2010年2月27日 (土) 掲載

◎教育施策など一層推進 西尾市長執行方針…函館市議会開会

 函館市議会の第1回定例会が26日に開会し、西尾正範市長が市政執行方針を、多賀谷智教育長が教育行政執行方針を述べた。西尾市長は新年度を「4年間の任期を締めくくる仕上げの年」と位置付け、教育・文化の向上や保健・医療・福祉の充実、経済・雇用対策の拡充など、これまで力を入れてきた施策をさらに推進し、「全力で臨むべく心を新たにしている」とした。

 就任時、「市民の手による市民のための市民の市政」実現を約束した。すべてが透けたガラス箱の、自由闊達(かったつ)な市役所づくりに努めたが、現状は「まだまだ道半ば。残された任期を、総合計画に基づく(市民参画によるまちづくりなどの)視点を市民と共有して取り組む」とした。

 施策の柱は「次代を担う人材の育成」につながる教育、子育て施策だ。教育では、小中学生の社会教育施設利用を無料化し、芸術家が学校で演奏会などを行う「アウトリーチ事業」を新たに始める。人間形成に影響を与える学校図書をさらに充実させ、校長の裁量で使える「知恵の予算」を継続。公立はこだて未来大学への医学部設置の可能性について調査する。

 福祉分野では、市独自の保育料負担軽減割合を20.0%に拡大する。魅力ある児童館作りを推進し、神山児童館(仮称)の整備に着手。低所得者援護対策として、自立支援プログラムと就労支援を推進する。

 経済情勢は「依然厳しい」と認識。中小企業向けに新規高卒者雇用奨励の補助金を支給。新幹線開業を見据えて「南北海道はひとつ」の考えのもと、地域一体で広域観光を押し進める。

 多賀谷教育長は「学校・家庭・地域が一体となり育成する教育の営みこそ『未来への投資』。教育は人づくり」とし、未来を担う子どもの教育を進める必要性を説いた。

 学校教育では読書活動を推進。新たに「学校裏サイト」などを監視するネットパトロールを行い、全小学校に自動体外式除細動器(AED)を整備する。生涯教育分野では、旧函館区公会堂の建築100年記念事業を実施。縄文文化交流センターを整備し、市民体育館の整備計画などを策定する。(小泉まや)



◎1月の道南雇用情勢…有効求人倍率0.33倍

 函館公共職業安定所が26日に発表した1月の渡島・桧山管内の雇用失業情勢によると、有効求人倍率は0.33倍と前年同月を0.03ポイント下回り、31カ月連続で前年割れとなった。仕事を求める3人に1人しか求人がない状況だが、一昨年末の金融危機に伴う大量解雇などの反動もあり、新規求職者は2カ月連続で大幅に減少した。

 有効求人数は前年同期比8.2%減の3397人。有効求職者は同0.4%減の1万243人と2008年8月以来、17カ月ぶりに前同年月を下回った。同職安は管内の情勢について「求職者の増加傾向は落ち着きつつあるものの、依然として厳しい状況にある」と4カ月連続で基調判断を据え置いた。

 雇用の先行指標となる新規求人倍率は同0.11ポイント上昇の0.61倍で、25カ月ぶりに前年同月を上回った。新規求職者は2787人と同20.0%の大幅減。新規求人数は同2.1%減の1690人と減少幅は縮小傾向にあるものの、リーマンショック前よりは低い水準にとどまっている。

 産業別では医療・福祉や建設業で20%前後増加したが、長引く景気低迷による消費の冷え込みで宿泊・飲食サービス業や、卸・小売業は大幅に落ち込んだ。同職安は「管内企業は経費削減で最低人数でやり繰りするなど採用の手控えが続く。例年、年度末は求職者が増える傾向にあり、再び悪化する可能性もある」と懸念を示している。(森健太郎)



◎骨格で一般会計87億円…七飯町予算案 新幹線関連を計上

 【七飯】七飯町は26日、2010年度予算案を発表した。3月21日投開票の町長選挙が控えているため、町政運営の基本となる経費を中心とした「骨格予算」で編成した。3月3日開会予定の第1回町議会定例会に提案する。

 一般会計の総額は87億9000万円で、本年度当初比で2.2%増。新年度から始まる子ども手当の支給や北海道新幹線の関連工事が計上されたことが増額の要因。国保や介護保険など6特別会計事業を加えた総額は150億5670万円で、同1%増。

 一般会計の歳入は町税が同0.4%増の25億5834万円、地方交付税が同2.2%増の28億5000万円を見込んだ。財源不足を補うため基金から2億3254万円を切り崩す。

 歳出は民生費が同21.4%増の26億5736万円で全体の30%を占め一番多く、次いで全体の14%占める土木費が同0.2%増の12億9706万円。公債費(借金返済)は同9.9%減の11億5301万円で全体の13%。

