2010年11月27日 (土) 掲載

◎恵山 早くもノリづくり

 例年、年明け後の厳冬期に最盛期を迎える自家製のノリづくりが、函館市恵山町で早くも行われている。「11月にこれだけとれるのは珍しい。正月には、おいしいノリが食べられそうだ」と漁師は汗を流している。

 漁は吹雪の中で行われることが多く、寒さとの戦いだが、「今年は暖かくて汗をかくぐらい。水温も高くて、これがノリの成長を早めたのでは」と推測する。

 岩ノリをすだれにかたどるときは、熟練の技が必要だ。ホタテの貝殻ですくいとっては、均一の厚さに仕上げる。乾燥後は、表面を素手でこすり、不純物をはがす。「食べるのはあっという間だけど、つくるのは本当に手間がかかる」という。

 自家製ノリは、漁師だけが味わえる逸品で「しっかりとしたノリの味がある。商品化すれば必ずヒットする」という漁業者も。おにぎりやみそ汁、あえ物などと調理は豊富で長期保存も可能。食べる直前にガスコンロの火で、さっとあぶれば香ばしさが増し「一度食べたらやめられない」という。(田中陽介)



◎生活保護 過去最高205億…函館市

 過去例のない生活保護受給者の大幅増を受け函館市は、本年度の保護費の総額を、過去最高額の205億312万円とする。12月3日に開会予定の市議会第4回定例会に、現在の予算に11億8107万円増額した補正予算案を提案する。これにより、一般会計に占める保護費の割合は15・8%に。市財務部は「義務費の増加は財政の硬直化を招くといわれる」とし、市財政や市勢への影響を懸念している。

 同市では、人口減にもかかわらず保護費が継続して増加傾向にある。これに加え2008年度からは、世界的な金融危機や景気低迷などを背景に増加ペースが一気に加速。決算ベースでは、08年度は前年度比1・4%増、09年度は6・9%増に。09年度には異例といえる2月の増額補正を行い、同年の決算は過去最高額の193億5382万円となっていた。

 本年度は前年度をさらに上回って保護世帯が増加しており、9月現在の保護者数は1万2399人、保護率は43・9‰(パーミル=人口1000人当たりの被保護者数)で、いずれも過去最多を更新した。この状況から今後の増加を見込み、同市としては初めて単年度に200億円を超えた予算を組む事態になった。増額分の主な内容は、受給者の医療費に使われる医療扶助費が5億5512万円、生活費となる生活扶助費が4億6234万円となっている。

 同市社会福祉事務所は、厳しい雇用状況であることを踏まえながらも、「保護世帯の自立支援には一層前向きに取り組みたい」と話す。(小泉まや)



◎中島廉売の歩行者天国 64%が必要…買い物客にアンケート

 函館市民の台所として親しまれている商店街「中島廉売(れんばい)」(函館市中島町)の目玉となっている歩行者天国について、商店主の間で「存続」と「廃止」の意見が対立している。中島町商店街振興組合(二本柳秀樹会長)ではこのほど、一般買い物客を対象に行ったアンケート結果を公表。「歩行者天国は必要ですか?」の問いに対し、64%が「必要」、15%が「不要」、どちらでもよいが「21%」となった結果を受け、存続の方向性を確認した。

 同廉売では、1974年から中島廉売大通りの一部などで、日曜日を除く午後2時から同6時の間、車の通行を禁止にし、歩行者天国をスタートした。交通事故などの危険性が減ったことから買い物客にも好評となっていた。

 しかし、ここ数年は客足が減少。商店主の中には「車で買い物をする割合が増えたことから、(車で)入ることのできないイメージの廉売が敬遠されているのではないか」との意見が浮上。今回同時に行った、商店主を対象にしたアンケートでは、有効回答数54人のうち、「歩行者天国はいらない」と「歩行者天国は必要」がいずれも19人、「どちらともいえない」15人(無回答1人)と意見が分かれた。

