2010年3月29日 (月) 掲載

◎2車両 お疲れさま 市電お別れイベント

 3月末で引退する函館市電の1006号車と711号車の「お別れイベント」が28日、同市駒場町の駒場車庫で開かれた。函館市交通局が車両の廃車にちなんだ催しを企画するのは初めて。この日は道内外から鉄道ファンら200人以上が詰め掛け、市民の足として半世紀近く函館を駆け抜けた車両を胸に刻んだ。

 1955年に製造された1006号車は、東京都電だった7000形車両を譲り受け、70年から函館に登場。同型では唯一の現役車両で、現在は都電時代のクリーム色の車体に赤帯の塗装が施されている。711号車は59年から新車で導入され、50年以上にわたり活躍してきた。

 2台は老朽化や新型車両の導入に伴い31日で運行を終える。これに先立ち、同交通局は全国から寄せられたファンの要望に応える形で最後のイベントを初企画。運転席にも座れる車内の見学のほか、市電グッズの購入者を対象にした臨時運転も行われた。

 車内にはこれまでの車体の設計や塗装などの変遷を振り返る写真パネルを展示。同交通局のオリジナルグッズの売れ行きも好調だった。中にはこの日のために東京や大阪から駆け付けた愛好家もいて、来場者は引退直前の2台の雄姿を熱心にカメラに収めていた。

 親子で訪れた市内の会社員近藤勇介さん(33)は「函館にしかない貴重な車両なので何とかうまく保存、活用してほしい」と話し、写真やビデオの撮影に夢中だった。息子の北美原小1年のD、君も「市電から見る景色が好き。将来は運転士になりたい」と目を輝かせていた。

 31日の最終運行は711号車が午前8時半、1006号車が午前10時6分、それぞれ駒場車庫前を発車する。(森健太郎)



◎首都圏ニーズを商機に ビジネスマッチング事業

 函館市は新年度、技術力を持つ市内の事業者と、それを求めている首都圏企業とを結びつける「地域資源ビジネスマッチング事業」を実施する。市が企業訪問などで得た首都圏企業のニーズを地元事業者に紹介するなどして、ビジネスチャンスの拡大につなげる。市工業振興課は「将来的な企業誘致につなげていきたい」と話している。

 同事業では首都圏など本州企業に対して、函館の地元企業や教育、研究機関が進める産学連携体制の強みなどをアピールする。これまでも市単体での企業訪問時や各事業者ごとに展開してきたが、産学官連携で実施することで効率的で効果的なPRが可能となるという。

 市は新年度予算に150万円を計上した。具体的な事業としては、大学関係者などと共同で東京や札幌で企業訪問を行い、より専門的で高度な技術紹介を実現する。また首都圏などでビジネス情報・意見交換会を開催して、地元事業者が持つ資源や技術力を直接伝え、本州企業のニーズをつかむ機会とする。

 このほか同事業では、地元企業の紹介パンフレットを作成する。地元製造業者を細部まで紹介する内容で、製造する商品や経営資源、技術などを記す予定。配布は市が行う企業訪問などの際に直接渡すという。

 同課は「産学官連携で取り組む函館マリンバイオクラスターなどにより、函館に注目が集まっていることで、市への問い合わせ内容は複雑化し専門化している」とし、「企業ニーズに対してこれまで以上にきめ細やかな情報を迅速に提供し、地元企業とのマッチングを実現させたい」と話している。(山田孝人)



◎「自分らしく生きて」 ももハウス法話会

 函館市赤川町の介護老人福祉施設「ももハウス」(加藤勝康施設長)で28日、函館仏教青年会の法話会が開かれ、入所者ら20人が耳を傾けた。

 同施設が4年ほど前から同会に依頼し、毎年3、9月の彼岸時期に開かれている。同会は市内の45歳未満の若手僧侶でつくる組織。同施設での法話会は所属する僧侶が持ち回りで担当している。

 この日は青柳町の天祐寺の山口礼雄副住職が読経した後、天台宗の開祖、最澄が修行僧の心得をまとめた著書「山家学生式」の一節から「一隅を照らす人が国の宝である」の言葉を引用し、教えを説いた。

 山口副住職は「国の宝とは金でもなく物でもなく、皆さん1人1人。1つの隅にいても、どこにいても自分らしく生きましょう。自身が輝き、相手を照らせる人は国の宝になる」と話した。さらに入所者に対し、「(戦後の)焼け野原から日本をつくり上げた皆さんは宝です。これからも自分らしく、国の宝として1日でも多く長生きしてください」と語り掛けた。(宮木佳奈美)


