2010年3月25日 (木) 掲載

◎浜の母さんの味を楽しむ 直売所「六輪村」で交流会

 【北斗】農家の女性たちが営む直売所「六輪村」(東寺百合子代表、市大工川48)で24日、交流会「浜の母さんの味を楽しむ」が開かれた。函館市漁協石崎女性部(川嶋律子部長)の7人が、コンブや魚料理を伝授。「これが一番おいしい食べ方」と生産者ならではの味を披露し、親ぼくを深めた。

 料理は「マスのすり身汁」「ワカメ茎とサンマの油炒め」「ワカメのガゴメ和え」「コンブのかき揚げ」。高級魚のマス、とろける柔らかさの間引き養殖マコンブなど、石崎地区で水揚げされる旬の食材を手際よく調理した。

 中でも農家女性を驚かせた逸品は、刻みコンブのかき揚げ。「見た目はシソのかき揚げそっくり。磯の風味もいい」と好評で、川嶋部長らは「漁師の食卓では定番のおかず。ちょっとしたアイデアですぐ作れるよ」と紹介した。

 石臼で粉末にしたガゴメ(トロロコンブの仲間)をひとつまみサラダにまぶし、独特のとろみを出す工夫も。全員で試食を楽しみ、互いの家族や仕事の話題に花を咲かせた。

 この交流会は、東寺代表が函館市石崎地区で開くフラワーアレンジメントでの住民交流がきっかけ。「今度は六輪村で浜の料理を教えて」と10年来、企画を持ちかけてきたという。東寺代表は「浜の母さんの発想が素晴らしい。教えてもらった料理は6月から始まる六輪村の定食に出したい」と笑顔を見せていた。(田中陽介)



◎函館市部長人事 福祉・川越、競輪事業・種田氏

 函館市の西尾正範市長は24日までに、4月1日付の部長級人事の一部を固めた。退職する岡田芳樹福祉部長(60)の後任に川越英雄市教委生涯学習部長(53)を起用するほか、同じく退職する酒井哲美競輪事業部長の後任に種田貴司経済部労働政策室長(52)を昇格させる意向。同市長はまた、女性の視点を行政に生かす観点から、市では初めてとなる女性の部長職を置く方向で検討しており、辻喜久子保健所健康づくり推進室長(58)の起用が有力視されている。

 今春で定年退職する部長職は福祉部長、競輪事業部長のほか、恵山・椴法華・南茅部の各支所長、選挙管理委員会事務局長、水道局事業部長の計7人。特別職では若狭正男交通局長(67)が退任する。

 交通局長は新年度から部長職とし、山本真也都市建設部長(55)を起用する。選管事務局長には沢田寛之農業委員会事務局次長(57)、水道局事業部長には佐野肇行同部次長(58)を起用する意向。

 また、現在水道局長が兼務している同局管理部長には、平井等企画部次長(55)を昇任させる方針だ。部長職の内示は26日に行う予定。(千葉卓陽)



◎函館市初の合葬墓完成、清和荘納骨堂の遺骨を埋葬

 函館市初となる合葬墓が函館市の船見町共同墓地内に完成し、彼岸に合わせて24日、初の骨納めが行われた。4月に移転して民間運営となる養護老人ホーム「清和荘」(同市湯川町1)の納骨堂にあった遺骨212体分を、合葬墓に埋葬し、供養をした。

 同市にはこれまで合葬墓はなく、同施設で亡くなった身寄りのない遺骨は、施設内の納骨堂に納められていた。民営化するに当たり、これまで引き受けた分を移す場所が必要となった。函館湾を見渡す小高い場所に約65平方メートルの敷地を確保し、536万円かけて2月上旬に整備を終えた。

 墓碑には「やすらかに」の文字を彫り、約1500体を埋葬できる納骨室を備える。今後は清和荘利用者のほか、これまで寺院などに預けてきた身元不明の死亡者、生活保護受給者で身寄りのない人を受け入れる方針だ。

 この日は市の担当職員9人が参加した。これまで供養を務めてきた誓願寺(同市湯川町1)の上野顕至住職の読経に続き、全員が手を合わせてから作業を開始。遺骨を包む布などを外し、納骨室に直接遺骨を入れていった。粉状になった遺骨が舞う中で職員は黙々と作業に当たり、終了後は全員が再び手を合わせた。

 市は春と秋の彼岸に合わせて供養する考え。清和荘の宇野隆司院長は「たくさんの人に手を合わせてもらえるので良かった」と話していた。(小泉まや)


