2010年3月8日 (月) 掲載

◎地域の未来へ“船出”…戸井の主婦らが大漁旗で法被作る

 函館市戸井地区で漁業に携わる主婦らが、30年以上前に新造船祝いで住民から地元漁師へ贈られた「大漁旗」で法被を作っている。上々の仕上がりが評判を呼び、函館市内の2保育園の卒園式でヨサコイソーランの衣装に活用されることが決まった。「まちの繁栄を象徴する存在で、先人が汗水流して浜を盛り立ててきた思いがにじむ。後世にこの情熱をつなげられれば」と関係者は歓迎。生まれ変わった大漁旗は、将来を担う子どもたちと地域の明るい未来を見守るように、新たな“船出”をする。

 縁起物の大漁旗は、横1.55メートル、縦1b。船舶の海上パレードでは、ずらりと飾られ潮風にはためく。「漁師冥利(みょうり)に尽きる。みんなを幸せにしてくれるようで」と華やかだ。  ただ漁業関係者を取り巻く環境は年々、厳しさを増している。高齢化、後継者不足、魚価の低迷…。ゆえに新造船の数は減り、海で大漁旗を眺める機会も減った。戸井では小学校の運動会や神社の祭典に登場し、面目を保っているものの、少子化による学校統廃合などの影響も。

 この課題に、浜の母さんたちが立ち上がった。昨秋、市戸井支所(伊藤修支所長)と戸井教育事務所(八木多佳夫所長)の呼び掛けで法被づくり作業を展開。11月下旬から釜谷町会女性部(館山澄子部長)のメンバーや旧市内からボランティア6人が駆けつけた。多い日は、約40人が集った。

 戸井で「縫い物の先生」と慕われる川村正子さん(60)が、図案や裁縫技術を指導。1着に大漁旗2枚の割合で、独特の色合いを鮮やかに組み合わせ、漁家の屋号や船の名前を背部にあしらうよう、工夫した。2月までに計38着を制作。市の広報誌で「イベント等に無料で貸し出します」とその様子を紹介した。

 反響は大きく、問い合わせが相次いだ。「ぜひ卒園式の舞台でヨサコイソーランの衣装として使わせていただきたい」と3月18日に函館市内の深堀保育園(高橋悦子園長)で、28日には青い鳥保育園(氷室美紀園長)の卒園式で園児の門出に花を添える。

 川村さんは「手分け作業の裁縫が楽しくて、いい時間だった。今度は子ども用の法被を作ってみたい」、館山さん(71)は「大漁旗には人情そのものがあると思う。いまこうして活用され出したことはとても意義深い。素直にうれしい」と目を細める。

 戸井教育事務所では、今後も特製法被の無料貸し出しを行う。「水洗いとアイロンをかけてくれさえすれば」と積極的な利用を呼びかけている。同時に、地域に残る大漁旗の提供も求めている。問い合わせは同事務所TEL0138-82-3150。

 この活動は、市戸井支所の本年度地域コミュニティー推進事業として実施した。(田中陽介)



◎「第9」高らかに 函館市芸術ホール管弦楽団演奏会

 第20回函館市芸術ホール管弦楽団演奏会(函館市文化・スポーツ振興財団など主催)が7日、五稜郭町の市芸術ホールで開かれた。函館では15年ぶりとなるベートーベン作曲の交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125の響きに、700人を超える満員の観衆から惜しみない拍手が送られた。

 同楽団は、道南地域のアマチュア弦楽器奏者のレベル向上を目的に結成され、1999年8月に1回目の演奏会を実施。以後、さまざまな編成で意欲的なプログラムを取り上げてきた。ベートーベンの「第9」は年末を中心に全国各地で演奏される人気曲だが、函館地域では1995年以来、プロ・アマともに全曲を取り上げていないこともあり、チケットが事前に売り切れになるなど高い注目を集めていた。

 この日の演奏会は、ベートーベン作曲の序曲「コリオラン」作品62で幕開け。休憩なしで「第9」の演奏がスタートし、オーケストラのみの前半3楽章は、緊張感の高いち密なアンサンブルが繰り広げられた。

 最後の第4楽章には合唱と4人のソリスト(ソプラノ=佐藤朋子さん、アルト=石丸典子さん、テノール=鈴木准さん、バリトン=豊島雄一さん)が加わり、有名な「歓喜の歌」のメロディーが高らかに鳴り響いた。

 指揮者の札幌交響楽団のビオラ副首席奏者、遠藤幸男さんは「オーケストラも合唱も素晴らしい演奏をしてくれ感激している。今後も芸術ホール管弦楽団が素晴らしい演奏を届けられるよう頑張りたい」と話していた。  (小川俊之)



◎美味堪能 健康学ぶ 道南の海の幸楽しむバスツアー

 道南の海の幸を楽しむバスツアー「鮨(すし)処『木はら』で道南の健康食材を楽しむ味覚ツアー」(ツーリストサービス北海道函館営業所主催)が7日、函館市内で開催された。市内などから25人が参加。湯川町2のすし店「木はら」でゴッコ(ホテイウオ)やマグロなど旬の食材を使ったすしを味わい、地元水産物のおいしさや健康に対する効能を学んだ。

