2010年1月24日 (日) 掲載

◎豊漁できょうにも終漁 スケトウダラ刺し網

 豊漁が続く噴火湾を中心とする道南太平洋海域のスケトウダラ刺し網漁が、国が定めた漁獲可能量(TAC)に例年より1カ月ほど早く達する勢いで、24日の水揚げで今季の操業を終える見通しだ。主漁場の一つ、函館市南茅部地区では23日早朝、今季最後の投網を終えた。関係者からは資源管理型漁業の制度とはいえ、漁期を残しての終漁に憤りの声も上がっている。

 渡島支庁水産課によると、18日現在のスケトウの漁獲量(速報値)は、渡島管内が前年同期比約1.5倍の約2万6300d、胆振管内が同約1.2倍の約2万200トンで、年度内のTAC枠の約95%を消化。ここ数日は荒天で漁に出られない日が続き、23日の投網分を24日に引き揚げて終漁となる公算が大きい。

 TAC制度では本年度、渡島と胆振管内分として年内に3万4000トン、年明け以降に1万トンの計4万4000トンが配分設定されていたが、今季は10月1日の解禁直後から豊漁が続き、年明け以降分を前倒しし、年明け後も定置網などに割り当てられる5000トン分を融通させていた。

 南かやべ漁協では、今季の豊漁を受け、減網や出漁規制などの自主的な対策も打ってきた。中村正俊常務理事は「浜の漁業者すべてがTACや資源量評価の算定基準に不満を抱えている。制度は十分理解しているが、1カ月も出漁できなければ死活問題」と話す。

 今季は魚価も低迷し、特に10月のはしりの時期は平年の半値近い1キロ30―40円台と振るわなかった。同地区の男性漁師(50)は「魚がいないならあきらめもつくが、魚探(魚群探知機)に反応があるのに港に引き返すのはつらい。安値とのダブルパンチで、このままではスケトウ漁では食っていけない」とやり場のない怒りをぶつけている。(森健太郎)



◎ニラパワーで目指せ全道 生産組合がドッジボールチームにユニホーム贈る

 【知内】函館市民体育館で24日に開かれる「第19回春の全国小学生ドッジボール選手権」の道南地区予選を前に、知内町ニラ生産組合(石本顕生組合長、74戸)は23日、知内小学校(伊藤剛史校長、児童189人)のドッジボールチーム「知内ニラパワーズ」にユニホームを贈った。団員らはニラ生産者らの熱い応援を受け、3年連続の全道大会進出を目指す。

 同組合は地域貢献のため、以前からニラパワーズへのサポートを続けていたが、ユニホームを贈るのは初めて。

 ニラをイメージした緑色で、胸には白い字で大きく「知内ニラパワーズ」と書かれている。緑色の鉢巻きも用意し、練習終了後に石本組合長が同小を訪れ、贈呈式が行われた。石本組合長は「大会にはユニホームを着て、元気にプレーしてください」とあいさつし、プレゼントした。

 森友輔主将(6年)は「かっこいいユニホームをありがとうございます。みなさんが一生懸命作ったニラを食べてスタミナをつけました。全力でプレーします」とお礼を述べた。受け取った団員らも大喜びで、必勝を誓い合った。

 同チームは昨年、一昨年と2年連続で全道大会に出場しており、この日も気合の入った練習が行われ、体育館にはメンバーらの力強い掛け声が響き渡った。攻守の連係なども息はぴったり。捕球したボールを素早く投げるなど、コートを所狭しと走り回っていた。

 森主将は「チームワークはばっちり。全道大会に絶対行きます」と気合十分。石本組合長は「地域で頑張っている子どもたちのために何ができるかを考え、ユニホームを贈ることを決めた。大会も頑張ってほしい」と声援を送っていた。(松宮一郎)



◎「ちょっと暮らし」利用者が大幅増 函館市本年度上半期

 函館市内に短期間移住し、生活を体験する事業「ちょっと暮らし」の利用者が増えている。本年度上半期(4―9月)の利用者は44組90人で、過去3年の年間実績を上回るとともに、同事業に取り組む道内52市町村中では最多。定住化サポートセンターを持つ市企画部は「観光リピーターの利用や、民間の各種体験事業が豊富にそろう点などから増えているのでは」と話している。

