2010年1月29日 (金) 掲載

◎一緒に旅した気分に…全盲の写真家・大平さんカレンダー作成

 国各地をめぐる単独の撮影旅行を続けている全盲の写真家、大平啓朗さん(30)=函館在住=が、旅先で撮った写真を使った卓上の「おーちゃんカレンダー」を作成した。1セットは15枚。沖縄や大阪、鳥取など国内のほか、アメリカやフランス・パリなど海外でも撮った作品30枚から好きな写真を選べる仕組み。

 大平さんは障害者に対する偏見を少しでもなくし、カメラの腕を磨こうと昨年6月に函館を出発した。沖縄を起点に北上し、民家に泊まりながら出会いの輪を広げ、1月4日までで37都道府県の61カ所に宿泊した。

 カレンダーは「訪問地や旅の様子を月替わりで見てほしい」との思いから企画。表紙はスキューバダイビングやパラグライダーに挑戦した大平さんの写真を活用し、各月には山奥で“仙人”のような暮らしをする滋賀県の男性や雪の積もった鳥取砂丘などが掲載され、旅の触れ合いや光景が伝わってくる。大平さんが旅行中に作った歌詞カードもある。大平さんは「知らない場所がたくさんあり、いろいろな人に出会って成長させてもらった」と振り返り、「一緒に旅した気分になって」と話す。近く函館を発ち、旅行を再開させ、3月末にはゴールの稚内を目指す予定で「新しいことにワクワクする」と語る。

 100セット用意し、1セット1050円で販売する。益金は函館のミュージシャンのCD作りなどに充てる。函館市元町の喫茶店やまじょうか中島町12の地域サービスセンター函館などで取り扱う。問い合わせはインクルーシブ友の会 ピースプロジェクト島信一朗さんTEL0138-57-3157。(新目七恵)



◎10年度にこころの健康調査と研修…対策連絡会議

 函館市自殺予防対策連絡会議(議長=三上昭廣函館市医師会理事)は2回目の会議を28日、市総合保健センターで開いた。2010年度の取り組みとして、新たに「心の健康調査」(仮称)と人材育成事業「自殺予防ゲートキーパー研修」を実施することを決めた。新年度は、地域自殺対策緊急強化基金から200万円を活用できる見込みで、事業費はすべて同基金で賄う。

 同会議は08年9月に設立。市の各関連部局や市教育委員会、消防、学識経験者、道警、市の小・中学校長会、労働基準監督署、市商工会議所、法テラス、精神保健協会、民生児童委員などで構成する。昨年3回実務者会議を開催して状況を確認したほか、普及啓発事業として相談窓口一覧を作成した。

 事務局の山田隆良市立函館保健所長は「知恵を合わせて自殺に至るさまざまな課題を解決し、最終的には自殺対策につなげたい」とあいさつ。これまでの活動状況を確認し、今後の方向性について話し合った。

 新事業で行う調査は、無作為抽出した市民に対し、自殺についての意見などを問う予定。具体的な質問内容は今後の実務者会議で調整後、夏をめどに実施し、10年度内にまとめる。研修では、講演やワークショップなどを実施し、地域や職場で自殺のサインに気付いて対象者を見守り、支援につなげる人材を育成する。道南では2月に北斗市で行われるため、夏以降の開催を目指す。

 市消防は、09年の自損行為による搬送件数などを報告。救急隊が認めた件数は249件あり、搬送された人のうち女性が約7割を占め、中でも20代が特に多い実態を伝えた。多重債務相談などを受け付ける「市くらし支援室」には、昨年4月の設置から12月までの9カ月間に400人を超える相談があった。多重債務と精神疾患には相関性があり、実態から「命を絶つ要因の一つになっている」とした。(小泉まや)