 ツアーは国の「地方の元気再生事業」の一環で実施。都市漁村交流を通じて、地元水産物の需要喚起や地域ブランド確立を目指し、市民団体「みなとまちづくり女性ネットワーク函館」(折谷久美子代表)などが企画した。

 「木はら」では同店の木原茂信店主が、道南特産のヤリイカやアンコウ、ガゴメコンブなどが持つ栄養素を紹介。コラーゲンやビタミンAなどが美容・健康に効果があることを説明した。またこの日入荷した「ブドウエビ」について「普段は手に入らない幻の食材。まったりとした甘みが特徴」などと語った。

  続いてこれらの食材を使った握りずしやわんなど7品が出され、参加者は笑顔で味わっていた。市内の相馬静子さん(57)は「おいしかった。道南の食材を食べてきれいになれれば最高」と話していた。

 このほか市青函連絡船記念館摩周丸を見学し、同市弁天町の函館がごめ連合アンテナショップでガゴメ関連商品の買い物をした。(山田孝人)


◎「咸臨丸」の軌跡 野外劇で描く 「夢見る会」が構想、台本完成

 【木古内】幕末の軍艦「咸臨丸(かんりんまる)」がサンフランシスコを目指し太平洋を横断してから150年目の今年、木古内町のまちづくり団体「咸臨丸とサラキ岬に夢みる会」(久保義則会長)が、野外劇上演の準備を進めている。すでに台本は完成。同会では「キャストやスタッフは町民が中心となり、手作りで舞台を完成させたい」と意気込んでいる。

 咸臨丸終えんの地、木古内町サラキ岬を中心に地域活性化に取り組む同会は、2011年が同船沈没140年の節目の年となることから、昨年から大きなイベントを計画。その中で野外劇上演構想が持ち上がった。

 舞台の脚本は、同会顧問で「咸臨丸 栄光と悲劇の5000日」などの著書がある札幌在住の作家、合田一道さんが執筆した。タイトルは「永久(とこしえ)に、咸臨丸」。舞台は3幕構成。同船で太平洋横断の快挙を果たした勝海舟と福沢諭吉の2人がサラキ岬に立ち、沈没した同船を回想する場面からスタートする。

 物語は、1860(安政7)年、日米修好通商条約を批准するため、幕府の使節団とともに、太平洋を横断した37日間の航海や大政奉還、箱館戦争、輸送船として迎えた最期などが描かれている。時代の波に翻ろうされ悲劇的な運命をたどる同船の歴史を、激動の幕末、明治史と合わせ表現。壮大な歴史絵巻となっている。

 キャストは勝海舟や福沢諭吉、榎本武揚ら主要な登場人物が約20人。同会事務局長の多田賢淳さんは「メーンキャストのほか乗組員らを入れると100人くらいの規模になる。町全体でひとつの舞台を作り上げていく。『咸臨丸子孫の会』にも参加してもらいたい」とし、「小さな規模から始めるが、毎年、イベントの際には上演し、いずれまちの新たな観光資源になれば」と期待を込める。

 脚本を担当した合田さんも「『夢みる会』が夢を見るだけでなく、大きな動きとなってきた。歴史遺産としての咸臨丸を多くの人に知ってもらうことには大きな意味がある。舞台づくりでは難しい部分もあるが成功させたい」と話している。

 初演は、同会が来年に計画している同船沈没140年記念イベントが有力。同会では今後、町民を中心にキャストやスタッフの募集をする予定だ。(松宮一郎)


◎出会い大切なものに ラグビースクール卒業・修了式

 函館ラグビースクール(額賀康之校長)の第40期卒業式・修了式が7日、函大講堂で開かれた。中学3年生が対象の卒業式では7人の生徒に卒業証書を授与し、幼児から中学2年までの約60人が修了証書を受け取った。生徒たちは父母やコーチから大きな拍手を受け、1年間を締めくくった。

 式には生徒や父母など約150人が出席。約60人の生徒が修了証書と記念品を受け取り、7人の卒業生に卒業証書が手渡された。

 あいさつで、野中冨博副校長が「在校生は4月から、根崎公園ラグビー場でまた元気にプレーしてほしい。卒業生も、これから互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら、北海道のラグビーを盛り上げてほしい」と激励。函館ラグビーフットボール協会の米田國三郎会長は「在校生のみなさんは、これからも元気にラグビーを続けてほしい。卒業生もそれぞれの道で頑張ってほしい」と話した。

 最後は卒業生全員が、スクールでの思い出や父母らへの感謝の言葉を述べた。主将の先谷槙尚人君(銭亀沢中)は「5歳からスクールでラグビーを始め、たくさんの仲間とコーチに出会い、今ではそれが大切なものになった。最後の大会で優勝できたのも、北海道選抜に選ばれたのも、両親、コーチ、仲間のおかげ。本当にありがとうございました」と話していた。 (後藤 真)