2010年2月1日 (月) 掲載

◎大間原発に高い関心 原子力シンポに330人

 原子力シンポジウム「21世紀の原子力と環境について考える」(函館市、日本原子力文化振興財団主催)が1月31日、函館市大手町の函館国際ホテルで開かれた。原子力を専門とする大学教授3人の講演や、市民との質疑応答が行われた。約330人の市民が参加し、対岸の青森県大間町で建設が進む大間原子力発電所に関する質問が数多く寄せられ、関心の高さが表れた。

 市民に原子力に対する理解を深めてもらい、大間原発に関する市民不安を解消する趣旨で初めて開かれた。東京大学大学院工学系研究科の田中知教授、北大大学院工学研究科の佐藤正知教授と奈良林直教授の3人が講演を行った。

 始めに西尾正範函館市長が「市としてこれまで国や事業者に住民説明会を要望してきたが、望む形での開催は困難となった。これまでの時間経過も踏まえ、市の責任で開催することが最良と判断した」と開催までの経緯を説明。講演では佐藤教授が「資源が少なく経済大国の日本では、原子力はエネルギー確保のための現実的選択肢として不可欠」と述べたほか、奈良林教授は大間原発がウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を全炉心で使用することについて「ウラン資源の使用量を3分の1に減らすことができ、リサイクルとして効率がいい」などと話した。

 コーディネーターの福島敦子氏と3教授との座談会では、一部の専門家が指摘する大間原発周辺の活断層の問題などについて市民からの質問を紹介。奈良林教授は「公開された資料の中では心配ないと聞いている」とし、原発から放出される温排水が海に及ぼす影響には佐藤教授が「温排水の影響は小さく限定的」と答えた。

 会場の市民からは「事故が起きるのか、起きないのかイエスかノーで答えて」「フルMOXの実験に私たちを使っているのでは」「子どもや孫に廃棄物を残して死んでいきたくない」などと声が挙がっていた。(山田孝人)



◎もうすぐ節分 恵方巻き多彩に

 節分の日にその年の縁起の良い方向(恵方)を向いて食べると厄をはらい、幸運を呼ぶとされる「恵方巻き(太巻き)」が、函館市内の各店舗に並んでいる。2010年の今年の方角は西南西。関西地方発祥の風習だが、道内でもここ数年、広く知られるようになってきた。コンビニエンスストアやデパート、ファストフード店などでは、洋風などにアレンジした特色ある商品を開発し、売り上げを競っている。

 丸井今井函館店(本町32)の地下食品売り場では「恵方巻き・節分特集」と銘打ち、すし職人が実演販売する「サラダ恵方巻き」(1050円)や「海鮮恵方巻き」(1575円)などを用意。同店に店舗を構えるマリー・カトリーヌでは1月27日から、限定販売となる「恵方巻きロールパン」(525円)を置いている。ペイストリー・スナッフルスでも同日から、米粉を入れて焼いた生地にフルーツとクリームをチョコのクレープで包んだ「恵方ロール」(400円)を限定販売している。丸井今井函館の関係者は「前年度比10%増の売上げが目標」と話していた。

 函館市内でチェーン展開するファストフード店「ラッキーピエロ」(王一郎社長)では今年から、「チャイニーズチキン恵方巻き」(450円)を市内5店舗で1月中旬から予約販売している。同店の人気商品「チャイニーズチキンバーガー」に使われているから揚げをメーンの具材とし、ボリューム満点だ。受け渡しは2日から4日までとなっており、同社の王未来副社長は「太巻きを食べるという文化を、若い人を中心に発信していきたい」と意気込んでいる。

 ハセガワストア(佐藤勝幸社長)では、そぼろ、かんぴょう、キュウリなどを巻いたオーソドックスな太巻き(380円)を販売。1月から予約を開始し、3日まで店頭でも販売している。同店では「昨年と同水準の計1600本の売り上げを目指したい」と話している。(黒田 寛)



◎【企画・生活保護の現状と課題D】働ける人の“出口”確保を

 「今よりもっと、自立支援に重点を置くべきだ」と、生活保護からの“出口”確保の必要性を説くのは、函館大学で福祉分野を専門とする三浦稔教授だ。「高齢化率が高く、母子世帯が多い函館市では保護率の改善は難しい。働ける人が保護から抜け出せるよう支援に力を入れるべき」と力説する。

 函館市職員として福祉部長まで務めた経験を生かし、同市福祉計画策定推進委員会で次世代部会長を務めた。作成に携わった市福祉計画の後期行動計画(2010―14年度)案は、仕事と生活の調和の実現(ワーク・ライフ・バランス)に特にこだわった。「経済界も社会福祉の観点から雇用を考えるべき」。市の自立支援プログラムは評価するが、「現状ではあまり重視されていない」と感じる。「働ける場所をどう生み出すのか。経済界とも協力して、地域ぐるみで雇用の場を作り出してほしい」と求める。

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 西尾正範函館市長は「保護者が増えることは地域活力の低下につながる」と深刻に受け止める。「財政面の損得ではなく、働く人が減ると確実に函館の力を弱める」。だが、08年度の経済危機以来、市が取り組んでいる緊急雇用対策や公共事業の前倒し発注なども「焼け石に水。雇用確保は地道に手を打つしかない」との思いを深めている。

