2010年12月22日 (水) 掲載

道の漁業取締船「海王丸」竣工

 道の漁業取締船「海王丸」(神崎円博船長、最大搭載人員28人)の竣工式が21日、函館市豊川町の函館市水産物地方卸売市場で行われた。行政や漁協関係者ら約60人が出席。新造船の完成を祝い、地域漁業の安全と発展を誓った。

 1984年から今年11月まで運航した4代目の引退を受け、5代目が函館どつく室蘭製作所で12月15日に完成。建造費は15億4245万円。全長55メートル(4代目49.53メートル)、幅7.8メートル(同7.3メートル)、306トン(同251トン)。航海速力は時速約29キロ(同27キロ)。自動追尾型の暗視カメラや環境に優しいエンジン機能など最新機器を備える。

 式典では高橋はるみ知事の式辞を高原陽二副知事が代読し、道議会の石井孝一議長と渡島管内漁協組合長会の山崎博康会長が来賓の祝辞を述べた。函館港内で記念航海も行われ、神崎船長ら乗組員が船内を案内した。

 海王丸は、函館港を拠点に積丹岬から津軽海峡、知床岬までを担当。海上巡視や港内巡回で違法操業や密漁防止の取り締まり、水産資源確保に向けた監視や指導にあたる。

 神崎船長(55)は「これまで頑張ってくれた4代目への思いを胸に、新海王丸でも取り締まり強化に努め、漁業秩序の維持と水産資源保護に努めていきたい」と話していた。

 4代目「海王丸」は来年1月の入札で、引き取り手が決まるという。(田中陽介)



函館市が1月から実証実験、「光iフレーム」活用し情報提供

 函館市は、NTT東日本がこのほど開発した家庭向け情報端末「光iフレーム」で、行政情報を提供する実証実験を来年1月から開始する。同社のフレッツ光回線を使用し、行事予定や文化・スポーツ、観光情報を発信する取り組みで、同社が1月から端末2000台を希望する市民に無償貸与することに合わせて実施する。実験は3月までの3カ月間で、市によると、自治体が光iフレームを使った情報発信は全国初の試みという。

 光iフレームは、7インチのディスプレーを持つフォトフレーム型の端末。タッチパネルを操作するだけで、家にいながら地元商店やスーパーの割り引き、イベント情報などが得られる。無線LANに対応しており、使用するには同社との光回線契約が必要となる。

 市は、函館に関する情報がインターネットやモバイルなどさまざまな手段で発信されている一方、「ネット環境が複雑になり過ぎているのが現状。高齢者や端末操作に不慣れな市民にとっては情報が多く、活用が困難」(経済部)と分析。市民が必要な情報を迅速に見つける手法として、新端末に着目。

 ネット上で電車の乗り換え案内などを提供している「ジョルダン」(東京)が、光iフレームを用いて商業や観光情報などの配信サービスを始めることに合わせ、同社から市に情報提供の依頼があったことで参加を決めた。

 具体的には、タッチパネル上に表示される「函館市からのお知らせ」の項目に触れることで、市主催の行事やごみ収集日、観光、防災などの各種情報が得られるようにする。一例として、市内のAED(自動体外式除細動器)設置場所を、地図上で一覧表示することなどが可能となるという。

 市は今市議会定例会で、緊急雇用対策として関連予算870万円を計上。可決されればジョルダンと情報入力に関する委託契約を結び、システム上に組み込まれるアプリケーションをジョルダンが設計。同社が市内に設置する拠点で、8人を雇用する流れとなる。

 NTT東日本が1月から希望者に対し、端末2000台の無償貸与を計画しており、同部は「この機会に利用者へのアンケート調査を行い、利用実態の把握に努めたい」と話している。 (千葉卓陽)



