2010年5月22日 (土) 掲載

◎函館のフランス料理店、1日から「ベルサイユサミット」の料理を再現

 函館市白鳥町のフランス料理店「イリュージョン」は、1982年にフランスで開かれたベルサイユサミットの晩餐会で、実際に各国首脳が味わったコース料理を再現する。6月1日から1カ月間限定で提供し、同月19日には当時の総料理長を招いて“味の共演”を繰り広げる。オーナーシェフの岩城浩司さん(59)は「フランス料理の奥深さを味わってほしい」と話している。

 岩城さんは東京・台場のホテルで洋食総料理長を務めていた15年ほど前、同サミットで総料理長を務めていたミシェル・パスケ氏(63)と知り合った。以後、同氏と親交を深めたことをきっかけに、08年には洞爺湖サミットに合わせてベルサイユサミットのメニューを提供し、人気を集めた。

 同サミットは82年6月に開かれ、ミッテラン仏大統領やレーガン米大統領、日本の鈴木善幸首相らが参加した。同サミットでは計4度のディナーが開かれており、今回は2年前とは別メニューで、82年6月4、5日の晩餐会で実際に出された料理を提供する。

 メニューは「ペリゴール産フォアグラ3種の味わいと有機野菜のサラダ」「海の幸のナージュ(スープ仕立て)」「仙台牛極上ロース肉のロティ(ロースト)と南仏野菜のファグリーレット(詰め物)」など計6品。フォアグラは調理法が異なる3種を並べ、どれも極上の味わいが楽しめる。「海の幸―」は車エビと蝦夷アワビ、マツカワガレイを惜しみなく使っている。

 岩城さんは前回と同様、パスケ氏と郵便や電話、ファクスで連絡を取り、メニューや盛り付けを教わった。「基本に忠実ながら、テクニックのいる料理。鮮度のいい食材をそろえた」と話す。

 19日にはパスケ氏と妻のマリポールさん(68)が来函し、同店のオープンキッチンで“共演”。当日は20人限定でコース料理を提供する一方、ソムリエの資格を持つマリポールさんが選んだワインも6種類用意。函館短大付設調理師専門学校の生徒が研修する予定で、若い料理人の人材育成にも役立てたい考え。

 岩城さんはパスケ氏との共演を楽しみにしながら「この企画で、函館の食文化の活性化につながれば」と話している。料金は1人1万2000円(税別)で、前日までの予約が必要。問い合わせは同店TEL0138・40・3588。



◎ショパン国際コンクールに函館出身の岡田奏さん(19)本大会出場へ。函館から初の快挙

 10月にポーランドのワルシャワで開かれるピアノコンクールの最高峰「第16回ショパン国際ピアノコンクール」に、函館出身でパリ国立高等音楽院在学中の岡田奏(かな)さん(19)=が出場することが決まった。同コンクールに函館出身者が出場するのは初の快挙で、岡田さんは「自分を強く持って本番に挑戦したい」と意欲をみせている。

 3歳からピアノを始めた岡田さんは、函館本通中在学中の14歳の時に、パリ国立高等音楽院ピアノ科に首席で合格、08年にはラニーピアノコンクール(フランス)で優勝、09年にはエピナル国際ピアノコンクール(フランス)で3位入賞するなど実績を重ねてきた。

 ショパンコンクールは、5年に一度開催される世界で最も権威あるピアノコンクールの一つ。17歳以上という出場規定のため、今回が初挑戦となった岡田さんは、世界349人の応募者から215人に絞られるDVD・書類審査を通過。4月14日から30日までワルシャワで行われた予備審査に参加した。

 予備審査の直前にはアイスランドの火山噴火で飛行機がキャンセルとなり、16時間かけて寝台列車でワルシャワ入りしたという岡田さん。ステージ上でこれまでにない緊張感を味わいながらも、見事に予備審査を突破。「精神的にも体力的にも大変だったが、自分を強く持って挑むことができてよかった」と喜ぶ。

 なお、6月28日午後7時から函館市芸術ホールで「岡田奏 ショパンコンクール出場記念ピアノリサイタル」が開かれる。岡田さんは「昨年の秋以来約1年ぶりに函館で演奏できることを心待ちにしている」と話している。同リサイタルの問い合わせは畑中さんTEL0138・59・5456。(小川俊之)



◎口蹄疫で七飯の城岱スカイライン閉鎖

 【七飯】宮崎県を中心に被害が拡大している家畜伝染病、口蹄疫の感染を防止するとして、七飯町は21日、町営の「城岱牧場」を通過する町道「城岱スカイライン」を当面、全線通行止めにすることを決めた。同町道は町内の観光ルートでもあり、これから本格化する夏の観光にも影響が及びそうだ。町は「各農家から預かった牛を守るための措置。多くの人に迷惑をかけることになるが、どうかご理解を」としている。

 感染の広がりを受けて、町内の酪農家や農業士らでつくる牧場運営委員会が20日、町に対策を要請。協議した結果、牛の安全を重視して町道の通行止めを決めた。町農林水産課は「通行止めの解除は安全が保障され事態が収まるまで」とし、めどは立っていない。

 21日は今年の牛の入牧初日だったが、牧場の職員は早朝から7カ所の出入り口付近に消毒用の石灰をまくなど例年と異なる対応に追われた。「牛を放牧する初日に道路を閉鎖するのは残念な気持ち」と複雑な表情を見せる。

