2010年2月26日 (金) 掲載

◎がごめ昆布入りチーズプリン登場…あすから販売

 函館市末広町5の洋菓子店「パティスリー・ドゥ・ランコントゥル函館なんぶ坂」(羽二生季之社長)は、南茅部産のガゴメコンブを使った新商品「がごめ昆布入りチーズプリン」を27日から、販売する。南かやべ漁協が原材料のガゴメコンブを提供する形で協力。羽二生社長は「函館の特産物のガゴメコンブを知ってもらうきっかけになれば」と話している。

 健康に良いガゴメを自然に体に取り入れられる、おいしいスイーツを作ろうと、開発に取り組み、構想から1年で商品化にこぎつけた。「ガゴメプリンは日本初の試みでは」と羽二生社長。

 同店のパティシエ、金沢良彦店長がガゴメ独特の強い粘りに苦戦しながらも試行錯誤を重ね、独自の製造方法を編み出した。「ガゴメの性質を理解した上でそれを生かし、滑らかな食感のプリンに仕上がった」と金沢店長は自信を見せる。

 プリンにはクリームチーズを使い、レアチーズケーキのような味でとろけるような舌触り。子供から高齢者まで食べやすく仕上げた。ほのかな薄緑色のガゴメの繊維が含まれるが、コンブ味は強調せず、後味でかすかに風味が感じられる。1個380円(90t入り)。

 同漁協直販加工センターの大坂寛主任は「プリンを食べてもらい、コンブに興味を持ってもらえたら」と期待。羽二生社長は「函館をアピールしつつ、全国の人にも食べてもらえるようにしたい」と全国販売にも意欲を見せる。3月には仙台市の物産展でお披露目する。問い合わせは同店TEL0138-26-3288。(宮木佳奈美)(左)



◎函館市内でノロウイルス多発

 函館市内で今季、ノロウイルス(感染性胃腸炎)の集団感染が多発している。道内全体が同じ傾向で、市立函館保健所は「例年より多い年」と認識。警戒を強め、教育施設や高齢者施設に対して注意を呼びかけている。

 ノロウイルスは、11月から3月までの冬季に流行する傾向がある。集団発生(1週間に10人以上)した件数は、全道では2006年が231件、07年は216件と比較的多かった。これに対し08年は100件、09年は92件にとどまった。

 10年(22日まで)は45件だが、渡島保健所は「昨年を上回るペース」と説明。1月だけの比較では、09年が19件だったのに対し、10年は25件と多く報告されている。

 函館市内(年間)は、06年(19件)と07年(17件)が比較的多かったのに対し、08年(4件)と09年(10件)は少なかった。10年(24日まで)は既に6件報告されており、市立函館保健所は「年間では10件は超えるだろう」とみている。また10年(同)の発生で、函館を除く渡島管内は2件、檜山管内はゼロとなっている。

 同保健所が今季の傾向として挙げるのは、「保育園や学校など、子どものいる施設での集団発生が多い」ことだ。理由としては、「前年には高齢者のいる施設で発生することが多かったが、一度発生すると適切な消毒方法を身につけるからではないか」とする。

 ノロウイルス1つの大きさは100万分の40ミリ。アルコール消毒が効かないうえ、乾燥すると空気中に浮遊し、これが腸まで運ばれると増殖する。日常の対策として同保健所は「ウイルスを洗い流すため、石けんを使った流水での手洗いが効果的」とする。

 感染が疑われる人の嘔吐(おうと)や下痢などに遭遇した場合には、汚物はふき取ったぞうきんごと密閉した袋に入れて捨て、後はノロを殺菌できる塩素系消毒剤でふき取ることを勧める。日常的な殺菌では「スプレーを吹きかけると風圧でウイルスが舞い上がるので、ぞうきんに付けてからふき取ってほしい」と呼びかける。(小泉まや)



◎函館で13.1度 各地で雪山崩し

 25日の道南は、本道上空に南から温かい空気が入った影響で春の訪れを感じさせるような高温となった。午後5時現在の最高気温は、江差で5月中旬並みの14.5度、松前で同上旬並みの13.8度、函館で4月下旬並みの13.1度、厚沢部町鶉で同12.9度で、いずれも2月として観測史上最高となった。

 函館市内では、気温上昇で軟らかくなってきた雪山にスコップで穴を開け、日差しで解かそうとする市民の姿が多く見られた。時任町の男性(78)は「この時期はまだ寒いと思っていたので驚いている。雪山を崩すのは体力的にきつい」、梁川町の男性(73)は「この辺の道路は通学路になっており、雪山が児童の背よりも高い。見通しを良くするためにも早く解かさなくては」と汗を流していた。函館海洋気象台によると、26日は寒冷前線が渡島、檜山地方を通過するため、昼ごろには気温が例年並みに戻るという。(黒田 寛)


