2010年1月30日 (土) 掲載

◎キタジマ、道ハサップ認証取得

 学校給食用パン・米飯製造のキタジマ(函館市西桔梗町、北島孝雄社長)は道の自主衛生管理認証制度「北海道HACCP(ハサップ)」の認証を取得した。食品の安全確保に向け、工程ごとに衛生管理の徹底を図るシステムで、パン製造工場としては国内初の認定という。

 同社は食品業界の不祥事が相次いだ07年から、認証に向けた取り組みをスタート。外部委託せず、自社で衛生管理システムを構築した。認定審査会で1―8まである評価段階のうち、上から2番目の「7」と判定され、昨年12月18日にパン製造と米飯製造のそれぞれで認証を得た。

 同社は2000年創業で、道南の小中学校110校に供給するパンと米飯を合わせて1日3万食製造する。特にパン製造では小麦粉やイースト菌を扱うため、雑菌が活動しやすく、より高度な衛生管理が求められ、認証へのハードルも高いとされる。

 同社では、2000年に完成した現工場の設計段階からハサップを意識し、施設内を汚染区域、非汚染区域に分けた構造にしてある。製造工程でも原料や製品を外気に触れさせないよう、粉をパイプで製造ラインに送り、その後の工程も機械で行う仕組みにした。

 ハサップ取得に向け、原料や製品の搬出入時にも、外気を入れないよう搬入口と運搬用トラックとの間のすき間を埋める「ドッグシェルター」を設置したほか、細菌検査室も新設。ソフト面では、各作業工程や材料の保管状況、手洗いなどの清潔確認まで細かくチェックし、すべて記録に残している。北島社長は「従業員の安全意識が向上したほか、子供たちや保護者に安心感を与え、企業の信頼につながる。今後は最高評価の『8』にレベルアップしたい」と話している。

 ハサップは、仕入れから出荷まで段階ごとに行う衛生管理で、各工程の問題点を取り除き、安全性を高めるのが狙い。何か問題が起きた時に原因を特定し、検証しやすくなる。国や一部の都道府県にあり、道は07年度から制度を開始。道内では同社を含め24件が認証を受けている。(宮木佳奈美)



◎コープ誘致問題 町議会が特別委設置へ

 【江差】旭友ストアー江差店の閉店問題をめぐり、生活協同組合・コープさっぽろ(札幌)が、用地確保を条件に、市街地での新規出店を検討する方針を示したことを受け、町議会は29日夜の全員協議会で、誘致の是非や用地確保などを審議する特別委員会の設置を決めた。

 町は28日、幹部職員2人をコープさっぽろ本部に派遣。店舗誘致をめぐるコープ側の意向を確認した。コープ側は@住宅に囲まれた最低限2000坪(6600平方メートル)の用地が必要A用地確保や町内調整を考慮して一定の期間を設ける―との条件を提示。その上で、現在の旭友江差店については、店舗改修などの初期投資に5000万円程度が必要となるため、新店舗開店までの暫定的な営業継続は困難との認識を示したという。

 町議会は、遅くとも3月の第1回定例会までに特別委を設置する方針だ。コープ誘致をめぐって町や町議会では、旭友店舗に近い江差中学校の敷地を活用する案も浮上している。道教委が2007年、旧江差南高の校舎と敷地の無償譲渡を打診した際、町内では老朽化が進む江差中の移転論が持ち上がった。だが、移転に伴う校舎改修費などの財政負担が重く、商工業者を中心に「中学校が無くなれば商店街の活気が失われる」と反対の声もあり、受け入れを断念した経緯がある。

 過去の公共事業に伴う多額の借金を抱える町は本年度、自治体財政健全化法に基づく早期健全化団体の指定を受けた。町が用地確保に乗り出す場合、多額の財政負担が財政再建の道筋を危うくする懸念がある。また、コープ誘致で消費者の利便を確保しながら、地元商店街と相乗効果を生み出し、経済活性化につなげることができるのか。町は説明責任を果たす必要がある。近隣町を含む商店街に一層の衰退を招く懸念から、商工業者の反発も予想され、町と町議会は難しい判断を迫られそうだ。(松浦 純)



