2010年11月14日 (日) 掲載

◎未来大生らがiPhone観光案内実証実験開始

 公立はこだて未来大の学生や卒業生らによる、多機能携帯端末「iPhone(アイフォーン)」を使った観光案内実証実験が13日、函館元町地区周辺で行われた。参加者は画面上の地図や観光情報に従って、歴史的名所や飲食店巡りを楽しんだ。

 同大ではこれまでもアイポッドや携帯電話などの端末を使った観光案内サービスの実験を行ってきたが、アイフォーンを活用するのは初めて。ソフトバンクから提供された20台のアイフォーンを使うと、観光名所24カ所の基本データと17カ所の動画コンテンツ、5カ所で利用できるクーポンが閲覧できるほか、GPS機能を活用して、目的地までスムーズに移動できる。

 アイフォーン配布場所の市地域交流まちづくりセンター(末広町4)には、午前9時の実験開始時に約15人の参加希望者が来場。スタッフから取り扱い方法の説明を受けた後、最初の訪問場所として旧相馬邸(元町33)に向かった。GPSを頼りに進むと約10分で現場に到着。参加者は画面上の案内を見ながら建物の様子を観察し、写真を撮影するなどして楽しんでいた。

 2年ぶりに函館を訪れたという東京在住の横川春菜さん(25)は「アイフォーンはガイドブックより軽くて便利。函館観光が楽しくなる」と話していた。

 実証実験は14日も午前9時から午後6時まで行われる、参加無料。希望者は同センターを直接訪れる。問い合わせはTEL080・4040・1050(山田さん)(小川俊之)



◎函館—新函館経営分離問題 高橋知事、JRに再考要請

 北海道新幹線の札幌延伸時に、JR北海道が函館駅—新函館駅(仮称)間17・9キロを並行在来線として経営分離する方針を示している問題で、13日までに、高橋はるみ知事がJRに対し、分離以外の案がないか再考するよう求めていたことが分かった。函館市が同区間の経営分離に不同意を表明しており、こう着状態が続けば札幌延伸に支障が生じるとの判断からとみられる。道が本格的に調整に乗り出したことに対し、函館の関係者からは驚きとともに、問題進展に期待する声が上がっている。

 関係者によると、高橋知事はJR北海道の中島尚俊社長と直接会談し、経営分離問題に関して「何かいい意見はないか」と相談。中島社長はその場で「苦慮している」と答えたという。

 新幹線の着工は沿線自治体の経営分離への同意が必要となるが、函館市は新幹線が市内を通らないことから、同区間が「並行在来線にはあたらない」として不同意を表明。1994年に木戸浦隆一市長と横路孝弘知事(ともに当時)との間で、同区間の交通アクセスに対し「道が責任を持って調整する」との確認書や覚書を交わしていた点から、函館サイドは道に調整を委ねる一方、経済界や町会連合会など「オール函館」体制で反発を強め、9月には11万1481筆の署名をJRに提出していた。

 国土交通省の整備新幹線問題検討会議は今年8月、札幌延伸の検討課題として@並行在来線の経営A在来線との共用区間での運行B最高設計速度の見直し—の3点を提示している。知事の動きは経営分離問題に進展が見られず、函館サイドの意思が固い中で、札幌延伸実現への事態打開を図ったものとみられる。

 西尾正範函館市長は取材に対し、今回の動きを正式に聞いていないとした上で「住民の意思を示してくれた署名活動が大きい。知事も相当重く受け止めていたと思う」と述べるとともに「JRに気持ち良く運行してもらうことが大事。JRと道、市とで協力関係を取れれば」と話す。

 函館商工会議所の松本栄一会頭は「道と市で覚書や確認書を交わした経緯から、道は責任を感じて行動をとるべきと思っていた。道が動いてくれれば、それに越したことはない」と、歓迎の意思を示している。(千葉卓陽)



◎磯波さん日展初入選 30歳、若さでの快挙

 東京の国立新美術館で12月5日まで開かれている「第42回日展」書部門で、函館恵山中の磯波理恵教諭(30)=号・水鈴=が初入選を果たした。30歳の若さで女性が日展に入賞するのは珍しく、磯波さんは「自分が選ばれるとは夢にも思わなかった。これからも挑戦していきたい」と喜んでいる。

