2010年6月23日 (水) 掲載

◎「ヘレン・ケラー展」開幕 来函時の写真など展示

 ヘレン・ケラー(1880―1968年)の生誕130年を記念し、函館を訪問した際のゆかりの品などを公開するヘレン・ケラー展が22日、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町)で開幕した。訪問時の写真や関連する新聞記事などの資料十数点を展示している。28日まで。

 函館盲聾教育後援会(若山直会長)、同センターの主催。ヘレン・ケラーは1937年、48年に来函。最初の訪問時には湯の川温泉の旅館で57歳の誕生日を祝った。今年の生誕130年にちなみ、ヘレン・ケラーが伝えようとした障害福祉発展の理念を再確認し、障害者と健常者の相互理解を深める狙いでゆかりの品を公開する。

 会場には、ヘレン・ケラーに日本文化を紹介するために、当時の函館盲唖学院の生徒と教員が製作した神社・仏閣模型もお披露目。模型は神社と仏閣の2基あり、いずれも木製で1台当たりの大きさは縦120センチ、横90センチある。ヘレン・ケラーが模型に触れ、その様子を報じる新聞記事や写真も残っている。

 このほか、ヘレン・ケラーの足跡をたどる年表、直筆サインの色紙などを展示。函館盲唖院の訪問時や、和服をプレゼントされ大喜びする様子などを収めた写真、湯の川温泉の旅館で行われた誕生祝賀会などの写真や新聞記事も並ぶ。

 会場で行われた開幕式では、若山会長、同センターの丸藤競所長、函館文化会の安島進会長、函館盲学校、函館聾学校の児童生徒の代表によるテープカットが行われた。併せて会場には、同後援会の沿革や機関誌、函館盲・聾学校の児童生徒の作品や学校紹介パネルも掲示されている。(宮木佳奈美)



◎JR函館−新函館経営分離問題 議論平行線、混迷深まる

 【札幌】北海道新幹線の札幌延伸時に、JR北海道が函館駅―新函館駅(仮称)間を並行在来線として経営分離する意向を示している問題で、函館市の西尾正範市長と道、JR北海道との会談が22日、道庁で行われた。道はJRに対し経営継続を再検討するよう求めた一方、函館市にも第3セクターなどでの運行を検討できないか提案した。しかし、市、JRとも従来の主張を崩さず、議論は平行線に終わった。

 会談は道が主催し、西尾市長と高井修副知事、JR北海道の中島尚俊社長が出席した。同問題に関して3者が顔を合わせたのは初めて。

 関係者の話を総合すると、午後3時半から約1時間行われた会談では、道がJRに対し、同区間の経営分離を見直し採算性も含めて経営継続が可能か再度検討するよう求めた一方、函館市に対しても、第3セクターなど他の運行方法が可能かどうか、検討を求めた。

 JRの中島社長は整備新幹線のスキームを示した上で、同区間の経営分離方針を改めて主張。西尾市長も市と道の覚書の存在や、現駅建設に至った経過などを踏まえ、JRによる経営継続を求め「地域として条件を整備してもらわないと、経営分離には同意できない」と主張した。

 西尾市長によると、中島社長は「3セクで運行できないという根拠はない」として市に理解を求めたが、高井副知事が「JRができないという根拠があるのか」などと、議論が交わされたという。

 市長は函館新聞の取材に対し、「道からは問題を先送りして、函館開業後の動向を見てはどうかという話も出たが、経営分離に同意することになるので、できない。道には実務を進めてもらいたい」と話した。道新幹線対策室は「今後もさまざまな局面の中で、解決に向けて話をしていきたい」としている。(千葉卓陽)



◎森林の大切さ考えよう 来月9、10日江差で「山子サミット」

 【江差】失われつつある山村の伝統文化をはじめ、林業や狩猟といった森林にまつわる職業や技術を後世に語り継ごうと、森にまつわる多彩な顔ぶれが語り合う「山子(やまご)サミットinひやま」(実行委主催)が7月9、10の両日、江差町文化会館(茂尻町71)で開かれる。

 初開催のイベントは「山に生きる」をメーンテーマに掲げ、森林を守り育てることの大切さや、森林を舞台とする多彩な生業の姿に光を当てることが目的。開幕初日の9日は、全国の高校生が森づくりに携わる人たちの姿を追った「第7回森の聞き書き甲子園」(林野庁など主催)の様子を収めたドキュメンタリー映画「森聞き」の試写会を行う。撮影では桧山も訪れた柴田昌平監督が舞台あいさつを行う。午後6時半から。