◎万代町の「居酒屋よしの」外壁絵画取り換え 交通安全訴え 

 函館市万代町16の「居酒屋よしの」(飯野裕一店長)の外壁に飾る絵画の入れ替えが29日、行われた。麦わら帽子をかぶった男性の絵に替わり、3匹のヤギがのんびり草を食べる作品で「無事故でハッピー!!」の交通安全標語も。飯野店長(63)は「心が和む絵を楽しんでもらい、交通事故の抑止にもつながればうれしい」と話している。

 作品は、縦1.6×横1.35メートル。埼玉で絵本作家として活躍する飯野店長の二女、真樹さん(34)が学生時代に仕上げた日本画で、8年前に現住所へ移転して以来、店の“看板”として親しまれている。

 真樹さんは多摩美術大絵画科を卒業後、現在は埼玉で絵本作家として活躍中。幼児向けの作品を仕上げ、親子の物語に登場する父親は「飯野店長の笑顔にそっくりだ」と常連客がよく言葉にするという。

 店内の座敷席の壁一面にも巨大な絵画がある。真樹さんの大学卒業作品で、居酒屋のカウンターで客がにぎわう様子が描かれている。

 この絵画について飯野店長は「いつも見ているので、新鮮さはないよ」と照れ笑いしながらも「この絵を見ると仕事に張りが出る。娘が小さなころに親の働く姿を見て描いたと思うと、うれしくて」。

 これまで、外壁に飾られていた麦わら帽子で日焼け姿の男性が水田に立つ作品は、「長年お疲れさま」と同店でこれからも大事に保管される。

 店は国道5号沿い、函館西署近くにある。(田中陽介)


◎函館空港の乗降客13.8%減の150万人

 函館空港の2009年の乗降客数は前年比13.8%減の150万3855人だったことが、函館市のまとめで分かった。景気の低迷や新型インフルエンザの流行、台湾からの国際チャーター便の減少が影響した。市は「悪条件は出尽くしたので、今年は全日空による関西線の季節増便の再開などの明るい要素でプラスに転じれば」としている。

 国内線は前年比11.3%減の143万6297人。特に関西線は同52.0%減の7万6796人と半減し、日本航空が同路線を廃止した影響が大きく表れた。東京線も減少し、同6.8%減の109万1575人だった。道内線は同8.8%減の15万7105人。ただ、生活路線としても利用されている北海道エアシステムの奥尻線は同1.1%減の1万188人とほぼ前年並みの実績だった。

 国際線は前年比46.0%減の6万7558人。台湾のマンダリン航空が日本へのチャーター便の運航をやめたため、国際チャーター便が同68.2%減の2万8476人に落ち込んだ。昨年5月以降、運休が続いているサハリン航空のユジノサハリンスク線は、同78.8%減の687人にとどまった。一方、大韓航空のソウル線は利用が好調で、同18.3%増の3万8242人と唯一、前年実績を上回った。

 函館空港の乗降客数は1998年の248万9218人がピーク。2002年に240万人台となったが、その後は07年に200万人を割り、減少が続いている。市空港課は「利用増に向け、引き続きエア・ドゥ(全日空と共同運航)の東京線1便の機材の大型化を働きかけていきたい」としている。(宮木佳奈美)


◎【企画・生活保護の現状と課題B】少ない年金、深刻な就業難

 保護世帯 3日やったら やめられない―。受給者の本音か冗談か、または受給者へのねたみか、皮肉交じりで多くの関係者が口にする。働かずして多くの金を手に入れることができる生活保護制度の内部では、一部に不正受給という暗部もある。

