2010年1月20日 (水) 掲載

◎大動脈手術 新手法で成功 函病、国内で報告例のなし

 市立函館病院の心臓血管外科科長の森下清文医師は、国内でこれまでに正式な報告例がない、腹腔(ふくくう)鏡を使用した腹部大動脈瘤(りゅう)周辺の手術に成功した。森下医師は「これまでの手法に比べ手術時間が少なく技術的にも容易」とし、5月以降に学会で発表するなどしてこの方法を伝える考え。

 腹部大動脈瘤は、心臓から出た大動脈の、へそ付近で左右の足に分かれる直前が膨らみ血管壁が薄くなる状況で、放置すると破裂の危険がある。2007年ごろから普及してきた治療法では、足の付け根付近から血管内部にワイヤを通し、これに付けて患部に送り込んだ逆Y字型の人工血管「ステントグラフト」を開いて血管内部に密着させ、新たな血管とする。森下医師によると、現在では腹部大動脈瘤手術の約半数が、この方法で行われているという。

 しかし手術した患者のうちおよそ1%の割合で、血流がなくなった瘤の部分に新たな血管がつながり、再度破裂の危険が発生する場合がある。同院では08年秋にこのような患者がいることが分かったが、国内で主に行われる金属製の「コイル」を新たな血管に入れて閉塞(へいそく)させる方法では時間がかかったり、完全でない例もあるため、別の手術方法を探っていた。

 森下医師は、胆石の手術などで一般的に使われる腹腔鏡を用いた方法に着目。昨年11月に問題の血管と瘤を切断する手術を行い成功したが、この方法が国内では報告例がなかった。森下医師は「実際に目で見て手術を進めるので確実。心臓血管外科の分野では思いもよらなかった方法で、他の医師にも伝えたい」と話す。

 ステントグラフトを用いた手術を広めた札幌医大の栗本義彦准教授は「今回のような手術が適用できるかは新たな血管ができた場所による」としながらも、「安全で短時間に手術できるのは患者の負担軽減となる」と評価する。(小泉まや)



◎市民体育館 西尾市長「現在地で増築」 市議会総務常任委提言

 函館市議会の総務常任委員会(浜野幸子委員長)は19日、老朽化した市民体育館(湯川町1)の整備に関する提言をまとめ、西尾正範市長と多賀谷智教育長に提出した。西尾市長はこれに対し、現在地で改修し、メーンアリーナを増築する方針を明言した。

 同委員会は昨年3月から体育館に関する議論を続け、同10月には長崎県と呉市(広島県)への視察を行っている。学識者や市民による「市民体育館あり方懇話会」が昨年12月、「現在地での増改築が望ましい」と提言書を市教委に提出したことを踏まえ、内容をまとめた。

 提言は大きく5項目からなり、立地場所の具体的な明記はしていないが、整備方針について「現施設の改修にとどめず、新築か新メーンアリーナを増築、整備すべき」としている。

 また、具体的な整備内容として、「あり方懇話会」の内容に沿い、バスケットボールコート3面、バドミントンコート16面分の面積確保のほか、合併特例債の活用による2014年度までの完成などを求めている。

 西尾市長は懇談の中で、現在地への増設について「交通の便も良く、サブアリーナを持つことで利便性が高まる。この進め方がリーズナブルと思う」と述べた。

 新年度以降、整備基本方針の策定などが見込まれており、市教委生涯学習部は「特例債の活用を考えれば年次が限られることを踏まえ、庁内議論を経てスケジュールを検討していく」と話している。(千葉卓陽)



◎函館海洋気象台の観測船「高風丸」最後の出航

 3月末で廃止される函館海洋気象台の観測船「高風(こうふう)丸」(487トン)が19日、函館港西埠頭(ふとう)から最後の航海に出た。29日間の定期気象観測で、岸壁には60年余りの歴史に幕を閉じる“海の気象台”の最後の雄姿を目に焼き付けようと、乗組員の家族やOBらが見送った。

 高風丸は全国に5隻ある海洋気象観測船の一つで、天気予報などに必要なデータを得るため、季節ごとに年4回(計170日間)、北海道や三陸沖などで観測航海を行っている。気象庁は昨年末、衛星技術の向上や大型船への業務集約化のため、年度内で高風丸を含む3隻の引退を決めた。

