2010年7月14日 (水) 掲載

◎戦禍の記憶今も鮮明に 函館空襲から65年で住吉さん

 太平洋戦争終結の1か月前となる1945年7月14、15の両日、函館は米軍機の攻撃により大きな被害を受けた。陸上でも70人以上の死亡が確認されているが、それ以上に甚大な被害を受けたのが、津軽海峡を航行していた青函連絡船。函館、青森両港停泊中も含め計10隻で438人の船員が犠牲になった。第四青函丸に事務掛官補として乗船していた住吉猛三さん(享年46)も犠牲者の一人。二女の恵子さん(81)=函館市松川町=は65年が経過した現在も当時の様子をはっきりと記憶する。

 「『船がやられた!』という声が聞こえ、母親(エツさん)はあわてて海岸に飛び出していったが、陸からは何も様子が分からなかった」。当時は海岸町に住んでいたため、函館山の裏側付近に沈没した第四青函丸の姿を確認することは不可能だった。14日早朝の函館港出航直後に爆撃を受け、わずか1時間あまりで海底に沈んでいった第四青函丸。船員78人中救助されたのはわずか24人だった。

 猛三さんの遺体はついに発見されることなく、遺留品なども一切見つからなかった。「もしかしたら生きて打ち上げられ、記憶を失ったまま生活しているかもしれない」と、しばらくは街中で父に似た男性の姿を見つけると、顔を確認していたという。

 当時、函館大妻女子高等技芸学校(現在の函館大妻高等学校)の学生で、1945年4月から学徒援農として十勝地区の農家に動員されていた。お盆に合わせて7月13日に函館に帰省。13日から連絡船に乗り込んでいた父とは、15日に久しぶりの対面を果たすはずだった。

 「まさか永遠の別れを迎えるとは思っていなかった。父からは十勝に行く前に『農家の仕事をしっかりと手伝うように』と書かれた手紙をもらい、今でもお守り代わりに大切に残している」と明かす。

 大黒柱を失った一家は、エツさんと三つ年上の姉、恵子さんの3人で、まだ小さな3人の弟と妹の面倒を見なければいけなかった。恵子さんは卒業後に松川郵便局に就職し、定年まで40年あまり勤め上げた。「父が亡くなった直後の9月に誕生した弟は小さいうちに亡くなったが、他の家族は大きな病気をすることもなかった。これは父が見守ってくれたのだと思っている」と振り返る。

 母エツさんは青函連絡船殉職者遺族会の初代副会長を務め、1985年に82歳の生涯を閉じた。恵子さんも現在、同遺族会の幹事として毎年行われる慰霊法要などに参加している。「連絡船が廃止となり22年が過ぎ、もうすぐ新幹線がやってくる時代だが、戦争で失われた命の記憶を風化させず次世代にしっかり引き継いでいきたい」と話している。(小川俊之)



◎長万部町長選、現職と新人立候補 町議補選は無投票当選

 【長万部】任期満了に伴う長万部町長選挙(18日投開票)は13日告示され、新人で会社役員の高森治光氏(67)=無所属=と、2選を目指す現職の白井捷一氏(71)=同=が立候補した(届け出順)。4年前の前回と同じ顔触れの一騎打ち。両候補は午前9時すぎに事務所前で第一声を上げ、選挙カーで町内をくまなく遊説した。町議補欠選(欠員1)も同日告示され、新人で町内富野の建築業、大谷敏弥氏(58)以外の届け出がなく、大谷氏の無投票当選となった。

 高森氏は1975年に町議に初当選して以来、9選。草の根的な選挙運動を展開し、これまで有権者や企業などへのあいさつ回りで町内を3巡した。遊説では「長万部高校の存続など教育や福祉の充実に加え、まちに活力を戻したい。滞った経済の起爆剤として大手農業法人の誘致を積極的に交渉したい。雇用確保を含め、第一次産業の充実が商工業などの発展に結びつく。住民がここに長く住み続けることのできるまちづくりをしたい」と訴えた。

 白井氏は農協職員から95年に町議初当選。2期目を飛躍の4年間と位置付け、漁協や農協、建設協会などから推薦を受け現職の強みを生かした選挙戦を展開する。第一声は「行政のスリム化で財政健全体制を図る。第一次産業の振興に医療・福祉、育児教育、観光などの充実にも力を入れたい。2期目への生活プランは自信がある。町民一丸でこのまちを元気にしていくためにも今回は大差をつけて勝たなければならない」と力説した。

 長万部商工会と山越郡森林組合はともに両陣営を推薦する。

 12日現在の有権者数は5467人(男性2512人、女性2955人)。期日前投票は14―17日、役場庁舎で午前8時半から午後8時。18日の投票は町内9カ所で午前7時―午後8時まで。開票は町ファミリースポーツセンターで午後9時から。町選管によると当落判明は同10時ごろの見通し。(田中陽介)



◎サポステ開設1カ月 利用者順調に増加

 ニートなど無業状態の若者の職業的自立を支援する「はこだて若者サポートステーション」(函館市元町14)が開設され、約1カ月半が経過した。登録者数は13日現在で48人、電話相談や同ステーションが主催する催しに参加した人数は延べ208人となった。同ステーションは「他地域の新規開設所と比べても多い数字が出ている」と、ニーズの高さに手応えを感じている。

 利用者の年齢層は15歳から44歳で、男性が33人、女性が15人。全国的な傾向と同じく函館でも男性の来所が多く、市内をはじめ、せたなや八雲など渡島・桧山管内から広く集まっている。

