2010年2月21日 (日) 掲載

◎多彩な鍋 体ぽかぽか…江差なべまつり開幕

 【江差】冬の江差を彩る一大イベント「第10回 冬 江差 美味百彩(びみひゃくさい)なべまつり」(主催・江差観光コンベンション協会)が20日夕、江差町本町の旧生涯学習センターで開幕した。厳しい冷え込みが続く中、屋内の会場では1500人を超える来場者があつあつの鍋料理に舌鼓を打っていた。

 会場のブースには、町内をはじめ上ノ国町、乙部町、松前町などから参加した、飲食店や漁協など28団体による、和・洋・中の鍋料理約40種類が勢ぞろい。道南伝統のクジラ汁、ゴッコ汁、三平汁など、新鮮な海や山の幸を生かした鍋料理を、函館からのツアー客をはじめ大勢の来場者が何杯も食べ比べしていた。

 今回は留萌土現や留萌支庁職員でつくる「萌留(もえる)B級グルメ研究会」(郷康則代表)と、地元の郷土料理研究会「おいしんぼクラブ」(佐藤信子代表)も留萌市から駆け付け、トマトを使ったスープで新鮮なエビを味付けした「るもい萌え鍋」や「オロロンカレー」と名付けたシーフードカレーを出品している。

 同協会の打越東亜夫会長は「今回で10回目を数えるなべまつりは、冬の桧山を代表する食のイベントとして定着した。今後も桧山の優れた農水産物の地産地消の拡大に向けて継続したい。21日も大勢のお客さまに心ゆくまで多彩な鍋料理を味わってほしい」と話している。

 入場無料。21日は午前11時から午後2時。鍋料理は全品1杯300円。鍋料理1杯につき豪華景品が当たる抽選会のほか、ゲーム大会、民謡ショー、町内の山の上商盛会(三国幸吉会長)によるもちつきやお汁粉の無料サービスも。会場には無料駐車場を用意している。問い合わせは協会事務局TEL0139・52・4815へ。



◎司法を身近に感じる…裁判員裁判終えて一裁判員

 函館地裁で初めての裁判員裁判が終了した。16日から4日間の審理に参加した裁判員経験者の1人が20日、函館新聞の取材に応じ、「裁判を身近に感じるためにも制度には意義があると思う」と話した。この裁判員の経験談を交え、公判を振り返る。

 裁判員裁判では、従来の裁判と比べ、検察、弁護側ともに平易な言葉遣いや視覚に訴える資料を駆使した丁寧な立証を展開した。性犯罪事件の性質上、立証過程で被害者のプライバシー保護は徹底され、法廷内の大型モニターは使用せず、裁判員らの前にある小型モニターのみを使用。供述調書の朗読も具体的な犯行状況にかかわる部分は省かれ、裁判員らに黙読させる場面もあった。

 裁判員は公判中、一部の専門用語を除けば、検察官、弁護人の話す内容や審理の進行に対する理解はしやすかったとする。一方で「殺人事件の遺体写真を見せられたわけではないが、犯行状況を伝える証拠の中には生々しいものもあった。被害者のつらさを考えた」と、精神的な負担を明かした。

 裁判員同士は互いに氏名や素性を明かさずに4日間を過ごした。「緊張はあったが、同じ裁判員に選ばれたという共感から、ぎくしゃくした様子はなかった」とする。裁判長らが積極的に裁判員の発言を促したといい、「裁判所の雰囲気づくりも良かった。意見を押しつける感じはなく、思ったことを発言できた」と話す。

 裁判員、補充裁判員には裁判員法で守秘義務が課せられる。裁判員を務めた感想や法廷内でのやりとりを除き、評議の過程や結論、被害者のプライバシーなどを生涯にわたって他人に漏らすことができない。「被害者名などはあえて覚えないようにした。事件内容の影響もあるが、今回の裁判員全員が守秘義務を守ることができると思う。身内にも話さない」と話した。

 今回、裁判員を務めた4日間は仕事を休んだ。「3件の事件があったことを考えると日程は仕方ない。生活への影響を考えると参加できるぎりぎりの長さ」とする。選ばれた裁判員は一定期間、拘束される上、いや応なしに判決を下すという責任を背負うことになる。「懲役18年という判決もあるが、想像以上に重い内容の事件だった。量刑を決めるだけの事件でも相当負担があったが、有罪か無罪かを決める事件であれば、裁判員はもっと大変だろう」と話すが、制度への参加は意義深いものになったとする。

 国民の司法参加を看板に掲げた裁判員制度施行から9カ月がたち、ようやく函館でも1号事件が終了した。対象となる事件が少ないことは治安の観点から良いことだが、市民の間に制度への理解が浸透するまでには、事例の積み重ねが必要だ。(今井正一)



◎「力を合わせてPR」…西尾市長ら中国訪問団が出発

 函館市の西尾正範市長や市議会、経済界代表ら14人による中国訪問団が20日、函館空港から出発した。中国人観光客誘致を目的に広州、上海を回り、旅行代理店や航空会社へのトップセールスを行い、「観光のまち函館」をアピールする。