 主な事業は町が受託し進めている本町16号線(町道)地盤改良橋りょう工事や鶴野2号線(同)改良舗装工事にそれぞれ3億7300万円、1億円を計上。今年1月に中学生まで拡大した子ども医療費の無料化にかかわる関連経費に1億8341万円、国の財源で新年度から支給する子ども手当の支給額を3億6398万円とした。

 新町長就任後、政策経費を盛り込んだ補正予算案を編成し、町議会の6月定例会に提案する。(鈴木 潤)


◎原子力シンポのアンケート 「知識深まった」

 函館市は26日、1月31日に市内で開催した原子力シンポジウム「21世紀の原子力と環境について考える」(函館市、日本原子力文化振興財団主催)で実施したアンケートの調査結果を発表した。回答ではおおむね70%の参加者が原子力に関して「知識が深まった」「ある程度深まった」とした。一方原子力発電の印象については約40%が「あまり不安が解消されていない」など、函館の対岸に位置する大間原子力発電所への不安は残る結果となった。

 同シンポでは原子力を専門に研究する大学教授3人が講演を行った後、事前に受け付けた市民からの質問に答え、会場に訪れた市民との質疑応答も実施。事前に用意した200席を越える330人が来場するなど、原発に対する市民の関心の高さが示された。

 原子力発電での印象では不安を残した市民が約40%いた一方で、「不安を感じていない」との回答も約40%を数えた。自由記述では「理解が深まり有意義」「納得のいかない内容」「原子力は必要で推進すべき」「原子力は不安・危険で不必要」などと意見が寄せられた。このほかの意見では「行政レベルの集会を早い段階で実施することができなかった主催者の責任は重い」「会場から学問的ではなく感情的な発言が目立ちすぎた」などと、市の対応や会場の様子を批判するものもあった。

 市総務部は「満足、不満足はあるだろうが市が主催して実施した意義はあったのでは」と話している。

 アンケートは参加者約330人に配布し、179人(男性154人、女性25人)から回答を得た。(山田孝人)

 


◎【企画・わたし学びますD川村公信さん】前に進もう 一緒に

 頑張れ、頑張れ―。

 首をかしげたり、頭をかいたり。「学び」と真っ正面から向き合う約50人の塾生たちを、函館市に住む川村公信さん(60)は後ろからそっと見守る。

 民間運営の夜間中学「函館遠友塾」(今西隆人代表)の開校当初からのスタッフだが、授業をすることはない。脳性小児マヒで言語障害と手足が不自由なのが理由だ。

 それでも、塾を休んだことは一度もない。「勉強ってやっぱり楽しい」。そう話す顔に優しい笑顔が広がる。

 ◆脳性小児マヒを発症したのは3歳の時だった。うまく歩けず、小学校ではいつも「置いてけぼり」。いじめが原因で転校した。中学2年になり、今度は肺結核にかかった。入院しながら当時の的場中分校(現・五稜郭養護学校)に通った。計算が得意で、有斗高商業科から函大商学部へ。商工会議所の簿記学校や文学学校にも足を運んだ。20代で印刷所に勤めたが仕事で腰を悪くし、障害者年金と家庭教師のアルバイトなどで生計を立てた。

 「習うのが好きだから」と、遠友塾には当初「塾生」として申し込んだ。しかし説明会に参加し、大卒の立場で学ぶのをためらった。それなら、とスタッフに変更した。

 普段はプリントを配布したり、声を掛けられた塾生を援助する。教えるのは好きだが、なかなか言葉が通じないため、「どうしても一歩下がってしまう」という。

 学生時代も社会でも、人と満足にコミュニケーションが取れず、嫌な思いをしたことは少なくない。しかし遠友塾は、さまざまな年代や職業の人が集う雰囲気が居心地良い。

 授業中、後ろの席で塾生と同じプリント問題を解くこともある。「数学は先生がユニークで楽しい。簡単な問題もあるけど面白い」。いつも市販の問題集を持ち歩き、小説から哲学書、海外文学と幅広いジャンルの読書を楽しむ「勉強家」にとって、遠友塾は同じ「学び」を楽しむ仲間たちと時間を過ごせる貴重な場所だ。

 積極的にスタッフとして参加する理由はもう1つある。

 中2のあの日。病気を告げられ、「人生が終わった」と思った。大好きな読書も勉強も一度はあきらめた。幸い入院しながら学校に通えたが、あの悔しさや絶望感を味わったからこそ、「塾生の気持ちが分かる」という。目線は塾生と変わらない。「分からないことを教え合える。共に学ぶ場があるのはいいこと」。学びたい人なら誰でも参加できる遠友塾の魅力に触れ、そう思っている。(新目七恵)(おわり)