2010年5月12日 (水) 掲載

◎新青森開業12月4日 東北新幹線

 JR東日本(東京)は11日、東北新幹線の八戸―新青森間を12月4日に開業すると発表した。来年3月に導入される新型車両「E5系」の愛称については「はやぶさ」に決定。5年後の開業を目指す北海道新幹線の新函館駅(仮称)と直結するだけに、道南の自治体や経済界には交流人口の拡大に伴う観光振興への期待が高まっている。

 新青森開業直後は、現行の「E2系(はやて)」が東京―青森間を一日15往復し、新青森と仙台、盛岡間もそれぞれ1往復する。来年3月の「はやぶさ」投入当初は最高時速300キロで運転し、2013年春から国内最高時速の320キロで、東京―新青森間を約3時間5分で結ぶ予定。

 JR北海道も11日、新青森開業に合わせ、現在、函館と八戸、青森間を結ぶ特急「スーパー白鳥」「白鳥」の運転区間を函館―新青森間とするダイヤ改正の計画も明らかにした。所要時間の短縮やスムーズな乗り換えの実現が期待され、観光客らの利便性が高まりそうだ。

 同社は「東京までの距離がより近くなり、鉄道を利用して今まで以上に多くの人に北海道に来てもらえることを期待している」と話し、函館商工会議所も「新青森開業と同時期に函館の冬季観光の最大イベントであるクリスマスファンタジーが開催中で、首都圏や東北地域からの観光客誘致に大きな弾みとなる」と歓迎する。

 道南の各自治体にも歓迎ムードが広がる。函館市の西尾正範市長は「新函館開業に向けたさまざまな取り組みに一層の弾みがつく。青函両地域の連携をさらに密にし、開業効果を最大限生かせるまちづくりに努めたい」とコメント。木古内町の大森伊佐緒町長も「青森まで来た人が北海道まで足を延ばしてもらえるよう(観光の)商品開発を進めて観光客を迎え入れたい」と期待する。

 北斗市の滝口直人副市長は「市内でも平野部で北海道新幹線関連の工事が始まっているが、新青森駅の開業日が正式に決まったことで、あらためて北海道新幹線開業の実感がわいた」とし、渡島総合振興局新幹線推進室の神忠樹室長も「次はいよいよ北海道の新函館駅までの開業が実現する。早期開業に向けて関係市町や各機関などと連携し、取り組み強化を図りたい」と気を引き締める。

 函館国際観光コンベンション協会の吉田明彦専務理事は「今年は競馬場や奉行所のオープンなど明るい話題が多いが、道南の観光客は減少傾向にあり、厳しいのが現状。新青森駅の誕生は函館にも追い風になる」と強調。「市や経済団体などと官民協働で青函の観光振興や、北関東や東北地方へのプロモーションを強化したい」と話している。



◎戦没者の冥福祈る

 新選組副長の土方歳三ら多くの志士が箱館戦争(1868―69年)で命を落とした11日、函館市内各地で戦没者の供養祭が行われた。参列者は祭壇に手を合わせ、犠牲者の冥福を祈った。

 箱館戦争で亡くなった会津藩士を慰霊する「傷心惨目(しょうしんさんもく)の碑」がある船見町の高龍寺(永井康人住職)では、函館福島県人会(熊坂成剛会長)が藩士を供養する「碑前祭」を行い、参列した約20人が戦没者の霊を慰めた。

 1869(明治2)年、函館病院の分院だった同寺に新政府軍が襲撃。傷病兵らを殺傷し、放火したことで多くの会津藩士が亡くなった。80(明治13)年に碑が旧会津藩士の手によって建立され、同会が1980年から毎年慰霊祭を行っている。

 同寺の僧侶が読経する中、参列者らは碑前で静かに手を合わせた。熊坂会長は「先人の恩を受け止めて今年で31回目。今後も慰霊祭を行っていく」と話していた。会員のほかに、福島県北海道事務所の太田崇弘所長、南北海道史研究会会員、近江幸雄さんも出席した。また地元福島県から住山節子さん(60)、陽子さん(36)親子も参列し、北の地で無念の死を遂げた先人のために祈った。

 五稜郭町の五稜郭タワー(中野豊社長)での供養祭には、同社関係者や観光業者、近隣町会員など約60人が参列した。

 今回で39回を数える供養祭は毎年、土方の命日にあたる11日(旧暦)に開かれている。同社の創始者の中野真輔氏(故人)が建立した供養塔前での実施が慣例だが、同日は悪天候によりタワー内1階アトリウムで執り行われた。

