2010年2月11日 (木) 掲載

◎桧山古事の森を提唱…立松和平さん死去 管内でも惜しむ声

 【江差】環境保護や森づくりの活動で知られる作家の立松和平さんが8日に死去した。62歳だった。2003年から立松さんの提唱による「桧山古事の森」を舞台とする植樹動がスタートするなど大きな足跡を残した江差町でも、突然の悲報に地元関係者からも惜しむ声が上がっている。

 立松さんが提唱した「古事の森」は、ヒノキ、ケヤキ、クスノキなどの大径木を、数百年の長い年月をかけて“不伐の森”として、住民の手で守り育てながら、城郭や神社仏閣などの文化財の修復に必要な木材の備蓄を進めるもの。林野庁を中心に京都の鞍馬山、奈良の春日山、和歌山の高野山など全国で取り組みを広げている。

 未来のヒノキアスナロ(ヒバ)資源の確保を目指して03年11月には、江差町内の椴川国有林のうち約5ヘクタールが全国3番目の「古事の森」に指定され、植樹活動をスタートした。05年10月の植樹会には、生みの親である立松さんも初参加。子供たちと一緒に苗木約200本を植えた。立松さんは「住民の思いをつなげて苗木を植え続けほしい」と呼び掛けた。

 町内で森づくり活動に取り組み、古事の森の育成にも携わる坂野正義さん(74)は「突然の悲報に驚いた。なんと言って良いのか。江差にも足を運んでもらい立派に成長している苗木の姿を見て欲しかった」とショックを隠さない。

 また、桧山管内の文化財関係者は「神社や寺院など文化財の修復に活用できる直径の大きいヒバ材はほとんど残っていない。文化財の修復を輸入材に頼り切ることになれば、建物の歴史や趣を塗り替えることになってしまう。立松さんの古事の森構想は未来の住民に必ず感謝されるだろう」と語った。

 町内外の植樹活動に生かしてもらおうと、ヒバの苗木作りなど精力的な活動を続ける坂野さんは「立松さんの遺志を継いで『古事の森』を大事に育てていきたい。桧山の語源にもなった立派なヒバ森が復活することを信じている」と心に誓った。(松浦 純)



◎函館市社協が無許可で介護輸送サービス提供

 函館市社会福祉協議会(市社協、谷口利夫会長)が戸井・南茅部地域で、訪問介護や居宅支援介護に伴い提供した介護輸送サービスが、道路運送法に規定された許可を受けていなかったことが判明した。期間は最大3年1カ月間。これに伴い市社協は、サービス提供で得た1804万9730円の介護報酬を、費用を負担した保険者の函館市と利用者に返還する。

 市社協などによると、無許可でサービス提供をしたのは、市社協が運営する指定訪問介護事業所とい、同みなみかやべ、市地域包括支援センター社協(戸井地域)の3事業所。戸井地域では2003年4月から、南茅部地域では05年4月から行っていた。06年10月の法改正で介護輸送サービスには許可や登録が必要となったが、これら事業所では当時の責任者が道主催の説明会に出席していたにもかかわらず、必要な許可を受けずにサービス提供を続けてきた。

 09年5月以降、人事異動でこれら施設の担当となった職員が車両の稼働状況に疑問を抱き、組織で調査したことから判明した。同時に、サービス対象とならない介護度が軽度の人が利用していた実態も明らかに。同9月から戸井地域の、同10月からは南茅部地域のサービスを無料の状態で継続。今後許可を得る方針だ。

 サービス全体の利用者は、延べ1035人。市への介護報酬返還額は1662万5255円で、多額のため、事業所ごとに一括または5年間の分割で返還する。1割負担となる利用者への返還額は142万4475円。こちらは3月末までに説明会を行い、返還する予定。

 今回の件について市社協は「専門職員として法改正についての理解が不足していた」とし、今後はグループでの勉強会を行うなどして情報収集に努めるとする。

 しかし市社協の介護報酬過剰受給は、これまでにも起きている。市福祉部から同件の報告を受けた10日の市議会民生常任委員会(斉藤佐知子委員長)の委員協議会では、大多数の委員が「知識と意識のレベルが低すぎる」などと、市社協の職務姿勢を批判。市の岡田芳樹福祉部長は「これまで以上に指導を強化する」と伝えた。(小泉まや)



