2010年10月23日 (土) 掲載

◎正月の準備着々 ダイコン寒干し

 朝夕の寒さが増す中、各地で年末の食卓を飾る漬物用ダイコンの寒干しが行われている。軒先につるされる光景は秋の風物詩で、「もうすぐで正月だ」と年越しの準備スタートも告げている。

 函館市南茅部地域の安浦町108のスーパー「ライフ えびや」では20日、今年初めて300本を寒干し。秋の陽光と潮風を浴びて、しなやかに“身を引き締める”。

 店長の蛯谷隆さん(62)は「身が直角に曲がるくらいまで2週間干す。寒くなればなるほど、ダイコンの味も良くなる。正月にタクアンとカボチャ漬けを食べるのが楽しみだ」と笑顔だった。(田中陽介)



◎老舗がまた…函館温泉ホテル来月閉館 利用者減響く

 大館観光(函館市昭和3、橋本範行社長)が運営する宿泊施設「函館温泉ホテル」(函館市大森町3)が11月末で閉館することが分かった。源泉かけ流しの温泉と、津軽海峡を一望できる眺望で人気を集めたが、長期的な不況と市内の宿泊施設の増加の影響で客数はピークから半減。老朽化した建物の改修が必要とされることから、閉館を決断した。同社は今後、売却先を募る。

 同ホテルは1988年に開業。91年には新館を増築し、客室は合わせて81室。国内外の団体旅行者を中心に宿泊客を受け入れるとともに、日帰りの入浴の利用も多かった。しかし、ここ数年は函館駅前地域や本町・五稜郭地域に本州資本のホテルが続々と開業した影響で利用者は減少。また、建物の大規模な改修が必要とされることから11月30日に営業を終了することになった。

 同社は一時、函館駅前に「ホテルオーシャン」と「ホテル第2オーシャン」を運営していたが、いずれもすでに売却済み。今回の函館温泉ホテルの閉館でホテル業からは完全に撤退する。橋本社長は「利用者の減少に加え、客単価の低下も大きく響いた」と話す。  同社は、グループ会社が健康ランド「漢方励明薬湯」(同昭和3)を経営するほか、旭川市でスーパー銭湯を運営している。(小川俊之)



◎戸井地域審議会 青少年会館耐震改修へ

 函館市戸井地域審議会(尾関忠義会長)の本年度第2回会合が21日、市戸井支所で開かれた。市は来年度の地域別事業計画案を示し、老朽化が進んでいる戸井青少年会館の耐震改修に取り組む方針を明らかにした。

 計画案は合併建設計画などをもとに、来年度想定される事業をまとめた。大半は継続事業で、全地域該当分では漁業後継者育成対策、漁業用機械購入資金の融資などに取り組むとした。戸井地域では青少年会館の耐震改修のほか、戸井漁港の護岸かさ上げなど18項目を盛り込んだ。

 委員からは「コミュニティセンターの建設はどうなっているのか」と質問が上がり、市側は「合併建設計画での優先度は高かったが、財政面などで計画策定時と状況が変わっている。地域の利用実態も把握しながら進めたい」とした。

 市はまた、旧4町村地域の今後のまちづくりや公共交通に関して説明。水産業の振興や地域性の違いに配慮したまちづくりを進めるとしたほか、4地域を束ねる「地区長」の導入に関しては「今後の状況を見ながら、将来的な検討課題としていくことが望ましい」との表現にとどまった。

 公共交通面では地域福祉バス、スクールバスなどの再編を検討する一方、旧市域で実施している高齢者の交通料金助成について、旧市域と4地域の同一制度化の検討や、4地域に導入した場合の試算を行うとした。(千葉卓陽)


◎函工高定時制在校生卒業生4人が国家試験に合格

 函館工業高校定時制(青木一明校長、生徒114人)の在校生2人と卒業生2人が、本年度行われた国家試験「第二種電気工事」に合格した。約半年にわたり、同校が始業前に実施した講習で勉強してきた結果。生徒らは「希望の進路につなげたい」などと喜んでいる。

 本年度、同校からは卒業生を含めて9人が受検。うち在校生は増田大樹さん(4年生)と鈴木一歩さん(3年生)、卒業生は吉田新さん(19)と1985年度卒業生の合わせて4人が合格した。

 受検は任意で、増田さんは決定した進路を見据えて受けた。住宅の電気工事を手掛ける会社への就職を決め、「これからは仕事を精いっぱい頑張ります」と決意した。

 同校から初めて3年生で合格した鈴木さんは、希望の就職に生かしたいとの気持ちで受検を決めた。「筆記試験対策でたくさんのことを覚えるのが難しかった」が、現在は一種の同試験に挑戦中で、筆記試験の結果を待っている。

 昨年度卒業した吉田さんは、在校中は同級生の中でただ一人、この試験への合格を果たせなかった。仕事をしながらの受検勉強は苦労したが、「やっとみんなと同じになった」とほっとした表情を見せる。

 本年度の全国の合格率は、1次(筆記)は59.8%、2次(実技)は73.0%。講習で中心となって指導してきた新居拓司教諭は「覚えることが多い中、途中で挫折した生徒もいた」と振り返り、「最後まで食らいついてやり遂げてくれたことは感無量」と頑張りをたたえる。(小泉まや)



◎ドングリ3万個ずらり 宮脇名誉教授が育苗指導

 【上ノ国】日本海沿岸の豊かな森づくりに活用する「ポット苗づくり」の講習会が21日、世界的な生態学者の宮脇昭・横浜国大名誉教授を講師に迎えて、上ノ国町農業指導センターで開かれた。地域住民や桧山振興局の職員ら約150人が、3万個ものドングリやトチの実を宮脇氏が開発した新型ポットに植えた。

 上ノ国町日本海グリーンベルト構想推進協議会(花田英一会長)の主催。町は2007年から、日本海沿岸の森林復活を目指し、カシワの苗木や種子(ドングリ)を20年計画で植える活動に取り組んでいる。構想の提唱者である工藤昇町長は「本物の植樹を学んで後世に伝える森づくりを進めてほしい」と話した。

 宮脇さんは、国際生態学会会長などを経て、1993年から地球環境戦略研究機関(神奈川県)の国際生態学センター長を務めている。ドイツで地域の環境に根差した強い樹木を選び、植樹や種まきを進め、本物の森林の回復を図る潜在自然植生の考え方を学び、東南アジアの熱帯雨林再生プロジェクトをはじめ、世界1700カ所で5000万本もの植樹を行った実績がある。

 宮脇さんは新たに開発ばかりという育苗ポットの使い方を説明。ドングリに酸素や水分を供給しやすいよう設計しており、従来のポットより根の発育が進み、苗の成長を早めるほか、荒廃した土地でも根付きが良くなるという。

 同日は町内で採取した3万個ものドングリとトチの実を用意。1万個の新型ポットに腐葉土を山盛りに詰めて3個ほどの種子を入れた。表面には稲ワラをかけて種子や新芽を保護する。ドングリは来春に芽吹きを迎え、来秋に行う植樹活動に生かす予定だ。

 宮脇さんは「ポットは世界で初めて使うものだ。皆さんが新しい森づくりの主役になった。上ノ国から全世界に発信してほしい」と力説した。海外からとんぼ返りで講習会に駆け付けた宮脇さんは、22日には再び出国してタイや中国で植樹活動に取り組むという。(松浦 純)