2010年5月26日 (水) 掲載

◎旧函館博物館1号が18年ぶり一般公開

 函館公園内(青柳町)の市立函館博物館本館に隣接する道指定有形文化財の「旧函館博物館1号」が25日、1992年以来18年ぶりに一般公開された。市民ら約250人が来場。開館当時に展示されていたとされる標本や民族資料が並べられた館内で、往時の雰囲気を体感した。

 同館1号は函館公園のオープンより約半年早い明治12(1879)年5月25日に「開拓史函館仮博物場」として開館した。国内に現存する地方博物館では最も古い洋風木造建築の建物。この日、開場131周年を迎えた。公開は本館で開催中(7月11日まで)の函館ゆかりの研究者の足跡をたどる特別展「いきもの事始め―函館発 博物学大事典」の一環として実施した。

 館内では開館当時に使用していた展示台の上に、ニシンやクロダイの標本や、アイヌが日々の生活で使用していたさじや火ばしなどが並べられた。幼少時に訪れたことがあるという宝来町の田嶋幸さん(86)は「当時はすごく広く感じられた館内だが、今はまた違ったふうにみえる。すごく懐かしい」と興味深そうに館内や展示物を眺めていた。

 同博物館は「現段階では次回の公開はまだ予定していないが、今回の公開の反応を見て検討したい」としている。(山田孝人)



◎競輪「交付金」の補助事業廃止/函館市、負担軽減で歓迎

 政府の行政刷新会議は24日の事業仕分けで、競輪とオートレースを運営する経済産業省所管法人「JKA」が車券収入の一部で行っている補助事業と、競輪を主催する自治体への交付金還付事業をいずれも「廃止」と判定した。補助事業の原資は、競輪を行う自治体が売り上げに応じて交付金として負担しているため、累積赤字を抱える市営函館競輪にとっては負担軽減となり、朗報と言える。廃止となる還付事業も「交付金の引き下げで対応する」としており、市競輪事業部は「推移を見守りながら、交付金軽減の要請を続けていく」としている。

 競輪は、売り上げの一部を補助事業として広く社会に還元することを前提に、地方自治体による実施が認められている。函館をはじめとする自治体は年間売り上げの3・2%を交付金としてJKAに納めており、函館市は08年度に5億4900万円、昨年度は5億396万円を同団体に支出した。

 納めた交付金は、競輪場の改修など事業活性化策を行った自治体に対し、翌年度に3分の1が戻る仕組み。函館には07年度から5年間の時限付きで還付されており、昨年度の決算見込みでは1億6686万円が交付される。市はこれを函館競輪場改築の起債償還に充てている。

 今回の事業仕分けでは、「補助金を受ける法人の多くが天下りを受け入れている」として審査のあり方にメスが入り、補助事業は「現在の仕組みでの補助は廃止」。交付金還付も「廃止し、交付金の引き下げで対応する」と結論付け、仕分け人は「売り上げベースではなく、利益ベースで交付金を支払う方法に改めるべき」と求めた。

 市営函館競輪は売り上げの減少から、昨年度までで5億6000万円の累積赤字を抱えており、JKAへの交付金支出は赤字解消を目指す中で大きな負担。市は全国競輪施行者協議会や全国競輪都市協議会などを通じて交付金の減額を求めていたといい、市競輪事業部は「累積赤字を抱える状況下ではありがたいこと」と好意的にとらえる。

 同部の種田貴司部長は「地元での公益事業を行う観点で、交付率の引き下げを求めていきたい」と話している。(千葉卓陽)



◎「路面電車の日」多彩なイベント

 函館市交通局は6月10日の「第15回路面電車の日」に合わせて、市電利用促進キャンペーンを展開する。ベテラン乗務員とマンツーマンで実際の電車を動かすことができる「運転体験会」や、今回初めて実施する同局の車両を題材とした写真コンテストなど、多彩なイベントを開催する。

 路面電車の日は「6」が路面、「10」が英語でテンと読むことから電車に通じるとして、1995年10月に制定。これに合わせて、全国の軌道事業者が電車をPRする催しを開催している。

 運転体験会は同20日午前9時と午後1時からの2部構成で実施。事前の講習を受けた後、駒場車庫構内で運転を体験できる。運転体験証明書など記念品もプレゼントされる。参加資格は中学生以上の人で定員30人。参加費3500円。申し込みは同局ホームページなどで受け付ける。締め切りは同11日。

 写真コンテストは「函館の路面電車」がテーマ。車窓からの函館の風景または、電車と函館の風景を捉えた写真を募集する。応募された作品は営業車両内に展示し、車内に掲示したQRコードを使って、一般乗客に携帯電話で投票してもらう。作品募集は同8日までで、展示は同19日から同30日まで実施する。入選者は7月に表彰する予定。

