2010年3月23日 (火) 掲載

◎企画「ACTION!北海道新幹線」/第1部・青森はいま@開業効果獲得へ県一丸

 ライトブラウンを基調に、中央部をガラス張りにした駅舎。コンコースには青森を代表する版画家・棟方志功の生誕100年を記念し、市民が作り上げた縦3・3メートル、横9メートルの巨大版画が旅人たちを出迎える。

 東北新幹線八戸―新青森間(81・2キロ)は1998年3月に着工し、総工費4595億円。新青森駅は「縄文から未来へ」をテーマに、柱や壁面に県産ヒバや津軽塗など、青森らしさをふんだんに取り入れて建設され、2月26日に建物が完成したばかり。10両がすっぽり収まるホームは長さ263メートル。線路上の雪を除去するスプリンクラーも備える。4月には運行試験も始まり、新幹線時代の到来は一気に現実味を増す。

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構青森鉄道建築建設所は「県庁所在地の駅らしく、歴史性を重視した。東北新幹線の駅で海が見えるのはここだけ」。5年後の2015年度には穏やかな陸奥湾を眺めながら、鉄路は北へと伸びる。

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 “結集!!青森力”。県を中心に経済団体や交通事業者など68団体で組織する新幹線開業対策推進本部(本部長・三村申吾青森県知事)は、新青森延伸に合わせて統一テーマを掲げ、機運向上とともに県内全域で開業効果を獲得しようと意気込む。

 県新幹線交流推進課の角俊行副参事は「本県にとっては第2の開業」と強調する。02年の八戸延伸開業によって、盛岡―八戸間の旅客流動量は02―03年の1年間で約150万人増加するなど、その効果を肌で知る。

 県は今回の延伸で青森市内はもちろん、下北半島や弘前方面にも観光客が流れると想定。県内各地では新たな体験型観光プログラムの構築や、新幹線から下車した後、目的地に着くまでの2次交通の充実を目下の課題とする。

 また、青森市や青森商工会議所でつくる新青森駅開業対策事業実行委も「一路青森」と題し、観光業者を巻き込んで受け入れ態勢の整備を加速させる。ゴールデンウイークや8月のねぶた祭りを活用し、切れ目なくイベントを続ける構えだ。

 県内には5年後の新函館駅(仮称)開業で「観光客が函館に持っていかれる」と悲観する向きも強いが、角副参事は「新幹線は小さな視野で見るツールではない。外国人観光客が函館で飛行機を降り、青森から乗っていくことも考えられ、最終的に入り込みが多くなるかもしれない。“環津軽圏”の発想が必要」。市新幹線開業対策課の横内英雄主幹も「観光客を奪い合ってもしょうがない。地域間競争というが、青函でいかに確保するかが大事」。県内への波及効果創出に加え、対岸・函館との共存共栄も模索している。(千葉卓陽)

 函館新聞社は、12月の東北新幹線新青森延伸開業と新函館開業まで残り5年となる今年、年間を通して新幹線取材に取り組み、道南地域で「今の時期にできること、すべきことは何か」を探ります。第1部では、開業を控えた青森県下の現状を伝えます。



◎フクジュソウ 春待つ

 函館山ではフクジュソウの姿が見られるようになってきた。芽は今月に入ってから出ていたものの、暖かい日が続かず、黄金色の花が満開になるのはまだ先のようだ。

 フクジュソウはキンポウゲ科の多年草。ガンジツソウとも呼ばれ、福を招く縁起の良い花とされている。今年は雪が多く、例年より少し遅れて芽が出てきた。その後も寒暖の差が激しかったり、雪が積もるなどして遅れ足踏みしながらも、花は少しずつ確実に開いてきている。(山崎純一)



◎指揮監督権「口出し」扱い…支庁再編見直し案

 【江差】道は支庁再編に伴い函館土木現業所は、渡島総合振興局建設部として内部組織化する。だが、渡島・桧山両管内を管轄する新組織と、総合振興局長や桧山振興局長との間で権限の所在や事務執行の流れが複雑化するため「再編の意義や効果は疑問」との声も上がる。

 支庁再編をめぐり道が2日に公表した「基本フレーム(見直し案)」によると、函館土現は建設部として、地域政策、産業振興、保健環境の4部からなる渡島総合振興局に吸収される。総合振興局には次長2人を配置。うち1人が土木行政や社会資本整備を担当する。

