2010年6月4日 (金) 掲載

◎北斗でトマトの共同選別作業始まる

 【北斗】道内2番目のトマトの生産量を誇る北斗市で3日、本年度の出荷作業が始まった。市内中野通の共同選別施設(トマトターミナル)でサイズごとに箱詰めされ、札幌方面に出荷された。

 市では、合併前の旧大野、旧上磯の各地域で独自の共選出荷を行っていたが、昨年9月の施設の完成に伴い選別基準を統一し、産地ブランドの確立を目指している。

 今年は天候不順の影響で昨年よりも1週間ほど遅れての出荷作業。この日は約10軒の農家が早朝に収穫されたばかりのトマトを次々と施設に持ち込んだ。施設は荷受から梱包(こんぽう)までオートメーション化され、自動選別、糖度測定などを行う機器も登載されている。パートの女性たちが、機械では判別できない傷をチェックしたり、分類されたトマトを箱詰めしていた。

 市野菜生産出荷組合トマト部会の渡辺登会長(48)は「市で立派な共選施設を造ってもらった。あとは生産者としてブランド化を目指し品質の良いトマトを作っていきたい」と話した。

 トマトは今後、道外にも出す予定。出荷は11月まで続き、本年度は約3000トンを見込んでいる。(鈴木 潤)



◎イカ漁不振で減少 函館市の昨年度取扱実績

 函館市は、水産物地方卸売市場と青果物地方卸売市場の昨年度取扱実績をまとめた。水産物市場は主力のスルメイカ(マイカ)の不漁が響き、数量で前年度比2.6%減の4万3444トン、金額も同6%減の179億2988万円と落ち込んだ。一方の青果物市場は数量が同1.8%増の6万1772トン、金額で同1.3%増の130億7700万円と、ほぼ前年並みだった。

 水産物市場のうち、生鮮スルメイカの数量は同42.5%減の5135トン、金額も同37.5%減の12億5582万円にとどまったが、単価は同8.9%増の1キロあたり245円と上昇。市市場課は「海水温が上昇せず、津軽海峡や恵山沖に来る個体の数が軒並み減った」とみる。今月1日に解禁となった漁は型、量とも大きく、「今年こそは大漁に期待したい」と同課。

 生鮮品全体では数量が同5.6%減の2万418トン、金額は同6.1%減の92億6247万円と、イカ不漁が全体減に直結した。このほかではサケが数量で同約2.2倍の2453トン、金額も同53.1%増の8億2891万円と豊漁。ホッケは数量で同14.4%増の1410トンだったが、金額は同1.8%減の2億4585万円だった。

 一方、青果物市場では野菜が数量で同3.9%増の4万2395トン、金額は同10.8%増の78億2229万円と堅調。同課は「昨夏の天候不順で値段が上がったが、本州と比較すると数量での影響は少なかった」と分析する。

 果物は数量で同3.1%減の1万8768トン、金額で同10.5%減の49億5355万円。ミカン、ブドウ以外は軒並み前年度から数量を下回っており、同課は「野菜と違い、青果は嗜好(しこう)品としての面が強い。食生活の変化に伴う果物離れが進んでいることが大きい」と話している。(千葉卓陽)



◎和洋の意匠、ローマで絶賛 彫刻家小寺さんの個展好評

 函館出身でイタリア・ローマ在住の彫刻家、小寺真知子さんがこのほど、ローマのベネチア宮殿で個展を開催し、大きな反響を呼んだ。来場者から「西洋の形をしているが東洋の雰囲気を感じる」と評されたといい、小寺さんは「函館という西洋文化が根付いた地域で育ったことが大きく影響している」と話している。

 ベネチア宮殿は、ルネサンス期の作品などを展示しており、イタリアの独裁者ムソリーニが演説したことでも知られている。若手作家が発表するスペース拡張のための改装後、第1号の個展として小寺さんの作品が展示された。

 小寺さんはイタリア渡航30周年を記念し、4月29日から5月27日まで、これまでに作った43点の原型を初めて出品した。昨年9月には、唯一、日本人をモデルにした「赤い靴の少女像」を函館に作った。ほかの作品はイタリア人をモデルにしており、全世界から訪れた愛好家から「素晴らしい」「日本人としての感覚を非常に感じる」と絶賛されたという。

