2010年12月3日 (金) 掲載

◎開学精神の書飾って 夕陽会が函教大に寄贈

 道教育大函館校の同窓会「夕陽(せきよう)会」はこのほど、同校の発展を願う開学の精神の書を同校に寄贈した。橋田恭一会長らが雁沢好博副学長を訪れ、書と目録を手渡した。書は、学生に開かれた副学長室に飾られる。

 開学の精神は「土地墾闢(こんびゃく)、人民蕃殖(ばんしょく)」。明治天皇が北海道開拓に向けて発した御沙汰書から、開拓長官が函館着任時の勅語として発布したものを、函館師範学校(道教育大函館校の前身)初代校長の和田喜八郎が開学の精神として唱えたことに由来する。「荒れた土地を切り開き、人々が多産繁栄する」の意味で、課程改組を行った同校に新たなスタートを切って発展してほしいとの願いを込めて贈った。

 書は、同会の会員でもある安保勝順(号は天寿)さんに依頼し、11月上旬に完成した。2枚合わせて全紙サイズの紙に、21世紀を生きる学生の前途を力強い字体で表現した。同会は「開学の精神は、新しい大学に生まれ変わった函館校の教育理念にぴったり当てはまる」と話している。

 贈呈式で雁沢副学長は「新しい時代の教育の指標として生かしたい。毎週月曜日は副学長室を学生に開放しているので、多くの学生に見てもらいたい」と感謝した。(小泉まや)



◎桧山のスケトウ漁 休漁で所得補償要請へ 産卵期の1月 資源保護で

 【乙部】日本海のスケトウダラ資源の回復に向けて、ひやま漁協(乙部町、市山亮悦代表理事組合長)と桧山すけとうだら延縄漁業協議会(佐藤弘会長)は、本格的な産卵期に当たる1月を自主休漁期間とするため、休漁に伴う漁業者の生計を維持する、新たな所得補償制度の創設を求める要望活動を開始する。

 減少傾向が続くスケトウ資源の回復につなげる取り組みとして、水産庁や道水産林務部のほか、道内選出国会議員などに要望を行う。乙部町によると、水産資源の保護を目的とした休業補償制度は全国的にも前例が無いという。

 同漁協と桧山沿岸のスケトウ漁業者で組織する同協議会は、現在は11月から3カ月間としている漁期を自主的に2カ月に短縮。1月以降は自主休漁の措置を講じて、産卵期のスケトウを漁獲せずに繁殖を促すことで、日本海全体の資源回復につなげたい考えだ。

 政府は新年度、コメ農家を対象とした個別所得補償制度を漁業分野にも拡大する方針だが、漁業者による資源保護を後押しするため、独自の補償制度の創設と広域的な漁獲量の調整も求めるという。

 海洋環境の変化が進む日本海では、桧山沖がスケトウが繁殖できる最後の聖域≠ノなった。桧山沖で行われる伝統的なはえ縄漁は、網による漁より効率は劣るが、漁獲によるダメージは低く抑えられる。漁業者は産卵海域を禁漁区に設定。本格的な産卵期に入ると自主休漁の措置を講じたり、はえ縄の本数や釣り針の数を制限している。違反行為があった場合は罰金を科すなどの規律も設けている。

 ただ、スケトウが回遊する他の海域では、底引き網や刺し網で多量の漁獲を続けている現状は変わらない。国のTAC(漁獲可能量)制度により、過去の実績から算定した漁獲枠を使い切り、自主休漁で未達となった桧山から漁獲枠の融通を受けて漁獲を伸ばした海域もある。

 11月上旬に始まった今季のスケトウ漁では、小型で未熟な4年魚が中心になっている。ほぼすべてのスケトウが繁殖可能になる6年魚に成長する前に、他の海域で取り尽くされてしまえば、桧山沖で行う資源保護の取り組みは意味を失うことになる。漁業関係者は「桧山だけが犠牲になって資源保護を進めても効果は低い。他管内ではスケトウを一網打尽にするような漁が続いている。日本海全体で漁獲量を調整する取り組みが必要」と危機感を募らせる。(松浦 純)



◎道南に観光客呼び込め 新青森開業でJR旅連支部がパスポート作成

 函館市内や近郊の旅館・ホテル約50軒が加盟するJRグループ協定旅館連盟函館支部(松橋博支部長)は、4日の東北新幹線新青森開業に合わせ、「みなみ北海道函館観光パスポート」を作成した。函館市内や道南各地の観光施設約40カ所の割引特典が付いており、同支部は「新青森開業に向け、函館の観光アピールに一役買えれば」と話している。