 市は「団塊の世代」の退職を控えた2006年度から、同世代をターゲットに、函館で第2の人生を過ごしてもらおうと「ちょっと暮らし事業」を開始。市内のホテルや旅館、マンションなど23カ所を滞在施設として仲介している。

 過去3年間の実績は、06年度が23組52人、07年度が25組56人、08年度は11組18人。また、本年度上半期の平均滞在日数は8・6日で、3年間の同15・9日を下回っている。

 06年度から同事業の仲介や移住相談などを行っていた民間企業「北海道コンシェルジュ」が昨年度限りで撤退したため、本年度から利用実態の把握方法が各ホテル、旅館から報告を受けて集計する方式に変更された。

 このため、市企画部は「昨年度までとの単純比較はできないが、東京でのプロモーションの際の反応はいい。観光目的で何度も訪れるうちに利用したり、民間が行う各種観光体験が好調の要因では」と話す。加えて旅行会社による格安パックツアーも数多いことから「申告していない移住者も多く、潜在的な需要は高い」とみる。

 同部は現在、新年度に向けて各宿泊施設を対象に参加意向調査を行っている。「本年度はマンションの参加が2件にとどまり、滞在日数を増やすにはキッチンの付いた住宅施設の増加が必要。冬場の利用促進も図っていきたい」と話している。(千葉卓陽)


◎がん患者への支援 いかに 函病で集会

 患者の体験談などを通じて地域のがん医療について考える「がんタウンミーティング2010inはこだて」(渡島保健所主催)が23日、市立函館病院(函館市港町1)で開かれた。医療関係者や患者、家族らが実例を報告し、がん患者への支援の在り方を探った。

 長年にわたり死亡原因1位のがんについて理解を深め、早期発見に向けたがん検診の受診率を高めようと、道南では初めて開催。この日は患者や家族、医療関係者ら約160人が参加した。  はじめに市立函病の木村純副院長ががん医療の現状を紹介。男女とも2人に1人ががんに罹患(りかん)する統計を示し「患者の6割が在宅療養を望むのに、家族負担への懸念から9割が病院で亡くなっている。家族を中心に医療機関や訪問看護などと一層の連携が必要」と指摘した。

 函館おしま病院の福徳雅章院長は緩和ケアの重要性を語り「体と心の苦痛を同時に理解することが大切。その人らしさを尊重し、患者のニーズに合った地域医療サービスを」と強調。訪問看護ステーション西堀の池田ひろみ所長は「訪問看護は患者や家族の不安を一瞬でも取り除くこと。より良い死を迎えるのではなく、より良く生きるためのお手伝い」と話した。

 続いてがん患者の家族ら3人が実際の体験談を発表。弟を胆管がんで亡くした市内の武知美和子さんは、弟が病床で残した詩歌の作品集づくりを通じた家族のきずなを説き「毎日が期待と不安の繰り返し。弟や義妹から生きる勇気をもらった」と打ち明け、会場からはすすり泣く声も漏れた。

 このほか、市内の泉光子さんは乳がんだった妹が受けた在宅ケアをスライドと手記で紹介。乳がんの抗がん剤や放射線治療を受けた堂林真弓さんは、がん検診の早期受診や、患者会などのネットワークづくりを勧めた。(森健太郎)


◎文字とアート魅力融合 函館美術館

 道立函館美術館の特別展「文字とアートの素敵な関係」が23日、函館市五稜郭町の同館で開幕した。同美術館の特色ある収蔵品77点のほか、昨年9月に同内容の「もじモジ文字展」を開催した道立帯広美術館からも23点の貴重な作品を出展している。4月11日まで。

 文字とアートの魅力を再発見し、その「素敵な関係」を探ろうと企画した。展示スペースでは作品を「文字の精神」「文字の風景」「文字と運動」「文字と記号」の4コーナーに分けて展示。文字の成り立ちから現代美術までを絵画、書、陶芸などの作品とともに説明付きでわかりやすく紹介している。

 全体的にシックな色合いだが、ひらがな51音を神仏を祭るように厨子(ずし)に納めて森羅万象を表現した平林薫さんの作品や、中国殷(いん)代後半期の亀甲文字、アメリカを代表する芸術家アンディ・ウォーホルの「キャンベル・スープU」などが来館者の感性を刺激している。

 観覧料は一般500円、高大生300円、中学生以下無料。休館日は月曜(祝日は開館)と3月23―3月31日まで。時間は午前9時半から午後5時まで(入場は午後4半まで)。(小杉貴洋)