 生保を取り巻く現状は「社会保障政策全体が制度疲労を起こしている」とし、福祉や保険、年金など制度全般の現在のあり方を見直すべきと訴える。「不公平感を生みやすい生保よりも公的年金の支給額が少ない現状は問題」とし、ようやく制度見直しに重い腰を上げた政府の動きに期待する。

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 求人倍率が下がる道南で、「会社経営の目的は雇用」とのスローガンを掲げ、社員数を増やしつつ、同時に業績をも伸ばす会社がある。昨年10月、函館市桔梗町のIT(情報技術)関連向けの企業用分譲地「函館テクノパーク」で、念願の社屋を手に入れた情報サービス業・みのり(社員114人)だ。

 同社の加藤進社長は、従業員の暮らしを顧みず、一握りの経営者だけが多くの富を手中に収める、旧態依然とした経営手法には憤りをあらわにする。「日本人の働く場所を作りたい。社員の給与を増やしたい」と熱く語り、買い手市場の今こそ、優秀な人材を獲得するチャンスととらえる。「今の函館は良い人材を採り放題だ」。

 同社の就業規則は「人間にとって労働は生きる糧」という、加藤社長の理念を前文に掲げた。「一人でも多くの人を正規採用し、憲法よりも高い水準で『健康で文化的な』生活を保証する、賃金と福利厚生を提供する」とある。

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 保護費が高いか、年金・給与が安いのか、あるいは働きたくても雇用がないのか、親兄弟で支える意識が低いのか―などの議論はある。しかし生活保護が憲法を背景に社会保障制度として存在する以上、利用されることは責められない。むしろ制度誕生から長期間が経過し、現在の不安定な社会情勢下で、例えば働いている人の給料よりも生保受給額が多いという不公平感などを生んでいることは否定できない事実だ。そうした部分こそが問題といえる。活用方法を工夫したり、さまざまな社会保障制度の整合性を図ることが必要で、より良い社会保障を目指して、国民全体に視点を置いた関係者の早急な議論が求められている。(小泉まや)


◎搭乗者が前年比18・3%増 09年利用実績 大韓航空函館支店

 大韓航空函館支店(岸田茂支店長)がまとめた2009年の利用実績によると、年間の搭乗者が前年比18・3%増の3万8242人と、06年6月の就航以来、過去最多だったことが分かった。特に12月の函館発の搭乗率は9割近くまで伸び、同社が就航する16路線中で最高。岸田支店長は「冬の北海道は人気で、さっぽろ雪まつりシーズンの2月も予約が好調」と話している。

 同支社によると、09年は函館発の搭乗者が前年比19・7%増の1万8866人、ソウル発は同17・0%増の1万9376人。搭乗率は函館発が同7・2ポイント増の65・6%、ソウル発は同6・1ポイント増の67・4%だった。

 09年で最も好調だった12月は、函館発の搭乗者が前年同月比3・4倍の2299人、ソウル発は同2・9倍の2255人。搭乗率は函館発が同42・0ポイント増の87・8%、ソウル発は同32・3ポイント増の86・1%といずれも高水準となった。

 円高で日本からの旅行者が増えたほか、ソウル経由で東南アジアなどを訪れる利用客も増加したとみられる。また、韓国の景気が回復してきたことも増加要因の一つ。韓国では札幌の人気が根強いが、函館便の方が料金が安いこともあって、函館入りして洞爺や登別、札幌などを周遊して新千歳から帰るツアーも人気を集めているという。

 函館市がソウル近郊の高陽(コヤン)市と姉妹都市提携することで合意していることも、今後のプラス要素になりそうだ。岸田支店長は「函館市の韓国でのプロモーション活動が浸透し、函館の知名度アップにつながった。姉妹都市提携も路線へのメリットが大きい」と期待している。(宮木佳奈美)


◎ハワイ目指し大海原へ 函水高・長期実習船

 函館水産高校(木村修校長、生徒481人)の長期乗船実習が1月31日、始まった。2年生36人、教員4人と乗組員27人が北鳳丸(ほくほうまる、664トン)で米国ハワイへ出航。函館港岸壁で行われた壮行式には保護者や同級生ら大勢が駆けつけ、「頑張って来いよ」と実習生を激励した。

 実習に臨んだのは、海洋技術科海技コース19人と機関工学科機関コースの17人。航海・運航技術、機器の取り扱いや保守整備、生物資源調査、海洋観測などを学び、マグロのはえ縄漁も体験する。

 出港前の壮行式で木村校長は「君たちの乗船を祝して、この冬一番の出航日和になった。不安と期待でいっぱいであろうが元気で行ってらっしゃい」と激励。実習生代表の木村雄太君(17)が「知識や技術を学ぶとともに、人としてひと回り大きくなって帰ってきます」と力強くあいさつした。

 出港前に5分間、面談時間が設けられた。家族や友人と記念撮影や固い握手を交わし、涙ぐむ親の肩をそっとなでる実習生も。同高新聞部は「ご安航を祈ります」と号外を配布。実習生全員の意気込みと先輩のアドバイスをふんだんに載せ、エールを送った。

 市内恵山町の佐藤春代さん(62)は「初孫の成長した姿を見て涙が出てきた。仲間とうんと勉強して、健康で無事に帰ってきてほしい」と話していた。

 実習船は、ハワイ北西部の漁場を目指し、日本時間17日にホノルル港へ入る。帰路は静岡清水港に立ち寄り、3月8日に帰港する予定。(田中陽介)