2010年2月20日 (土) 掲載

◎裁判員裁判判決公判、安田被告に懲役18年「同種事案でも悪質」

 函館市内で2008年から09年にかけて発生した女性暴行事件で、強姦致傷罪などに問われ、管内初の裁判員裁判として行われている、函館市美原2、調理師見習い安田譲紀被告(37)の判決公判が19日、函館地裁で開かれ、柴山智裁判長は「見ず知らずの女性を狙った計画的、連続的犯行。重ねるごとに手口が巧妙となり、同種事案の中でも悪質だ」として、懲役18年(求刑・懲役20年)を言い渡した。

 判決は、事実関係については、検察側の主張をほぼ全面的に認めた形となった。争点の見解として、同被告が車内に積載していたナイフや粘着テープ、目出し帽などの道具を犯行に使用したことなどから、いずれの事件についても計画性を認定。第1事件の動機や犯行状況、第3事件後に被害者宅を2度にわたり訪問した事実についても、同被告の弁解供述は信用できないとした。

 量刑理由について、柴山裁判長は、刃物や被害者の抵抗を抑圧する拘束道具を使用したこと、第2事件後に脅迫メールを送信したこと、第3事件後に被害者宅を訪問し、さらなる脅迫を加えたなどの点から「強い恐怖心を与え、被害者は精神的な苦痛を感じたと考えられる。犯行後の情状は非常に悪質」と述べた。

 判決言い渡し後、柴山裁判長は「判決は裁判官と裁判員が十分に話し合って決めたもの。反省を深めるようにしてください」と述べた。安田被告は、退廷する裁判員らに深々と頭を下げ、弁護人に言葉をかけられた後、刑務官に付き添われ、法廷を後にした。

 公判終了後、平井喜一弁護士は「争点については、おおむね検察官の主張する通りの判断で、厳しい内容。従来の量刑資料との比較しても重い年数と考える」と話した。函館地検の吉田克久次席検事は「新たな制度において工夫した検察官の主張、立証が裁判員に理解いただけたと考えている。裁判員の尽力に敬意を表したい」とコメントした。



◎森町議会、通年議会制に移行へ

 【森】森町議会は、定例会の会期を1年間とする「通年議会制」に移行する。3月9日に開会予定の定例会から9月30日までを試行期間として実施、来年早々にも本格実施に踏み切る意向だ。

 道内の通年議会制導入は胆振管内白老町、福島町に次ぐ3町目。一般に定例会は3月、6月、9月、12月の年4回招集され、その都度会期を決めて本会議や常任委員会を開いているが、通年議会は早急に解決したい重要事案が出た時など迅速に対応でき、閉会中に必要な常任委員会の継続審査も議会の議決を経ずに随時開催できるなどのメリットがある。

 昨年3月の定例会後に議会改革に関する調査特別委員会(委員長・青山忠副議長、21人)を立ち上げ、通年議会制導入など議会改革に向けた議論を定期的に行ってきた。1月中旬に同委員会で導入する方針を固めた。3月の定例会から9月30日までの試行後、12月に再度開会する定例会で条例改正案を提出し、議決後に本格導入する。

 同委員会ではこれまでの議論の中で会議資料の傍聴者配布や議員自らの議会研修報告書の作成などを実施。通年制導入と併せて議会と町民との対話集会も行う考え。議員の定数削減もこれからさらに検討していく。

 野村洋議長は「住民の要望を行政に反映させていくことが望まれている。地方分権の流れの中で議会も十分対応していきたい」と述べた。(鈴木 潤)



◎極東大でロシア伝統行事 わら人形燃やし 春到来祝う

 冬を追い払い春を迎えるロシア伝統の行事「マースレニッツァ」が19日、函館市元町のロシア極東大函館校(イリイン・セルゲイ校長)の駐車場で開かれた。学生や教員、一般市民ら約80人が参加し、冬に見立てたわら人形「モレーナ」を燃やして、春の到来を祝った。

 同大で毎年行われる恒例行事。会場では学生らが扮した冬を喜ぶ「クマ」や「ウシ」が、春を象徴する「太陽」に追い出される寸劇や、ロシアの伝統的な民謡が披露された。続いてモレーナに張り付けられた「冬」の文字に「糸」を書き加え「終」にし、最後に火をつけて冬の終焉を迎えた。初めて来場した道教育大函館校4年の浜愛乃さん(22)は「ロシアの春を迎える文化が分かって楽しめた」と話していた。校内ではピロシキなどロシア料理が振舞われた。

 これに先立ち、日本・ウラジオストク協会(東京)の浅井利春事務局長が「ロシア極東と日本地方都市の貿易」と題して特別授業を実施。日本とロシアの貿易の実情や今後の展望などを語った。また同協会会員と学生との懇談会も開かれた。(山田孝人)