 開設当初は保護者の来所が多く、「子どもが引きこもりから抜け出せない」「社会参加できるのか」などといった相談が多く寄せられた。支援機関を紹介し、知識を深めてもらい、視野を広げるようなアドバイスをしている。相談した保護者からは「これまで家族だけの問題ととらえ、外に出すきっかけがなかったのでよかった」という声が上がっているという。

 利用者からは「就職活動などをしたがうまくいかず、次第に外に出れなくなった」との悩みが多い。同ステーションコーディネーターの染木加奈子さんは「まずは自分の課題を知ることが大事。個人の事情に合わせ、漠然(ばくぜん)とした悩みを明確にし、1つ1つ解決に向けたアドバイスを心掛けている」と話す。

 今後は同ステーションのプログラムで自信をつけた利用者を、いかに就職に結びつけていくかが課題となる。染木さんは「サポステはあくまで就業に向けたきっかけを作るに過ぎない。若者の就職をサポートするには多くの協力が必要」と支援態勢の重要性を語る。

 同ステーションやハローワーク、行政でつくる「函館市若者自立支援ネットワーク連絡会議」で支援に向けた連絡態勢は構築されているが、就業に向けたサポートには民間の協力が必要不可欠という。「市民のみなさんの力を借りたい」(染木さん)と協力を呼び掛ける。

 同ステーションは16日と23日に、札幌で活躍するキャリアコンサルタントの高橋幸雄さんを講師に招いて「はこサポ流 仕事塾」を開く。仕事をする意味や実務に向けた準備の大切さを考える。午前10時からで、会場は同ステーション。定員30人で、対象はおおむね15歳から40歳程度の人など。問い合わせ、申し込みは同ステーションTEL0138・22・0325。(山田孝人)



◎乙部でブロッコリー出荷最盛期 首都圏へ

 【乙部】乙部町では首都圏に向けたブロッコリーの出荷が最盛期を迎えている。6月から好天に恵まれた町内では、この春に定植した苗がぐんぐん成長。早朝からブロッコリーの収穫や鮮度を保つために氷詰めにして行う出荷作業が行われている。

 乙部町契約野菜生産出荷組合(佐藤光男組合長)によるブロッコリー栽培は6年目を迎える。今年は過去最高となる約30ヘクタールを作付けした。高い鮮度と品質を誇る乙部産ブロッコリーは、栽培契約を結んでいる、大手農産物卸売商社のベジテック(東京)を通じて首都圏を中心とする大手スーパーの店先に並ぶ。

 栽培が行われている、町内の富岡や姫川地区では、早朝から手作業による収穫が行われている。今年はインターネットや携帯電話を活用して、畑の画像情報や気象データが得られるシステムも稼働。収穫作業の効率化に役立っている。

 姫川の集出荷施設に運び込まれたブロッコリーは、パートの女性たちが丹念に品質をチェックしながら、手際よく茎を切りそろえる。新鮮さを保ったまま首都圏に輸送するため、発泡スチロールの容器に納めて素早く氷詰めにして、保冷コンテナで首都圏に運ばれる。

 町内でのブロッコリー栽培は2005年度に12.5ヘクタールの作付けからスタート。昨年度は27.5ヘクタールに拡大し、出荷額は当初の3倍に迫る9249万円に達した。同社は町内産のブロッコリー、スイートコーン、アスパラガスを詰め合わせたギフトセットの産地直送も計画するなど戦略作物としての定着が進んでいる。(松浦 純)



◎北海道ダンスプロジェクト公演に向け、函館のメンバー最終調整

 道内で活動する14のダンススタジオで構成する「北海道ダンスプロジェクト(HDP)」(宏瀬賢二会長)の第1回公演「北海道JAZZ DANCE協会から北海道ダンスプロジェクトへ〜A new day〜」が19日、札幌市のニトリ文化ホール(旧北海道厚生年金会館)で開かれる。ステージは3部構成で、函館からは第1部(ジュニアの部)に函館ダンスアカデミー(島崎啓子代表)の12人、第3部のHDP会員合同作品にはR dance company(アールダンスカンパニー、山崎理恵主宰)の岡崎佳純(かすみ)さんが出演。ともに本番のステージに向けて最終調整に余念がない。

 HDPは、これまで道内のダンスシーンをけん引してきた同協会の活動を引き継ぐとともに、さらなる発展を目指して今年4月に発足。初のコラボレーションステージとなる今回の公演には12スタジオから出演する。

 函館ダンスアカデミーからは、小学1年から中学2年までのメンバーが「Together」を演じる。振り付けをした島崎代表は「HDPの新たな出発にふさわしく、仲間が一緒に手を取りながら未来の夢に向かっていく内容を取り入れた」と話す。

 メンバーのまとめ役である鈴木純菜さん(函館西中1年)は、「ほかのスタジオとの共演はとても楽しみ。年齢差はあるが、チームワークには自信があるので、函館の代表として思い切って踊ってきたい」と意欲を見せている。

 Rダンス−の岡崎さんは、札幌などのスタジオに所属する会員約70人との合同作品「月 傾(かぶ)く」に出演。ヒップホップ、コンテンポラリー、ジャズを組み合わせた構成。5月下旬から毎週日曜に札幌でレッスンを受け、函館でも個人で練習を積んできた。「全体練習が少なく、踊りの流れを合わせることが大変。緊張しているが、頂いた機会を大切に頑張りたい」と話している。

 同公演は午後1時からと同5時からの2回公演。問い合わせはTEL011・221・8055。(小川俊之)