2010年10月27日 (水) 掲載

◎菅製作所、東京の企業と共同開発/熱伝導パイプ完成

 全国の先進企業の新技術と地元企業のものづくり技術とのビジネスマッチングを図る函館市の「函館産業・技術融合推進事業」で、真空装置研究開発の菅製作所(北斗市追分3、菅育正社長)が東京の半導体関連メーカーと共同開発した「熱伝導パイプ」が、事業化第1号の新製品として完成した。

 同事業は新技術の開発による地域経済の振興や新事業の創出、函館への企業誘致を目指す狙い。昨年の函館開港150周年記念の一環で始まり、菅製作所は函館で開かれた同事業の交流会を機に東京のアクセプター・テクノ(滝川裕弘社長)と出合い、約1年かけて製品開発を進めてきた。

 熱伝導パイプは、菅製作所の真空技術を活用し、二重構造のステンレス製の金属パイプ内を流れる特殊な溶液が気化する際の放出熱によって外部を温める仕組み。耐久性がありながら、従来製品よりも短時間で効率良く熱を伝えることができ、大幅な省エネ効果もあるという。

 完成した製品は太さ1.6センチ、長さ約1.5メートルで、技術的には400度からマイナス20度まで対応する。今後は屋根や道路の融雪、床暖房などさまざまな用途での活用が期待される。菅社長は「お互いの会社が持つ強みを生かしながら、ニーズがかみ合った商品ができた」と胸を張る。

 完成に伴い、市などは11月10日午後2時から、函館高専(戸倉町14)で新製品をお披露目し、商品化に向けた活用方法を探る検討会を開く。地元の企業や研究者が対象。参加希望者は同5日までに市工業振興課に申し込む。問い合わせは同課TEL0138-21-3314。(森健太郎)



◎松前高、函館美術館が協定締結へ/書道教育の充実で連携

 【松前】松前高校(石塚耕一校長、生徒188人)は、書道教育を充実させるため、道立函館美術館(中江修館長)と連携協定を締結する。11月30日に調印式を行う。松前町出身の書家、金子鴎亭(1906―2001年)らの作品を多数所蔵する同館の協力を得て、書道教育のレベルアップを図る。双方にとって「高(校)・(美術)館連携」は初めての取り組み。高校と美術館の新たな関係は各方面から注目を集めそうだ。また、調印式には日本を代表する書家、中野北溟氏(87)を招く予定。

 同校は魅力ある学校づくりを推進するため、地域について学ぶ「松前学」「国際教育」と並び、「書道」を教育の柱の一つに位置付けている。現在、1、2年生が必修科目として学んでいる。

 同美術館との連携によって、生徒の書道への学習意欲を高め、教員の資質や能力の向上を図ることが目的。また、「書のまちづくり」を目指す同町の活性化にもつなげる考え。連携内容の大枠は@生徒の美術館見学や学習会の開催A学芸員による出前授業B同町への移動美術館―などとしている。

 石塚校長は「生徒の意識を高め、署の力をつけることにつながる。また、『書のまち松前』をアピールすることにも役立つはず」と期待を込める。同館の柴勤副館長は「ともに書という共通項があるが、書を入口として、生徒に芸術全体に目を向けてもらうきっかけにしたい」と話している。

 調印式は11月30日午前10時から同校体育館で行う。札幌市在住の中野氏が訪れる。中野氏は金子鴎亭に師事。現在、鴎亭が創設した創玄書道会の会長を務めている。式には一般町民らも参加することができる(松宮一郎)



◎函館で初雪

 函館海洋気象台は26日、函館で初雪と、横津岳で初冠雪を観測したと発表した。函館の初雪は平年、昨年ともに7日早く、横津岳の初冠雪は平年より2日遅く、昨年より7日早かった。函館では夕方から冷え込みが厳しくなり、市民らは予想以上の寒さに顔がしびれた様子で帰路についていた。

