2010年2月24日 (水) 掲載

◎未来大など暗号技術の計算で世界記録を更新

 公立はこだて未来大(中島秀之学長)は23日、独立行政法人情報通信研究機構(NICT、本部・東京)と共同研究し、インターネット上での情報漏えいを防ぐ「公開鍵暗号」の安全性を評価する解読計算の世界記録を更新したと発表した。2005年のフランス国防省などの記録を上回り、より数十倍程度困難な計算に成功した。国の機密情報や日常生活で使う情報システムの暗号技術の安全性や、国が推進する電子政府で数年後に暗号技術の標準を改定する際の参考として活用される。(新目七恵)

 国税電子申告・納税システム(イータックス)やネットショッピングなど現代の情報システムの改ざんや盗聴などを防ぐには、想定されるさまざまな解読手法を検討する必要がある。解読研究は日本を含む世界各国や企業が実施しており、未来大は2008年4月に同機構と契約を結び、解読手法の1つである「離散対数問題」の計算の難しさを評価する研究を進めてきた。

 更新したのは暗号化の際に使う数字のけた数。けた数の単位「ビット長」が多ければ多いほど解読が困難になる反面、処理も難しくなるため、コンピューターの処理能力の向上などを見込んだ適切な大きさを見積もる必要がある。

 今回、2005年の記録(613ビット長)より1割多い676ビット長の場合でも現実的に解読が可能なことが判明した。数年後には、現在使われている1024ビット長よりけた数を長くする必要があることを示している。

 研究に当たる高木剛教授は「世界最長ビットに対する計算が成功したことは我が国の暗号技術の評価能力が世界トップレベルにあるといえる」と話し、プログラミングを担当した院生2年の林卓也さん(24)は「大変だった苦労が報われた。博士課程に進むので、さらに大きなけた数で計算できれば」と話していた。

 研究成果は3月2、3日に東京で報告し、5月にはパリで行われる公開鍵暗号に関する国際会議で発表する。



◎函館の音楽の歴史を一冊に メサイア実行委が出版

 函館メサイア教育コンサート実行委員会(松原仁委員長)が昨年から作成を進めてきた、西洋音楽が伝来した明治初期の函館の様子をまとめた冊子「函館開港と音楽」がこのほど完成した。A4判、40ページ。編集作業を主導してきた同実行委音楽監督の声楽家、徳永ふさ子さんは「『近代日本の西洋音楽発祥の地は函館』という定説を、あらためて確信できる内容に仕上がった。貴重な楽譜や絵図も使用しており、目でも楽しめる内容になっているので、多くの人たちに手に取ってもらいたい」と話している。

 同実行委は、日本で初めて混声合唱が響いた町である函館を広くアピールし、地域文化の活性化につなげようと、2006年から「メサイア」の全曲演奏をはじめとしたさまざまな演奏活動を展開。それと並行し、函館における西洋音楽普及の歴史についての研究も進めてきた。

 今回完成した冊子は、函館開港時に黒船などによってもたらされた西洋音楽が、ロシア正教の聖歌などを通じて国内に広まっていく様子を体系的にまとめている。実際に使用されていた当時の楽譜や絵画、写真などがふんだんに使われているのが特徴。洋楽史研究家の故中村理平さんや東京芸術大学楽理科の塚原康子教授の論文なども盛り込まれており、研究資料としての価値も高い。

 徳永さんは「函館が持っている素晴らしい音楽文化の歴史を、この冊子を通じて多くの市民に感じ取ってほしい。学校現場での教材としても活用してもらえれば」と期待している。

 28日午後2時半から函館市芸術ホールギャラリーで、同冊子の出版記念講演会が開かれる。講師には市立博物館の保科智治さんと函館ハリストス正教会の山崎瞳さんを迎え、函館メサイア合唱団とゲザングリーベによる、開港当時の様子を再現した「ミンストレルショー」などが演奏される。受講料は1000円で、同冊子が資料として配布される。問い合わせは同実行委TEL080・5583・2634。(小川俊之)



