2010年11月10日 (水) 掲載

◎道新幹線、架線張り替え工事着々

 【知内】JR北海道は9日未明、2015年度の開業を目指す北海道新幹線用の架線張り替え工事の作業現場を公開した。在来線との供用区間のため、作業可能な時間は深夜の約3時間、1カ月のうち10―12回と限られる中、高い技術力を駆使して13年度中の工事完了に向けた作業を進めている。

 報道関係者に公開されたのは、知内町内の第1重内トンネル(813メートル)と第2重内トンネル(1218メートル)にまたがる上り線区間。作業は貨物列車通過後の午前零時半ごろから、線路を閉鎖し、電力供給をストップした中で行われた。

 この日は、新幹線に電力を供給する「トロリー線」を上部から支える「吊(ちょう)架線」約1.2キロの設置工事を行った。作業は「準備OK」の合図とともに、作業員約25人が8台の高所作業車に分かれて開始。約6bの高さにある現行の吊架線に滑車を取り付け、新しい銅製の吊架線をつなげたロープを通しながら、最後にトンネル天井の特殊な器具に仮止めした。

 JRによると、新しい吊架線は高速の新幹線に対応するため、現行(鉄製)よりも細くて硬く、衝撃に強い仕様。断面積が小さくなるため電気も通しやすいという。同社は新たな吊架線を通した翌日に位置を固定し、その次の日に古い線を外す作業を行う。作業時間が列車の通らない時間帯に限られるため、張り替えには計3日を要する。

 作業は今年4月から、青函トンネルを除く供用区間約28`で進められており、現在の進ちょく率は2割程度。JR北海道木古内新幹線工事事務所の松波摂哉所長(47)は「予定以上に進んでおり、(進ちょく率は)年内に3割に達する見通し」と話している。(千葉卓陽、森健太郎)



◎韓国・高陽市副市長が来函

 函館市と姉妹都市提携の協議を進めている韓国・高陽(コヤン)市の金仁圭(キム・インギュ)副市長(59)が9日、函館市を表敬訪問した。西尾正範市長との懇談の中で年内の提携調印に向け、12月23日か24日のいずれかに同市の崔星(チェ・ソン)市長(47)が来函し、市内で調印式を行いたいとの意向を示した。今後の事務作業を経て、今月中に正式決定する見通し。

 両市の姉妹都市提携は今年2、3月に両市議会が議決。高陽市長が6月の選挙で交代したことを受けて進展が遅れていたが、10月に谷沢広副市長らが同市を訪れ、年内の調印を要請。高陽側もこれに応じていた。

 懇談で金副市長は「今後は観光や医療に力を入れていきたい。両市は共通点も多く、観光の側面で一緒にやっていきたい」と切り出すと、西尾市長も「函館―ソウル線を生かし、観光やスポーツ、経済交流をしていきたい」などと応じていた。

 崔市長の来函は高陽側から提案があり、金副市長は「両市民にとって、いいクリスマスプレゼントになるのでは」と述べた。懇談は和やかな雰囲気で進められ、函館からはガゴメコンブ、高陽からは西尾市長の名前が入った卓上プレートを贈り合うなど交流を深めた。一行は11日まで滞在する。(千葉卓陽)



◎並行在来線問題調査特別委、国や道への要請活動報告

 【北斗】北斗市議会の並行在来線問題に関する調査特別委員会(蛎崎孝委員長)が9日、開かれた。高谷寿峰市長が並行在来線への財政支援を求め、国や道に対する要請活動の経過を報告。高谷市長は「高橋知事からは道がリーダーシップをとって取り組むと名言してもらった。今後も機会をみて、国や道に訴えていくことが、最終的に並行在来線の維持につながっていく」と述べた。

 中央要請活動は10月18日、高谷市長と小泉征男議長、木古内町の小林敏明副町長、竹田實議長が民主党副幹事長や国土交通大臣政務官らと会談。両市町の議会が可決した意見書と要望書を提出した。会談で津川祥吾政務官からは「なるべく早めに支援策を出すように努力したい」と返答があったという。

 また、高橋知事とは今月1日に、木古内町の大森伊佐緒町長らとともに会談。引き続き国に対しての要請活動を継続するよう依頼した。高橋知事は、札幌延伸が優先事項であるとしながらも、並行在来線が重要な問題であるとの認識を示し、道が主導的に取り組むことを明言したという。