 パスポートは、2015年度の北海道新幹線開業に向けて同支部内で設けた「函館地区観光誘客プロジェクトチーム」が発案。有料施設の割引のみならず、1冊持つことで道南の観光施設が分かる作りとなっている。

 利用できるのは函館山ロープウェイや五稜郭タワーなどの主要施設のほか、旅館の日帰り入浴など。パスポートには共通割引クーポンが10枚付いており、クーポンの提出が必要な施設のほか、パスポートを見せるだけで割引が受けられる施設もある。

 利用は1年限定で、来年3月末までに5万枚の利用を見込む。同支部加盟ホテルですでに配布しているほか、4日からはJR東日本の旅行商品利用客にプレゼントして利用促進を図る。同支部の斉藤利仁理事は「利用状況を見ながら、来年春以降に向けて新たにパスポートを作っていきたい」と話している。(千葉卓陽)


◎食のブランドフェア 成果上々

 加工品・流通関係者と有名百貨店バイヤーらが、道南産品の付加価値向上と販路拡大を掲げて10月に実施した商談会「道南食のブランドフェアU」の中間報告がまとまった。個別商談延べ173件のうち、商談成立が31件、交渉中48件と上々の成果。アンケートでも前向きな意見が多数を占め、関係者は「商談の成否に関わらず、互いの情報を持ち寄ることで、道南の食の魅力の磨き上げができたと思う」としている。

 フェアは渡島総合振興局と桧山振興局などの主催。講演会と相談・商談会、首長らも参加する試食会で交流を深めた。

 商談には、渡島・桧山両管内を中心に61企業が参加。バイヤーは東京、大阪、札幌、函館から26社41人が駆けつけた。25ブースで各席40分間の面談をし、地元企業担当者は持ち込んだ商品の特徴やこだわりを伝え、バイヤーが印象に残る商品の命名やパッケージの工夫などを助言した。

 地元企業へのアンケート(52社回答)に50社が「期待以上・期待通り」と答えた。主な意見は▽改良点のアドバイスで、今後の方向性が決まった▽普段店頭に立つことがなく、客の反応や評価を聞けたことは参考となり、自信にもなった▽参考になることが多く、次回も参加したい―など。

 渡島総合振興局担当者は「道南にはまだまだ素晴らしい特産品がある。食品加工においても可能性は無限で、このような催しを通じて関係機関が一丸となって地域を応援していきたい」と話していた。(田中陽介)


◎ゴミがクマを呼ぶ 桧山南部で出没相次ぐ

 【上ノ国、厚沢部】桧山南部では山林に隣接した民家や山間部を走る幹線道路などの周辺で、ヒグマの出没が相次いでいるが、こうした地域では、ヒグマをおびき寄せる生ごみや空き缶などの処理が徹底されていないなど、共通の事情が浮かび上がっている。

 上ノ国町宮越では11月29日午後9時40分ごろ、民家にある、コンポストと呼ばれる生ゴミを堆肥化する容器の近くにヒグマがいるのを住民が発見。江差署が現場で警戒しているほか、町が駆除を検討している。

 桧山南部のある狩猟関係者は「生ごみのにおいはヒグマをおびき寄せる。山間部に近い場所ではコンポストの設置は避けた方がよい」と指摘する。雑食性のヒグマは、においが強い生ごみや水産廃棄物などを好み「ごみを放置していれば何度でもやって来る。人と鉢合わせになれば攻撃してくることもある」と警鐘を鳴らす。

 厚沢部町共和でも7月、民家裏でヒグマが駆除されたが、現場周辺にあったジュースの空き缶などには、ヒグマの鋭いかみ跡が残っていた。ジュースなど天然には存在しない甘味料は「ヒグマにとって麻薬のような強烈な効果がある。味を覚えると何度でも現れる」(町内のハンター)といい、ごみの放置や空き缶などのポイ捨てが、人に接近する危険なヒグマを生み出す実態に危機感を募らせている。

 ヒグマは12月上旬から山中で冬眠に入るが、近年は冬場でも人里に出没するケースも各地で報告されている。今年1月には江差町田沢町の民家周辺で、親子らしいヒグマの足跡が発見された。別の狩猟関係者は「暖冬の影響で冬眠が遅れたり、餌不足で十分な栄養を摂れないヒグマが、年が明けても餌を求めて歩き回っている可能性がある」と注意を呼び掛けている。(松浦 純)