2010年3月21日 (日) 掲載

◎ITソリューション iPhone用ソフト 国内1位獲得

 ソフトウエア開発のITソリューション(函館市豊川町、澤井保彦社長)が制作した米アップル社製の携帯電話iPhone(アイフォーン)用のソフト「サクッと交換」がひそかな人気を呼んでいる。3月上旬には約10万本あるソフトの国内有料ダウンロードランキングで1位を獲得。函館発の情報技術が全国のiPhoneの中で“胎動”している。

 同社は2003年3月に設立したITベンチャー。主に家電製品などに組み込むコンピュータープログラムの受託開発に力を入れてきたが、「一昨年のサブプライムショックで仕事量が減り、生き残りを懸けて自社製品の開発に乗り出した」と澤井社長(47)。「サクッと―」にもこれまで培った技術力が息づく。

 「サクッと―」はiPhoneの標準機能にはないQRコード(2次元バーコード)の読み込みや作成ができる専用ソフト。ほかにもiPhone以外の一般的な携帯電話に送信するための写真編集や、GPS(衛星利用測位システム)を使った現在地の地図画像のメール送信など、多機能を持つのが特徴だ。

 同社はiPhone向けに3本目となる「サクッと―」を昨年10月に発売。一般的な携帯電話からiPhoneに移行した利用者が直面する「QRコードが読み取れない」「撮った写真のサイズが大きく、送り先の一般的な携帯電話では開けない」といった問題を解決に導く。

 これまでの半年間で性能を向上させる計16回の更新を重ね、3月上旬にはiPhone向けのソフト配信サービス「App Store(アップ・ストア)」で国内有料ソフトのダウンロード数でトップに輝いた。澤井社長は「たまたまです」と控えめに喜ぶ。

 ヒットの要因について澤井社長は「徹底したマーケティングでライバルとの差別化を図り、利用者が欲しい機能を1本にまとめた利便性が受け入れられた」と分析。定価が1本230円(現在は期間限定で半額)と安価なため「大手が参入しにくい分、地方ベンチャーもすき間を狙える」という。

 ランキング上位には大手ゲームメーカーのカプコンやハドソン、スクウェア・エニックスなど一流企業の名前が並ぶ。澤井社長は「IT市場は競合や進化も激しいが、誰にでも、どこにでもチャンスはある。今後も機能アップや新商品の開発を進めたい」と意気込む。函館から全国、そして世界へ―。創業7年の同社の挑戦は始まったばかりだ。

 ◆iPhone 米アップル社製の高機能携帯電話で、国内では2008年7月にソフトバンクモバイルが発売。インターネット経由で専用ソフト「アプリケーション」を追加し、パソコン並みの機能を備える。画面に直接指で触れて操作するタッチパネル方式を採用。無料を含む専用ソフトのダウンロード実績は全世界で30億本を突破している。(森健太郎)



◎雨なんの 観光の地にぎわう 春の3連休スタート

 春の3連休が20日、スタートした。冬は大雪だった函館市内は積雪がなくなったものの、あいにくの雨となり、観光スポットでは傘を差したり、足早に歩く観光客が見られた。また、連休に合わせて今季の営業を始めた人気飲食店もあり、待ちわびた市民らでにぎわっていた。

 青空と赤レンガのコントラストを期待した観光客が大勢訪れた西部地区のベイエリア。残念ながら函館山は雲に隠れ、空も灰色だったが、旅行ガイド誌を手に人気の飲食店を回ったり、写真撮影を楽しむ人々が行き交い、函館の観光シーズンの到来を告げていた。

 周辺の駐車場では本州ナンバーの車も見られた。市元町観光駐車場を利用していた静岡の鈴木綾子さん(44)と長女の奈緒美さん(20)親子は「10日間の日程で、北海道、東北の温泉とグルメ、歴史ある街並みを楽しみにきた。天気で移動に影響が出ないことを祈りたい」と話していた。

 函館酪農公社(中野町118)では、3連休に合わせて本社・工場前の直売店「あいす118」が今季の営業をスタート。開店イベントを初めて開催し、22日までの3日間は先着60人に抽選でソフトクリームや焼きチーズ、ドーナツなどをプレゼントする。

 初日の抽選券は午前10時の開店から約30分でなくなる盛況ぶりで、待ちわびた家族連れやグループが、ストーブをたいた暖かい室内でソフトクリームやパフェをほおばった。駒井貞二店長は「ヨーグルトの商品を充実させました」と来店を呼び掛ける。