 広州は2年ぶり、上海は初めての訪問。東京で1泊した後現地入りし、広州では函館とのチャーター便運航実績がある南方航空や広東省中国旅行社などを訪問。上海では日本政府観光局(JNTO)、東方航空などを回る。

 函館空港で行われた出発式には西尾市長、高野洋蔵函館商工会議所会頭ら訪問団メンバーと関係者が集まった。西尾市長は「中国は現在、北海道ブーム。函館にも成田や羽田経由で観光客が来ているが、まだまだ知名度は低い。地盤のある広州に上海を加え、力を合わせてPRしたい」と述べた。一行は25日に帰国する予定。(千葉卓陽)


◎第4弾はイギリス編…外国人居留地研がマップ作成

 市民有志でつくる「はこだて外国人居留地研究会」(岸甫一代表)が、国別居留地マップ第4弾としてイギリス編を作成した。3月1日から、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で無料配布する。

 同研究会はかつての外国人居留地や居留外国人の活動などを掘り起こし、市民の知的財産とする目的で活動を続けている。今回、「からトラスト(公益信託函館色彩まちづくり基金)」の本年度事業として実施した。

 今回はイギリスに着目。1855(安政2)年からの長く、深いかかわりを文と年表などで分かりやすく解説。イギリス人と結婚した地元の女性6人にまつわるエピソードをはじめ、貿易や布教、教育活動、北洋漁業など多彩な観点から函館とのつながりをまとめた。編集責任の清水憲朔さん(63)は「忘れられた深いかかわりを2ページに凝縮した。メンバーの研究調査の成果をまとめたので濃い内容に仕上がった」と太鼓判を押す。

 岸会長は「読みながら西部地区を散策するとイギリス領事館など普段と違う目線で見られる」とPRする。B3判両面カラーで、3000部作る予定。(新目七恵)


◎企画「1275億円の使い道」(中)子育て、教育事業に力

 「政治家だから」―。市民だけではなく市幹部からも多く発せられた言葉には、「1期目最後の予算」(西尾正範市長)として、可能な限り公約実現を追求した西尾市長の姿勢に対する皮肉が込められていた。子育て、教育など次世代に投資するソフト事業に力を入れたことは、一方では「経済状況と市財政が大変な今、本当に必要な事業か」(市幹部、議会、経済界)との議論を巻き起こしている。

 記者発表の場で西尾市長は、今回の予算編成について「子育て・教育で必要なもの、公約関連はいろいろ盛り込んだが限界がある」と総括。公約を果たそうと、財政状況が許す限りの努力したことを強調した。

 目玉と自負する保育料軽減率の拡大では、これまでは国の基準より17・2%の軽減だったが、20・0%とする。その差わずか2・8%とみることもできるが、新たな負担が2010年度では2370万円生じる見込みであることから、市財務部は「逆に大きい。思い切った数字だ」とする。

 背景には、一度始めたらなかなかやめられないという、ソフト事業の性格からくる事情がある。保育料でこれまで軽減してきた分を含めた市の負担額は、10年度は約1億7700万円。少子化にもかかわらず共働き世帯の増加などを背景に、保育園を利用する子どもはほぼ同数を維持しているため、将来にわたり毎年相当額の負担が続くことになる。「将来的にはかなりきついことになるだろう」(市幹部)と、内部にも懸念の声がある。

 公約関係の施策ではこのほか、学校図書館の図書の充実を進め、新たに図書館アドバイザーを設置、小中学生らの社会教育施設などの利用を無料化する。金額は少ないが新事業の学校花いっぱい運動推進(200万円)では、全小学校で情操教育のため、プランターに花を植える。これらの積み重ねで、教育費は前年度当初比2・7%増の73億8508万円に膨らむ。

 町会に対しては、防犯目的の青色回転灯装備車両に年間5000円を交付する制度を作る。町会関連ではこのほかにも、町会館の建設補助金の利用制限を緩和する。高齢化し、一人何役もこなさなければならない町会役員の事務負担を減らす目的の対策もあるが、これらに対しては町会関係者さえも「次回選挙を見据えたのでは」との声もある。

 一方で多賀谷智教育長は、「教育への予算付けは未来への投資。ありがたい予算だ」と評価。岡田芳樹福祉部長も「まちの基本は人材作り」とし、保育料の負担軽減は「子どもが心豊かに育てられるためには、親の負担を少なくする必要がある」と力説する。

 公立学校長の裁量で使える「知恵の予算」にはこれまで、学校規模に合わせた金額を一律に配分する手法の是非が、市議会などでたびたび取りざたされている。西尾市長は、提案型への転換を求める意見がある中、あえて従来の手法にこだわった。予算を引っ張る力のある学校を良しとするような、学校の格付けにつながることへの警戒からだ。多賀谷教育長は「教育はすぐに効果が分かりにくい」ことを強調し、「即効性を求めず、ある程度の期間は見守ってほしい」とする。(小泉まや)