 同気象台によると、同日の本道上空には強い寒気が入り、強い冬型の気圧配置となった。市内美原にある同気象台職員が午前9時半ごろ、初雪を確認した。横津岳は午後に入り、同気象台から冠雪が目視で確認された。  この日の道南は各地で最高気温が10度以下となり、11月上・中旬並みに冷え込んだ。日没後は一段と気温が低くなり、繁華街などでは、冬用のコートを着込んだサラリーマンらが寒さをこらえながら、バスや市電を待つ姿が見られた。

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 函館建設管理部は、積雪の恐れがあるとして、道道675号、函館市青柳町6番1(登山口ゲート)―函館山(つつじ山ゲート)の3.6キロ区間を26日午後2時から通行止めにした。規制解除日時は未定。


◎乙部漁港、屋根付きの岸壁完成へ

 【乙部】乙部漁港中央ふ頭で、2009年度から整備を進めている、上屋根を備えた衛生管理型岸壁が11月中旬にも完成する見通しになった。

 09年度には、漁港北側の岸壁に長さ56メートル、幅10メートルの屋根を建設。本年度は引き続き、南側の岸壁に長さ96bの屋根を整備してきた。いずれも内部には、水産物をカモメのふんから守る「防鳥ネット」を張るなど、衛生管理に配慮した構造。工事は11月中旬までに終わる見通し。漁港は日本海の爾志海区(乙部町・八雲町熊石)で、真冬のスケトウダラ漁を行う乙部船団の拠点港。今シーズンからは、荷揚げ作業の効率化や衛生管理のさらなる向上が期待されている。

 岸壁を覆う屋根が無かった同漁港では、荷揚げ作業を行う漁業者は、風雪やカモメのふんなどから、水産物を守るため苦労を続けてきた。町は2001年、漁港を管理する道に上屋根の整備を要望したが、道が提示した建設費は約3億4000万円に上った。

 建設には町の費用負担も伴うため、財政的な重荷となることを懸念した漁業者からは「身の丈にあった施設で十分だ」として、建設費の節約を求める異例の展開となり、町や町議会を挙げて、道や道議会に安価な工法の採用や費用対効果の検討を求めるなど、多額の予算を投じる公共工事のあり方に一石を投じた。

 道と地元関係者の粘り強い協議の結果、建設構想の浮上から8年が経過した09年に道と町がようやく合意。建設費の圧縮や軟弱な地盤に対応して、屋根の高さは他の漁港にある設備より低く設計。フォークリフトを使ったスケトウダラの荷揚げ作業に支障がない3.5メートルの高さとするなどの工夫を盛り込んだ。海水供給施設や舗装工事などの費用を含めた総事業費は約2億2999万円。当初の試算より1億1000万円も割安になった。国が1億3800万円、道は6133万円、町も3066万円を負担している。(松浦 純)



◎市ユニバーサルツーリズム推進協設立へ

 高齢者や、障害のある個人旅行者をサポートする体制の構築を進める「函館市ユニバーサルツーリズム推進協議会(仮称)」の設立準備会が25日、サン・リフレ函館で開かれた。事業目的や実施体制などについて話し合うとともに、今後のスケジュールとして本年度末に設立会議を開き、来年度から本格的な活動に取り組むことを確認した。

 ユニバーサルツーリズムとは、障害の有無や年齢、国籍などにとらわれず、誰が一緒に楽しく旅行を楽しむためのサポートサービス。函館では2008年度から、国交省による「バリアフリーボランティア実証実験」がスタート。09年からは函館バリアフリーボランティアプロジェクト実行委員会が事業を引き継ぎ、公共交通機関を中心に活動を行っている。同協議会では同実行委と連携しながら、さらにスムーズな移動支援のシステムづくりを目指していく。

 準備会には函館市、函館国際観光コンベンション協会、JR北海道函館支社、函館バス、函館高専、NPO法人スプリングボードユニティ21など12団体の委員のほか、オブザーバーとして北海道運輸局の関係者らが出席した。

 この日は日本福祉のまちづくり学会の秋山哲男副会長らもアドバイザーとして参加。国内外におけるさまざまな観光ユニバーサルデザインについて紹介するとともに、函館におけるバリアフリー化推進の必要性を訴えた。(小川俊之)