 祭主を務める中野社長が祭文を読み上げ、五稜郭町の観音寺の僧侶ら6人が読経し、参列者は焼香台へと進み、戦死者へ哀悼の意をささげていた。

 15、16日に開かれる「箱館五稜郭祭」の協賛事業にもなっている供養祭では、祭りの安全も祈願した。中野社長は「日本の歴史に大きな足跡を残した五稜郭。今年は奉行所オープンも控えている。多くの方々に祭りなどを通して歴史の重みを知ってもらいたい」と話していた。(小杉貴洋、黒田 寛)



◎乳がん診断 より正確に

 函館中央病院(橋本友幸院長)は、最新式の「マンモグラフィー(乳房エックス線撮影装置)」と「マンモトーム(吸引式組織生検装置)」などを導入した。同病院の平口悦郎外科長は「より正確な乳がん診断を行うため、検査精度の向上を図る」としている。

 マンモトームの導入は市内で市立函館病院に続き、2カ所目。マンモグラフィーやエコーでしこりなどが見つかった場合の再検査に使用する。直径3ミリほどの針で従来の針生検よりも多くの細胞組織を採取し、精度の高い診断が行えるのが特徴だ。エコーやマンモグラフィーで病変を確認しながら、細胞組織を取ることもできる。

 乳房を切開することなく局所麻酔で検査が行えるため、患者の精神的、肉体的な負担も軽減される。患者を寝かせた状態で行うので、恐怖感を与えず、楽な体勢で疲れにくい。また、経過を見ながら繰り返し生検が行えるため、診断の正確さが増すという。

 最新式のマンモグラフィーは乳房のエックス線画像をデジタル処理できるようになり、解像度が向上。同時に高精細画像に対応できるモニターも導入することで、診断能力を高めた。従来のフィルムよりも画像が見やすくなり、がんの早期発見にもつながるという。

 同病院では、研修・試験で基準を満たしたマンモグラフィー撮影認定技師や読映医師が対応する。(宮木佳奈美)


◎豊かな海へ 願い込め植樹

 地域全体で森林に親しみ、守り育てることを目的とする本年度の「恵みの森づくり植樹活動」(函館市主催)が11日、同市柏野町の市有地で行われた。えさん小学校(花田譲校長、児童143人)の5、6年生児童49人を含めた市民ら150人が参加し、約750本の苗木を植えた。

 漁業を基幹産業とする旧4町村地域では2004年の合併前から、豊かな海を守るため漁協女性部が中心となり河川周辺の植樹や森林の手入れを行うなどの活動を展開。05年度以降は市が活動を引き継ぎ、広く参加を呼び掛け地域一体での取り組みとして毎年この時期に開催している。

 この日は、市や協賛者の函館地区トラック協会、北海道電力が提供したミズナラ、カシワ、イタヤカエデ、クリなどの苗木を植えた。また今年は新たな取り組みとして、近隣の森林から稚樹を採取して植栽した。

 事前学習を経て植樹に臨んだえさん小児童は、一般参加の大人に手伝ってもらったり会話を交わすなど交流しながら、土をかけて軽く踏み固めるなどして1本1本丁寧に苗木を植えていた。その後、木製のプレートに自分の指名を書き込み、記念撮影をした。

 同小6年の工藤夕希さん(11)は「クリの苗木をうまく植えられた。楽しい」と話し、広島綾乃さん(11)は「山が豊かな海を守るなど、いろいろ複雑に関係していることを知ってすごいと思った」と笑顔を見せていた。(山田孝人)


◎深海から珍客 江差沖でサケガシラ

 【江差】江差町の五勝手漁港沖の定置網で11日午前、普段は深さ数百メートルの海底に生息している深海魚のサケガシラが捕獲された。体長は1メートル74センチもあり、銀白色のうろこと細長い体が特長だ。深海からの思わぬ珍客に漁業関係者は「何かの前兆ではないのか」と話しながら、興味深そうに見入っていた。

 サケガシラはアカマンボウ目・フリソデウオ科に属する。本道から沖縄の太平洋岸をはじめ、日本海の深海に生息している。大きく裂けたような口元から「サケガシラ」と呼ばれている。同じ深海魚として知られる「リュウグウノツカイ」の仲間に当たる。江差町産業振興課によると「身は脂が強いため食用には適さない」という。

 江差漁港の荷さばき施設では「この辺りでは見たことのない魚だ」「深海から幸運を運んできた使いか。それとも…」と、漁業関係者が運び込まれた魚を囲み、さまざまな“推理”を巡らせていた。北陸地方の日本海沿岸では3月上旬から、サケガシラやリュウグウノツカイが定置網で捕獲されたり、海岸に打ち上げられるケースも相次いでおり、漁業関係者は「日本海で何かが起こっていることを知らせに来てくれたのかも」と話していた。(松浦 純)