 高松町の主婦、大坂美佳さん(28)はこの日に合わせて、長男の泰海君(6)と長女の咲来ちゃん(4)と来店。「家に近いので毎月来ています。ことしもみんなで通います」と話し、シェイクなどを味わっていた。

 函館海洋気象台によると、21日の道南は発達しながら近づく低気圧の影響で大荒れの天気となる見込み。暴風や突風、高波、低い土地の浸水などに注意を呼びかけている。(山崎純一、小泉まや)



◎「自分の考え押し付けず柔軟に」 香山リカさん講演

 「子どもの就職を考える親のセミナー」(函館市主催)が20日、同市五稜郭町の市中央図書館で開かれた。精神科医、大学教授として勤務しテレビでも活躍する講師の香山リカさんが、精神学的見地から親の心構えや取るべき行動などをアドバイスし、市民ら約140人が耳を傾けた。

 厳しい就職環境が続き先行きが不透明な中で、子どもの働く意欲を高め、希望の就職を見つけるために親がどのようにかかわっていくべきかを考える目的で企画した。

 香山さんは精神病理学を専門として勤務するかたわら、大学教授や作家としても活躍。新聞や雑誌で社会批評を手掛け、著書には「しがみつかない生き方」「就職がこわい」などがある。今回は「親は子どもの就職をどう後押しできるか―精神科医からの提言」として講演した。

 香山さんは、大学教授として客観的に見た最近の学生について「自分に対して自信を持っていない。(就職も)自分がやりたいことより、周囲が喜ぶ方を選んでしまう」と指摘。また就職に悩む子どもと接する際は「(子どもの仕事を)自分の物差しだけではからず、柔軟に考えるべき」とし、「若い人が正しい情報を持っている場合もある。謙虚に聞く対応も必要」とアドバイスした。来場者らはメモを取るなどしながら、真剣に聞き入っていた。(山田孝人)


◎「海炭市叙景」クランクアップ

 映画「海炭市叙景(かいたんしじょけい)」の撮影が20日、クランクアップした。最終日は函館弥生小学校と桧山管内上ノ国町の養豚場でロケが行われ、同小児童や教職員らがエキストラとして参加。駆け付けた製作実行委員の市民らが見守る中、全シーンを撮り終えた。

 作品は函館出身の作家、故・佐藤泰志の同名小説の映画化。架空の地方都市「海炭市」を舞台に5組の人間模様を描く。メガホンを取る帯広出身の熊切和嘉監督は加瀬亮さん、小林薫さん、南果歩さん、谷村美月さんらのほか、函館市民も主役級に起用し、2月16日から市内各所で撮影を進めていた。企画した地元市民らでつくる製作実行委が食事や準備などで協力、支援してきた。

 この日は函館南本通小5年の中野敬輔君(11)と妹の2年、桃さん(8)が演じる幼い兄妹の出演シーンを主に撮影した。エキストラで参加した子どもたちは見慣れない撮影機材に興味深げな様子だったが、本番になると熊切監督らの指示通り、妹の同級生役を楽しげに演じていた。

 敬輔君は「撮影は長いのがつらかったけどうれしい。完成したら友達と観に行きたい」と話し、桃さんは「たくさん人がいるからドキドキした。ママと一緒に見に行きたい」と笑顔を見せていた。

 映画は秋に全国公開する予定。(新目七恵)


◎声をからし最後の訴え 七飯町長選きょう投開票

 【七飯】任期満了に伴う七飯町長選は21日、投開票される。選挙戦最終日の20日は、いずれも無所属で、現職の中宮安一氏(55)と新人の元町職員、石田広紀氏(61)=届け出順=が雨の中、町内各地で声をからしながら“お願いコール”を展開した。午後7時すぎには両陣営とも国道5号沿いを支持者と列になって行進し、同8時前にはともに選挙事務所前で最後の演説をし、5日間の舌戦を終えた。

 投票は町内22カ所で21日午前7時から午後8時まで行われる。開票は町スポーツセンターで午後9時から始まり、同10時半ごろには大勢が判明する見通し。

 七飯町選挙管理委員会は20日、21日投開票の町長選の期日前投票数をまとめた。

 同投票は17―20日までの4日間、町内3カ所で実施され、合計は2006年の前回選挙よりも900人多い2373人だった。

 投票所別では、町役場1382人、大中山出張所753人、大沼出張所238人だった。日別の投票者数は17日の382人皮切りに増え続け、18日514人、19日697人、20日780人だった。