2010年11月23日 (火) 掲載

◎辻仁成さんが函館活性化策語る

 芥川賞作家で、歌手や映画監督など多彩な顔を持つ辻仁成さんを迎えた講演会「辻仁成『函館』を大いに語る」が22日、函館市湯川町の花びしホテルで開かれた。辻さんは函館を活性化させるアイデアとして、グレイをはじめとした函館出身のアーティストを集めたロックフェスティバルの開催など、興味深い提言を行った。

 函館青年会議所創立60周年の記念行事で市民ら約300人が来場した。

 中高校生の青春時代を函館で過ごした辻さんは、函館を舞台にした「海峡の光」で1997年に芥川賞を受賞。99年には「白仏」のフランス語翻訳本で仏フェミナ外国小説賞を日本人で初めて受賞するなど国内外で幅広く活躍している。

 辻さんは経済面や観光面での停滞が続く函館の現状について「函館に存在する豊富な歴史や文化的財産を、若い人のエネルギーで生かしていかなければいけない」と強調。具体的なアイデアとして「西部地区を拠点に複数の大学を誘致し、全国から若者が集まる文化・芸術都市を形成しては」と提案した。

 観光客を呼び集めるために、年間を通して魅力的なイベントの開催の必要性も訴えた。同郷のミュージシャン仲間「グレイ」との間で、「緑の島でロックフェスティバルを開催したい」と構想していることを明かし、「実現させる際は大都市のイベンターに任せるのではなく、市民の力で運営することが大事」と話した。

 このほか「函館を舞台にした市民手作りのドラマのインターネット放映」「『愛の詩人館』を建設し、詩を販売する」など独創的なアイデアが次々と飛び出し、そのたびに会場からは大きな拍手が送られていた。(小川俊之)



◎北斗市議会新幹線特別委が計画案、新駅施設2階建てに

 【北斗】市議会新幹線建設促進調査特別委員会(中井光幸委員長)が22日、開かれた。市は新駅付帯施設の整備にかかわり、新幹線の線路高が当初予定より2メートル下げられて整備されることを受けて、施設の高さを3階建て18メートルから2階建て16メートルに変更する計画案を示した。

 新駅は、橋上駅として整備され、付帯施設は、駅舎南側に結合する部分の建物。エスカレーターなどの昇降設備や通路などは鉄道・運輸機構が整備し、市は観光案内所やイベントスペースなどとして活用を想定する施設東側部分を担う。駅に乗り入れする新幹線線路の高さが在来線と同じ高さで整備される方針となったことから、建物高や階数の見直しを進めた。

 市は「3階建てでは1、2階部分の天井高が低く、圧迫感がある。駅整備全体のコンセプトともマッチしない」とし、1、2階吹き抜けの開放的な空間とした。建物の東西幅も約50メートルから約70メートルと横長の建物とすることで、南口駅前広場に隣接する「物販ゾーン」との連携を図る形状とする方針を示した。

 また、新駅北口の整備では、エスカレーターを整備せず、将来的に増改築により設置できる用地を確保して整備したい考えを示した。委員からは「遅かれ、早かれ整備するのであれば、当初から一体の事業として計画することが必要ではないか」とする意見が出された。市は、新駅南側の開発整備を優先とする方針から、「南口側の整備が進んだ段階で、北口側の利便性向上も検討したい」とした。

 会議に先立ち、新幹線工事の進展状況を確認する現地視察が行われ、清川、千代田地区の大野川橋りょう、七飯町の函館総合車両基地などを見学。万太郎路盤工区の起点側高架橋工事現場で、鉄道・運輸機構北斗鉄道建設所の坂本成良所長から「来月初めには、万太郎トンネルの出口側の掘削工事が開始される」などの説明を受けた。(今井正一)



◎企画「地域と生きる−太平洋セメント上磯工場のいま−」(中)

 景気の後退などさまざまな要因が重なり、セメントの国内需要が大幅な落ち込みを続けている中で、業界全体が徹底的な収益確保と生産コスト削減に努めている。中でも注目されるのは、セメント製造に一般ごみをはじめ、産業廃棄物などさまざまなリサイクル資源を活用する取り組みだ。

 セメントの主成分は、石灰石から得る酸化カルシウムのほか、粘土やけい石などの天然資源からシリカやアルミナなどの成分を得ている。これらは、一般ごみや産業廃棄物にも含まれている成分で、技術開発により天然資源の代替原料として活用することが可能となった。可燃性の廃棄物は燃料として利用されている。

 セメントの中間製品「クリンカ」を製造する焼成用のロータリーキルンは最大1450度の高温となるため、ダイオキシンなどの有害物質の発生はない。燃焼後に残る灰もセメント原料として活用しているため、製造過程では二次廃棄物排出がなく、クリーンなリサイクル方法として注目が集まりつつある。

