2010年12月28日 (火) 掲載

ショパンピアノコン出場の岡田さん凱旋コンサート

 ポーランドで10月に開かれた「第16回ショパン国際ピアノコンクール」に出場した、函館出身のピアニスト岡田奏さん(19)=パリ在住=の「凱旋コンサート」(市文化・スポーツ振興財団主催)が27日、市芸術ホールで開かれた。岡田さんは故郷函館のホールで洗練された音色を披露。会場からは「ブラボー」と賛辞が送られた。

 同コンサートは、函館出身者として同コンクールに初出場した岡田さんのさらなる活躍を願い開催。世界的な音大であるパリ国立高等音楽院ピアノ科を首席で卒業した岡田さんは、惜しくも一次予選で同コンクール敗退。現在は同音楽院室内楽科でアンサンブルの研さんに励んでいる。

 「何物にも代えがたい経験になった」とコンクールを振り返った岡田さん。この日はショパンの「ピアノソナタ第2番変ロ短調」「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」、シューマンの「交響的練習曲」の難曲を演奏。4楽章構成の「ピアノソナタ|」では、激しい葛藤や絶望感といった曲想を見事に再現。第3楽章で披露した和音進行はショパンの重い足取りを感じさせ、繊細な弱音で紡いだ甘美な中間部との対比に観客は酔いしれていた。

 初めて岡田さんの演奏を聴いたというクラシック愛好家の福田朋子さんは「どの曲も若さあふれる素晴らしいピアノだった。音楽を愛する人たちのために地道に演奏活動を続け、活躍してほしい」と話していた。 (長内 健)



来年度予算 新函館−新青森880億円

 国土交通省の政務3役でつくる整備新幹線問題検討会議は27日、北海道新幹線の新青森―新函館間の来年度事業費を880億円とすることを決めた。本年度当初予算比からほぼ倍増となり、道や関係自治体は「2015年度末の開業に向けて弾みがつく」と評価する。一方、年度内の着工判断が先送りされた札幌延伸についても、未着工区間全体で本年度同様に留保分として計上され、いちるの望みをつなぐ形となった。

 来年度の整備新幹線5路線の事業費は2950億円(同13.5%増)で概算要求通り。国土交通省によると、総事業費の内訳は国費が706億円で前年度と同額。地方負担分が983億円、既設新幹線の譲渡収入が1261億円となっている。

 05年度に着工した新青森―新函館間は05年度30億円、06年度60億円、07年度100億円、08年度178億円、09年度487億円と推移。本年度は当初予算に加え、11月に42億円を補正している。来年度予算を加えた総配分額は2227億円となり、同省試算の総事業費(4700億円)の47.4%に達した。

 事業費の大幅増額に、函館市の西尾正範市長は27日の定例会見で「15年度末の開業までには間に合わせるのでは。工事もかなり進むと思う」と述べるとともに、「これからの補正も考えられる。1年間でも前倒しできれば」と、早期開業への期待感を示した。

 北斗市も「開業前の試運転期間を1年間とし、残る工期を実質4カ年と考えれば順当な予算付けをしてもらった」(新幹線対策課)と評価。新年度には戸切地川橋りょうほか工事(2229メートル)、桜岱高架橋工事(1853メートル)など、工期末を2013年春としている平野部の工区で工事が盛んに行われることになる。同課は「着工済みの工区に多く配分され、新工区にもまんべんなく予算が配分されることを期待している」とした。

 新函館―札幌など未着工3区間については、新規着工が決定した場合に対応できるよう、「留保分」として10年度当初予算と同額の90億円を確保した。これに渡島総合振興局新幹線推進室は「札幌延伸に向けて、期待を高めながら注視していきたい」と話している。(千葉卓陽、今井正一、田中陽介)



観光客入り込み数 渡島4年ぶり増加

 2010年度上期(4―9月)における、道南の観光客入り込み数などが27日、渡島、桧山でそれぞれ発表された。渡島は増加傾向で、桧山は減少傾向であることが分かった。

             ◇

 渡島総合振興局は、渡島管内観光客の入り込み数と訪日外国人宿泊客数を発表した。ともに速報値で、観光客の延べ人数は前年比3.9%増の642万9000人で4年ぶりに増加したが、現行方法で調査を始めた1997年以降では、前年に次ぐ2番目に少なかった。一方、訪日外国人宿泊客数は、同77.2%増の約9万人で大幅な伸びを記録した。

 同総合振興局商工労働観光課によると増加の要因として、前年の新型インフル流行の終息、全国的な景気の持ち直しに伴う旅行需要の回復などがみられたという。特に道外客は同8・5%増で、羽田、関西の空路と海外チャーター便の増加などが好材料となった。