 今回は船員22人と観測員7人が乗り組み、海中の水温や塩分、海上の気圧などを調査するほか、漂流型の「ブイロボット」を使って波の高さなども計測する。今回は塩釜港(宮城県)などを経由する約4700キロの行程で、2月17日に函館に帰港する予定。

 この日は乗組員が入念に搭載機材を確認し、午後2時ごろ、釧路・根室沖に向けて出港。定年のため今回の航海で引退する加村正巳船長の妻里子さん(55)は「きょうは特別な思い。とにかく最後まで無事で帰ってきてほしい」と話し、娘や孫と一緒に手を振った。

 岸壁で見守った高風丸の元船長、早瀬孝重さん(69)は「冬場はしけで大変だった記憶がよみがえる。戻ってくるときも出迎えたい」と感慨深げ。同気象台元幹部の男性(67)は「海洋気象データは即効性はないが、長年の地道な蓄積が肝要。観測船の廃止は気象台から手足が奪われるようなもの」と残念がった。(森健太郎)


◎函館中部高の仙石さん海外大に推薦合格

 函館中部高3年の仙石未和さん(18)が、アイルランドの国立ダブリン大とイギリスの国立バンガー大の推薦試験に合格した。同校の高大連携協定を活用し、海外大学への進学を決めた2人目となる。仙石さんは「いろいろ感じ取り、絶対に頑張りたい」と期待に胸を膨らませている。

 同校は英語教育に力を入れており、2008年5月には両大学を含む海外の4大学と協定を締結した。協定によって連携大への推薦入試ができるほか、教材開発や語学研修などに取り組んでいる。昨年度は初めて瀬川真司君がこの制度を使って進学し、現在もバンガー大で勉学に励んでいる。

 仙石さんは以前から海外に強いあこがれを抱いており、昨年、先輩の瀬川君が推薦入学したのを知って受験を決意した。心配する両親を何度も説得し、昨年12月に神戸市で試験を受けた。合格した時は「喜びが爆発した」という。

 4月からは国立大の出先機関にある留学生向けコースに1年間通って基礎的な学習をし、その後、いずれかの大学に進む予定だ。初めての留学生活に向けた目標を「まずは生活レベルの英語を身に付けたい」と話し、「将来はさまざまな国の人と一緒に働くような世界とかかわりのある仕事に就きたい」と語る。「両親に感謝している。自分のやりたいことができる分、絶対頑張りたい」と意気込んでいる。

 英語科の今井康人教諭は「非常に熱心な生徒。瀬川君も海外の大学で好成績を取っており、中部高生の力を感じる。仙石さんも成功して後輩の良いモデルとなり、海外進学が学校の伝統になれば」と喜んでいる。(新目七恵)


◎名所、イベント紹介…函館観光トランプ発売

 函館国際観光コンベンション協会は、市内の観光名所やイベント、食などを写真と文で紹介する「函館観光トランプ」を発売した。遊びながら函館の魅力を知ってもらう狙い。同協会は「子供からお年寄りまでが楽しみながら函館への理解を深めてもらい、観光客誘致につなげたい」としている。

 ブランド総合研究所(東京)による昨年の地域ブランド調査で、魅力度ランキング第1位となった函館の知名度アップを図ろうと製作。トランプは、名刺ほどの大きさで、ジョーカー2枚を含む54枚入り。すべてのカードに函館にまつわる人物や風景などを紹介する写真とその説明文が記されている。

 ハートなど4種類あるマークの「A(エース)」は高田屋嘉兵衛や土方歳三などの歴史上の人物、「2」は戸井マグロや塩ラーメンなどの函館名物が取り上げられている。

 「3」から「K」(キング)までは、教会や寺院などの歴史的建造物をはじめ、縄文遺跡、五稜郭公園の桜などの風景、「はこだてクリスマスファンタジー」などのイベントの写真も載せられている。「ジョーカー」は、函館を象徴するイカや教会のイラストがカラーで描かれたマンホールのふたで、「市内に点在しているから是非(ぜひ)見つけてね」とPRしている。

 価格は840円で、1000個限定。同協会のほか、市内の観光案内所と宿泊施設、旧イギリス領事館や函館山ロープウェイ山頂、五稜郭タワー、函館空港2階の各売店、文教堂書店昭和店で取り扱っている。問い合わせは同協会TEL0138・27・3535へ。(宮木佳奈美)