2010年5月18日 (火) 掲載

◎本町・五稜郭 月に「1−3回」7割…函館市「市街地活性化基本計画」見直しへ

 函館市はこのほど、1999年に策定した「函館市中心市街地活性化基本計画」の見直しに向けた、本町・五稜郭地区などの現況調査結果をまとめた。市民対象のアンケートでは、同地区を訪れる回数が月に「1―3回」などと約7割が答え、日常的に訪れる人は少数であることが分かった。理由として市都市建設部は「『駐車場が少ない』と回答した人が多かった。課題をとらえ、本年度中に計画を取りまとめたい」とする。

 調査対象は同地区周辺の157・3ヘクタール。昨年7月から今年1月にかけ、民間業者に委託して行った。アンケートは市民対象が3000人、同地区に立地するホテル6軒の宿泊客136人にも実施した。

 現行の同計画では、函館駅周辺の都心地区約48ヘクタールを中心市街地とし、整備や活性化を図る事業を実施。だが百貨店をはじめ飲食店が多く立ち並ぶ、本町・五稜郭地区も中心市街地に組み込むことを望む声が多かったという。

 実態調査では、同地区内の店舗や事務所2544軒のうち約6割が本町に立地し、業種別では居酒屋やスナックなどの飲食店が約6割を占めており、多くが同町に所在している。空き店舗数は304件だった。またグルメシティの閉店などが影響し、生活用品を多く販売するスーパーマーケットが不足する実態が浮き彫りとなった。

 市民アンケートでは、同地区を訪れる人の6割が乗用車を使用し、電車など公共交通機関を利用する人は2割以下だった。居住に対する意識では「住みたくない」が4割以上を占め、「住みたい」と答えた1割を大きく上回った。通行量調査では1日の全時間帯で、休日の通行量が平日を下回った。同部は「学生や会社員が休みということもあるが休日に足を運ぶ人が少ないのも事実」と分析する。

 宿泊客の声では街の景観向上を望む声が多く、来函理由は5割がビジネスと答えた。

 同部は「課題は多くある。その中で官民一体となって一緒に計画を考えていきたい」とする。今後は今回のデータを基に区域設定や基本方針、具体的な事業案などをまとめ、国に申請する方針だ。(山田孝人)



◎スギ使い漁礁づくり

 函館の森林の再生と活用を考える会(木村マサ子会長、会員約30人)は17日、本年度の新規事業として、間伐材を磯に埋めて海草類が繁殖する漁礁づくりを市内住吉町の浜で開始した。朝から気温が上がり好天に恵まれた中、同会会員5人のほか駒止、谷地頭の両保育園の計22人の園児も参加。木村さんは「森の木が海中でも活躍できることが広まるきっかけになれば」と話している。

 同会は道南で手入れが行き届いていない森林の再生を考え、森から多くを学ぼうと活動を展開。毎年12月に「はこだてクリスマスファンタジー」会場付近で、許可を得て運んだ函館山の間伐樹や学校林の枯損木(こそんぼく)などを使用し、船や動物などを模した「市民ツリー」を製作。今回は昨年に両保育園で設置したツリーなどを再利用した。

 干潮の午前9時ごろから作業開始。会員がスギを約1メートル20センチの長さに切って数本束ね、木村さんが近くで採れたスサビノリを付けた。木村さんは「この漁礁の中で胞子が付くようになればいい。3年はかかると思うが、ノリなどが増えるきっかけになれば」と話す。最高気温が6月下旬並みの21・0度まで上がる暑さの中、漁礁は3つ作られた。

 園児たちは漁礁の重りになる箱に入れる石を運んだ。作業前には浜に居たカニなどを見つけたりして遊んだ。子どもたちの歓声を聞く会員は「子どもたちが自然に興味を持ってもらえれば」と笑顔。夕方、満潮になったとき漁礁は海面に浮かび設置は成功。今後は大荒れの天気に流されない補強などを施すという。

 17日は南から温かい空気が入ったことなどで、最高気温は木古内で7月下旬並みの23・6度、北斗で同上旬並みの21・4度となった。函館海洋気象台によると18日も気温が高い状態になるという。(山崎純一)



◎上ノ国で稚ナマコ放流スタート

 【上ノ国】価格が高騰しているナマコ資源の増殖に向けて、上ノ国町の漁港5カ所で17日、町の栽培漁業総合センターで生産した稚ナマコ2万6400匹が放流された。同町では本格的な稚ナマコ放流は今回が初めてとなる。

 同センターでは、昨年7月からナマコの採卵と育成を進めてきた。稚ナマコは体長3―6センチ程度に成長。17日には上ノ国、大崎、汐吹、石崎、小砂子の5漁港周辺に放流した。3年程度で漁獲の対象になる体長10センチ程度の親ナマコに成長する。

