2010年4月1日 (木) 掲載

◎「せぼね骨折センター」 函館中央病院にきょう開設

 原発性骨粗しょう症性脊椎(せきつい)圧迫骨折に対する新治療法「バルーンカイフォプラスティ(BKP)」の普及、指導医育成の中核を担う国内初の研修施設「せぼね骨折センター」が1日、函館市本町の函館中央病院(橋本友幸院長)に開設される。2月に薬事承認を得て、今秋に保険適用となる見込みの治療法で、国内の第一人者である戸川大輔医師(42)がセンター長に就く。戸川医師は「患者負担が少ない形で痛みを止める手術を必要な時に行えるようにし、背骨の骨折による寝たきりを起こさないよう診療を進めたい」と話している。(宮木佳奈美)

 脊椎圧迫骨折とは、脊椎(背骨)が押しつぶされるように変形してしまう骨折で、骨粗しょう症が主な原因。最終的に寝たきりになる危険性も高いという。BKPは米国から発展し、諸外国で普及してきている治療法だが、日本ではまだ保険適用外。現在、日本ではコルセットやギプスの装着と薬による治療で安静を保つ「保存的療法」か、金属製のネジや棒で骨を固定するなどの大掛かりな手術を行う「外科的療法」が一般的だ。

 BKPは両者の中間に位置する治療法で、保存的療法を行っても痛みが改善されない一部の患者が対象。風船(バルーン)状の手術器具や医療用の充てん剤(骨セメント)を使用し、脊椎圧迫骨折でつぶれてしまった椎体を持ち上げて骨折前の元の形に戻して安定させ、痛みを和らげる。手術は全身麻酔で早ければ20―30分程度で済み、3、4日で退院可能という。

 戸川医師は1999年から5年9カ月間の米国留学で、BKPの技術を習得。日本で2005年から2年間、同病院を含む全国8病院で81人に対して行われた臨床試験の責任者も務めた。全国の整形外科医でつくるBKP研究会が指導医の育成者として戸川医師が適任とし、同病院に研修施設の設置を要請した。せぼね骨折センターは、既存の脊椎センターに付設される形で開設。同病院では保険適用が認められる秋ごろまでに体制を整え、病室、全国から研修を受けに来る医師の専用室を確保する考え。(宮木佳奈美)



◎きょう支庁再編 渡島総合振興局・桧山振興局が発足

 道の支庁再編に伴い1日、渡島総合振興局と桧山振興局が正式に発足する。3月31日に100年に及ぶ支庁の名称に別れを告げた渡島・桧山両支庁では、案内板の張り替え作業が粛々と行われた。(田中陽介、松浦 純)

 渡島合同庁舎(函館市美原4)では午前10時から、御影石で作られた案内板を特殊シールで張り替えた。「北海道渡島総合振興局」など新しい名称がお目見え。合わせて英語表記も張り替えた。函館建設管理部となる函館土木現業所の表記には後尾に「(旧)」の文字を加えた。

 最後の支庁長となった寺山朗渡島総合振興局長は「業務内容に特段の変わりはない。これまで以上に住民と密着して地域づくりをしていきたい。渡島に限らず全道の発展を念頭に広域的に連携を図りたい」と語る。同市美原の斉藤政清さんは、真新しい案内板を眺めながら「慣れ親しんだ『渡島支庁』の呼び名がなくなり寂しい思いもあるが、時代の流れで仕方ないのでは。業務内容はこれまで変わらないと聞いているのでひとまず安心だ」と話した。

 桧山合同庁舎(江差町陣屋町336の3)でも、午後4時から案内板の変更作業を行った。「桧山振興局」と書かれたアクリル板を「桧山支庁」の上に張り付けた。職員の立ち会いもなく10分ほどで粛々と作業を終えた。報道陣が見守る中で作業を行ったのは、町内で看板制作などに携わるサインズ人形社の西海谷望社長だ。支庁存続運動のシンボルとなった“むしろ旗”の制作を手掛け、道庁前では自ら拳を振り挙げた。「支庁問題とは多くの接点があった。100年に及ぶ支庁の名前に幕を下ろす歴史的作業に携わることになり複雑な心境だ」と語った。

 旧桧山支庁の庁舎内では、部署の名称変更も静かに行われた。職員の1人は「名刺の書き換えなど職場や個人単位でも作業は多い」と話した。

 改正支庁再編条例が施行される1日、渡島総合振興局は地域政策、保健環境、産業振興、函館建設管理の4部制、桧山振興局は地域政策、保健環境、産業振興の3部制となる。職員数や業務内容に大きな変更はない。両局ともセレモニーなどの予定は無く、新体制は静かな船出を迎えることになりそうだ。



◎高校無償化 道南でも賛否両論

 31日の参院本会議で成立した高校授業料無償化法について、道南の教育関係者や高校進学を控える子を持つ保護者からはさまざまな声が上がった。

 「高校が準義務教育の時代、無償化の方向は大変喜ばしい」というのは市立函館高校の日向稔校長。「授業料が払えない家庭にとって、授業料分の負担が減るのは良いこと」と述べた。