 見直し案では、格上の総合振興局長や桧山振興局長を飛び越し、知事が直接、土現に関する主要な権限を次長に与える変則的な形になった。上司に当たる総合振興局長には財務と職員服務の権限だけを与える。また、総合振興局長と振興局長は横並びの形で、次長に対する指揮監督権を与えるが、道が道議会会派に示した資料は、その位置付けを次長に対する「口出し」と明記するなど、実質的な権限とは認めていない。

 権限の流れが複雑化した背景には、桧山振興局長にも権限を与え、管内の土木行政に対する責任を担保すべきとする、桧山町村会や議長会の要望に応えず、道が土現の内部部局化にこだわる余り、14支庁存続を前提とした改正支庁再編条例との矛盾を無視していることにある。桧山町村会長の寺島光一郎乙部町長は「函館土現が道建設部の出先機関として、渡島・桧山両支庁と連携しながら、道南の土木行政をつかさどってきた姿が道民にとって最も理解しやすい。14支庁存続という改革の精神を無視し、総合振興局と振興局に権限や組織で差を付けることが真の目的ではないか」と疑問視する。(松浦 純)


◎新年度から「縁パワーメント補助金」創設…函館市

 函館市は新年度から、市民との協働を目的にまちづくり活動をサポートする「市民とつくるまち・縁(エン)パワーメント補助金」を創設する。市が設定したテーマに基づき、市民団体が提案する事業に対して補助金を出すもので、円滑な事業実行に向けたアドバイスも送る。早ければ6月から団体を募集する方針だ。

 2000年度に設けた「人づくり・まちづくり事業」における補助制度の一種として創設する。現在はまちづくりのリーダーとなる人材育成に向けた「市民自主研修支援補助金」と、市民団体の自主的な活動を支援する「まちづくり活動支援補助金」の2種類があるが、市計画調整課は新設の理由を「市民団体をより巻き込む形で、生活の満足度向上につなげたい」としている。

 市がまちづくりの課題解決に向けて年間で一つテーマを決め、それに呼応する取り組みを行う団体に対し、最長で3年間、対象経費の2分の1以内、150万円以下で補助する。市はこのほかに広報誌「市政はこだて」への掲載や、事業に対する担当部局からのアドバイスといった金銭面以外のサポートも行う。庁内での課題整理を経て、6月からの募集開始を予定する。

 同課は「行政の目が届きにくい地域課題も存在している。市民団体との協働によってこれらを解決し、市民生活の充実に結び付けていければ」と話している。(千葉卓陽)


◎民営化の学童保育所運営へ準備着々…市連協

 函館市内の学童保育所でつくる市学童保育連絡協議会(=市連協、加藤尚巳会長)の学童クラブ運営委員会(高田恵美子委員長)は、4月から民営化される2カ所の学童保育所を運営する。現在は採用した指導員の研修会を始めるなど、開設に向けた準備を進めている。

 学童保育は、共働きや一人親家庭の子どもたちが放課後を過ごす場所。2009年4月現在で公営4カ所に115人、民営38カ所に1196人の児童が在籍する。公営は青柳小、北星小、上湯川小の各校舎内と日吉が丘児童館内に開設されていたが、10年4月から民営化され、いずれも校舎内で運営される。

 市連協は30年前に発足し、市内21の学童保育所が加盟する。今回、組織内に学童クラブ運営委員会を立ち上げ、北星小の「こばとクラブ」と上湯川小の「すずらんクラブ」の2カ所の学童保育所を運営することになった。新たに指導員6人を採用し、各学童に専任指導員1人、パート指導員2人を置く。

 弥生町の学童保育所「ちびっ子クラブ」の指導員を30年近く務めた運営委員長の高田さんが指導員研修を担当。初回は学童保育のあらましから活動意義、仕事内容などを経験談を交えて説明。高田さんは「子どもが放課後、学童保育で受け止められているという安心感が大事。学童保育が働く保護者にとってもよりどころになるよう、保護者と一緒にやっていける学童保育にしたい」と話していた。入所児童を募集中で、問い合わせは同事務局(わんぱくクラブ内)TEL0138・54・5521。(宮木佳奈美)