2010年10月19日 (火) 掲載

◎函トンネル長さ世界2位に/関係者ら「技術は今も世界一=v

 【福島】スイス南部のアルプス山脈に全長約57キロの「ゴッタルドトンネル」が貫通し、青函トンネル(53・85キロ)は1988年の開通から22年間守り続けてきた「世界最長」の座を明け渡すことになった。トンネルが走る福島町や入り口がある知内町の関係者らは「世界一ではなくなるのは少し残念」と複雑な表情を見せる。その一方で、元トンネルマンは「技術の進歩もあるが、陸上と海底では工事の難易度が違う。青函トンネルに駆使した技術は、今でも世界一=vと胸を張る。

 「工事は苦難の歴史。坑内は40度、湿度も90%あり、大変だった」。町出身で着工から貫通までの約20年間、工事に携わった元トンネルマンの菊地謹一さん(72)は当時を振り返る。

 菊地さんは、掘削機械の操作や修理、取り扱いの指導にあたった。「世紀の大プロジェクト」と呼ばれた工事は、水や柔らかい地盤との戦いの連続。1976年には坑内に水が吹き出すアクシデントも発生した。「これ以上掘ることができるのか不安だった」という。

 日本全国から作業員が集まった現場でもあった。「苦労も多かったが、作業員は仕事に誇りを持ち、掘った。すばらしい現場だった。先進導坑(調査坑)が貫通した時の喜びは、何とも言えない」。

 現在は町役場の施設管理をするかたわら、ボランティアで青函トンネル記念館で観光ガイドを行い、観光客に工事の歴史を伝えている。「北海道新幹線が5年後に開通するが、その時は一番列車に乗るのが夢」と話している。

 町が運営する町三岳の青函トンネル記念館では、展示物に「世界一」と表記されている。町産業課では「修正できるものであれば、すぐに対応したい」としている。「幾多の苦難を乗り越え完成させたトンネル。誇りあるトンネルということに変わりはない」と語った。

 知内町湯の里のトンネル入り口近くには町観光協会が、列車や写真愛好家のためにトンネル撮影台を設置している。看板には「世界一長いトンネル」とある。観光協会では「2位になるのは残念。表記を変更するか今後協議する。PRの方法も考え直さなければならないかもしれない」と話している。(松宮一郎)



◎23、24日函館フェア

 台湾中部・彰化県のスーパーマーケットが、函館の特産品を集めて今年から実施している「函館フェア」が23、24日に開かれることが決まった。1、7月に続き3度目の開催で、今回は菓子や乳製品、水産加工品を販売して現地の消費動向を探る。

 函館フェアは、同県内で店舗を展開する高級日本食スーパー「裕毛屋」が主催。市内中小企業で組織する函館海外市場販促振興会(HOMA、田口修会長)と函館市が昨年、貿易振興策の一環として共同で同県を訪問し、現地のバイヤーを対象に商談会を行った際、県や同スーパー側と接点を持ったことで開催に至った。

 今回はHOMA参加企業のうち、昭和製菓、函館酪農公社、エビスパックの3社が参加。昭和製菓はタルトやケーキ、酪農公社はアイスクリーム、ヨーグルト、エビスパックはイカ飯などの水産加工品をそれぞれ販売する。

 台湾では日本製品、とりわけ北海道の産品がブランドとして認知されている。フェアは現地の旧正月に当たり、購買意欲が活発になる来年1月にも開催が決まり、函館側が希望していた継続開催が実現した形となる。

 地元企業の貿易振興に取り組む函館市は、地元企業が台湾との接点を持ち続けることが第一とし、長期的に支援を継続していく考え。市経済部は「現地との接点はできており、確立させるには3年程度が必要。函館をPRするツールの提供など、側面支援を続けていきたい」と話している。(千葉卓陽)



◎函館市議選公募/民主・応募者1人にとどまる

 来年4月の統一地方選に向け、民主党道8区総支部(逢坂誠二代表)と同党函館支部(斉藤博代表)が実施した函館市議選の候補者公募が15日で締め切られ、応募者は函館市内の60代の男性1人だった。同総支部は「初の試みで期待していただけに、もう少し応募があれば良かった」としている。