 同町道は町内の市街地と大沼地区の軍川を結び、全長14キロ。七飯岳のふもとを抜けて頂上付近に眼下の大野平野と駒ケ岳を見渡せる展望台のほか、周辺には牧場が広がる。観光バスも頻繁に通り、夜は函館の裏夜景を楽しめる。地元や近隣からの来場者も多い観光スポットで、場所によっては間近で放牧された牛を見ることも可能だ。

 町内には乳牛、肉牛合わせて約1万頭が飼育され、ほとんどが観光地の大沼地区に集中している。牧場の景観や酪農の体験観光も町の観光資源となっている。今回の事態を受けて、体験観光の受け入れを休止した酪農家も相次いでおり、大沼観光協会の堀元会長は「マイナスイメージにならないか不安はあるが、1日も早い事態の収束を願いたい」と話し、「早急に代わりの観光メニュー、対策を考えていく」と危機感を募らせる。

 七飯町の対応を受けて、他の公営牧場でも同様の対策を取ると見られる。キャンプ場やパノラマ展望台があるきじひき高原に市営牧場が開場されている北斗市では30日に牛の入牧が予定され、牧場につながる道路の封鎖も視野に入れながら対応を検討中。山菜採りの安全防止のため展望台から先の区間を6月30日まで通行止めにしているが、市農政課は「このままの状況が続くのであれば7月1日以降も通行止めにする」としている。(鈴木 潤)


◎口蹄疫侵入防止対策本部を設置 渡島・桧山

 【函館、江差】渡島総合振興局と桧山振興局は21日、口蹄疫の被害が宮崎県内で拡大を続けていることを受けて、両局に副局長をトップとする「口蹄疫侵入防止対策本部」を設置した。両管内の畜産や酪農関係者に消毒の徹底を呼び掛けるほか、空港や港湾などでの水際対策も展開し、口蹄疫の道南侵入を阻止する構えだ。

 道の対策本部(本部長・高原陽二副知事)の設置に伴う対応。渡島では柳谷龍彦本部長が「道南は観光シーズンを迎え多くの人が訪れる。観光客や住民にも協力を呼び掛けたい」と強調。桧山では山田享本部長が「地域経済だけでなく食料供給にかかわる重大な問題」とし、防疫対策の徹底を指示した。

 両局は4月30日までに、牛や豚を飼育する渡島438戸、桧山204戸の緊急調査を実施。対象の家畜は、渡島は牛3万6000頭、豚11万頭、ヒツジ60頭、ヤギ20頭。桧山は牛1万1000頭、豚1万3000頭、羊435頭、ヤギ4頭。いずれも異常はなかった。

 両局とも、消毒の徹底や農場への立入制限、感染の疑いがある家畜が発生した場合は早急に届け出るよう、農家や農業団体などにあらためて呼び掛ける。また、交通機関には消毒への協力を、観光業界には観光客が農場などに立ち入らないよう注意喚起を促す。渡島では、週明けにも防疫対策を呼び掛けるパンフレットを空港などで配布。桧山はフェリーターミナルや奥尻空港での消毒を検討するほか、職員が業務で農場に立ち入る際は、靴カバー着用や消毒液の使用を徹底する。

 さらに、渡島家畜保健衛生所(函館市)は、防疫作業に当たる職員を宮崎県に派遣。週明けには桧山家畜保健衛生所(江差町)からも応援の職員が現地に向かうという。(田中陽介、松浦 純)


◎都市景観大賞「美しいまちなみ賞」の優秀賞に「函館市都市景観形成地区」が選出

 本年度の都市景観大賞「美しいまちなみ賞」(都市景観の日 実行委員会主催)が21日発表され、函館市西部地区などを指定している「函館市都市景観形成地区」が大賞に続く優秀賞に輝いた。同賞は行政と民間が協力して、まちづくりを実践した団体と地区に贈られるもの。同地区を舞台に長年、市や市民団体が一体となって行ってきた空家再生の取り組みやイベントが評価された。

 今回は全国26地区が応募。大賞は岡山県倉敷市の美観地区など2地区、優秀賞には函館のほか福島県会津若松市の七日町通りなど4地区、特別賞2地区を合わせ、それぞれ関連団体が表彰された。

 同賞は1991年に創設。2000年までは函館市も選ばれた「都市景観100選」として、01年からは現行制度で表彰。今回は市をはじめとする関連6団体と共同で応募していた。

 函館地区は市が88年に制定した景観条例に基づき、景観形成規準などを策定した上で街並みの整備保存を実施。NPO団体などによる、空家再生活動や伝統的建造物に指定された建物の保全を目的とするコンサート開催などの取り組みが評価された。また、はこだてクリスマスファンタジーや冬フェスティバルなど歴史的建物や街並みを生かした多くのイベントが開かれ、市街地の活性化や冬期観光客の増加に寄与したとされた。

 受賞団体の一つで「函館の歴史的風土を守る会」の落合治彦会長(74)は「函館の街が全国的に注目されているということ。今回を契機に各団体がより一層連携を深めて、函館を盛り上げていきたい」と話した。西尾正範函館市長は「今後も関係団体と協力して特色ある街並みを継承し、さらに良好な景観の推進に努めたい」とコメントした。(山田孝人)

 受賞団体は次の通り。

 歴史的風土を守る会、函館市伝統的建造物群保存会、はこだて街なかプロジェクト、はこだてクリスマスファンタジー実行委、はこだて冬フェスティバル実行委、函館市