2010年5月4日 (火) 掲載

◎往時の花見 晴れ姿で 74年前の五稜郭公園写真

 国の特別史跡「五稜郭公園」で1936(昭和11)年に行われた花見のにぎわいを伝える写真31枚が、函館市内で見つかった。あでやかな着物姿の女性に、背広を着込んだ男性、はしゃぐ子どもたちなど、当時の雰囲気をセピア色で伝える。「いつの時代も花見は人々の楽しみ。娯楽が少なかった当時はなおさらで、正装で宴会をする光景から、先人が花見を重んじていた様子が垣間見られる」と関係者は話している。

 74年前の写真は、市内駒場町5で工房を営む嶋崎孝治さん(60)が、50年前に亡くなった父親の英一さんの形見として大事に保管している。英一さんは、東川町で板金業を経営する傍ら、各地の写真を撮影することに夢中だったという。

 函館大火(1934年3月21日発生)に遭った時は、「仕事道具(板金工具、刃物)を家の前の下水に投げ込んで、『これで火がきても溶けないべ』と写真ブックを背負って家族と避難したもんだよ。もっとほかに大事なものもあったと思うのにね」と嶋崎さんは父のエピソードを紹介する。

 五稜郭公園の花見写真は、縦4センチ×横6センチが主だ。写真専門家によると、モノクロで撮影されたものが時を経てセピア色に変わったとみる。

 嶋崎さんは撮影機種について「ドイツ製で蛇腹のついたものだった」と覚えている。「あのころ外国のカメラを持っている人はほとんどいなかったはず。父は無口だが手先が器用で、なんでも自分で作っていたから、カメラの扱いも上手にこなせたと思う」

 花見のほか、五稜郭公園堀の製氷採取作業や昭和10年の「第1回函館港まつり」のパレード、大戦中の軍飛行機、海外とみられる戦地の様子などの写真もある。

 嶋崎さんは、五稜郭公園の花見写真を函館市か公園関係機関に寄贈したい考えで「家族の了解を得てから資料として専門機関に届けたい。そのほうがいい。多くの人に見てもらって、函館の財産として後世に残ることが望ましい」と話している。(田中陽介)



◎強制労働の歴史 次代へ語り継ぐ 松前・専念寺で慰霊法要

 【松前】戦前から戦時中に旧国鉄松前線建設工事に従事させられて亡くなった朝鮮人労働者らを追悼する「殉難者慰霊法要」が3日、町唐津の専念寺境内の慰霊碑前で開かれた。参列者らは、不戦と平和への決意を新たにし、悲惨な歴史を語り継いでいくことを誓った。

 軍需物資の運搬を目的とした旧松前線の工事では、朝鮮人らが強制労働に従事させられた。過酷な労働と厳しい自然環境で、多くの労働者らが命を落とした。衣食も満足に与えられず、飢餓状態で労働を強いられたという。犠牲者の数は1000人ともいわれているが、正確な数は分かっていない。松前線は1953(昭和28)年に開通、88(同63)年に廃止された。

 慰霊法要は、85年から毎年5月3日に開かれており、今年で26回目。この日は在日韓国、朝鮮人や地域住民ら約70人が参列した。6年前、慰霊碑建立20周年を記念し、境内に設置された「韓国鐘(しょう)」が鳴らされ法要が始まった。岡本順一副町長が、「強制労働の歴史を永久に語り継いでいく。安らかにお眠りください」と前田一男町長の追悼の言葉を代読した。

 同寺の福島憲成住職(63)らが読経する中、参列者が一人ずつ焼香し、静かに手を合わせ犠牲者の冥福を祈った。

 犠牲者の調査を行い、慰霊碑の文章も書いた七飯町在住の浅利政俊さん(79)は「日本がアジアと本当の意味で共存の時代を迎えるためにも、歴史と事実を次の世代にしっかりと伝えていかなければならない」と話していた。(松宮一郎)



◎地域会館修繕など幅広く使用 昨年度の地域コミュニティ推進経費

 函館市が合併4地域の住民活動活性化を図る目的で導入した「地域コミュニティ推進経費」は昨年度、老朽化が著しい地域会館の軽微な修繕や地域住民との意見交換会、スポーツ大会の運営経費など、地域活性化に幅広く使われた。市は本年度も予算を計上しており、人口減や過疎化の進む4支所地域の活力維持に充てたい考えだ。