 函館市福祉部の生活保護「苦情処理ファイル」には毎年度、およそ50件の通報内容とともに、苦情と処理経過の詳細がつづられている。多くを占めるのは「受給者がパチンコをしている」や「受給者なのに車を持っている」といった内容。中には「受給していることを自慢された」「所得があるのに申告していない」といったものも。

 同部は「通報が事実でない場合や、保護に対する理解不足から誤解が生じている場合もある」とし、これら全部が事実ではないと強調する。しかし、中には通報に基づき調査した結果、保護打ち切りに発展する悪質な事例があることも事実だ。

 「保護費をもらうために書類上だけ離婚した」という事例も多い。離婚したその足で保護相談に訪れるケースは、道南の複数の窓口で確認されている。3世代にもわたり保護世帯という家系や、親族間に保護世帯がたくさんあるという事例も珍しくなく、保護が“世襲”されている実態も確実にある。同市や渡島保健福祉事務所は「保護を受けることに対する抵抗感が薄らいでいると感じる」と口をそろえる。保護の「権利」を声高に主張する受給者も少なくない現状に、現場ではモラルの低下を痛感している。

 もちろん「悪質な事例はわずか一握り」(同部)で、保護費をもらわなければ生活が成り立たない現実もある。中でも高齢者世帯は「国民年金でもらえる基礎年金(月額6万6000円)だけでは生活できない」(各関係者)。

 函館市の場合、71歳の高齢者1人世帯が無年金で生活保護を受けた場合、1カ月当たり12万円(冬期)を手にすることができる。年金があればその分、減額される。同市幹部は「老後に十分な蓄えがなければ生保を受けるしかない」とし、長年にわたり年金を納め続けた人でも、保護基準以下の金しか得ることができないという、制度の矛盾を指摘する。そして生保受給者となれば医療費は無料となり、それも保護費から賄うため財政を圧迫する。「高齢者は収入のない場合が多く、一度受給すると止めることができない」(同)。

 一方の働ける世代は、深刻な就業難により受給に追い込まれている。2008年度、函館市の生活保護開始理由では、失業(定年や自己都合含む)や事業不振・倒産、就労収入の減少、貯金等の減少・喪失など、仕事や収入に関するものが37%を占めた。道南の有効求人倍率は、0.5倍以上だった07年度までと比べ、0.4倍から0.3倍台へと急降下した08、09年度、保護率は逆に急上昇。函館公共職業安定所は「欠員となっても採用しないなど、本当に求人がない」。

 昨年12月下旬、就職や住居・生活の相談を1カ所で受け付ける「ワンストップ・サービス・デイ」(同職安など主催)には、生保や生活資金を貸し付ける窓口に、相談者が駆け付けた。

 森町出身の男性(34)は、函館市で生活保護を申請したばかり。高校を中退し首都圏などで建設業やトラック運転手の職を転々としたが昨年10月、不景気で受注がなくなった建設会社から雇用契約を打ち切られた。「実家に世話になったがこれ以上は頼れない」と、一時はJR函館駅前周辺で家のない生活を強いられた。

 「これ以上切り崩す貯金がない。どうにかしなければ」と切実な表情を見せたのは、函館市亀田港町に住む夫婦だ。高校生の子どもがおり、自身の持病で医療費がかさむ妻(47)はパート面接に3回連続で失敗して意気消沈。派遣社員として働く夫(52)の給与(毎月手取り22万円程度)と貯金でやりくりしたが、限界がきた。公共料金を滞納し、ライフラインはいつ止められるか分からない。「苦しい時にお金を貸してくれる制度とか、生活保護のことは最近テレビで知った」。

 ◆受給者への制限◆ 生活保護の受給者は、特に高い価値でなければ住居や土地を持ち続けることは可能だが、特別な場合を除き自動車は所有できない。収入がある場合は、保護費からこの分が引かれる。パチンコは「自分の金の範囲内で遊ぶのはかまわない」というのが法的な見解だ。(小泉まや)