2010年4月22日 (木) 掲載

◎映画「海炭市叙景」参加きっかけに東京でスタイリスト修業へ 高橋恵里さん

 函館に住む高橋恵里さん(23)が、春から東京でスタイリストとしての一歩を踏み出す。きっかけは2月に函館で行われた映画「海炭市叙景」の撮影だ。市民オーディションで熊切和嘉監督に誘われ、夢だったスタイリストの見習いに挑戦し、プロに“弟子入り”するチャンスをつかんだ。高橋さんは「地元にいながら仕事が決まって嬉しい」と喜んでいる。

 高橋さんは函館出身。遺愛女子高卒業後、好きな服を学ぼうとイタリアに留学し、専門学校で3年間勉強した。流行を追いかける雑誌などの仕事より、時代に左右されない映画業界に関心を持ったが、つてもなく、09年6月の帰国後も仕事はなかなか決まらなかった。そうした中、地元で映画製作が行われることを知り、「現場を体験してみたい」と応募し、市民スタッフとしての参加が決まった。

 撮影が始まると、東京から来たプロのスタイリストに付いて衣装合わせなどの作業に追われ、朝から晩まで駆け回る日々が続いた。「初めてで何が分からないのかも分からない状態だったけど、とにかくマネをして動いた。すごいチャンスなので学べることは何でも吸収しようとした」という。衣装部は、雨の時は俳優に傘を差し、寒い日には使い捨てカイロを渡すなど、現場の状況に応じてさまざまなことに気を遣うことも大事な仕事。「当たり前のことに気付いて気を配るのが難しかった」と振り返る。

 弟子入りが決まったのはクランクアップ後。打ち上げ会場に行く直前、一緒に働いたスタイリストに「働かせてください」と申し込んだ。「すごく厳しいよ」と言われたが、「覚悟してます」と即答したという。

 出身地での映画撮影が人生の転機となり、「見慣れた風景が全然違うように見えた。大ヒットでなくてもじわじわといろいろな人に観てもらえれば」と語る。映画「海炭市叙景」は11月にも全国公開の予定。(新目七恵)



◎ジェラート店ミルキッシモ 五稜郭タワーと新千歳空港にあす2店同時オープン

 金森赤レンガ倉庫内にあるジェラート店「ミルキッシモ」(函館市末広町14、水島由希店長)が23日、五稜郭タワー(同市五稜郭町43)と新千歳空港(千歳市)内に2店同時オープンする。今年夏には韓国・ソウルや香港など海外に進出する計画で、地元食材にこだわった函館のジェラートを各地へ発信する。

 同店は昨年9月に同倉庫ヒストリープラザ内にオープン。森町の駒ケ岳牛乳を主原料に、森産の有機カボチャや富良野産のハスカップなど、季節に応じて道南や道内産の野菜、果物をふんだんに取り入れたジェラートを常時18種類販売している。

 ジェラートはアイスクリームに比べて脂肪分や糖分が抑えられ、空気の含有量が少ないのが特徴。「後味がさっぱりとしていて、素材本来の味が出やすい」(水島店長)という。同店では函館市内の工場で素材を調合し、店頭の専用機械で製造している。

 新店舗は五稜郭タワー2階と新千歳空港国内線ターミナル3階にオープン。タワー店の売り場は約50平方メートルで、開店に合わせて五稜郭公園のサクラにちなんだ限定ジェラートもお目見えする。新千歳空港店は10月末までの期間限定で出店する。従業員約10人はそれぞれ現地採用した。

 価格は380―540円。水島店長(32)は「今年は箱館奉行所のオープンや新千歳空港国際線ターミナルビルの完成などこれまで以上に観光客の需要を多く見込める。函館で生まれたイタリア由来の本物のジェラートを多くの人に味わってもらいたい」と意気込んでいる。(森健太郎)



◎ジオス破たん 函館校は別会社で存続へ

 英会話学校大手のジオス(東京)の経営破たんが明らかになった21日、全国の各校は一斉に臨時休校となり、函館市内にあるイトーヨーカドー函館校(美原1)でも22日までの休校と破産申請手続きの内容を知らせる紙が張られた。函館校は別会社で存続される見通しだが、関係者には先行きへの不安が広がっている。

 イトーヨーカドー函館店1階にある同校の出入り口には21日午前、「臨時休校のご案内」と書かれた21―22日までの休校を知らせる張り紙が出された。すべての教室に明かりはついているものの、社員らの姿はなく、閉ざされた扉の奥で電話が鳴り響いていた。

 小学3年の息子(8)を通わせる市内の主婦(40)は「お昼のニュースで知り、びっくりして飛んできた。事前に何の連絡もなく、書面だけでは何も分からない。受講料11万円を前払いしているので、きちんと続けてもらえるか不安」と話し、「昨年7月に五稜郭校と統合する時もギリギリになって書面だけの説明だった。せっかく勉強を頑張ってきたのに」と不安をあらわにした。