 市は各支所に一定の予算を計上しているが、道路整備や漁業振興などの要望は本庁との協議が必要なため、支所長の裁量で使える予算として昨年度、支所長1人あたり100万円を同経費として配分。支所は旧町村時代に比べて権限が少ないことから、住民要望への柔軟な対応に向けた活用が求められていた。

 各支所別の用途を見ると、戸井支所は汐首東ほか5会館の修繕に29万円、大漁旗を使ったはっぴ作りの経費に5万6000円など、84万円余りを使った。恵山支所では地区文化祭の経費や恵山福祉センターでコインロッカーや長いす設置の購入経費に充てられ、計90万4000円を使った。

 椴法華支所では、地域会館の修繕やツツジ125本の植栽など90万円余りを活用。南茅部支所でも尾札部会館浄化槽の改修や地域との意見交換会、支所長杯ミニバレー大会の運営経費など、99万7000円を使用した。

 市は本年度予算でも各支所長に対して100万円ずつを措置している。戸井支所の伊藤修支所長は「昨年度と同じ用途に使うことにはならないと考えている。予算は細分化されており、住民とも相談しながら工夫して活用したい」と話している。(千葉卓陽)


◎オオヤマザクラあでやか ソメイヨシノきょうにも開花 松前

 【松前】サクラの名所、松前町松前公園の早咲きのオオヤマザクラが開花し、大勢の花見客の目を楽しませている。ソメイヨシノはまだ開花しておらず、関係者らも今か今かと待ちわびているが、4日にも開花宣言が出される見通し。

 オオヤマザクラの開花は1日で、昨年より9日遅かった。松前城の本丸御門前の木には薄桃色の花をつけ、観光客らが携帯電話のカメラを向けて撮影する姿が見られた。見ごろは4日から10日ごろまで。

 一方、ソメイヨシノは、松前城前の標本木で花びらをつけた枝もあるが、ほとんどがつぼみの状態。函館海洋気象台によると、松前町の3日の最高気温は午前10時すぎに記録した15・2度。町商工観光課では「きょう(3日)開花宣言をしたかったが、気温が上がらず、花が開ききらなかった。4日にも開花を宣言できるだろう」としている。

 松前城資料館の久保泰館長は「昨年は野鳥の食害で咲かなかった分、木に栄養が行き渡っている。これからすばらしいサクラが咲くはず」と太鼓判を押す。松前ガイド協会の成田優美代表も「ゴールデンウイーク明けの満開の時期が今から楽しみ」と話す。

 札幌から家族で訪れた岡本登志江さん(67)は「お城とサクラをゆっくり見ることができた。写真もたくさん撮った」と笑顔で話していた。(松宮一郎)


◎ベイエリアに車の列 大型連休折り返し

 大型連休の折り返しとなる3日、函館では今季最高の19度まで気温が上昇。6月上旬並みの初夏の陽気に誘われ、大勢の観光客や市民が市内近郊の観光地を訪れた。函館では午後2時過ぎに最大瞬間風速15・5メートルの強風に見舞われたが、観光客は帽子を押さえながら懸命にお気に入りのスポットを目指していた。

 市内中心部では駐車場付近を先頭にした車の長い列が目立った。赤レンガ倉庫群がある豊川町の函館ベイエリアの七財橋から西部臨港通に向かう道路では、信号が青になってもなかなか前に進まず、ドライバーもいらいら気味の様子。札幌から夫婦で観光に訪れた自営業、斉野一さん(39)は「20分以上足踏み状態。こんなに混んでいるとは思わなかった」と困惑顔だった。

 市内近郊の行楽地でも、家族連れを中心に人の波が絶えなかった。函館酪農公社が運営する函館牛乳あいす118(中野町118)では、新鮮なアイスクリームや乳製品を求め長蛇の列ができていた。

 中でも人気を集めていたのが、ゴールデンウイークの期間限定メニュー「マリボーチーズ焼き」。ラクレットオーブンという専用の道具で表面を溶かしたチーズを、パンに乗せて提供するもので、車で東京から高速道路を乗り継いで遊びに来た滝沢恒さん、泰恵さん夫妻は「ホテルのフロントに薦められてここ(あいす118)に来たが、北海道ならではの新鮮なチーズを食べることができて大満足」と笑顔を見せていた。(小川俊之、黒田寛)