2010年6月3日 (木) 掲載

◎マイカ初水揚げ 大きさ、量ともに十分 幸先よし

 道南近海のマイカ(スルメイカ)漁が1日解禁となり、2日早朝、函館市入舟町の函館漁港などで初水揚げされ、店頭に並んだ。水温の低さなどで来遊が大幅に遅れる漁況予報だったが、関係者は「大きさ、量ともに文句なし」と手応え。幸先良いスタートに「近年にない豊漁の年になりそうだ」と表情が明るい。

 1日午前に函館漁港から出漁した漁船は、約5時間かけて松前小島沖合に到着し、漁をした。函館漁港に一番乗りの船が戻ったのは、2日午前3時20分。家族らが岸壁で待ち、同5時半の初競りに合わせて、手際よく出荷作業した。

 船底の水槽からたも網ですくうと「キュッ、キュッ」とイカは鳴き声を出し、水や墨を吐き出した。千代丸(9・7トン)の田原正明船長(50)は「最高のイカだ。順調、順調。これからもっと忙しくなる。こういう大漁なら、もっと忙しくてもいい」と声を弾ませていた。

 函館市水産物地方卸売市場(豊川町)で競りが行われ、函館魚市場漁船部の坂本孝部長が「一丸となり、集荷、販売に力を入れるのでよろしくお願いします」とあいさつ。威勢のよい掛け声が響き、活気に満ちた。

 同市場によると、初日の水揚げは平年並みの約6トンで、昨年の6・7倍。平均で15センチ、70グラムで「この時期ではまずまず」。いけす用イカは、1687キロで1キロあたり680―880円の値がついた。昨年はしけなどの不漁で、初水揚げ時は474キロ、1450―1700円だった。

 市場漁船部の川崎光一係長は「初水揚げは、すべて上々。うれしい悲鳴だ」と声を張り、「青森や秋田であまり取れず、型も小さいという情報だったので心配していたが、『まずは沖に出てみなければ分からない』と函館の漁師が意気込んでくれた。この結果が功を奏した」と安どの表情だった。

 マイカは早速店頭に並び、はこだて自由市場(新川町)では同6時半ごろから登場。富田鮮魚店は100キロを仕入れ、1皿10杯前後で1000円で販売。鹿部町から夫婦で市場に足を運んだ尾花蓮子さん(70)は「たまたま来たら新鮮なイカがあったので買った。晩ご飯はイカとサトイモの煮物」と話していた。(田中陽介、小杉貴洋)



◎鳩山首相退陣で道南政界の反応 民主「残念」野党は攻勢

 鳩山首相の辞任表明を受け、道南の民主党関係者からは一様に「残念」と落胆する声が広がった。一方、政権を離脱した社民党や野党関係者は「賢明な判断」「政権は信用を失っていた」と厳しく指摘、約1カ月後に迫った参院選に向け、党勢拡大を目指す構えだ。

 首相補佐官を務める道8区選出の逢坂誠二衆院議員は「農家の戸別所得補償制度や子ども手当など、国民生活に直結した政策も実現してきたが、全体として国民にうまく伝えきれなかった。政府の一員として非常に残念」。

 首相補佐官の職については「地域主権担当として任されたと思っているが、今後どうなるかは全く分からない」と述べるにとどめた。参院選への影響については「首相自身を含む3人の処遇についても言及し、民主党本来のクリーンな政治に向けて、一定のプラス効果はあるのでは」と期待をにじませた。

 連合渡島地協の米坂章事務局長は「トップが代わって安定的な政権運営をしてもらい、民主党への期待がもう一度高められなければ厳しい」と受け止める。

 一方、普天間問題で政権を離脱し、首相辞任の引き金を引く形となった社民党。函館支部の加茂義則代表は「自分の言葉と逆のことをしたのだから、国民は誰も信用しない。首相の涙は政権に対する未練にしか見えない」と厳しく批判。参院選に向けて攻勢を強める。

 野党側もまた、今回の辞任に手厳しい。自民党8区支部幹部は「これだけ内閣支持率が下がり、国民の支持を失っているだけに賢明な判断。自民党政権時代も支持率が10%台になると首相が辞任しており、民主党も同じだ」。参院選に関しては「今国会で重要法案を抱えるだけに、予定通りの日程で進むかはわからないが、できることを確実に訴えていくしかない」と話す。

 公明党函館総支部の茂木修支部長も「国民に約束したことを軽んじた責任は非常に重い」。参院選に関しては「スケジュールが延びる可能性もあるが、このままの日程で進めてほしい。第3勢力として、政策面でのアピールを強めたい」とする。

 共産党函館地区委員会の高橋佳大委員長は「基地問題で公約を守らなかったことで、鳩山政権の矛盾が一気に表れた。米国に対してモノを言えない態度が今回の結果を招いた」と指摘する。



