2010年11月18日 (木) 掲載

◎東北新幹線試乗会

 【青森、八戸】12月4日の東北新幹線全線開業を前に、JR北海道は17日、道内の報道関係者らを対象に、新たに延伸する新青森―八戸間(81.8キロ)で試乗用のE2系「はやて」の試乗会を行った。現行で約1時間かかる特急に比べて半分の片道約30分で駆け抜け、トンネルや田園風景の多い新路線を往復した。

 試乗会には札幌や函館の報道関係者のほか、道内の自治体や経済界、旅行関係者ら約300人が参加。新青森駅を見学した後、試乗用の「はやて」は午後3時17分に新青森駅を出発。すぐに車窓からは八甲田山系や陸奥湾が遠くに見えてきた。

 出発から約5分後には陸上の複線トンネルでは世界最長となる八甲田トンネル(26.4キロ)に入る。徐々に同区間では最高の時速260キロに速度を上げ、6分ほどで通過。その後、七戸十和田駅(七戸町)に一時停車し、最終的に八戸駅には午後3時47分に到着した。

 試乗したJR北海道函館支社の幅口堅二支社長は「早くて乗り心地も良かった。(北海道新幹線開業に向け)新幹線の素晴らしさを多くの道民にも分かってもらいたい」と話した。

 同区間には大小19カ所のトンネルがあり、全体の約62%を占めるのが特徴。参加者からも「トンネルが多かった」との声が大半だったが、「あっという間だった」「車窓からの景色はのどかだった」「思ったより揺れが少ない」などの声も聞かれた。

 試乗会に先立ち、一行は新青森駅コンコースも見学。正面がガラス張りの建物は開放感があり、随所に青森県産のヒバ材が使われている。3階にある新幹線ホームから函館方面を結ぶ特急などが乗り入れる奥羽本線のホームまでの乗り継ぎは階段を2回降りるだけで、10分足らずでスムーズにできそうだ。

 開業後は函館発の特急スーパー白鳥、白鳥は10往復すべてが新青森駅に接続される。新幹線開業で函館からは東京まで最速5時間44分で結び、平均では20分前後短縮される。来年3月には新型車両E5系の「はやぶさ」も導入され、さらなる利便性の向上が期待される。 (森健太郎)



◎「坂の上の雲」ロケで来函川野太郎さん CDをPR

 俳優の川野太郎さんがNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」ロケで来函し、ロケを振り返るとともに、自身が関わっている本道に関するユニークなCDをPRした。コマーシャルでおなじみの北海道犬「カイ君」と共演したCDで「お世話になった人への感謝を込めて、反響を起こせれば。函館の人にもぜひ聞いてほしい」と話している。

 川野さんはテレビや映画、舞台のほか、男女共同参画推進に関する講演などで幅広く活動。2008年には、携帯電話のコマーシャルでお父さん役として活躍する、胆振管内むかわ町生まれの北海道犬のカイ君とCDで共演した。カイ君を人気者に育てた、湘南動物プロダクションの坂本篤熙(あつひろ)社長と川野さんは長年親交があり、「俳優の仕事から離れ、遊び感覚で引き受けた」と話す。

 川野さんは「王(ワン)教授」となり、ムード歌謡「白い恋物語」を歌い、カイ君ら5匹がバックコーラスを担当した。グループ名は「カイくんとわんダースfeat.王教授」。川野さんは見事な変身でジャケットに登場。「当時、自分が出演していたことはほとんど知られなかった」と話す。

 その坂本社長が今年10月末に亡くなった。「自分も驚いたが、カイ君もショックだったようだ」と川野さん。坂本社長への感謝、カイ君への激励を込め、同CDを再び広く知ってもらいたいと願っている。「昭和の臭いがする曲で親しみやすいと思う。カイ君の賢さを知ってもらえれば」と紹介している。

 「坂の上の雲」では砲兵部長・豊島陽蔵役を務めた。「二〇三高地周辺に見たてた函館は寒いロケだったが、日露戦争当時はもっと寒かったと思う。軍人の厳しさを知った思いだった。ご当地の映像もあるので、ご覧いただきたい」と語った。(山崎純一)



◎函大有斗がリングプル集め特養に車いす寄贈

 函大付属有斗高校(野又肇校長、生徒618人)は、7年間にわたり校内で集めたリングプル510キロを車いす1台と交換。17日、同校卒業生が勤務する特別養護老人ホームみなみかやべ荘に寄贈した。