タクシー強殺から4年、「事件風化させない」

 2006年12月、北斗市のタクシー会社「しんわ交通」運転手、八木橋朋弘さん(当時42)が殺害され、売上金などが奪われた「タクシー運転手強盗殺人・死体遺棄事件」は21日、発生から丸4年が経過した。関係者による懸命の捜査は続けられているが、年月がたつにつれ、情報量も乏しくなってきた。捜査員は「事件を風化させない。必ず犯人を逮捕する」と強い思いを胸に、同日午後、函館市内のJR函館駅前や本町交差点で道行く市民に情報提供を呼びかけた。

 事件は06年12月21日未明に発生。八木橋さんの運転するタクシーは、同日午前3時50分ごろ、北斗市七重浜1付近で客を乗せ、国道227号を七飯町方向に走行。同4時ごろから、同町峠下周辺を走行し、その後、停車していたことが分かっている。峠下の現場では、八木橋さんの血痕や携帯電話などが発見されている。

 犯人は八木橋さんを殺害後、遺体をタクシーのトランクに積み、函館市港町3の函館港に移動。同4時55分ごろ、タクシーごと遺体を放置し逃走したとみられている。

 道警函館方面本部、函館西、中央両署の合同捜査本部では、現在でも専従35人の捜査体制を敷いている。これまでに計125件の情報が寄せられているが、犯人検挙には結びつかなかった。しかし、「街頭啓発すると事件のことを思い出してもらえる。前回の啓発後も、少ないが情報が寄せられた」と捜査関係者。今年4月には殺人など凶悪事件の時効が撤廃された。

 函館西署の太田宏司副署長は「早く被害者の仏前に良い報告ができるように、必ず犯人を逮捕する。どんな小さな情報でも構わないので寄せてほしい」と話している。改行 情報提供は、捜査本部フリーダイヤル0120-004-179、函館西署TEL0138-42-0110(24時間対応)。 (小杉貴洋)


市電に乗ろうよ、柏野小3年生が利用促進PR

 もっと市電に乗って―。函館柏野小(伊勢昭校長、児童358人)の3年生60人が21日、函館市本町交差点で函館市電の利用を呼びかける街頭啓発を行った。授業で校区内を走る路面電車について学ぶうち、利用客が年々減少傾向にあることに気付いた子どもたち。身近な魅力を多くの人に知ってもらおうと、自ら考え、感じ、立ち上がった。

 「時間に正確で、エコな市電にいっぱい乗ってください」。21日午前、市内本町の五稜郭公園前電停周辺に子どもたちの大きな声が響いた。用意したのは市電の魅力を伝える手作りのチラシと大判のポスター。通りかかった買い物客らに手渡し、利用促進を訴えた。

 総合的な学習の一環で、児童らは4月から、地域の魅力を掘り起こす活動に乗り出した。目を付けたのは校区を駆ける「函館市電」。車庫を見学したり、運転士や整備士に話を聞いたり。何度も取材≠重ね、市電の長い歴史や二酸化炭素の排出量が少ない魅力を再発見した。

 子どもたちは市電の良さに気付く一方、乗車人員が年々減っている現状にも直面した。市交通局によると、昨年度の利用客は1日当たり約1万6000人。人口の郊外流出や、マイカーの普及、少子化などの波に押され、ピーク時の1960年代に比べて8分の1近くまで落ち込んだ。

 「こんなにいい乗り物なのに…」(永井絵梨奈さん)、「このままではなくなってしまう」(三上慎太郎君)。危機感を持った児童らは授業で学んだ成果を紙にまとめ、街頭で声を上げた。最後には同小OBの作曲家、故廣瀬量平氏が作曲した「はこだて賛歌」の替え歌で「市電に乗ろうよ」と合唱した。

 大原大君(9)は「市電に元気を与えるつもりが、逆に街の人から元気をもらった。函館の宝物の市電を何百年と残したい」と目を輝かせた。市交通局は「本当にうれしく、ありがたい話。現状は厳しいが、子どもたちのような市電ファン、良き理解者が増えてほしい」と話した。(森健太郎)