 2日目の10日は午前9時半開会。NPO法人・樹木環境ネットワーク代表を務める渋澤寿一さんが基調講演を行う。渋澤さんは明治の大実業家として知られる渋澤栄一のひ孫で、日本やアジア各国で森づくり活動を進めている。

 続いて「山に生きる」をテーマとするパネルディスカッションでは、柴田監督、上ノ国町で林業に携わり、自ら「山子」を名乗る長谷川力雄さん、桧山のヒバ資源復活に情熱を注ぐ元林野庁職員の坂野正義さん、マタギの里として知られる秋田県北秋田市阿仁地区でツキノワグマなどの狩猟に携わる松橋光雄さんが意見を交わす。

 実行委員長の松村隆・北の桐を創る会会長は「地球温暖化の防止などで森林の役割が見直される中、古くから林業や狩猟など森を生きる場としてきた人たちにもう一度光を当てたい。ヒバの伐採で栄えた桧山の歴史を再発見する機会にもなれば」と話している。入場無料。問い合わせは桧山振興局林務課TEL0139・52・6545。(松浦 純)


◎努力の大切さ音に込める ジャズピアニスト加茂さん特別課外授業

 函館出身で米ニューヨーク在住のジャズピアニスト・加茂紀子さんが22日、函館西高校(石原卓典校長)で特別課外授業を行った。加茂さんは、プロとして認められるまでの苦労を振り返るとともに、夢を実現するための努力の大切さを訴えた。

 加茂さんはニューヨークの名門ライブハウス「コットンクラブ」で日本人初の専属ピアニストとして幅広い活動を行っている。今回は約2週間の来日中で、19日には函館山山頂クレモナホールで行われた、同高生徒の企画による「キャンドルナイト・ジャズコンサート」にも出演した。

 音楽室で行われた課外授業には同高吹奏楽部員を中心に約80人が出席。加茂さんがピアノの前に座り演奏を交えながら授業を進めた。ミュージシャンとなるきっかけについて「明治学院大学に在学中、父親の会社が倒産し自分でお金を稼がなければならなくなった。そこで小さい時から習っていたピアノの腕を生かしてレストランでの演奏を始めたのが最初」と明かした。また「ニューヨークに渡った当初は言葉による嫌がらせも受けたが、相手の英語が聞き取れなかったので気にならなかった」とも打ち明けた。

 授業の合間にはジャズのスタンダードナンバーやオリジナル曲を次々と披露。同高出身の北島三郎さんの「与作」の英語バージョンも初披露し「コード進行などにブルースの要素が感じられて、アレンジするのが楽しかった」と話した。

 このほか、同高生徒の詩の朗読とのコラボレーションや、アルトサクソホンとの共演も行われ、最後は加茂さんの

ピアノをバックに全員が「翼をください」と高らかに熱唱して締めくくった。

 サクソホンで共演した山本大貴さん(3年)は「一流ミュージシャンと演奏できてとてもうれしかった。ジャズの世界の素晴らしさに触れ、自分も追求してみたくなった」と話していた。(小川俊之)


◎口蹄疫「一層の防疫強化を」 対策事業説明会で連携確認

 【北斗】道の補正予算に盛り込まれた「口蹄疫(こうていえき)緊急防疫対策事業」の説明会が22日、北斗市農業振興センターで開かれた。渡島管内の自治体や農協などから約40人が出席。各種補助事業の概要を把握し、「一層の対策強化でウイルス侵入阻止を」と連携を深めた。

 同事業は、宮崎県で被害が続く口蹄疫を受けて実施。石灰(消石灰、生石灰)購入費や動力噴霧器などの購入費を補助し、防疫対策の充実に努める。

 石灰購入は、渡島管内では畜産農家438戸が対象。1戸あたり購入費5000円を上限に補助し、と畜場3カ所への動力噴霧器購入費も半額補助する。

 自治体の家畜自衛防疫組合(自防組合)など事業実施主体は、すべての農家に消毒剤を配布した上で、確実に散布されているか確認の点検をする。

 出席者からは「すでに購入した石灰などの対策にかかった費用も補助対象にしてもらいたい」という要望が相次いだが、道は「今のところ、それはできない。これから改めて、継続の意味で対策強化を図るということで理解してほしい」とした。

 また、道内で一斉に対策事業が始まり、石灰などの在庫不足が見込まれることから、関係機関の連絡体制の強化を求める意見もあった。(田中陽介)