◎駒ケ岳登山道 12年ぶりの山開きを前に関係者に公開

 【森】噴火の恐れがあるとして1998年10月から入山が禁止されていた駒ケ岳(1131メートル)が19日、約12年ぶりに山開きされるのを前に、駒ケ岳自然休養林保護管理協議会と駒ケ岳火山防災会議協議会(ともに会長・佐藤克男町長)は2日、両協議会の関係者や報道陣に登山道を公開した。

 2000年以降、火山活動が静穏に推移している状況を受け、今年3月30日、両協議会は4ルートある登山道のうち、赤井川ルート(森町)のみ入山規制を解除することを決めた。ただし、登山道終点の「馬の背」以降にある火口や亀裂のある場所への立ち入りは禁止とする。

 登山道の公開には、両協議会を構成する4市町(函館市、森町、七飯町、鹿部町)や函館海洋気象台、函館開発建設部、報道各社などから約50人が参加。6合目の駐車場をスタートし、標高900メートルの「馬の背」を目指した。6合目から馬の背までは約2キロで、40分から1時間半かけて全員が登り切った。

 頂上では、目の前に剣ケ峯がそびえ立ち、眼下の大沼、小沼、蓴菜(じゅんさい)沼をはじめ、遠方に函館山を望め、鹿部方面を向けると、火山の噴火でできた出来澗岬も見ることができた。

 登山道の開放は10月まで原則土曜、日曜、祝日に限定し、時間は午前9時から午後3時まで。学校の夏休み期間中に当たる7月24日から8月17日は毎日開放する。

 登山希望者は3日前までに届け出が必要で、携帯電話の所持が義務付けられる。同防災会議協議会の清水雅信事務局長(森町防災交通課長)は「事故のないようモラルを守って登山を楽しんでほしい」と話している。(鈴木 潤)


◎北斗と今金のタケノコ園開園

 【北斗】北斗市と今金町にある国有林内のタケノコ園が2日開園し、午前6時のオープンと同時に大勢が来場した。ほどよく成長したタケノコを袋いっぱいに詰め込み、「これがおいしいんだ」と待望の山菜採りを満喫した。

 残雪と天候不順で例年より10日遅い開園となった。管理する道森林管理局には、開園を待ち望む愛好家から問い合わせが相次いでいたという。

 北斗市中山の「上二股」では、開園直後に自動車50台が列をなした。1日で約150人が訪れ、大きなリュックサックいっぱいに採って下山していた。七飯町の男性(67)は「オープンが待ち遠しかった。去年より、タケノコの成長具合がいいようだ。きょうは40キロぐらいの収穫で、帰ったらすぐにあく抜きをして食べたい」と話していた。今金町住吉「上ハカイ」にも初日は約300人が来園した。

 開園時間は午前6時―午後2時。両タケノコ園の問い合わせは渡島森林管理署TEL0137・63・2141。大人1日700円、中学生以下は無料。

 上ノ国町湯ノ岱の「上の沢」は11日の開園予定で、午前6時―午後1時。問い合わせは桧山森林管理署TEL0139・64・3201。(田中陽介)


◎世界的な舞踏家、大野一雄さんが死去。函館出身103歳

 函館出身で独創的なスタイルで世界的に高い評価を受けた舞踏家、大野一雄さんが1日、呼吸不全のため横浜市内の病院で亡くなった。103歳。

 大野さんは日本体育学校(現日体大)卒業後、体育教師として横浜市の女学校に勤務。その後、モダンダンスの世界に興味を抱き、終戦後に本格的な活動を開始。1960年代には暗黒舞踏創始者の土方巽氏と出会い新たなスタイルを開拓。77年に発表した独舞踏「ラ・アルヘンチーナ頌」で世界的な名声を確立する。

 2003年2月には金森ホール(末広町14)での函館最後の公演で、圧倒的な存在感を光らせ、満員の観衆を魅了した。この時初めて、大野さんの生の舞台を体験した函館バレエアカデミー顧問の佐竹道子さん(71)は「舞踏家として偉大な先輩の姿から、感動と勇気を与えられた。もう一度その雄姿を見たかった」と悼む。

 同じく函館出身の舞踏家で、屋外での個性的なパフォーマンスで知られるギリヤーク尼ケ崎さん(79)=東京在住=は、30年前から大野さんと親交があったという。「1981年に(大野さんが)私のパフォーマンスに足を運んでくれた時に、初めて言葉を交わした。大野さんは“静”、私は“動”と目指す芸術の内容は対照的ながらも精神的に通じ合うものがあり、同郷という共通点を含め共感し合う部分が多かった」と懐かしむ。偉大な先輩の訃報を受け「日本の舞踏の価値を国際的に高めた点でまさしく“巨星”だった。心からご冥福を祈りたい」と話していた。(小川俊之)