に進んでいる」と説明した。

 東日本高速道路道支社函館工事事務所の石原基嗣所長らが案内した。森町鷲ノ木にある道内最大級の環状列石(ストーンサークル)の地下トンネルは、全長96メートルのうち遺跡部分は47メートル。工事担当者は「遺跡がずれないように頑丈な土台を作り、人力などで慎重に掘削し、箱型コンクリートをジャッキで少しずつ押し込み完成した」と紹介した。

 舗装工事は、八雲町東野の落部インターチェンジ近くで5日、舗装工事用プラントが稼働し、本格化。一日に最大1000トンを生産し、噴火湾のホタテ貝粉末を利用して排水性と耐久性に優れた高機能舗装が採用されている。

 環境対策では、エゾシカが防護柵を越えて入り込んだ際の脱出誘導口や、オオワシなど猛きん類の自動車衝突死を避けるポールなどが設置される。また、鷲ノ木トンネルの照明には、発光ダイオード(LED)が使われる。

 石原所長は「一日でも早く全面開通できるよう、安全に留意して工事に臨みたい」と述べた。同社は引き続き、残りの森—大沼間(9・7キロ)の2012年度開通を急ぐ。(田中陽介)