 磯波さんは旧函館北高校に入学し、同校の鈴木孝徳教諭(号・大有)の指導の下、書を始めた。現在は生徒に指導する中で、札幌や東京で開かれる書道展に足を運ぶ。「書の線質を見て、作品の息づかいを感じることはとても勉強になる」と話す。

 今年春、所属する創玄書道会が静岡県熱海市で開いた研究会で修養し、7月に開かれた毎日書道展で、近代詩文で毎日賞を受賞。さらに8月に開かれた同研究会にも参加し、日展向けに伝統書(調和体)のけいこに励んだ。

 作品は「夜深き窓の外」。明治時代の詩人、土井晩翠の詩集から「夜深き窓の外 しばし雲間を洩れいでて〜」と続く文に挑戦。「明治のころの、しっとりと落ちついた言葉を選んだ。かな文字の空間を広く置き、文字の並びは単調にならないようにした」と話す。100—150枚をしたためたという。

 快挙に、創玄書道会などで活躍する函館の千葉軒岳さん(72)は「近代詩文、伝統書で受賞できることも素晴らしい」と努力をたたえる。磯波さんは「高校時代から函館のさまざまな先生の指導を受けられたおかげ。勉強し続けるため、これからも(日展に)臨んでいきたい」と意欲を新たにしている。

 今年の日展で函館からは、磯波のさんのほか、書で上山天遂さん、黒田仙雪さん、鈴木大有さんが、洋画で南巖衛さんがそれぞれ入選している。(山崎純一)


◎証拠改ざん事件で密室性批判 江川紹子さんが講演

 【北斗】ジャーナリスト、江川紹子さんの講演会「混迷する現代社会を想う」が13日、北斗市東前の市農業振興センターで開かれた。江川さんは大阪地検特捜部の証拠改ざん事件など社会問題化している事件を詳述しながら、メディア報道や世論の過熱化に警鐘を鳴らし、国民も冷静に判断していく大切さを説いた。

 北教組渡島支部の主催で、約180人が聴講した。

 江川さんはこのほど、大阪地検特捜部の事件を受けて設置された「検察の在り方検討会議」の委員に就任。講演では、同事件をはじめ過去に起きた冤罪事件などを解説しながら、検察の“ストーリーありき“の捜査手法や密室性、体質を批判。「倫理規定だけでは限界があり、制度として変えていく必要がある。検察の構図通りに自白を集める人が出世する人事評価システムを改めるべき」と語ったうえで「不正を暴いてほしいという世論の期待感やメディアの論調も検察にプレッシャーを与えている」とした。

 尖閣諸島での中国漁船の衝突映像が海上保安庁から流出した事件にも触れ、映像を流した保安官の違法性について解説。一部で保安官を英雄視する世論があることに「感情的に一方向に向かい、メディアもこれに傾斜していくのは危険」と警戒感を示し、「政治も検察も世論に対し、右往左往している。市民もメディアとのかかわり方を学び、冷静に判断していくことがこれから大事になる」と述べた。(鈴木 潤)


◎自閉症 特性に合わせ支援を 大阪の新澤さんが講演

 【北斗】侑愛会おしまコロニー2010年度自閉症セミナーが13日、北斗市総合文化センターで開かれた。大阪府発達障がい者支援センター「アクトおおさか」の新澤伸子センター長が自閉症スペクトラル障害(ASD)の子供らの支援方法について講演し、障害当事者の親や教職員、支援関係者らが聴講した。

 侑愛会と発達障害支援センターあおいそら、道自閉症協会道南分会の主催。

 ASDは、自閉症障害やアスペルガー症候群などを疾患単位でとらえるのではなく共通の障害の連続帯としてとらえる考え方。

 講演で新澤センター長はASDの概要や症状を説明した後、自閉症の個々の特性に合わせた支援の必要性を説き、「かんしゃくやこだわりなど外から見える行動に対して対応するのではなく、なぜその行動が起きるのかという視点で対応することが大事」と述べた。

 当事者の言動を例示しながら、その傾向や対処方法などを説明。時間の概念や活動の流れの理解が困難な場合、スケジュールを視覚的に提示したり、タイマーや時計を生活の流れの中で利用するといった対応策をアドバイス。「長所と興味を生かした支援を。特定の場面で自立してできるようになったことを別の場面、地域でも段階を追って行って」と呼び掛けた。

 このほか、アクトおおさかの事業についても紹介し、受講者はメモを取るなどしながら学んでいた。(鈴木 潤)