◎「水道料金の改定検討を」 函館市の包括外部監査

 函館市の包括外部監査人、北川勝弘税理士はこのほど、2009年度の包括外部監査報告書をまとめた。本年度の監査テーマは水道局所管の水道、下水道、温泉の各事業。このうち水道事業では旧4町村地域で実施している簡易水道で毎年1億円以上の赤字を出していることから、北川監査人は「何らかの財政的支援が必要で、水道料金の改定も検討する時期に来ている」と指摘している。

 公営企業として水道局は独立採算を原則とした事業経営が求められることから、テーマに選定。08年度を対象に、経営状況や地方公営企業法に基づく会計処理などを監査した。

 水道事業は2006年度以降赤字が続き、中でも簡易水道事業だけで毎年1億円を超す大幅な赤字を出している。同監査人は「簡易水道の赤字を全体で賄い切れておらず、人口増も見込めない状況にあり飛躍的な収入増は期待できない」と指摘。今年4月から家庭用以外の水道料金を旧市域に統一するが、「これによる費用の削減、増収は1500万円程度と試算され、現在の状況が続けば料金改定を行わなければならなくなる」としている。

 温泉事業では市営谷地頭温泉に関し、「水道サービス協会に外部委託をしているが、限界に達した感がある」とした上で、民間への売却を検討するよう求めた。

 また、同協会が水道水をペットボトルで販売している点について、同局が原料となる水を毎年無償で同協会に提供していることを「別法人であり、事業を移譲した以上は売り上げの計上漏れ」として、同協会に請求するよう指摘している。(千葉卓陽)


◎企画「ACTION!北海道新幹線」第1部・青森はいまE「観光振興」 食に力

 「これは面白そうだ」。今月上旬、福岡から寝台列車で青森市を訪れた上原謙一さん(54)は、1枚のチラシに興味を抱いた。

 JR青森駅にほど近い青森市民の台所・古川市場。新幹線開業に向け、新たな青森名物を作ろうと昨年12月から始めたのが、どんぶりご飯に刺し身や総菜など、好みの食材を食べたいだけ載せる「のっけ丼」サービスだ。

 上原さんはヒラメ、イクラ、甘エビなど6種類をご飯に載せて計1100円。「自分で好きな具を載せるのが一番だね」と、新鮮な海の幸を笑顔でほおばった。

 青森市新幹線開業対策課によると、のっけ丼は昨年12月から今年2月中旬までに約3000杯が売れ、週末には団体客や家族連れでにぎわいを見せる。市場内の海産物店の女性は「函館の朝市には研究目的でよく行くけど、あっちはどんぶり1杯で2000円はするでしょ」。新鮮さと安さへの対抗心をのぞかせた。

 市が観光振興策として目をつけたのは“食”。地元ホテルのスタッフが薦めるすし店で使える定額食事券や、県でとれる魚介類の総称「七子八珍(ななこはっちん)」の周知に全力を挙げる。のっけ丼にしても、食材をあらかじめ切るなどひと手間かける店も出てきた。同課の横内英雄主幹は「にぎわいを見せて、いつ来ても魅力があるようにしたい。津軽弁はきつく聞こえてしまうので、言葉遣いにも気をつけなくては」。新たに来る観光客をどうもてなすか、試行錯誤が続く。

 田んぼの一面に雪が残る早春の津軽平野を、昭和30年代に作られたというレトロな列車が進む。「走ればガッタン、止まればゴットン。気の利いた走りは一切できませんのでご注意ください―」。五所川原市金木町の角田周さん(56)の語り口に、団体客から笑いがあふれた。

 角田さんは地元のまちおこしグループ「津軽地吹雪会」の代表。89年から津軽鉄道の冬の名物、ストーブ列車内で地酒とスルメイカを焼くサービスを始め、年間約1万人が訪れる人気ぶりだ。津軽平野特有の地吹雪を逆手に取った「地吹雪体験ツアー」も行い、地元では“当たり前”のことを、柔軟な発想で観光資源に変えた。

 観光庁から県内唯一の「観光カリスマ」に選ばれた角田さんにとって、新青森開業は最大の関心事。昨年4月には県内各地のまちおこし団体を集め「あおもり観光デザイン会議」を結成し、住民主体の広域観光ルートづくりを提案する。「旅行会社は函館だけ、青森だけでは扱ってくれない。函館は観光地としてのステータスがあるが、これからは肩の凝らない観光づくりを」と話す。(千葉卓陽)