 同総支部によると、9月26日から募集を開始し、応募要項などを党員や党員サポーターら約1000人に配布。今月15日までの間に、応募書類などに関する電話での問い合わせは同総支部に5件ほど寄せられていたが、実際に応募があったのは1人にとどまった。

 同党では公募で複数の新人候補を擁立する予定だったが、同総支部の道畑克雄幹事長は「現在の仕事と兼職できない場合もあり、思った以上に少なかった。人材確保は今後も続く永遠の課題」とする。今のところ、二次募集などの予定はないという。

 函館市議会は来春から現在の定数38から30に削減される。民主党系の会派「民主・市民ネット」は現在9人在籍するが、函館支部は来年の市議選で新定数の3分の1に当たる10人以上の当選を目指していて、「公募者の選考と同時進行で、公募以外の新人の公認・推薦候補も最終的には今月中をめどに決めたい」としている。(森健太郎)


◎函館地区平和集会/中山千夏さんが9条の堅持訴える

 憲法9条について考える「10・17函館地区平和集会」が17日、函館国際ホテル(函館市大手町5)で開かれた。作家で元参議院議員の中山千夏さんが基調講演し、参加者は平和憲法の重要性について再確認した。

 平和集会は憲法9条—世界へ未来へ函館連絡会(略称=函館9条連)が毎年10月に実施。この日は市民ら約200人が参加した。

 基調講演をした中山さんは、歌手やテレビタレントとしてマルチな活躍で人気を集めた。1977年に市民の政治参加を目指した政治団体「革新自由連合」の結成に参加し代表の一人となり、80年に参議院に初当選し1期6年務めた。現在は著作活動に専念しながら、死刑廃止運動などの市民活動を続けている。

 中山さんは議員時代を振り返り「当時は国会内における差別が激しく、私のような新人タレント議員はベテラン議員から相手にされなかった。議員の仕事自体はやりがいがあったが、2度とあの場所には戻りたくない」と告白。自身が政治活動にかかわるきっかけとなった女性差別撤廃運動については「現在も伝統という名の下に、さまざまな差別が残されている。これからも女性の地位向上のために戦っていきたい」と強調した。

 憲法9条については「国家が自分たちに都合よく解釈し、戦争の正当化を行った場合、個々がしっかりと意識を持って正していかなければいけない」と平和憲法の堅持を訴えた。(小川俊之)



◎函館ひまわりの会に社会貢献者表彰

 障害児らのサークル「函館ひまわりの会」(藤井喜彦代表)が、社会貢献支援財団(東京)の本年度の社会貢献者表彰を受けることが決まった。藤井代表(75)は「父母や支援していただいた団体の協力があってここまで続けることができた」と受賞を喜んでいる。

 社会の各分野で顕著な功績を挙げながら報われる機会の少ない個人や団体を対象に1971年から表彰しており、昨年までの表彰は1万1800件以上に上る。今年は全国各地から寄せられた223件の推薦の中から「人命救助」「社会貢献」「特定分野」の計50件を選定した。

 ひまわりの会は1986年、当時函館凌雲中学校の特別支援学級の教員だった藤井代表や趣旨に賛同した父母で発足。教え子を大沼1周(14キロ)の全校マラソンで完走させたいと、五稜郭公園での早朝ランニングを始めたのがきっかけで、今も活動の柱として継続している。マラソンの公式大会にも出場し、ヨットやカヌー、スキーなども行い、心と体を鍛えている。

 今年25年目を迎え、現在、会には小学生から20代まで70人ほどが入会。中にはパラリンピックの陸上に出場した会員もおり、先ごろ行われた函館ハーフマラソン大会にも18歳—29歳の部に8人が出場し、全員完走した。

 活動を行うごとに会報を発行し、このほど327号を出したばかり。

 藤井代表は「これからも積極的に地域のマラソン大会に参加し、たくさんの人とふれ合いながら交流の輪を広げたい」と話している。(鈴木 潤)