 セメント工場に廃棄物の処理を委託する自治体や企業側には、最終処分場不足の問題や、適切な処理など、必要経費の削減や環境負荷の軽減につながる。工場側は、天然資源の節約のほか、処理費用を新たな収益源として、生産コストを削減。ごみ処理を委託する側、利用する側の双方にメリットがある。

 上磯工場でも同様のリサイクル資源の活用を本格化させている。昨年度実績で、道内や東北地方の発電所が排出する石炭灰や、下水汚泥など97万トンを活用した。国内全体では、セメント1トン当たりに約450キロのリサイクル資源を利用しているが、同工場は325キロほど。「まだまだ受け入れ能力に余力がある」とする。

 受け入れる廃棄物には、地域性も色濃く反映される。例えば、十勝地方で排出されるビートの絞りかすである「ライムケーキ」を年間2・4万トン受け入れているほか、ホタテのウロなどの漁業系廃棄物も処理する予定。自動車のシュレッダーダスト(リサイクル部品を取り除いた廃棄物)は、道内全体の年間排出量の半分に当たる1・2万トンを処理している。

 今後は、札幌市の可燃ごみ焼却灰約4万7000トンの受け入れも予定しているほか、地元・北斗市は2013年度中に不燃ごみ処理を同工場に委託する方針を決め、中間処理施設の建設を進めている。

 木伏正克業務部長は「リサイクルの取り組みは他産業に比べ、セメント業界は早くから取り組んでいる。地域の社会サイクルの一部としてセメント工場が認知されることも、業界が生き残るための道のひとつ」とする。地域の循環型社会の中に組み込まれることで、工場の存在が欠かせないものとなっている。(今井正一)


◎イグ・ノーベル賞受賞記念、未来大の中垣教授が講演

 公立はこだて未来大学教授の中垣俊之さんが、ユーモアあふれる科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」を受賞した記念講演会が22日、遺愛女子中学・高校で開催された。「単細胞に学ぶ生命知のからくり」と題して、同賞を受賞した粘菌についての研究内容を紹介。同大学長の中島秀之さんと「単細胞×人工知能、どっちがエラい!?」のテーマで語り合った。

 中垣さんは、アメーバ状の単細胞生物の粘菌が、餌を得るために効率的なネットワークを形成することを発見。人間が鉄道網などを設計する際に粘菌の“知恵”が役立つとする研究内容が評価され、国内外の9人でつくる研究チームが同賞の「交通輸送計画賞」を共同受賞した。

 賞を受け取る決断をした経緯について中垣さんは「素朴な好奇心や発見の喜びを思い出してみようという雰囲気があり、いただくことにした」と振り返り、賞金がないことから「お金の汚れがないことが気に入っている」と述べた。

 粘菌が効率よく餌を得るため、迷路の行き止まりから撤退するなどの工夫をする状況については、「体がつながっている状態を保つなど、ある種のジレンマに対応した。粘菌は賢いと言っていい」と評価した。(小泉まや)


◎がごめ昆布入り塩ラーメン開発

 函館市内、近隣の食品販売業者などがこのほど、函館産のガゴメ(トロロコンブの仲間)をめんに練り込んだ乾燥ラーメン「はこだてがごめ昆布 塩ラーメン」を開発し、販売を始めた。

 開発したのは、クリエーティブ・ティツー(同市時任町12、竹内敏明代表)と土産品販売業たかせ(七飯町大沼町647、高瀬宣夫代表)で、北大大学院水産科学研究院の安井肇教授や道立工業技術センターが指導、協力をした。

 めんの原料は、道産小麦を使用し、ガゴメを練り込むことで、特有のなめらかさを持った細めんに仕上げた。

 ガゴメは、同研究院などが産学官連携事業で考案した栽培方法で市漁協根崎支所が育成。ガゴメの中でも、健康、美容に効果的な栄養素「フコイダン」の量が通常よりも2倍という若葉を使用している。若葉はめんに練り込むだけでなく、細切りにしてトッピング用の具材として付け加えた。

 安井教授は「若葉を使うことでさらに風味が増す。函館らしい商品ができた」と話す。

 パッケージも安井教授らが考案。ガゴメをモチーフにしたオリジナルキャラクター「ガゴメマン」が登場したイラストを使い、海藻戦隊「ガゴメンジャー」と称し、子供にも親しんでもらえるデザインとした。

 ラーメンは1食入り350円(スープ用の粉末付き)。函館がごめ連合のアンテナショップ(弁天町24)や函館空港内の売店などで扱っている。

 問い合わせはクリエーティブ・ティツーTEL0138・32・0874、たかせTEL同67・2469。