2010年4月20日 (火) 掲載

◎旧弥生小の桜いつまでも 1本1本丁寧に接木

 旧函館弥生小学校敷地内のサクラの後継樹を育てる現弥生小学校(村上一典校長、生徒249人)の後継樹育成計画の一環で19日、旧校サクラの枝の接ぎ木作業が現小敷地内で行われた。市内の樹木医斉藤晶さん(75)が1つ1つ丁寧に台木に枝を差し込み、旧校の遺伝子を受け継ぐサクラの苗木を作り出した。

 同校の新校舎建設の支障となり移植が困難なサクラの後継樹を育成して、2011年度の完成後に敷地内に植えて旧弥生小学校の歴史を次代に受け継ぐ目的で実施。2年間に渡る計画で、最高学年生が後継樹の世話などを行う。

 この日は刃物を扱う作業のため斉藤さん1人で行った。2月に当時の6年生が旧校敷地内のサクラの原木から採取し、現校内に保存していた「接ぎ穂」と呼ばれる小枝を5センチほどにカット。10センチほどに切った台木に切れ目を入れて枝を差し込み、マツヤニなどで作った「接ぎ蝋(ろう)」を周辺に塗って接ぎ木した。斉藤さんは「寒い日が続いているので芽吹きが遅くなるかも」と話していた。今後は随時手入れなどを行っていく。(山田孝人)



◎石川中央地区整理事業「ただし書き」適用焦点

 函館市議会の経済建設常任委員会(佐々木信夫委員長)で調査が進む石川中央地区土地区画整理事業問題は、20.8ヘクタールの対象地区に、建築基準法の「ただし書き制度」を適用して1500平方メートル以上の大型店出店を認めるか否かが焦点となっている。市は地域に必要な生活利便施設の立地について検討する考えだが、現状ではただし書きの適用を認めない方針。また一部の地権者は、同事業からの除外を求める動きを見せている。

 同地区は、出店できる店舗面積が1500平方メートルまでとされている第二種中高層住居専用地域。だが用途地域の変更を行い、建設基準法で定める「ただし書き制度」の適用を市が認めた場合、店舗面積の緩和が可能となる。

 昨年8月、同地区の区画整理組合は市に1500平方メートル以上2棟、1500平方メートル以下2棟、500平方メートル以下1棟の、スーパーマーケットなどの商業施設計5棟を建設する計画を提案。これに対し市都市建設部は、周辺に生活利便施設が不足していることから「ただし書きを使って1500平方メートル以上の施設を認可するのは、1棟のみ」とする同部としての考えを示していた。

 しかし組合から計画を受けた市は、同9月上旬の庁内協議で「コンパクトシティーを目指すまちづくりの観点から、新たな商業核の形成は好ましくない」とただし書きを適用しないとする方針を決定。西尾正範市長は同月の第3回定例会で「既存商店街の現状を考えると、ただし書き制度の適用にはならない」と答弁している。その後、同組合から代替案は示されていない。

 19日に開かれた委員会では、各委員から市の対応を疑問視する指摘が相次ぎ、同部の荒井俊明部長は「広範囲から集客可能な商業核ではなく、地域に必要な規模の生活利便施設の立地は柔軟に協議したい」との考えを示した。

 一方、同地区の地権者4人から「組合から区画整理事業の詳細を知らされないまま計画に賛同してしまった」とし、「所有する土地を事業対象から外してほしい」とする要望書が16日に提出されていたことを明らかにした。同部長は「地権者が不安を持っている状態。事業が円滑に進むよう、市として調整していきたい」と述べた。(山田孝人)



◎「赤い糸物語」全国から990点

 函館市と青森市のツインシティ(双子都市)提携20周年を記念し、両市が今年1―2月に募集していた「あなたの赤い糸物語〜絆(きずな)」の審査結果がまとまった。両市ほか全国各地から990点の応募が寄せられ、最優秀の「赤い糸大賞」には、京都府のあじしたいちさん(33)が寄せた作品が選ばれた。