◎福祉のまちづくり賞に大沼多目的会館

 【七飯、函館】道主催の福祉のまちづくりコンクールで、七飯町の大沼多目的会館「ポロトポント」(大沼町502)が公共的施設部門で福祉のまちづくり賞を受賞した。建物のバリアフリー化など障害者、高齢者に配慮した優良事例を表彰する賞で、建物を所有する七飯町と設計した山田総合設計(函館市日吉町、山田俊幸社長)にこのほど、高橋はるみ知事から表彰状が贈られた。

 1998年4月に道福祉のまちづくり条例を施行したのをきっかけに、その取り組みの一環として毎年コンクールを実施している。

 ポロトポントはアイヌ語で「大沼、小沼」を表し、昨年2月にオープンした。老朽化した旧大沼公民館を移転改築し、多目的な交流施設としての機能に加え、町役場の大沼出張所も併設している。総事業費は約1億3000万円。

 出入り口付近に車いす用の駐車場を設けているほか、玄関スペースに手すり付きのベンチやオストメイト(人工肛門や人工ぼうこうを備えた人)対応トイレを設置。廊下や各部屋の出入り口をゆとりある造りとし、窓の開口部も広くとり自然光を取り入れるようにしている。また、玄関スロープにひさしを設けてロードヒーティングの設置費用を抑えるなど低コスト化も実現し、道南杉や七飯石といった地元資材を活用した点も評価された。

 山田総合設計は森町のレストラン「ケルン」やブロイハウス大沼など数多くの公共施設や商業施設を手掛けており、函館市の都市景観賞なども受賞している。山田社長は「過剰に整備しすぎることなく、すべての人が癒やされ、利用しやすい施設を目指して設計に当たった」と話す。

 施設を所轄する町町民生活課の田村敏郎課長は「取り組みが評価され光栄。今後も町民の目線に立った施設づくりをしていきたい」としている。

 同部門では同会館のほか、5施設が受賞し、道南では商業施設の「フレスポ函館戸倉B棟」(所有者=大和リース、設計者=大和リース札幌支店一級建築士事務所)も選ばれた。(鈴木 潤)


◎公明・参院選比例区…横山氏擁立を決定 国会議員 道南3人の可能性

 公明党は28日、今夏の参院選比例区に函館市区選出の横山信一道議(50)を擁立することを決めた。引退する風間昶氏(62)の後継として、北海道ブロック重点候補となる。参院選比例区には元函館市議の板倉一幸氏(58)も民主党からの出馬が決まっている。道8区選出の逢坂誠二衆院議員(50)=民主党=と合わせ、参院選の結果次第では函館・道南ゆかりの国会議員が3人となる可能性がある。政治カラーの違う各氏が能力を発揮することで、さらなる道南振興に結びつくとの期待が高まっている。

 横山氏は帯広市出身、北大大学院水産科学研究科修了。道立函館水産試験場勤務を経て2003年の道議選函館市区で初当選し、現在2期目。党北海道本部幹事長代行を務める。

 道南選出の国会議員は、衆議院中選挙区時代の定数3に加え、1980(昭和55)年には元厚相の故田中正巳氏(自民党)が衆院から参院にくら替えして2期12年務めており、92年まで計4人が存在した。小選挙区移行後は96年から2000年まで、8区選出の鉢呂吉雄氏(民主党)と比例道ブロック選出の金田誠一氏(同)、佐藤孝行氏(自民党)と衆院議員3人を擁した時期もある。

 逢坂氏は昨年8月に比例からくら替え出馬して2期目の当選後、政権交代によって「与党代議士」となり、鳩山内閣で地方分権担当の首相補佐官に就任するなど活躍の場を広げている。

 参院選比例区に出馬する2人のうち、板倉氏は私鉄総連の組織内候補として、地域公共交通の確保を掲げるとともに、11年に及ぶ地方議員経験がセールスポイント。一方の横山氏は水産学博士として水産行政に明るく、昨年の政府の事業仕分けで廃止判定された「知的クラスター創成事業」の復活にも尽力した。

