2010年10月26日 (火) 掲載

◎摩周丸の「飾り毛布」当時の形で展示

 函館市青函連絡船記念館摩周丸(若松町)で、これまでオブジェとして人気を呼んでいた「飾り毛布」が、船室係OBの手により花のような形をした「大輪」として制作され、展示が始まった。運航当時の毛布を使用し、寝台を再現したケース内に本物の姿と技を伝える形で披露。来場者からは「柔らかく豪華な印象、職人の技を感じさせる」と好評だ。

 飾り毛布は、青函連絡船では1908(明治41)年から昭和30年代まで、1等、2等の寝室などで行われた。船室係が制作し、一期一会の精神で客をもてなしていた。64(昭和39)年、津軽丸就航時、船が折り返す間の作業時間が短くなり、姿を消した。

 同館を管理・運営するNPO法人「語りつぐ青函連絡船の会」が、「展示物は本物で伝えたい。作業を担当していた人も高齢化が進み、教えてもらえるうちに受け継ぎたい」と企画。連絡船OBなどから船室担当者を探し、市内在往で元連絡船船客長、菊地精一さん(81)に依頼。菊地さんも「摩周丸を残そうと頑張っている人のためになるのなら」と引き受けた。

 一般的なシングルサイズで「JNR(日本国有鉄道)」のマークが入った毛布を見た菊地さんは、「昔を思い出した」と数十ある種類から形の崩れにくさなどから「大輪」を選んだ。展示ケースの中での作業で、動きにくさはあったものの、数分で完成させた。「45年以上ぶりだったが、体はしっかり覚えていた」と菊地さん。周りには菊地さんの仲間が仕上げた小さなサイズの14点も展示している。

 同会の白井朝子副理事長(59)は「前から、横から見ても芸術的に優れている形。まさに客をもてなすという精神から生まれた文化を感じてもらえれば」と話している。(山崎純一)



◎今夏の猛暑で海水温下がらず スケトウ漁期に遅れも

 【江差、乙部】今夏の猛暑の影響で桧山沿岸の日本海では、海面付近の海水温が20度前後と高い状態が続き、例年は11月上旬に始まるスケトウダラ漁も出漁時期の遅れが懸念されている。

 桧山沿岸では、例年11月上旬から、爾志(乙部町・八雲町熊石)、江差、上ノ国の3海区で、約60隻の漁船がスケトウダラ漁に出漁する。出漁日は爾志海区が11月3日前後、江差・上ノ国海区は5日前後となっていた。

 しかし、ここ数年は海水温の上昇傾向に伴い、スケトウダラの魚群が、はえ縄が届かない深さ500メートル前後の深海に潜ったままでいることが多くなり、解禁直後の11月上旬から12月上旬の漁期前半は、不漁の傾向が顕著になってきた。今季の出漁日は海水温を見ながらの最終判断となるが、桧山沿岸の海水温は猛暑の影響もあり20度前後で推移しており、11月中旬以降にずれ込む可能性が濃厚な気配となっている。

 台風や低気圧の通過で海が荒れ、海水がかき回されると水温も下がるが、今年は日本海に入った台風はゼロのまま。11月上旬までは穏やかな天候が続くと予想されている。海水温が高止まりの状態にあるため9月中旬には、乙部町で海面近くの定置網に入ったサケが水揚げ前に死んでしまうケースも相次いで発生。漁業関係者は「冷たい水を好むサケは、水温が高いと沖合いや深い海に逃げるが、網にかかり逃げられずに死んだらしい。こんな事は今までで初めてだ」と驚きの表情だ。

 桧山振興局によると2009年度、桧山沿岸のスケトウダラの漁獲量は3232トン(対前年比2・3%減)で、1993年以降では最低水準だった。年明け以降はほとんど水揚げがない地域もあり、1月上旬には漁を打ち切った漁業者も多かった。桧山沿岸の漁獲量は1993年度の1万7770トンをピークに減少。06年度は最盛期の半分に当たる5273トン、07年度は4932トン、08年度も3430トンと右肩下がりで落ち込みが続いている。(松浦 純)



