2010年4月16日 (金) 掲載

◎「ハイカラ號」出発 今季運行開始

 赤を基調とした愛らしい姿で、市民や観光客から人気の函館市交通局の路面電車「箱館ハイカラ號」が15日、今季の運行を開始した。100年の節目を迎える台車とレトロな車体が、6月にリニューアルオープンする函館競馬場前などを駆け抜け、函館に本格的な観光シーズンの訪れを告げた。

 ハイカラ號は1918年から36年まで函館市内で客車として活躍した後、除雪用のササラ電車として改良。92年の市制施行70周年記念事業で復元され、93年から営業運行を開始した。車内はぬくもりを与える木張りでできているほか、車輪が単車のため独特な揺れや走行音が特徴だ。

 この日は雪が降るなどあいにくの空模様だったが、沿線では待ちかねた市民がシャッターを切ったり、観光客が珍しそうに車体を触りながら乗り込む姿が見られた。同市宝来町の会社員男性(41)は「きょうは雪だったけど、これが走り始めると函館にやっと春が来た気になる」と笑顔で話していた。

 運行は10月末まで。毎週火、水曜、5月6日と8月6日、悪天候時などは運休する(5月4、5日、8月3、4、10、11日は運行)。一般の電車と運賃は同じで、イカすカードは使えない。問い合わせは同交通局TEL0138-52-1273。(山田孝人)



◎「新幹線で連携を」…北海道・東北19市町が意見交換

 【青森】今年12月の東北新幹線全線開業を前に、北海道・東北の新幹線沿線計19市町の首長らが一堂に会し、新幹線を契機に広域連携を探る意見交換会が15日、青森市内のホテルで開かれた。道南からは函館市、北斗市など6市町が参加、それぞれの立場から新幹線の開業効果や課題、東北との広域連携の必要性などについて話し合い、「北海道新幹線の一日も早い全線開業に向けて努力する」とする決議を全会一致で採択した。

 会合は上田文雄札幌市長が呼びかけ、道新幹線建設促進関係自治体連絡協議会(会長・上田市長)が主催した。道内からは札幌市と小樽市、倶知安町、長万部町、八雲町、七飯町、函館市、北斗市、木古内町が参加。東北からは青森市、盛岡市、仙台市など10市町が参加した。

 一行は会合に先立って東北新幹線新青森駅を視察。新幹線ホームや、13日に試験走行が始まったばかりの試験車両「イーストアイ」などを見て回った。

 午後4時から開かれた会合では上田市長のあいさつに続いて、西尾正範函館市長が講話。2015年度の新函館駅(仮称)開業に触れ、「北海道と東北をつなぎ、圏域が力を合わせて北日本をつくる上で、新幹線の存在は非常に大きい」と強調。「観光だけではなく、生産や研究に向けた都市間交流を進めたい」と述べた。

 会合は開業効果をはじめ、並行在来線や観光振興などのテーマを設けて行われ、北斗市の滝口直人副市長は並行在来線問題に関し、新幹線開業でJR江差線の五稜郭―木古内間37.8キロが経営分離されることについて「(第3セクターで鉄路を存続した場合)安定的な運営には財源が一番の問題となっている」などと説明。中宮安一七飯町長は町内に建設中の総合車両基地について「基地そのものが町にとって一番の企業誘致。一日も早い札幌延伸に向け取り組んでいきたい」と述べ、各自治体に協力を呼び掛けた。

 西尾市長は終了後、函館新聞の取材に対し、「新幹線は点ではなく線。東京だけ見るのではなく、地域間交流を進めるためにいいきっかけになった」、北斗市の滝口副市長は「八戸などの先進事例を聞いて、並行在来線問題の厳しさを改めて実感した。市としては鉄路を残す考えだが、今後協議会の場などで話し合っていきたい」とした。

 また木古内町の大森伊佐緒町長は「広域観光に向けた先進地のケースが分かり、有意義な会合になった」と話した。(千葉卓陽)



◎函館でも井上ひさしさん追悼  19、20日に「化粧二幕」演劇鑑賞会

 9日に死去した劇作家の井上ひさしさんをしのび、函館演劇鑑賞会は19、20日、井上さん作の「化粧二幕」の公演会場(市芸術ホール)内に追悼コーナーを設ける。過去に函館で公演したさまざまな舞台のチラシや資料のほか、直筆台本のコピーなども展示する。小説や人形劇など幅広く活躍し、多くのファンを魅了した井上さんの訃報に、市民の中にも惜しむ声が広がっている。