 公明党函館総支部は「引退する風間氏がライフワークとして北海道新幹線整備に取り組んでおり、横山氏が後継として引き継ぐことになる」と話す。同氏の出馬は地元経済界にとっても、早期開業と札幌延伸をけん引する存在として期待されそうだ。(千葉卓陽)


◎【企画・生活保護の現状と課題A】予算と保護率…函館突出

 増加し続ける保護費。道南全体でもこの状況は同じだ。2008年度の平均と09年12月の保護率を比べると、道南2市16町のうち森と木古内、上ノ国の3町を除く2市13町で軒並みの増加となった。ところが、自治体ごとの保護率には大きな差が生じていることが分かる。

 中でも予算規模と保護率で突出するのは函館市だ。09年11月には、全道の市で1位の釧路市(50.1%)や2位の三笠市(47.1%)、3位の歌志内市(42.6%)に次ぐ42.5%の高率だった。市内でも高齢世帯が多い中央福祉事務所管内は、釧路市を上回る52・2%と、特定の地域への偏りが際立った。

 しかし、函館に接していても北斗市や七飯町は10%台。20〜30%台の自治体が大半を占める道南で、群を抜いて低いのはなぜか。函館や北斗、渡島保健福祉事務所の関係者は、北斗と七飯が函館のベットタウンとして人口を伸ばした経緯を挙げる。マイホームを購入する経済力があるなど「仕事があり収入がある世帯が多い」と口をそろえる。函館市内では後から宅地化が進んだ亀田福祉事務所管内、住宅が集中する北斗市七重浜でも同じ構図が垣間見える。  函館市福祉部は「仕事を求めて移り住んだ函館で生活に行き詰まり、生活保護を申請する人が多い」として、都市ゆえの“引力”を感じている。

 市内への流入は渡島・桧山管内からが多数を占めるが、最近では、四国や中国地方などで働いていた函館出身者がUターンするケースも目立つ。「仕事を求めて函館に帰っても不況で仕事がない。結局は保護対象になってしまう」(同部)。人口減に歯止めがかからない半面、保護世帯が際限なく増え続けている。

 桧山管内でも、職を求めて大きな町に集まる傾向がみえる。行政・経済中心地の江差町の保護率は、函館市を上回り道南で最高の割合だ。同町幹部は「近隣町に住んでいた母子世帯などが友人知人を頼ったり、仕事や住居を求めて流入してくるケースも多いのではないか」と語る。

 一方、自治体間で生じる支給額の差が原因とみる関係者も多い。保護費は都市部ほど支給率が高くなる仕組みがあり、地域の支給水準を示すのが「級地」。函館市は道南で唯一の「2級地の1」で、北斗市や七飯・江差・長万部町は「3級地の1」、このほかは最も保護費が低い「3級地の2」となっている。

 函館市の保護世帯では11月から3月の冬期間、標準的な3人世帯(33歳男、29歳女、4歳子ども)の場合、1カ月に22万2000円がもらえる。しかし北斗市では19万3000円、木古内町では18万4000万円と大きな開きが生じている。年間にすると24万円もの差は、3級地の2だった函館市の旧4町村地域にとって、「隠れた合併効果だった」(同市幹部)との見方もある。

 一方、医療機関の一極集中や地方の医療過疎が、生活保護世帯の都市部流入にも大きな影を落とす。渡島保健福祉事務所は「自宅と都市部にある病院との何時間もかかる往復で病気を悪化させる患者もいる」として、医療サービスを必要とする保護世帯が“医療難民”として都市部に流れ込む現状を指摘する。函館市の医療機関に頼る北斗市なども、こうした状況を認識する。

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 級地 1から3級地まであり、さらに各級が1と2に分かれ全部で6段階ある。1級地の1は東京都の区部。1級地の2は千葉市や、道内で最も高い札幌と江別市。函館市と同じ2級地の1は旭川市や小樽市。道南の町は3級地。(小泉まや)