2010年3月4日 (木) 掲載

◎進行子宮頚がんの治療体制整う 函病で新機器導入

 市立函館病院(吉川修身院長)は、進行した子宮頚(けい)がんの標準的な治療に必要な遠隔操作式小線源照射装置(RAL=ラルス)を新たに導入し、使用可能な体制を整えた。同様の機器が整備されているのは道南では同院のみ。これまで札幌の病院に頼っていた治療を函館でできるようになる。同院産婦人科科長の山下剛医師は「患者の経済的・心理的負担は飛躍的に軽くなる」としている。

 進行した子宮頚がんの治療では通常、約2カ月半かけ定期的に、抗がん剤と外部からの放射線照射に加え、ちつ内から直接、放射線照射を行う。ラルスはちつ内からの照射に使用。遠隔操作で適切な場所に必要な時間だけ、線源を移動させることができる。同院によると、道内ではこれまで札幌と旭川市、釧路市の病院にのみあった。

 同院はがん治療の拠点病院。ラルスは2006年まであったが、機器の老朽化により使用不能に。ことし4月以降は5人の患者にラルスを使った治療が必要となったが、すべて他院に頼っていた。

 自宅近くで治療できなかったことについて山下医師は、「これまでは金銭、時間の面で膨大なデメリットがあった」とし、「今後は函病1カ所で治療を完結できる」と患者の負担減を強調する。2月26日には早くも、治療が必要な患者1人に使用した。

 導入費用は約1億3000万円。全額、政府の地域活性化・経済危機対策臨時交付金を活用した。導入により医療機関としては、婦人科腫瘍(しゅよう)専門医の資格を取得できる施設となる。(小泉まや)



◎新青森開業でイベント 道新幹線対策推進機構

 函館市議会第1回定例会は3日、代表質問が始まり、3会派が西尾正範市長の市政運営をただした。この中で同市長は、ことし12月の東北新幹線新青森延伸開業時に合わせ、北海道新幹線新函館開業対策推進機構が中心となり、来年1―2月をめどに「新青森開業ウェルカムイベント(仮称)」の実施を検討していることを明らかにした。同市長は「青森市で実施する開業イベントともタイアップした催しや観光PRを検討している」と述べた。

 阿部善一氏(民主・市民ネット)の質問に答えた。

 同機構は市のほか、函館商工会議所、函館国際観光コンベンション協会などで構成される官民協働の組織。新幹線開業を控えた函館の観光や産業振興などを協議している。

 市企画部や同機構事務局によると、同イベントは既存の「はこだて冬フェスティバル」「えさんごっこまつり」などの冬の催しと連動し、“食”を中心としたフェアを来年1月から2月中旬をめどに集中開催する方向で検討しているという。新青森開業予定月に開催されるクリスマスファンタジーと合わせ、青森を訪れた観光客に函館まで足を運んでもらうのが狙いだ。

 PR活動は航空機と競合しない南東北や北関東を中心に展開。また、JR東日本が中心となって実施する大型観光キャンペーンや、青森市での開業イベントとも連携し、道南圏への観光客誘致を図る考え。市企画部は「九州新幹線開業と時期が近いため、まずは青森の自治体などと連携して観光客の目を北に向けたい」とし、「新幹線開業後の動きや客のニーズなどをとらえて、5年後に生かしていきたい」としている。

 代表質問にはこのほか佐古一夫氏(新生クラブ)、北原善通氏(市民クラブ)が立った。  市議会は2010年度各会計予算案など52件を審査する予算特別委員会(11人)を設置、委員長に佐古氏、副委員長に見付宗弥氏(民主・市民ネット)を互選した。

 市はまた、市立函館病院であった医療過誤に伴い、損害賠償として2964万円を増額する本年度病院事業会計補正予算など議案2件を追加提案し、民生常任委員会に付託された。 (山田孝人、千葉卓陽)



◎財政健全化計画案を策定 江差町 

 【江差】早期健全化団体の江差町は3日、自治体財政健全化法で義務付けられた「財政健全化計画(案)」をまとめた。10日開会の第1回定例町議会に提案する。2009―10年度の2カ年で起債(借金)の繰り上げ償還や、人件費を中心とする歳出削減を進め、10年度決算(11年度)で同団体の指定脱却を目指す。

 計画案によると、減債基金の取り崩しで1億円、本年度で廃止される「檜山ふるさと市町村圏基金」の返還分約9300万円を起債の繰り上げ償還に充てる。  04年度から継続中の特別職・一般職の給与や期末手当などの削減措置を延長し、1億9100万円の削減効果を見込んだ。職員数も新規採用の抑制などで、本年度現在で117人の町職員を10年度までに112人程度に減らす。職員による札幌などへの宿泊を伴う出張も自粛して、経費の削減を進める。