◎函館市議会4会派、定数削減案提出へ

 函館市議会の4会派は10日までに、議員定数削減に関する関係条例の改正案を、今月下旬開会予定の定例会に提出することで合意した。

 関係者によると、定数削減に反対している共産党を除く4会派の幹事長が協議し、定数削減の方針と今定例会での議案提出、最終日での可決を目指すことを確認した。

 函館市議会は来年春に改選を迎えるが、旧4町村との合併特例がなくなり、議員定数は旧4町村地区選出の各1人が減り、新市全体で34となることが決まっている。今後、具体的な人数について議論を進めるが、議会関係者によると、30から32を軸に調整が進む見通し。

 議会内部では「人口1万人に対し議員1人」という、中核市における一般的な人口対比の目安を意識する声が強い。函館は定数34の場合、今年1月末の住民基本台帳に基づく人口対比は8355人で、議員数が目安を上回っている。

 また、市の第三者機関の特別職報酬等審議会は本年度、「定数見直しによる報酬総額抑制に向けた検討が必要」と答申し、事実上の定数削減を求めている。

 ある議員は「削減ありきではないが、定数34とするのは市民感情的に難しいというのが共通認識として存在する」と話す。別の議員は「市民に納得してもらえる、しっかりした理論付けが必要」としている。(千葉卓陽)


◎ネットの確定申告急増 道南3税務署で

 函館税務署が9日に発表した道南3税務署(函館、八雲、江差)管内の2008年分の所得税などの確定申告状況で、インターネットによる国税電子申告・納税システム「e―Tax(イータックス)」を利用した申告件数が、所得税で前年度分の2.5倍に当たる2万5000件と急増したことが分かった。

 函館税務署は、国税庁のホームページ(HP)内にある「確定申告書等作成コーナー」から手軽に申告できるようになったほか、イータックスの新規利用者への最高5000円の税額控除や、署内のパソコンを増設したことが増加の要因とみている。

 同税務署によると、所得税の確定申告をした人は前年とほぼ横ばいの8万7000人。このうち、パソコンなどを活用して所得税の確定申告書を提出した人は前年比で47.3%増加し、中でも税務署内のパソコンによるイータックス利用者は前年と比べ4倍の1万2000人と急伸した。

 総申告件数に占めるイータックス利用者の割合は年々増加傾向にあるものの、所得税では全体の約32%と依然として少数派にとどまるのが実態だ。国税庁は10年度末までに50%の利用目標を掲げているが、「利用者の多くは各税務署などに設置されたパソコンを体験的に使用した人が多い」(同税務署)という。

 イータックスは、個人認証のための市販のICカードリーダーで住民基本台帳カード(住基カード)を読み取ると、自宅のパソコンからでも確定申告ができる仕組み。利用にはカードリーダーの購入や自治体で住基カードの取得が必要となる。

 16日からは09年分の所得税の確定申告が始まる。同税務署は「まずはイータックスの利便性を知ってもらい、引き続き自宅での利用を推進したい」としている。イータックスに関する問い合わせは同税務署TEL0138・31・3171。(森健太郎)


◎増田元総務相が講演 地方分権熱く語る

 昨年4月から道顧問を務める元総務大臣の増田寛也さん(58)の講演「地域主権フォーラムin渡島」(道主催)が10日、渡島支庁講堂で開かれた。近隣自治体の首長や職員、一般市民ら計約240人が参加。地方分権の原則や管理職の役割などを豊富な経験談を交えて伝えた。

 増田さんは、2007年4月まで岩手県知事を3期務め、同年8月から08年9月まで安倍内閣や福田内閣で総務大臣などに就き、地方分権改革に力を注いだ。

 演題は「豊かな市民社会の形成」。増田さんは、地方分権の原則に「コミュニティーの柔軟な連携、結束強化が必要」と述べた。自助(市町村)、共助(都道府県)、公助(国)の補完性の原理に、行政責任明確化の原則を加え「ボランティアを含め、地域の協力と工夫は必要不可欠」とした。

 管理職の役割について「岩手(県知事時代)のときの失敗と経験を踏まえた上で」と前置きし、時間管理の厳格化を強調。「意欲的にものごとに取り組める」と語り、「職員の本音を把握できればいいが、なかなか難しい。組織の空気を読み、個々に合わせて手分けして対応するのもいい」と助言した。

 フォーラム後には、高橋はるみ知事も加わり、渡島管内の首長が増田さんと意見交換。新幹線開業を踏まえた食と観光の連携について、「渡島、桧山とこれからも広域連携を」(西尾正範函館市長)、「停車駅となるこの機会を見逃さずに、開業に向けた念入りな準備をしたい」(大森伊佐緒木古内町長)などと意見を寄せた。(田中陽介)