◎新幹線開業アンケート 7割がビジネスチャンス 中小企業診断協会

 5年後に迫る北海道新幹線新函館駅(仮称)開業をビジネスチャンスととらえる企業が7割以上に上ることが、中小企業診断協会北海道支部(札幌)がまとめた函館・近郊の中小企業向けアンケート調査で分かった。経済波及効果に高い期待を示した一方、具体的な取り組みは半数以上が手つかずの状態で、企業間の対応に温度差も見られた。

 同支部が19日に函館市内で開いた「新幹線新函館駅開業に伴う観光産業への影響に関する調査報告会」で発表。アンケートは昨年9月、市内や近郊の観光関連企業319社を対象に行い、宿泊や飲食業を中心に計33社から回答を得た(回収率10.3%)。

 新駅開業による影響について「大きなビジネスチャンス」と答えた企業は「どちらかといえばチャンス」を含めて72.8%に上り、新幹線への関心の高さを裏付けた。一方で「マイナス」や「影響なし」などと答えた企業も21.2%で、デメリットを懸念する見方も少なくなかった。

 開業に向けて何らかの対策を講じている企業は全体の42.4%で、具体策として「異業種との連携」(32.1%)や「新しいサービスメニューの開発」(21.4%)などが目立った。半面、手つかずな企業からは「まだ先のこと」(28%)と開業までの期間の長さを指摘する声や、「考える余裕がない」(24%)「資金が足りない」(12%)などと後手に回る企業の厳しい経営環境も浮き彫りになった。

 同支部は「事業者意識は依然として低いのが実態。新駅開業はあくまで外的要因で、事業者の競争力を強化することが必要」と強調。その上で「取り組むべき課題や現状を把握し、強みを生かし、弱みを克服する中期対応プランを作成して」と提言した。(森健太郎)


◎企画「1275億円の使い道」(上) 地方交付税でカバー 基金は底付く

 「こういった財政状況の中で、公約をいろいろと盛り込んだが一定の限界がある。胸を張るほどではないが、いくらかは踏み込めた」。西尾正範市長は12日の会見でこう述べ、1期目最後となる新年度予算案を振り返った。同市長が安どにも似たニュアンスで心情を吐露した裏には、地方交付税の大幅な伸びを抜きにすることはできない。

 後に国から償還される臨時財政対策債を合わせた、実質的な地方交付税の総額は過去最高規模の393億円。旧4町村との合併の“恩典”として、05年度から5年間の時限付き補正(5億4500万円)が本年度限りで消滅したが、本年度配分された地方交付税額(329億8400万円)をベースに、国が新たに1兆円規模で創設した「地域活性化・雇用臨時特例費」を見込み、市税の落ち込み分をカバーしている。

 しかし、それでも基金(貯金)の取り崩しを避けることはできなかった。新年度は9億円を使い、残高は1億6400万円。ある市議は「あるお金は全部使ってしまおうという発想に映る」と厳しく指摘。市幹部からは「誰がなろうが、来年の新市長へのお土産(?基金)がないのはちょっと…」との声も聞こえる。

 ただ、市財政には表に見えない基金も存在する。一般会計に繰り入れできる財政調整と減債のほか、13種類の「特定目的基金」が約90億円残っている。一般家庭に置き換えれば、車のローンや住宅購入などといった具合に、使い道が限定された貯金だ。

 08年度には特定目的基金の中から、公共用地の先行取得に充てる「土地開発基金」を7億円取り崩した例がある。しかし地方財政法上、財源調整目的では使えず、あくまで「借りて返すもの」(財政課)。別の議員は「次年度以降に特定目的基金を使う場合、相当な議論が必要になるだろう」と話す。

 一方で、08年度から進める「新5カ年計画」に基づいた行財政改革は着実に成果を上げている。09年度の行財政改革の効果額は12億2300万円で、このうち一般会計で134人を削減し、6億1900万円を節減。これに事務事業の見直しで6億1100万円、各部局に対して予算の要求基準を決めておく「シーリング」で4億7400万円を浮かせた。これらにより、一般会計の財源不足は約9億円圧縮され、33億円となった。

 5カ年計画は順調に推移し、定年退職は次年度以降も100人以上が見込まれているが、厳しい雇用環境を背にした生活保護費の増加は今後も避けられそうにないだけに、市行政改革課は「これからが正念場」と力を込める。

 財源不足が続くと、道などと同様に職員の給料カットなど、思い切った歳出削減に踏み込む場面も想定されるが、民間企業が市の動きに追従し、マチ全体がさらに冷え込む恐れを指摘する声もある。

 交付税に左右される財政フレームは変わらず、基金が底をつく中で自主財源をどう生み出していくか。lフ(さや)から抜きにくい“伝家の宝刀”を抱えながら、市財政はいばらの道が続く。(千葉卓陽)

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 一般会計で前年度当初比2・2%増となった函館市の2010年度予算案。西尾正範市長の1期目最後の予算となり、特徴や事業の目的、公約の達成度などを探る。