◎函館市教委が木直小・磨光小の統合について学審委に諮問

 函館市教育委員会は初めての移動教育委員会を23日、同市尾札部町の磨光小学校で開いた。9日に木直小学校(野呂孝俊校長、児童60人)と同小PTA(小田原一二三会長)から市教委に要望書が提出されていた、同小と磨光小学校(須藤由司校長、児童137人)の統合について協議し、第三者機関の学校教育審議会に諮ることを決めた。

 学校統合は同審議会への諮問と答申が必要となる。統合は児童数減少に伴う教育環境の悪化を理由に求めたもの。このほか事務局は、同小PTAが未就学児童の保護者を含めた意識調査やアンケートを行った際、約9割の賛成意見が寄せられたことなどを挙げた。委員からは「統合先の磨光小学校の反応は」と問われ、事務局は「すでにスポーツ少年団などで交流もあり、ぜひ一緒にとの返答を受けている」と答えた。

 続いて保護者や教員ら約10人が参加して行われた教育委員との懇談会で、磨光小児童の保護者からは「統合は初めてのことだからわからないことも多い。1年の時間があるので、保護者同士の連携を深めていかなければ」などと意見が出ていた。これに対し多賀谷智教育長は「学校活動がスムーズにつながるように、大人が不安を取り除いていく時間にできれば」と述べた。

 市教委によると、近く同審議会に諮問し、夏ごろには答申が得られる見込みという。その答申を受けて両校のPTAなどに説明会を開き同意が得られれば、早ければ2011年春にも統合が実現する。(山田孝人)


◎函館市病院局が新年度函病に総合相談室を新設

 函館市病院局は新年度、患者の相談や苦情を1カ所で受け付ける「総合相談室」(仮称)を市立函館病院内に新設する。院内や患者からの要望を受けた対策で、サービス向上が目的。年度内の開設を目指して4月から、設置準備のための職員配置に変更する。

 同局が22日、事務事業や組織機構、職員数の見直し案を、市立函館病院労働組合に説明して明らかにした。同労組には、3月上旬までの回答を求めた。

 同院ではこれまで、相談事や苦情などを専門に取り扱う部所はなく、患者がさまざまな窓口に持ち込み、場合によっては担当者間をたらい回しにされることもあったという。4月には同室設置準備に向け、担当の参事(課長職)1人を配置。分野ごとの担当者把握をはじめ、手法などを検討する。開設時期は未定。

 提案ではこのほか、診療情報の担当(3人)を別の課に移し、医療連携課の職員を1人減らす。看護師は、入院患者を増加させる目標に合わせて定員を80人増加するが、10年度は30人程度の増にとどまる見込み。(小泉まや)

 


◎【企画・わたし学びますA戸澤勇次君】特別な時間 取材で痛感

 函館市は、市内製造業者が抱える問題点の改善に向けたサポートを行う「ものづくりステップアップ事業」を新年度から実施する方針だ。生産性向上や業績拡大に向けて、業務改善のノウハウを持つ企業などに委託し、対象業者の現状調査を行い問題点を洗い出すとともに、解決に向けた取り組みを行う業者には市が費用を補助するもので、7月にも調査を開始する考え。市工業振興課は「経営改善を考えている業者に利用してほしい」と話している。

 対象は市内に事業所を置く製造業。2008年の市内製造業の出荷額は前年比で16%落ち込むなど、長引く不況の影響で年々減少傾向にあることを受け、業績拡大に向けたきっかけづくりにしてもらおうと実施。製造ラインなどにIT(情報技術)を利活用し切れていない事業者を市内のIT業者と結び付けることで、地域の中で経済活動を循環させる狙いもある。

 市は新年度予算案に1380万円を計上した。事業は大きく分けて実態調査と補助の2つ。調査は希望事業者を募集して市が選び、委託先のコンサルタント機能を持つ業者が調査を実施して問題点や解決策を提示。解決に取り組む業者に対し、市がその費用の2分の1を上限に負担する。

 同課によると、一例としてウェブサイトの作成やISO、HACCP(ハサップ)などの認証取得に向けた取り組みにかかる費用の軽減などに使用できるという。

 これまで市内の事業者からは、「問題提起から解決まで一環してサポートしてくれる制度があれば」という声が挙がっていたという。同課は「やる気のある製造業をオーダーメードで支援するもので、事業として踏み込むのは初めて。今後周知していきたい」としている。(山田孝人)