 函館市内の中学校校長も法案に賛成だ。実際、私立高校を目指す生徒が授業料や入学金を理由に定時制に進路変更したケースがあることを明かし、「函館では経済的に大変な家庭がたくさんあり、進路指導でも授業料は話題に上る。そうした厳しい状況にある子どもにとって、何らかの形で行く末が保障されるのは助かる」と評価する。

 一方、私立高校の関係者は懸念の声を上げる。函館大妻高校の池田延己校長は「私立にとっては厳しい結果。不景気で公立に生徒が流れる中、授業料以外に納入金があるのに『無償化』の言葉だけが先行し、公立は全額無料の印象ができてしまった」と話し、「私学にも進学支援制度がある。実践的な応用能力が身に付き、資格が取得できるなど公立との違い、特色を打ち出していきたい」と力を込める。

 保護者の間でも意見はさまざまだ。4月から中学1年になる長女を持つ七飯町の男性(48)は「進学率がかなり高い中、中学の延長線として高校はあり、学校に掛かる負担が安くなるのは親として賛成」という半面、「国の財政が大丈夫かどうかは心配」と話す。来春高校受験を控える長女のいる函館の男性(40)は「授業料がタダだと高校に子どもを入れる親の責任感が薄らぐ気がする。税金が使われ、結局自分たちに負担が掛かるのではないか」と懸念する。(新目七恵)


◎観測船「高風丸」民間に売却決定 巡視船で「第二の人生」

 3月末で廃止される函館海洋気象台(函館市美原3)の海洋気象観測船「高風(こうふう)丸」(487トン)が31日、福岡県北九州市の鉄鋼業者に売却されることが正式に決まった。今後は運搬船などを監視する巡視船として利用される予定で、函館で船体整備などを経て4月下旬にも引き渡される。

 高風丸は1949年10月に同気象台に配備された「夕汐丸」が前身。63年3月に初代高風丸が就役し、現在2代目に当たる高風丸は88年に導入された。全国に5隻ある気象庁の観測船の一つで、衛星技術の向上や観測体制の見直しの一環で、年度内に廃止することが決まっていた。

 競争入札の結果、全国の民間企業6社から入札があり、落札したのは北九州市で船舶解体や鉄スクラップなどを手掛ける鉄鋼処理産業(宜本和久社長)。売却額は6310万5000円(消費税込み)。同社は「出入港する船が安全航行できるよう湾内の警戒や巡視に活用したい」としている。

 函館海洋気象台は「売却先が見つかり、ほっとしている。船とともに大勢の乗組員が東京に転勤してしまうのがさみしい」とし、31日付で定年退職の辞令交付を受けた加村正巳船長は「きょうは長年の労をねぎらい、特別な思いでタラップを降りた。第二の人生も活躍してほしい」とエールを送った。

 31日は高風丸の船内で同気象台と売却先の関係者が引き渡し書の調印式を行った。高風丸は4月中旬ごろまで、函館で船体整備に入り、5月の大型連休明けにも北九州沖で本格稼働する予定。(森健太郎)


◎移住者にアンケート 函館の暮らし、63%が「満足」

 函館市は、移住してきた市民に対して行ったアンケートの結果をまとめた。函館での暮らしを「満足」と回答した移住者は63.3%で、移住に際して住居を購入した人も6割以上だった。市はアンケートを基に、移住者の誘致、推進に向けた取り組みを強める考え。

 調査は移住者の動向や意見を把握し、今後の施策に生かそうと初めて行った。函館市内に住民票を移した169人を対象とし、98人(58%)が回答。年齢別では60歳代が50人と、半数を占めた。

 「函館市に移住した理由」についての質問(複数回答可)では「気候や食、自然環境」が49%でトップ。「住んでいたことがある」「観光で来たことがある」も、ともに3割を超えた。「移住前の不安は何か」の問いには「雪や寒さ、習慣」との回答が45.9%と最多で、「知人がいない、少ない」も30.6%。

 「移住後の暮らしはどうか」に対して「大変満足」「まあまあ満足」と答えたのは63.3%。一方で「不満」「やや不満」も13.3%あった。不満の理由として人間関係の希薄さや閉鎖的な面を挙げているほか、交通の便、自動車の運転マナーの悪さなどが寄せられた。

 住まいの形態は一戸建てが44.9%、アパート・マンション55.1%となったが、回答者全体の64.3%が住居を購入していた。また、移住してから始めた活動(複数回答可)はボランティアやサークル、町会活動への参加が25.5%と最多だが、趣味や健康づくり、仕事と回答した人も20%を超え、さまざまな分野で新たなチャレンジを始めていることがうかがえる。

 市企画部は住宅購入に関し「思った以上に多く、函館をついのすみかとして考えている人も多いのでは」と分析。「冬場の暮らし、生活習慣に対する情報発信や、各地の同窓会など出身者へのPRが必要」と話している。(千葉卓陽)