 函館市は同8.4%増の311万7400人で、函館競馬場のリニューアル(6月)や箱館奉行所オープン(7月)などと新たな観光施設による開業効果が主な要因となった。

 八雲町も同17.5%増の36万9400人と好調で、道央自動車道・落部―八雲間の開通で八雲パーキングエリア開園効果などが後押しした。

 一方で、松前や福島、森、鹿部、長万部の5町が前年度を下回った。サクラの開花がゴールデンウイーク後に遅れたことが減少の一因とされ、松前町は同10.4%減の44万6600人だった。

 訪日外国人宿泊客数は、同77.2%増の9万87人と大幅に増加。台湾が4万5110人と最も多く、次いで韓国が2万495人、中国が6860人とアジアが全体の9割を占めた。好景気や新型インフルが落ち着いたことと、北海道ブームの継続、中国の訪日個人観光ビザの要件緩和などが個人旅行客の拡大に結び付いたとみている。(田中陽介)

             ◇

 【江差】桧山振興局は、2010年度上期(4―9月)の管内観光客入り込みの状況を発表した。客数は7町すべてで減少しており、前年同期比5.2%減の82万4100人で、06年度から続く観光客の減少傾向に歯止めが掛からない状況が続いた。

 内訳は、道内客67万7800人(前年同期比0.7%減)、道外客14万6300人(同21.7%減)。日帰り客72万8700人(同4.3%減)、宿泊客9万5400人(同11.2%減)だった。4月に江差町の江差山車会館がオープンするなど好材料もあったが、同振興局商工労働観光課は「長引く景気低迷、口蹄疫発生の影響、夏季の猛暑や天候不順で入り込み客数が減少した」と分析している。

 管内の入り込み客は、05年度上期に前年同期比2.2%の増加を記録して以降、06年度10.3%減、07年度4.3%減、08年度11.2%減、09年度1.6%減と低迷。合併した旧熊石町が調査対象から外れた06年度上期の客数は104万100人で、実人数の比較では、5年間で21万6000人もの減少となった。

  町別では、江差町33万8800人(同4.2%減)、上ノ国町5万9800人(同7.9%減)、厚沢部町8万6700人(同2%減)、乙部町9万6100人(同9.2%減)、奥尻町2万8400人(同11.5%減)、今金町2万6600人(同15.8%減)、せたな町18万7700人(同2.5%減)だった。

 上ノ国町と乙部町は、燃油価格の上昇で、車を使う道の駅の利用客が減少。厚沢部町はイベントや道の駅の客数は増加したが、景気低迷による観光客の出控えが目立った。

 奥尻町は、フェリーの運賃助成など集客対策を講じたが減少傾向が変わらず、せたな町も、奥尻―瀬棚間のフェリー減便が響いた。今金町は7月の豪雨災害による観光施設への被害のほか、口蹄疫の拡大防止に伴うイベントの自粛や縮小により客足が鈍った。(松浦 純)


鏡もち作り大忙し

 今年もあと4日。道南のもち店では、鏡もちや正月用のもち作りで、1年間で最も忙しい時期を迎えた。函館市本町の「餅の北屋」では、松下文彦社長をはじめ4人の職人や、アルバイト従業員が総出で作業に当たっている。

 同店では、鏡もちは大きなものでは5`から神棚用の200cまで。雑煮などに入れるのし餅は白や豆、草の各種を作っている。もちをつく時は、空気を含んでふっくらとなるよう、機械できねが動く仕掛けの大きな石臼を使い、手作業で行う。つき上がったもちは素早く取り出して重さを量り、待ち受けていた職人が熟練の手さばきで形を作っていた。

 受注量は、不景気の影響を受け、ここ数年では1割ほど減ったが、31日までは多忙な日が続く。ピークは30日で、前日の午後10時から当日の正午までに約800`を作るという。松下社長は「縁起ものなので、来年も幸せが来るようにと一つ一つ心を込めて作っています」と話していた。 (小泉まや)


関東の小中学生 北の暮らし体感

 【七飯】関東から列車で道南を訪れ、冬の本道の暮らしを体験している小中学生14人が27日、七飯町の大沼国定公園でワカサギ釣りに挑戦した。大雪で包まれた公園に、子どもたちの大漁に喜ぶ声がこだました。

 札幌のNPO法人ねおすが主催した「冬休み子ども長期自然体験」の一環。子供たちは25日、東北新幹線を利用して来函。流山温泉でキャンプを行い、まき割りから炭づくりなどを通し、北国の人たちの暮らしの知恵を体得している。半数がリピーターで、先輩たちが初参加者をサポートし、ともに行動する上での大切さも学んでいる。

 この日は午前10時に、大沼公園広場横にあるワカサギの釣り堀「太公園」を訪れた。24日からの大雪で銀世界となったが、まだ氷は薄く、通路に人数分の穴を空け、糸を垂らした。体長5−7aのワカサギが続々と上がり、子どもたちは寒さを忘れて「大漁だ」と歓声を上げた。釣った魚はつくだ煮にして食べた。

 参加者は30日に寝台列車「北斗星」号で帰る予定。 (山崎純一)