 高谷市長は「道新幹線開業で経済効果という大きな恩恵があるが、並行在来線が犠牲になるのはおかしい。恩恵の光の一部を犠牲に回すことについて、これから声を大きくしていかなくてはならない」と述べた。また、要請活動に同席した小泉議長は「道がリーダーシップを執るといっても、財政の問題もある。今後の活動の在り方を考えなくてはならず、大変だと感じた」とした。(今井正一)


◎JR江差線実態調査、通学利用は敬遠傾向

 【北斗】JR江差線の利用は通学に不便?―。市は、JR江差線の通学利用に関する実態調査を実施し、函館の高校に通学する北斗市内の高校生は、夏場は自転車利用が多く、冬場はバス利用者の増加率が大きいことが明らかとなった。降車駅となる五稜郭や函館駅から各高校までの距離があることや乗り継ぎの不便さから、江差線の利用を敬遠する傾向がうかがえる。

 調査は、通学時の江差線利用状況や冬期間の変化について把握するため、高校生がいる1107世帯(高校生1203人)を対象に実施。959人から回答を得た。このうち、上磯地区から函館市内高校に通学する543人の交通手段について分析し、9日に開かれた市議会並行在来線問題に関する調査特別委員会で公表した。

 夏場の登校手段は、自転車が252人と最も多く、次いで江差線213人、バスが52人。冬期間は自転車利用がゼロとなるが、江差線利用者は79人増の292人だったのに対し、バス利用者は133人増の185人と夏場より3.6倍に増えた。

 江差線を利用しない理由として、夏、冬ともに「高校までが遠い」とする意見が半数近くを占め、次いで、「乗り継ぎが不便」とする意見が目立った。函館市内で降車後、高校までの移動手段が限られていることが背景にあると推察される。

 また、北斗市内の各駅から半径500b圏内の生徒の通学手段を分析すると、夏場は函館に近い地域ほど、公共交通の依存度が低く、冬場は江差線、バス合わせていずれの駅からも公共交通依存度が8割を超えるが、函館に近い地域ではバス利用度が高まる結果となった。

 特別委員会で各委員からは、自転車通学は経済的な理由も大きいとする意見や、通学生だけではなく、通勤利用や買い物などで利用する市民の調査も必要とする意見が出された。(今井正一)


◎函高専が「メガネ型夜景ビューアー」開発

 函館高専(岩熊敏夫校長)の専攻科学生は、函館夜景を360度楽しめる「メガネ型夜景ビューアー」を開発。函館山頂からの視界が悪い日でも、事前に撮影した画像を基にした昼と夜の眺望を楽しむことができる。9日、開発を依頼した函館ロープウェイの石井直樹社長に受け渡した。

 同校専攻科は、即戦力となる学生を育てる目的で、技術者の人材を活用して企業の研究課題に取り組むプログラムを行っている。今回は、石井社長が「遠くから夜景を楽しみに来てくれたのに、ガスなどで見えなかったら申し訳ない」と考えたことから、天候が悪くても夜景を楽しめる道具を考案した。

 同科2年の工藤雅嗣さんがグループリーダーとなり、橘直輝さん、小板紘幸さん、嶋田大和さん、水野寛子さんの5人で、昨年10月から取り組んだ。開発予算は30万円。機材は3軸角度センサーを搭載したメガネ型のモニターが、タッチパネル式の操作パソコンに接続されており、装着した人が見る方向によってモニターに映し出される映像が変化する。

 5人はメガネ型モニターにするなどの手法から考え、写真撮影のために何度も山頂に足を運び、苦労を重ねた。昼から夜の画像に切り替わったり、特に見たい部分を拡大する機能も付けた。

 受け渡しは山頂のレストランで行い、約20人の関係者を前に、学生が開発経緯や機能などについて説明。工藤さんは「いかになめらかに動作させるかが課題だった」と振り返り、今後の改善点として四季の変化を追加することや、メガネ部分のワイヤレス化などを挙げた。

 装着した石井社長は「臨場感が高い」と評価。素晴らしい研究の成果で大変ありがたく、今後もさまざまな形で協力し合いたい」と感謝を述べた。機材は今後、山頂のレストランで活用する予定。(小泉まや)