 応募は、道南のサンクス各店舗に設置される回収箱や同局で受け付ける。作品はA4サイズに限り、裏面に氏名と年齢、郵便番号、住所、電話番号を明記する。問い合わせは同局TEL0138・32・1731、ファクス同32・1735。

 このほかの主なイベントは次の通り。

 ▽利用促進チラシ、ティッシュ配布(6月1、10日午前10時、五稜郭公園前電停と函館駅前電停付近)

 ▽200円均一運行(同10日)終日実施され、子どもは100円

 ▽第3回市電カラオケ大会(同25日午後6時)北海道コカ・コーラボトリング、サッポロビール道南支社主催。募集対象は20歳以上で定員20人。参加費2500円。時間は2時間程度。申し込みは同局ホームページなどで1日から受け付ける。締め切りは17日。(山田孝人)


◎HIFセミナー経験のフライドマンさんが飛鳥・奈良時代研究

 2004年に北海道国際交流センター(HIF、山崎文雄代表理事)主催の「日本語・日本文化講座夏期セミナー」に参加した米国・エール大学の大学院生ジョシュア・フライドマンさん(25)が来日し、函館市内で当時のホストファミリーの元に滞在している。現在、博士号取得後に大学教授となることを目標に「飛鳥・奈良時代」の日本史研究を進めている。フライドマンさんは「函館に来て日本が大好きになった。HIFでの経験は、今の研究にもつながっています」と話している。

 フライドマンさんは、幼少期から日本への興味を持ち、アニメなどのサブカルチャーを入り口に、歴史や文化、社会への関心を深めた。初めての来日が同セミナーで、帰国後に日本の古典文学や歴史を教える大学教授を目指すことを決めた。

 今回の来日では、博士論文執筆に向けて研究テーマを探求するため、奈良に滞在し、京都や九州にも足を伸ばしてフィールドワークを行う予定という。「飛鳥・奈良時代は日本人が大陸の文化を吸収して、独自の文化に発展させた特別な時代。当時はシルクロード交易が盛んで、現代のようなグローバリズムが起こっていた。比較することで歴史に対しても新しい視点が出てくるはず」と語る。

 「函館のお父さん、お母さん」と慕う夫妻とは、電子メールで交流を続け、約2年ぶりの再会。夫妻は「外国にいる“息子”が久しぶりに帰ってきただけ」と明るく話す。フライドマンさんは「お父さん、お母さんは本当の家族のよう。函館は日本の日常生活を初めて経験した場所。わたしのふるさとです」と話す。

 HIFの同セミナーは、毎年6―8月の2カ月間、海外の学生が函館近郊でホームステイをしながら、日本語や日本文化について集中的に学ぶプログラム。これまでに1380人の学生が函館を訪れた。25周年となる今年も来月10日に開講し、62人の学生が滞在する。

 山崎代表理事は「ホストファミリーやボランティアに支えられ、草の根の国際交流が続いている。函館に来る学生たちは勉強熱心だからこそ応援したい。互いの文化を認め合うことが、将来、国を超えた大きな懸け橋となるはず」と期待している。(今井正一)


◎09年度まとめ/DV相談、延べ4000件

 函館市男女共同参画課は、2009年度に市内の各窓口に寄せられた、配偶者などからの暴力(DV)に対する相談件数をまとめた。法務局や市の窓口など、10機関が対応した相談数は延べ3964件。前年度より1000件以上増加した。集計方法の変更で大幅に増加したが、最多の相談を受け付けたウィメンズネット函館は「実際に相談者の数は増えている状況」と話す。

 同日、函館市女性に対する暴力対策関係機関会議(森越清彦議長、27機関)が市役所で開かれ、市が報告した。

 10機関は、渡島総合振興局や道警函館方面本部、函館家庭生活カウンセラークラブなどが運営する相談機関。ウィメンズネット函館は、3733件に対応。09年度からシェルター利用者の相談や、関係機関への対応などもカウントするよう変更し、前年度よりも1094件増加した。ウィメンズネットは「積極的に相談するのは良い傾向」と受け止める。

 次いで多かった配偶者暴力相談支援センター(同総合振興局)では、同20件増の80件、市の3機関では合わせて同4件増の91件。本年度から加わった、市女性センターが運営するDV(ドメスティックバイオレンス)と虐待相談には、18件が寄せられた。

 これら相談者の一時保護件数は、同4件減の50件。同課は「深刻なケースが依然として多い」ととらえ、「関係機関が相互連携を図る必要がある」とした。

 08年度に5件あった、男性被害者からの相談はなかった。一方で加害者側からの相談は、市が2件(同一人物)に対応。離婚や慰謝料、保護命令についての内容だった。

 意見交換では各機関の対応や連携、シェルターで保護された女性の自立について話し合った。保護された女性の多くが配偶者から逃げるため職を失う現状に、森越議長は「離職を前提に逃げなければならないことは制度としておかしい」と強く訴えた。(小泉まや)