 建設事業など投資的経費は1億4000万円の削減。公共施設の光熱水費の削減のほか、旧中村家住宅、旧檜山爾志郡役所などの町有観光施設の冬季閉鎖により800万円をねん出。外郭団体の見直しに伴い開陽丸青少年センターでも冬季閉鎖を検討する。

 一方、歳入対策では、新年度に「債権管理条例(仮称)」を制定。町税、保育料、住宅使用料など公共料金の滞納整理も進める。こうした対策により、早期健全化基準の25%を超過している実質公債費比率は、09年度決算で27.7%、10年度決算で基準を下回る24.5%まで圧縮するという。町財務課は「12年度までに国の起債許可が必要ない18%未満に圧縮する計画も早期に策定したい」としている。(松浦 純)


◎普通建設事業を圧縮 江差予算案

 【江差】江差町(濱谷一治町長)は3日、2010年度予算案を発表した。7月の町長選を控えた骨格編成で、一般会計総額は本年度当初比3.2%減の48億8183万円。水道事業を除く9特別会計を含めた総額は、同3.18%減の72億7185万円。10日開会の第1回定例町議会に提案する。

 一般会計は過去10年間で初めて50億円台を下回った。歳入は地域経済の落ち込みに伴い3%、地方譲与税は7.8%の減少を見込んだ。歳出は、町立かもめ保育所整備などの大型建設事業の終了に伴い、普通建設事業を同70.5%減の1億1400万円に圧縮した。早期健全化団体からの脱却に向けた起債償還には1億1090万円、繰り上げ償還の原資となる基金積み立てなどに1億5200万円を充てる。新年度末現在での基金残高は9億5500万円に増える。

 主な新規事業では、町内のイチゴなど戦略作物の生産拡大に1260万円、地上デジタル放送の難視聴地域となっている南が丘地区の共聴施設整備に100万円、4月に開館する江差山車会館の維持管理経費に180万円、逆川から五厘沢地区の民有林造成の400万円など。ナマコなど水産資源の生育環境保全や藻場造成を進める環境・生態系保全活動事業には120万円を盛り込んだ。(松浦 純)


◎厚沢部町の新年度予算案 町民プール新築へ

 【厚沢部】厚沢部町(渋田正己町長)は2日、2010年度予算案を発表した。約3億2000万円の町民プール建設費を盛り込んだ一般会計総額は本年度当初比9.9%増の37億200万円。7特別会計を含めた総額は、同3.5%増の58億9829万円。9日開会の第1回定例町議会に提案する。

 町民プールは、厚沢部小とパークゴルフ場に隣接する町民体育館跡地に新築する。木造1階で床面積は約900平方メートル。25メートル・5コースの屋内プールを整備する。新年度の早い時期に工事を発注し、年内の完成を目指す方針。

 主な新規事業は、新町地区での公営住宅整備(4棟8戸)が約1億2800万円、大豆シストセンチュウ対策として導入するクリムゾンクローバーの種子購入費助成に270万円、館小学校の空教室を利用して行う「放課後子どもプラン推進事業」は303万円。学力向上対策では、市販ゲーム機を活用したモデル授業の実施、先進的な取り組みを行っているノートルダム学院小学校(京都市)からの講師派遣などに206万円を盛り込んだ。

 移住促進対策は3200万円で、関西方面でのラジオCMやパンフレット作成などのPR対策に取り組む。町の第3セクター・素敵な過疎づくり株式会社には、今年完成した移住体験用住宅の運営や管理を委託する。国指定史跡・館城跡では、城跡の外郭線などの発掘調査に本年度の約1.6倍に当たる1067万円を計上した。(松浦 純)



◎新たな大型事業抑制 知内町予算案

 【知内】知内町(脇本哲也町長)は3日、2010年度予算案を発表した。一般会計は本年度当初比0.8%減の35億3600万円。6特別会計と1事業会計を含めた総額は同1.3%減の50億8139万円となった。10日開会予定の第1回定例町議会に提案する。

 起債(借金)を減らすため、新たな大型事業を抑制しているのが特徴。歳出の公債費は、起債の元利の減少によって同13.3%減の7億8319万円に圧縮。起債残高も09年度の62億4160万円から58億2707万円に減少。10年度の実質公債費比率も19.9%ととなる見通しで、12年度には16.5%に推移するとしている。

 事業費では、新規就農者2人に対し、初期の経営安定を図るためハウス10棟の設置費用の2割、120万円を町が助成する。また、町外から知内高校にバスで通学する生徒に対する交通費の助成率を、現在の4分の1から2分の1に拡大、374万円を盛り込んだ。扶助費は、子ども手当の対象者が569人で7576万円を計上した。

 また、普通建設事業費は、国の「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」を活用して事業の一部を前倒ししたことにより、同11.6%減の1億5723万円となった。

 歳入の54%を占める地方交付税は、同1.4%減の19億3527万円と見込む。町税は景気の低迷で所得の減少を予測。同3.5%減の6億9604万円とした。(松宮一郎)