 リングプルの回収は、2003年度の生徒会が「学校全体で取り組むことのできるボランティア活動」としてスタート。生徒の家庭や校内でこつこつと集め、今回初めて車いすと交換した。寄贈先からは、ケアマネジャーとして務める同校卒業生の上川原治さん(41)が来校した。

 贈呈式は全校生徒が出席して行い、野又校長は「一人一人の小さな力が積み上げられ車いすになった」とあいさつした。生徒会長の島影豊太郎君(2年)が生徒を代表して目録を読み、ボランティア事務局長の伊藤青杜君(同)が上川原さんに車いすを渡した。

 上川原さんは「7年をかけた貴重な1台をいただけることに感謝し、大切に使います」とお礼の気持ちを伝え、「福祉の今」のテーマで講演した。福祉の仕事について「物を売ったり商売したりする仕事とは違い、対人との関係です」と人間関係で成り立つ仕事であることを説明。「皆さんもだれかに生かされているということを意識してください」と語りかけた。(小泉まや)


◎「タナカ技研」が道南初のエピテーゼ製作

 函館市弁天町1の歯科技工所「タナカ技研」(田中雅典代表)はこのほど、身体の欠損した部分を人工物で補うエピテーゼの製作を始めた。エピテーゼの普及を進める日本パラメディカル協会(東京)によると、歯科技工士としてエピテーゼを扱うのは函館、道南地域では初めて。田中代表(46)は「事故や病気で体の一部分を失い、精神的に病んでいる人の力になれれば」と話している。

 田中代表は1985年に歯科技工士の国家資格を取得後、木古内町の歯科技工所に就職。函館市内の歯科診療所での勤務を経て99年に独立開業した。

 5年ほど前、乳がんの手術で乳房を切除した知人女性から「失った乳房を作れないか」と相談を受けたことをきっかけにエピテーゼに関心を持つようになった。今年5月に札幌市で開かれた同協会の講習会を受講し、ノウハウを体得した。

 エピテーゼは耳や指、乳房などシリコーン(ケイ素樹脂)で本物そっくりに製作した装具。患者の生活の質(QOL)の向上を目指して実用化が図られているが、十分に普及が進んでいない。医療保険の適用外であり、医療機関との連携など課題はあるが、同協会は「道内では北大病院(札幌)の整体技工部が形成外科と連携しながらエピテーゼ製作を実践している例がある。製作者の養成を進め、エピテーゼの普及につなげていきたい」とする。

 田中代表は「エピテーゼは完全に治すことはかなわなくても、他人の目を気にしないで明るく前向きに生活する力になるはず。悩んでいる人は相談してほしい」と呼び掛けている。(鈴木 潤)


◎「海炭市叙景」仏映画祭へ

 来年3月にフランスで開催されるドービル・アジア映画祭に、函館出身の作家、佐藤泰志(1949―90年)の遺作を函館市民が映画化した「海炭市叙景」が出品されることが決まった。劇場公開日が迫る中、もたらされた朗報に関係者からは喜びの声が聞かれた。

 27日の函館公開を皮切りに、12月上旬から全国約60館で順次上映される同作。函館をモデルにした架空都市「海炭市」で暮らす市井の人たちの哀愁が描かれている。これまでに東京や札幌などで試写会が行われたほか、18日には映画製作費を寄付した人たち1400人を招待した完成披露試写会を函館市芸術ホールで実施する。

 今年10月には東京国際映画祭にも出品され、受賞は逃したものの期間中に2回行われた上映会は、ともに満員の札止めとなる盛況ぶり。文庫本の売れ行きも好調で、世間の関心はますます高くなってきた。

 そうした中、アジア映画祭への出品依頼があったのは11月上旬。同作の映画製作実行委の菅原和博委員長は「小さな街でできた映画が、国を越えて見てもらえることはとてもうれしい」と笑顔。同作を配給するシネマ・シンジケート(東京)の伊藤重樹マネジャー(51)も「ご当地映画では終わらせたくなかった。これからも国内外の多くの人たちに見てもらいたい」と他の映画祭出品にも意欲を見せている。

 地元発の映画は、日本にとどまらず国境を超えて多くの人たちの目に触れ、世界に「HAKODATE」の名をアピールする。 (小杉貴洋)