 同校が2004年6月から入居するイトーヨーカドー函館店は「本部からの連絡で午前中に聞いて驚いた。23日から授業を再開し、受講者には個別に担当者が連絡をするという話しか聞いていない。あとは本社同士の話し合いなので対応を待つしかない」と困惑していた。

 ジオスのホームページによると、函館校はスポンサーによる「継承予定校」とされ、未消化分の授業は受講できるが、受講料の返還には応じられないとしている。問い合わせ専用フリーダイヤルは0120・134・446(21日午後9時までと、22―24日午前10時―午後8時)。(森健太郎、小杉貴洋)


◎参院選 道南2氏も本格始動

 7月に予定される参議院議員選挙の公示まで、3カ月を切った。昨年の政権交代による鳩山政権誕生後初めての国政選挙で、道南地域からは比例代表に前函館市議の板倉一幸氏(59)が民主党から、函館市区選出の前道議、横山信一氏(50)が公明党から出馬を予定し、組織や態勢整備を進めている。函館・道南を地盤とする国会議員が、道8区選出の逢坂誠二衆院議員(50)を含めて3人となる可能性もあり、各党関係者は「函館・道南の声を国政に届けるチャンス」と、それぞれ支持拡大へ全力を挙げている。

 板倉氏は私鉄総連の組織内候補として、3期務めた函館市議を辞職し昨年12月に出馬を表明。厳しい環境に置かれている公共交通の活性化を軸に、格差社会の是正や高齢者・障害者支援などを訴え、昨年から全国各地であいさつ回りを進めている。

 同党は板倉氏を北海道重点候補とし、地元での活動は日本私鉄総連北海道労組函館バス支部を中心に進めている。板倉氏は東京に後援会事務所を構える一方、道内でも6月上旬をめどに、函館市内にも後援会事務所を構える方針。

 30万票獲得を目標に据えており、運輸労連などからの推薦を得た。同支部の大岩伸一書記長は「私鉄総連の組織内人員(約12万人)以外からの広がりが必要。函館でいかに票を取れるかが大きく左右する」と話す。

 一方の横山氏は、引退する風間昶氏(62)の後継として今年1月に出馬を表明。同党は横山氏を北海道・東北ブロック重点候補として位置づけており、地域経済振興の観点から、風間氏がライフワークとして取り組んできた北海道新幹線整備や、水産学博士の経験を生かした1次産業の充実に力を入れる。

 3月27日には函館市美原1で後援会の事務所開きを行っており、地元での組織づくりを着々と進める。今後は月に1回のペースで地元入りし、5月中旬に木古内、江差、北斗、七飯で、6月上旬には函館で、それぞれ時局講演会を行う方針。

 公明党函館総支部の茂木修支部長は「道内でも名前が浸透しておらず厳しい戦いになるが、当選には100万票以上が必要」と話している。(参院選取材班)


◎「函館―小樽間はJRで運営を」函館市が道に要請へ 札幌延伸時の並行在来線問題で

 函館市は21日までに、北海道新幹線の札幌延伸問題に関し、延伸開業時にJR函館線の函館駅―小樽駅間(252・3キロ)が並行在来線として経営分離される可能性があるとして、近く道に対し、同区間を引き続きJR北海道の運営とするよう要請する方針を固めた。政府が新函館―札幌間を含む新規着工区間の扱いに関して8月にも結論を出すとされ、その着工条件として沿線自治体が経営分離の同意を求められる可能性があるため、道南全体に重大な影響を及ぼすことを要請の理由としている。

 JR北海道は札幌延伸開業時に並行在来線として経営分離する区間について、現函館駅から小樽駅間との方針を示す一方、小樽―札幌間は「札幌都市間輸送の使命を担う区間」(広報部)として、新幹線開業後も引き続き経営する意向を示している。

 並行在来線の扱いは1996年2月の政府・与党申し合わせで、@開業時にJRの経営から分離するA工事実施計画認可前に沿線自治体やJRの同意を得て確定する―としている。旧運輸省は同年5月、「特急列車が新幹線に移る線」とする見解を示している。

 市はこれらを踏まえ、現駅と新函館駅(仮称)の間(17・9キロ)について「新幹線の運行区間ではなく、並行在来線にはあたらない」との認識を示す。94年11月の道と地元関係団体との協議では、現駅―新駅のアクセスにかかわり、道が中心となり、責任を持って対応することを確認しており、市はこの協議内容をもとに、道に要請する方針だ。

 函館―小樽間が経営分離された場合、道南では沿線の函館、北斗両市と七飯、森、八雲、長万部の各町で財政負担が生じることが予想されるだけに、市は「経済界とも一体となって、道への要請を図っていきたい」(企画部)と話す。

 新駅が出来る北斗市は「江差線と合わせて2本の並行在来線を抱えることになる。函館線も在来線になることで、江差線にどのような影響が及ぶのか見極めることは難しい」(総務部)、七飯町は「これまで通りJRが運行するのは町にとっても良い傾向。庁内の方針はまとまっていないが、町民の利用状況を見ながらの対応になると思う」(新幹線まちづくり課)としている。(千葉卓陽、鈴木 潤)