 こうした評価を受け、小寺さんは「すごく喜んでもらえてうれしい」と話し、「イタリアの伝統彫刻の技術を持って日本の精神を表現できたのでは」と振り返る。生まれ育った函館については「西洋文化がたくさん入ってきた痕跡のある街。自分の中には『函館で育った』という事実が精神的な糧になっている」と語る。

 個展後、ギリシャやバチカンの大使館からも個展開催の話が来ているといい、「年内はイタリア国内で再び個展を開きたい」と意欲を見せる。小寺さんは、日本人としてのアイデンティティーを大切にし、「1000年、2000年と後世に残り、見る人の心を揺さぶる」作品作りを続けていく。(黒田 寛)


◎豪華キャストが観客魅了 前進座舞台「法然と親鸞」

 2011年の法然上人800回忌、親鸞聖人750回忌を記念した前進座の舞台「法然と親鸞」(同函館公演実行委主催)が3日、函館市民会館大ホール(湯川町1)で上演された。歌舞伎役者で俳優としても活躍する、浄土宗の開祖・法然役の中村梅之助さんをはじめ豪華キャストが結集した舞台に、大勢の観客が魅了された。4日午後2時からも行われる。

 2007年の初演以来、全国で250回上演されている。北海道公演は初めてで、函館を皮切りに帯広、札幌、苫小牧など10カ所16公演が行われ、11月からは北米公演も予定されている。法然のほか、主要キャストに親鸞を嵐圭史さん、親鸞の妻・恵信尼を今村文美さんが演じ、800年以上前の日本の姿を今に伝えている。

 舞台は3幕構成で、1幕では法然の生い立ちや平家滅亡から鎌倉幕府成立に至る時代の動乱や飢饉(ききん)の様子などが鮮明に描かれた。2、3幕では、仏門と恋に揺れる若き親鸞の姿や、念仏を唱えて世の中を平和に導こうとした法然と親鸞の姿などが色彩豊かに表現され、観客の心をとらえていた。当日チケットは指定席6500円、自由席5000円。(小杉貴洋)


◎道南経済に持ち直しの動き 4月、個人消費は上方修正

 日本銀行函館支店(市川信幸支店長)は2日、4月の道南地方の金融経済動向を発表した。家計の節約志向が続いているものの、政策効果で個人消費に明らかな持ち直しの動きが出始め、管内の景気を「非常に厳しい状況が続いているが、持ち直しや下げ止まりの動きが広がっている」として前月(3月)に上方修正した判断を据え置いた。

 個人消費は前月までの「全体として弱い状態が続いている」との表現を削除し、「政策効果もあって耐久消費財を中心に持ち直している」と6カ月ぶりに上方修正。主要小売店(10社)の売上高は催事や特売などが好調で、前年同月比4.4%増と2カ月ぶりに前年を上回った。対象店舗が異なるが、上げ幅はリーマンショック前の2008年3月(同4.5%増)の水準まで回復した。

 このほか、新車登録台数はエコカー減税などの政策効果に加え、レンタカー向けの小型車販売が急伸し、普通・小型車が同70.1%増と9カ月連続でプラス。軽乗用車も同12.1%増と3カ月ぶりに前年を上回った。同支店は「ブランド品や宝飾品など一部の高級品に動きがみられ、耐久消費財以外にも全体に底堅さを増してきた」としている。

 観光は前月に上方修正した「持ち直しつつある」との判断を据え置き。主要ホテル(20社)の宿泊客数は同8.1%増と2カ月連続で前年同月を上回ったほか、函館空港乗降客数は国内便客が同7.8%増、国際便客が同0.8%増とともに前年実績を上回り、4カ月連続で増加した。

 設備投資は工場の移設や小売店の新設などで市内の非住宅着工が棟数で同2.9倍、床面積で同5.4倍と急増。住宅投資は分譲が不振だった一方、貸家が同2.1倍と好調で、持ち家も含めた全体では3カ月ぶりに前年を上回った。公共投資は北海道新幹線関連工事の発注が集中し、同20.8%増と2カ月連続でプラスだった。生産は海外向けに電子部品や造船が安定した操業を続けているが、水産加工は需要の冷え込みで操業度が前年を下回る状況が続いている。(森健太郎)