 同会によると、函館では1974年の「11匹のネコ」以来、「頭痛肩こりpニ口一葉」「紙屋町さくらホテル」など井上作品を20回上演している。19、20日に行う渡辺美佐子さんの一人芝居「化粧二幕」は旅公演の最終地となり、函館で歓迎準備を進める中での突然の悲報だった。

 三女で劇団「こまつ座」代表の井上麻矢さんは全国演鑑連加盟団体に「自分の作品をお読みいただくこと、劇場に足をお運びいただくことができますのなら、それが何よりも幸せなことだと言って旅立ちました」とコメントを寄せた。同会の鈴木順子事務局長は「ユーモアに優しさがにじみ、反戦や家族愛が織り込まれたすばらしい作品ばかり。あらためて偉大さを感じた」と悼む。

 08年に代表作「父と暮らせば」を上演した「劇団はこだて」の前田健三代表は「いろいろな作家に取り組んでいるが、言葉の面白さを感じた作品だった。新しい作品が見れなくなるのがとても残念」と話す。また、市内では昨年12月、井上さんの講演を予定していたが、体調不良で急きょ中止となっていた。企画した和田裕・前函館市文学館館長は「最期まで函館を気に掛けてくださったと聞き、感銘を受けた」と振り返る。

 「化粧二幕」の公演は19日午後7時、20日同1時半。問い合わせは同鑑賞会TEL0138-51-7376。 (新目七恵)


◎有名力士の手形展示へ…横綱記念館

 【福島】福島町が誇る2人の横綱の足跡を紹介する町福島190の「横綱千代の山・千代の富士記念館」が今年の営業を開始した。有名力士の手形が押された色紙36枚が寄贈され、同館では月内にも新たな展示スペースを設ける予定だ。

 同館は町が運営しており、1997年のオープン以来、入館者は36万人を超える。町が生んだ2人の横綱、千代の山と千代の富士(現九重親方)の生い立ちや名勝負を映像で振り返ることができ、愛用品や賜杯のレプリカなど約2000点の貴重な資料やグッズを展示している。

 今年1月、相撲博物館(東京)から横綱白鵬や大関琴欧洲、元大関の小錦の手形が押された色紙36枚が寄贈された。町産業課では「現役の人気力士から引退した有名力士のものまで多彩な顔ぶれ。ぜひ見に来て」と話している。

 また、同館に勤務する九重親方の姉、小笠原佐登子さん(57)によるガイドも名物の一つ。小笠原さんが勤務している日には、希望があれば館内を案内する。親方の子どものころのエピソードなども披露してもらえるとあって、観光客らに好評だ。

 小笠原さんは「引退して20年近くになるが、今でも『千代の富士』に会いに来てくれるファンが大勢いることがうれしい」と話す。

 同館の見どころは「稽古(けいこ)場」。九重部屋の土俵と上がり座敷を忠実に再現しており、毎年8月には九重部屋の夏合宿で力士が訪れる。「合宿は福島の夏の名物。期間中は函館などから毎日見学にくるお客さんもいる」(小笠原さん)。  また、千代の富士のメモリアルホールには、断髪した大銀杏や本真珠でVの字をあしらった化粧まわしもあり、同館では「相撲ファンにはぜひ見てほしい」とPRしている。

 入館料は一般が500円。小中高生が250円。団体割引や同館近くにある「青函トンネル記念館」との共通入場券も発売している。問い合わせは同館TEL0139-47-4527。(松宮一郎)


◎五島軒130周年 フルコース試食会に200人

 函館市内の老舗フランス料理店、五島軒(若山直社長)は12日夜、創業130周年を記念して新たに創作したフランス料理を味わう試食会「五島軒21世紀のフルコース」を同市末広町の本店で開き、市民ら約200人が道産食材などを使ったコース料理を堪能した。

 五島軒は1879(明治12)年4月12日に創業。昨年から130周年の節目に合わせて開業時のロシア料理を再現した晩さん会や、カレーフェアーなど記念イベントを開催してきた。今回はフィナーレイベントとして地元住民らに新作メニューをお披露目した。

 この日は昨年夏に第12代本店総料理長に就任した佐々木政則さん(56)が道内産とフランス産の食材を融合した創作料理を披露。佐々木さんがスライドを使って食材や調理法などを解説し、「蝦夷鮑(えぞあわび)と北寄貝のポワレ」や、タラやイカ、帆立などが入った「ブイヤベース函館風」など計8品を提供した。  会場にはピアノの生演奏が流れ、参加者は円卓を囲みながら次々と運ばれるメニューを満喫した様子。各テーブルを回る佐々木さんに味付けや素材などを尋ねる姿もあり、「また機会があれば来たい」などの声も上がっていた。 (森健太郎)