 太宰治の作品にヒントを得て青函圏域の新たな魅力づくりを目的に実施した「赤い糸プロジェクト」の一環で行われ、運命的な出会いや思い出などにまつわる体験談やエピソードを400字以内で募った。990件のうち函館市内からの応募は53件だった。

 同プロジェクト実行委が1次、2次審査を行い、25点の入賞作を決定。このうち最優秀に選ばれたあじしたいちさんの作品は、朝の通勤電車での出会いをきっかけにした、愛する女性とのほほ笑ましいエピソードがつづられている。

 市はまた、19日からJR函館駅2階イカすホールで入賞作品展を開催。25日までで、入賞作品全25点のほか、同プロジェクトに関するパネル展示などを行っている。時間は午前10時から午後6時まで。(千葉卓陽)


◎ポスター展でPR 6月ユニバーサル七飯上映会

 障害の有無にかかわらず、誰もが映画を楽しむ環境づくりを目指す「第5回北海道ユニバーサル上映映画会」(実行委主催)の七飯上映会が6月5、6の両日、七飯町文化センター(本町6)で開かれる。PRイベントとして、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町14)で過去の上映作を紹介するポスター展が行われている。25日まで。

 同映画祭は独自に日本語字幕や音声ガイド、要約筆記などを付けて上映するのが特徴。9月には北斗で映画祭を予定し、前後に七飯と函館で単発上映会を実施している。

 七飯の上映作品は「アンダンテ〜稲の旋律」(2010年、金田敬監督)。引きこもりに悩む女性が農業問題と向き合う男性との交流を通じ、自立に踏み出すストーリーで、新妻聖子さん、筧利夫さんが出演している。関連企画で函館の社会福祉士、野村俊幸さんと引きこもり体験者の吉川真倫さんのトークも行う。上映は5日午後1時半と同5時半、6日同2時半。ポスター展会場には「武士の一分」や「フラガール」「犬と私の10の約束」などの名作がずらり。

 島信一郎代表は「引きこもりと農業の2つの視点から問題意識を共有したい。地元の関係者に運営面でも協力いただいており、引きこもりの社会参加の一助にもなれば」と話す。

 チケットは一般1200円(当日1500円)、小、中学、高校生500円(当日同じ)。同センターや松柏堂プレイガイドなどで取り扱う。問い合わせは板谷順治さんTEL0138・65・0985。(新目七恵)


◎未来大の松原教授が文科相表彰

 公立はこだて未来大の松原仁教授(51)らの研究グループが、本年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞した。将棋の羽生善治棋士の思考や戦略を分析した書籍の執筆や講演会など、思考ゲームに関する科学技術の普及を図った功績が評価された。松原教授は「受賞を励みに一般に分かってもらう活動をさらに広げたい」と話している。

 松原教授らは科学技術賞の理解増進部門で受賞。この部門は青少年や国民の科学技術への関心や理解を勧める活動が対象で、全国で17件が選ばれた。

 松原教授は1959年、東京生まれ。東大大学院博士課程を修了後、通産省工業技術院電子技術総合研究所勤務を経て2000年から現職。専門は人工知能研究。06年には電気通信大の伊藤毅志助教らと共同研究グループを立ち上げ、コンピュータ囲碁大会や講習会などを開催。09年に伊藤助教、羽生棋士と共著した「先を読む頭脳」(新潮文庫)が出版されたほか、未来大で羽生棋士の講演会を行うなどさまざまな方法で思考ゲームの振興を図ってきた。

 研究者を志したのは「鉄腕アトムのようなロボットを作りたい」と思ったから。人間の知能の仕組みを解き明かそうと、思考ゲームの1つ「将棋」の研究に20年以上前から情熱を傾ける。学会などで研究成果を発表する場も設け、後輩の育成にも貢献している。

 「情報処理は一般的に研究成果が分かりにくい分野だが、思考ゲームの場合、コンピュータ将棋と人の対決など技術の進展が分かりやすいのが良い点。活動が高校生にも情報系に興味を持ってもらい、大学を目指すきっかけになれば」と話している。(新目七恵)