◎豊かな自然願い植樹 中の沢小55人が体験学習

 函館中の沢小学校(三上清和校長、442人)の6年生55人が25日、函館市と七飯町の境を流れる蒜沢(にんにくざわ)川沿いで埴苗体験を行った。児童らはクワやシャベルを片手に自然とふれあい、元気いっぱいに活動した。

 週に3回行っている総合学習の授業の一環。NPO法人「北の森と川・環境ネットワーク」(影山欣一代表理事)の会員11人の協力で実施した。児童らは3年生の頃から同団体と交流があり、植樹のほかにも水辺の生き物観察など自然に関する体験学習を4年間行ってきた。今回は活動の集大成として、蒜沢(にんにくざわ)川沿いにキタコブシ25本とミズナラ20本の苗木を植えた。

 深さ30センチ、直径50センチの穴を掘り、根をおろして土を踏み固める。途中、ミミズなどの虫が地面から出てきて児童らが驚く場面もあったが、「この虫たちが土を耕してくれるんだ」と言いながら、手でつまんで根元におろしたりと、頼もしい一面を見せた。

 平野美沙希さん(12)は「土を掘るのに力がいる。石もゴロゴロ混ざっていて大変だった。横に伸びた根を傷つけないように、やさしく植えました」、宮崎浩司君(12)は「学校の花壇作りで土に触れることはあるが、本格的な植樹は初めて。仲間同士、いい思い出になる」と話していた。(堀内法子)


◎ロシア極東大留学生4人が表敬訪問

 本年度のロシア極東国立総合大学(ウラジオストク)の留学生4人が25日、函館市役所を表敬訪問した。小柏忠久副市長と懇談し、今後の抱負を語った。

 函館青年会議所、函館商工会議所青年部など6団体で組織する留学生支援実行委員会(二本柳慶一委員長)が、1997年から毎年協力している。4人は同大付属東洋学大学日本語学部の3、4年生で、21日に函館入りし、ホームステイをしながら日本語や日本文化を学んでいる。

 4人は小柏副市長にそれぞれ日本語で自己紹介。シラコラデュク・イリヤさん(21)は「大学で学んだことを生かし、将来は日本とロシアの懸け橋になりたい」、ナザーロワ・オクサーナさん(20)は「函館は本当にいい街。将来は通訳になりたい」などと話した。日本での生活について、「回転ずしがおいしかった」と話す留学生もいるなど、和やかに懇談した。

 小柏副市長は「これからますます交流していきたい。若い人に日本とロシアとのつながりを深めてもらいたい」と期待していた。一行は16日まで滞在する。(千葉卓陽)



◎どつく進水式 本年度5隻目

 函館どつく函館造船所(函館市弁天町20)で25日、本年度5隻目の新造船「OCEAN HARMONY(オーシャン・ハーモニー)」(約1万9850トン)の進水式が行われた。関係者や一般の見学者ら合わせて約500人が、新船の旅立ちを見守った。

 同船はシンガポール籍の木材兼ばら積み貨物船で、全長175・5メートル、幅29・4メートル、載貨重量3万1742トン。同社が独自で開発した通称「スーパーハンディ32」タイプとしては43隻目となる。

 進水式では、発注元の関係者らが見守る中、船体をつなぎとめていた支鋼などが合図とともに次々と外されると、船は一気に斜面を滑り降り着水。船首に置かれたくす玉も割られ、中から紙吹雪が華やかに舞い飛んだ。

 市内美原から訪れた70代の男性は、カメラを持参し式の様子を熱心に撮影。「迫力満点のシーンを収めることができた。次回もまた撮影したい」と興奮の様子だった。

 同船は内装工事などを済ませた後、12月上旬には船主へ引き渡される。同社は2013年度末まで、年間8隻の建造を計画し、次回の進水式は12月上旬を予定している。(小川俊之)