 25日夜に中島町会館(中島町30)で行われたアンケート調査の報告会では、二本柳会長から、買い物客の回答結果を重視し歩行者天国を存続させる方針が提示された。二本柳会長は「客足減少の原因が歩行者天国にあると考えるのは早計。むしろ利便性を生かしてさまざまなイベントを行うなどし、集客につなげていくことが必要」と説明した。

 一方、廃止を求める商店主からは「午後2時からぱったりと客足が減り、歩行者天国の影響は明らか」などの意見や、「廉売活性化への具体的なビジョンが見えてこない」と不安の声も相次いだ。

 二本柳理事長は「客足が減少しているのは事実。それに伴って商店の数も減っている。大型店に負けない充実した品ぞろえのためには、新規参入者の拡大を図るとともに、利用できる駐車場の数も増やしていかなければならない。そのためには商店主の皆さんの一致団結した協力が必要」と訴えた。

 二本柳会長は報告会終了後「各店主が現状に危機感を持っていることが伝わってきた。今後もこのような意見交換の機会を設けて、廉売の大きなアピールポイントである歩行者天国の魅力を再確認し、集客につながるアイデアを出し合っていきたい」と話していた。(小川俊之)


◎道南10月の有効求人倍率0.46倍

 函館公共職業安定所が発表した渡島・桧山管内の10月の雇用失業情勢によると、有効求人倍率は0・46倍と前年同月を0・11ポイント上回り、5カ月連続の改善となった。0・4倍台後半に達したのは2008年10月以来2年ぶり。新規求人倍率も6カ月連続で前年同月を上回った。

 有効求職者は前年同月比7・9%減の1万283人で、前年同月を7カ月連続で下回った。一方、有効求人数は同20・1%増の4691人と、6カ月連続で改善した。

 雇用の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を0・32ポイント上回る0・94倍で、6カ月連続で前年同月を上回った。新規求職者数は同15・2%減の2249人だった。

 同所は管内の雇用情勢について「持ち直しの動きが続いているものの、厳しさが残る」と判断を据え置いた。

 併せて発表された来春高卒者の10月末現在の求人倍率は、前年同月比を0・07ポイント上回る0・78倍。管内の求人は前年同月を15・8ポイント上回る396人、道内は同11・5ポイント増の107人と好調だが、道外は同14・8ポイント減の306人となっている。(小川俊之)


◎きょうから「海炭市叙景」先行公開

 市民映画、ついに公開—。函館出身の作家、佐藤泰志(1949—90年)の遺作を函館市民が映画化した「海炭市叙景」が27日から、シネマアイリス(函館市本町22)で先行公開される。同館の代表を務め、自身も同映画製作実行委員長として映画製作に関わった菅原和博さんは「多くの人たちの協力により完成した作品。きっと何かを感じてもらえる作品に仕上がっているので、多くの方にご覧いただきたい」と話している。

 同作は、函館がモデルの架空都市「海炭市」に生きる市井の人々を描いた作品。小説を読んだ市民が映画化を熱望し、製作資金の約半分にあたる1千万以上が市民らの募金で賄われた。主要な撮影も今年2—3月にかけて、熊切和嘉監督をはじめ、加瀬亮さん、小林薫さん、南果歩さんなど主要キャストのほか、500人以上の市民キャストが参加して実施された。

 また、同作の文庫本が20年ぶり発売され予想を上回る反響があり、東京国際映画祭に出品された。来年フランスで行われる映画祭への出品も決まるなど、同作の注目度はますます高まっており、この冬は多くの市民の夢と熱意がこもった作品が、観客の心を温めそうだ。

 初日から12月3日までは、@午前9時20分A午後零時B同2時40分C同7時45分の計4回上映。料金は一般1800円など(@は朝割適用で1300円)。詳しくは同館TEL0138・31・6761。(小杉貴洋)