 上ノ国漁港では、ひやま漁協上ノ国支所による放流式が行われ、漁業者30人が神事でナマコの成長を祈った。5つの漁港では、漁船から水深数メートルの漁港内に稚ナマコを放流。花田英一ナマコ部会長は「放流で漁獲増加が期待される」とあいさつ。工藤昇町長も「漁業の不振が続く中でナマコ増殖の期待は大きい」と語った。

 中国で珍重される桧山産ナマコは、2003年に1019円だった、1キロ当たりの年間平均単価が、09年には3712円に高騰。ピーク時の北京五輪(08年)の開催時には5000円超の高値が付いた。漁獲額は06年3億3833万円(対前年比109%増)、07年6億2200万円(同84%増)と倍増。08年は5億900万円(同18%減)。09年は5億3900万円(同6%増)で、不漁が続くスケトウダラを抜き、首位のスルメイカに次ぐ漁獲額となった。

 漁獲量は、06年125トン(同34%増)、07年189トン(同52%増)と伸びたが、08年148トン(同22%減)、09年145トン(同2%減)とやや頭打ち。漁獲量の増加により資源が先細りとなる懸念もあり、町は稚ナマコ放流を通じて、持続的な漁獲量の確保に取り組む方針だ。(松浦 純)


◎温もりある市政を推進…高谷市長が市政執行方針・北斗市議会

 【北斗】北斗市議会の第2回定例会は17日、開会し、会期を28日までの12日間と決めた後、高谷寿峰市長が市政執行方針を演説した。高谷市長は「市民の、市民による、市民のための市政を基本に誠実で温もりある市政を推進する」と述べ、9項目の目標を掲げたほか、就任後初となる各会計の本格予算案を提案した。

 主な施策については、2015年度に開業が予定されている北海道新幹線新の新函館駅(仮称)周辺整備事業の工事を本年度から始める。市渡第2号線など周辺の市道8路線の新設改良工事に着手するほか、区画道路や上水道、駅前駐車場の各整備の用地取得を進める。

 選挙時の公約に掲げた、新規高卒者を採用した中小事業者への助成制度は年内での予算化を目指すとし、また、子供医療費助成の高校3年生までの拡大については、10月からの実施を目指すとした。

 行財政改革の推進は、事務事業の一部見直しを進めるとし、累積赤字が膨らむ国保事業特別会計は、市国保運営協議会の答申内容を尊重し、11年度施行を目指して税率改正を行う。

 次いで、藤巻博司教育長が教育行政執行方針を演説。「市が掲げる5項目の教育目標の実現に向け全力で取り組む」とし、運動公園多目的広場の全天候型トラック改修に伴い、第4種陸上競技場公認の取得など施策を掲げた。

 このほか、市は新幹線関連の事業費や浜分中の新築工事費用を盛り込んだ総額201億8481万円とした一般会計の本年度予算案など議案18件を提案。一般会計と7特別会計、水道事業会計の9会計の本年度予算案を議長を除く議員23人で構成する予算審査特別委員会に、他の9議案を各常任委員会に付託する。(鈴木 潤)


◎五島軒会長 若山徳治郎さん死去

 函館の老舗フランス料理店「五島軒」会長で、日仏の文化交流などに尽力した若山徳次郎(わかやま・とくじろう)さんが14日午後3時36分、多臓器不全などのため、函館市内の病院で死去した。93歳。自宅は函館市元町3の9。葬儀は近親者で済ませ、6月1日午後2時から、五島軒本店(末広町4)で社葬を執り行う。

 1917(大正6)年函館市生まれ。法政大経済学部在学中の38年に先代の急逝に伴い家業のレストランを経営。市内で洋菓子や喫茶、食堂を展開するなど事業を拡大し、84年の法人化を経て、85年まで3代目社長を務めた。

 その間、函館商工会議所常議員や函館観光協会(当時)会長などを歴任。83年には有志で函館日仏協会を設立し、副会長に就任した。函館の観光振興や日仏交流に貢献したとして、93年には市功労者表彰、2000年にはフランス政府から国家功労勲章シュバリエが贈られた。

 函館市の西尾正範市長は「戦後の函館の観光・産業、歴史・文化と多方面で活躍された。素晴らしいお人柄で皆に慕われ、さまざまな面でリーダーとして先導していただいただけに本当に惜しい方を亡くした」とコメント。函館商工会議所の高野洋蔵会頭も「突然の訃報(ふほう)を聞いてびっくりした。会議所時代は各種イベントに積極的に参加して盛り上げてくれた。あらためて感謝の意を表したい」と話す。

 晩年を過ごした高齢者福祉施設「旭ケ丘の家」の職員市毛晋さんは「誰にでも気さくで思いやりのある人だった。近年は読書に講じ、函館の歴史研究に力を入れていた。まだまだ元気でいてほしかった」と肩を落とし、五島軒の中村隆管理課長も「若い社員の面倒見も良く、おおらかで心の広い方だった。昭和初期から洋食文化を広めるのに積極的で、偉大な人を失ったショックは大きい」と語った。