◎支庁再編 対話置き去りで条例施行へ

 【札幌】高橋はるみ知事は23日の道議会予算特別委員会で、14支庁を9総合振興局と5振興局に再編する改正支庁再編条例を4月1日に施行する方針を示した。振興局が置かれる桧山・日高地域が、土木現業所の位置付けや総合振興局に集約する業務の見直しを求め、地域協議の開催を求めているが、再編に懸念を示す地方との対話や合意形成を置き去りにしたまま、条例施行に踏み切ることになった。

 高橋知事は昨年3月24日、道市長会や道町村会など、地方4団体との間で「協議を行う場を設置する」とし、桧山など振興局地域でも新たな組織体制や事務集約の進め方を協議し、合意を得ながら改革を進めることで一致した。

 だが、改正条例が14支庁存続を前提としているにもかかわらず、総合振興局と振興局の間で、権限や組織に格差を設ける道の姿勢に桧山・日高地域は反発。両地域の合意が得られないまま施行を迎えることになる。また、高橋知事は、地方4団体との協議も開かず、文書での意見照会にとどめた。高橋知事自らが公開の場で確認した合意事項を一方的に破棄したことは、問題を残す形になりそうだ。

 23日の予特委で高橋知事は、新年度の集約対象に掲げた35事務のうち最終的に23項目を取り下げ、集約事務を12項目とする考えを示した。振興局長にも土木行政に関する権限を与えるよう求める桧山・日高地域の要望には応じず、土現関連の7項目は集約対象のまま残した。桧山地域が求める公開協議は、条例施行前には応じない方針。

 また、24日閉会した第1回定例道議会では、道政野党の民主党・道民連合が「見切り発車をすべきでない」とし、支庁再編関連の予算を盛り込んだ新年度予算案の撤回を求める動議を提出したが、自民・公明両党の反対多数で否決した。(松浦 純)


◎企画「ACTION!北海道新幹線」/第一部・青森はいまB老舗店に過当競争の波

 「一路青森」。JR青森駅に降り立つと、東北新幹線の新青森駅開業をPRする水色の垂れ幕が寒風にはためいている。目の前には高層の高齢者向け分譲マンションや全国チェーンのビジネスホテルもそびえる。「函館より人は歩いてるでしょ」。駅前の商店主の女性はどこか自慢げだ。

 それでも今年に入り、駅前の顔ともいえる老舗ホテル2軒が破たんに追い込まれた。長引く不況で需要が激減。全国チェーンの進出による価格競争も経営を圧迫した。「ここ1、2年がどん底だよ」。2軒が加盟した青森市旅館ホテル協同組合の八木橋裕事務局長は浮かない表情だ。

 「長らくのご愛顧、誠にありがとうございます」。駅から徒歩1分の好立地にある駅前ホテル青森館の入り口に1月中旬、突如閉館を知らせる張り紙が出た。東京商工リサーチ青森支店によると、前日までは通常通り営業していたという。創業95年の老舗の閉鎖は、開業効果も楽観できない業界の厳しさを物語る。

 近年、駅前には「ルートイン」「東横イン」、中心街にも「リッチモンド」が開業するなど全国展開のホテルが次々と進出。縮小するパイの奪い合いは低価格競争にも拍車を掛けた。青森館もセミダブルベッドで2人一室5800円(1人2900円)の格安プランを打ち出したが、「価格と部屋数で圧倒する大手と真っ向勝負してもかなわない」。八木橋事務局長の嘆きは尽きない。

◇    

 「開業すれば首都圏から目の肥えた旅慣れた人がやって来る。いまから3倍速でまくりかけないと」。青森県観光連盟の九戸眞樹専務理事は焦燥感を募らせる。食や温泉など既存の観光素材の磨き上げや町歩きを提唱し、春の桜、夏のねぶたに依存してきた従来の観光戦略からの脱却をもくろむ。

 1月中旬。東京・原宿は“青森色”に染まった。「とことん青森」と銘打った県を挙げた観光イベント。表参道のレストランには県が無償提供した県産食材のメニューを並べた。B級グルメの屋台も計2万食が完売。締めくくりは幅9メートル、高さ4.8メートルのねぶたが500人の跳人(はねと)らを引き連れ、メーンストリートを練り歩いた。

 九戸専務理事は「見たことのない世界が都会の人たちに新鮮に映った。それが県外から観光客を呼び込む鍵。青森の“当たり前”が新幹線でつながる首都圏の人に伝わり、実際に訪れる動機になれば」と、延べ35万人を動員したイベントの手応えを語る。

 しかし、九戸専務理事は「もともと観光地ではない青森市民にはもてなしの心が身についていない」とも指摘する。成功例として語られる八戸開業を例に「準備をしていれば恩恵はある。手あぐらをかいていれば乗り遅れる」と自戒を込めてハッパをかける。残された時間はそう多くない。(森健太郎)