◎社会教育施設無料化へ…函館市

 函館市は市内の小中学生などを対象に、文化活動やスポーツで使用する社会教育施設を、新年度から無料とする条例案を26日開会の定例市議会に提出した。無料化は個人利用に限ったもので、市民プールや旧イギリス領事館、7月にオープンする箱館奉行所など26施設が対象となる。

 対象は市内の学校に通学、または在住している中学生以下の個人利用者。道内では旭川市などが実施している。無料化は西尾正範市長の公約の一つで、子育て支援を目的。子どもの利用が多い社会教育施設を無料開放することで、学習活動やスポーツの推進につなげ、家庭の経済的負担を軽減する狙いがある。市は無料化に伴う影響額を約900万円と見込む。

 対象施設で最も利用者が多いとされる市民プールでは、中学生以下の年間利用者数が約8000人(小中学生120円、幼児50円)で、年間290万円の利用料収入がある。南茅部スポーツセンターや恵山シーサイドパークゴルフ(PG)場は、旧町時代から無料とされている。

 市企画課は「今後学校を通じて周知していく。無料となることで利用者が増え、施設自体も有効に利用できるのでは」としている。

 このほかの無料化対象施設は、千代台公園陸上競技場、市民スケート場、千代台公園弓道場、根崎公園アーチェリー場、南茅部プール、恵山プール、すずらんの丘公園PG場、志海苔ふれあい広場PG場、白石公園PG場、熱帯植物園、亀尾ふれあいの里、灯台資料館、写真歴史館、サン・リフレ函館、市民体育館、北方民族資料館、文学館、北洋資料館、旧函館区公会堂、郷土資料館、市立博物館、青函連絡船記念館摩周丸。 (山田孝人)

 


◎【企画・わたし学びますC外山真理子】生き様 授業で感じ

 保育士やホームヘルパー、相談員。さまざまな仕事を経験した函館市の主婦、外山真理子さん(54)にとって、民間運営の自主夜間中学「函館遠友塾」(今西隆人代表)のスタッフとして人に勉強を教えるのは「人生で初めての経験」だった。

 最初の授業は昨年7月7日。七夕にちなんだ内容を用意したが、時間調整がうまくできず、「尻切れトンボで終わった」と反省。同時に、「塾生の集中力がすごい。反応が良くて面白かった」と手応えをつかんだ。「どこまで受け入れてもらえるか心配だった」というが、今では塾生と意見を交わすのが「幸せな時間」になっている。

 ◆物語が大好きな少女だった。高校時代、友達をモデルにSF小説を書いたこともある。専門学校卒業後、保育士として函館で働き、25歳で結婚。夫の仕事の都合で日高管内えりも町、七飯町を転々とする中で長男と長女を出産した。子育て中、不安や疑問、焦りなどさまざまな感情が胸にふつふつとわいた。それらをぶつけるように再びペンを持った。地方の文学賞で少しずつ認められ、自費出版の本も出した。どこか傷を抱えながらも、人と触れ合うことで再生していく「人間」が主人公だった。

 山田洋次監督の映画「学校」を観たこともあり、夜間中学には以前から関心があった。「塾生から話を聞いてみたい」。そんな思いを抱き、高校教諭の夫と函館遠友塾のスタッフ説明会に足を運んだ。

 当初、教員経験のあるスタッフが多くて戸惑った。教員資格はないし、教壇に立ったこともない。「どこまでできるか心配」だったが、文を書く経験を生かし、とりあえず国語科に入った。

 昨年12月、松谷みよこの絵本「わたしのいもうと」を教材にした。実話を基に、いじめに苦しむ妹を見詰める家族の思いをつづっている。

 「重いテーマなので取り上げるか迷った」が、「文章を理解し、深める」との狙いから、大事な一冊として取り上げた。2週に分けて一文一文読み聞かせ、登場人物の思いをじっくり読み解いていった。

 塾生の反応は大きかった。多くが作品にのめり込み、意見をぶつけてきた。「今の子どもは…」といじめる側の心理を分析したり、「考えられない」と目を真っ赤にして感情を爆発させた人もいた。姉や母の苦しみ、複雑な心境を、自分の体験に重ね合わせて吐露する人もいた。異なる1人ひとりの反応の裏側に、それぞれの生き様が見えた。

 これからも小説を書き続けたいと思う。そんな時、塾生の顔が浮かぶだろう。(新目七恵)